ISSUE 食と農

3 years ago - 2013.10.18

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「理想と現実のギャップを埋める」。島根にIターンして3年、シングルマザーの”おーなんさん”に、田舎暮らしのリアルを聞きました。(後編)

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田舎暮らしのリアルが聞きたい。そんな思いから、島根県の邑南町にIターンされたシングルマザー、おーなんさんにお話を聞きました。

インタビュー前編では、都会から田舎へ移住して、住むところや仕事を見つけた経緯などを伺いました。後編では、農業について聞いていきます。

農家の常識と、Iターン者の理想とのギャップ

丸原 農林振興課でお仕事をされていますが、おーなんさん自身は農業をしたいと思われていますか?

おーなん 興味はありますね。Iターンして最初の1,2年は土を触る余裕もなかったんですけど、3年目になってようやくちょっと動けるようになったので、田んぼや畑でお手伝いをするようになりました。まだ自分では作物を育てる自信がないので、収穫のときに声をかけてもらってちょっと手伝う、くらいですけどね。5年後くらいに兼業農家になれたらいいなあ、くらいの気持ちです。

丸原 邑南町の農業はいまどんな感じですか?

おーなん お年寄りが増えているからでしょうか、田んぼをされる方もどんどん少なくなってきていますね。刈取りが終わったような田んぼに白い袋が積んであるのを目にすることがあると思います。それは牛のエサ用のお米なんですね。栽培に国からお金が出て手間がかからないので、耕作放棄地にするよりはいいか、ということでそうしているんですけど、そんな田んぼが増えているのを見ると、ああ、農業をやる跡取りが減ってるんだなあって実感します。ああいう田んぼをIターンの人たちが耕せるような仕組みがあったらなあと思います。

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丸原 やはり厳しいんでしょうね。

おーなん 限界集落では特に深刻ですね。でも、新しい取り組みも始まっているんですよ。「赤馬の里」という農事組合法人を、勤め先の前の課長がスタートさせました。農業って、けっこう機械とか使うんですよね。それを一人で買って管理するのはなかなか大変だったりするんです。

なのでそこでは、集落みんなで会社みたいなかたちにして道具をシェアして、給料を払って若い人たちを雇うかたちで農業をするようにしているんです。こういう取り組みを見ていると、ダメだダメだと言っているだけじゃなくて、何かアクションを起こしていくことが本当に大切だと思いますね。

丸原 サラリーマン的なかたちで農業ができれば、都会の人たちもトライしやすいでしょうね。

おーなん 私もそうですけど、都会だと農業を知らずに育つじゃないですか。そんな人がイチから始めて独り立ちするのは本当に難しい。何年かは補助金が出るんですけど、そこから続けるのは大変ですよ。農業をしようという人たちを迎える農家や町の人たちにも課題はあります。都会で育った人は、鍬の持ち方すら知らないんですから。こんなこともできないの?っていう田舎の人と、こんなに大変だったなんて!というIターン希望者のギャップを埋めたい。そのためにもブログを続けていきたいと思います。

丸原 邑南町としては、農業をやるようなIターン者を求めているんですか?

おーなん そうなんですけど、そういう人はあまり出てこないことは分かっていると思います。農業も起業ですからね。リスクもあるので、覚悟がいりますから。だからまずは移住をしてもらって、農業をやってもらえばうれしい、くらいの感じではないでしょうか。

技術的な問題もありますが、土地の問題もあります。田舎暮らしというと、すぐに自給自足できるようなイメージがあるかも知れませんが、農地を貸してくれる人がすぐに見つかるとは限りません。家と畑をセットで貸してくれるところとなると、なおさら探すのが難しい。田舎暮らしの理想的なイメージと実際のギャップに戸惑う方もいらっしゃいます。

土地に関する考え方も田舎は独特です。都会で育った人たちにはわからない、土地に対する気持ちというのがあるんです。空き家や耕作放棄地はあるんだけど、知らない人には貸したくない、ご先祖様が怒ると考えている人も少なからずいます。私たちからしたらもったいないと思うんですけどね。そういう土地に対する保守性もあって、なかなか住みたい人はいても、住むところがすぐに見つからないという問題はあります。

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キーワードは「みんな、みんな」なんです

丸原 私も田舎で暮らすとしたら、半分書く仕事をして、半分土をいじって、自分の食べるぶんは自分でつくるというのが理想だなあとは思っているんですけど、そう簡単にはいかないですね。

おーなん 家と田畑があればできるんですけどね。実際、家でパソコンを使って仕事をする人も出てきていますからね。まあ、贅沢はできませんが。

丸原 贅沢はしたいとは思いませんけどね。空気がいい、水がいい、人がいい。それだけでも素晴らしいところだと思いますよ、邑南町は。

おーなん それくらいの感じで、高望みをしなければトライしてみてもいいんじゃないですかね。Iターンが失敗するいちばんの原因は、理想と現実のギャップですから。

丸原 最後に、おーなんさんの夢を聞かせてください。

おーなん こっちにきたばかりのときは、カフェみたいなお店をやりたいなあって思ってたんですよね。いまはちょっと変わって、Iターンの人が気軽に寄れるようなサロンみたいなものがつくりたいなあって思っています。これも上司がアドバイスくれたんですけどね。たとえば、海外に行って困っているときに、JTBの窓口とか見ると安心するじゃないですか。そんな感じで、Iターンの人が安心できて、地元の人たちが触れ合える場所があればと思うんです。

私自身は特に特技もないんですけど、日々一生懸命生きてたら、例えば私は料理ができるとかっていう人が出てきたりすることもあるんじゃないかなあと、楽観的に考えています。こういうことをしたいと言い続けていたら、ポロッと実現するんじゃないかな、と。自分はできない、という思いこみをなくして、淡々と今できることをやる。とにかく、希望は持ちつつ、日々、目の前のことを大切にして過ごしていきたいですね。

丸原 おーなんさんなら、きっとできると思いますよ。さっきもおじさんが通りかかって話をしていったじゃないですか。人の心をオープンにする雰囲気がありますよ。

おーなん Iターン者の奥さん同士で話をすることがあるんですよ。みんな、自分にはサロンを開くなんて無理よねえなんて言うんです。でも、食べ物を持ち寄ったりすると、これおいしいじゃない、いけるんじゃない、みたいな話になることがありますね。

こっちにきてからの私のキーワードは「みんな、みんな」なんです。これも上司が私にいつも言ってくれている言葉なんです。ひとりでがんばっていても限界があるけど、みんなでやっていけば広がるし、楽しいから続けられるじゃないですか。邑南町は本当に住みやすいところなので、ぜひ興味があったら来ていただいて、いっしょに新しいカルチャーをつくっていければと思っています。よろしくお願いします。

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(インタビューここまで)


こんな素敵な人がいる邑南町、ぜひ行ってみたい、移住してみたいと思われた方は、まずは邑南町役場の定住促進課にご相談ください。定住コーディネーターの方の笑顔と、青い空、緑の田畑、そして赤い屋根という素晴らしい景色が待っていますよ。

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writer ライターリスト

丸原 孝紀

丸原 孝紀

greenz シニアライター 1976年京都生まれ。コピーライター(東京コピーライターズクラブ会員)。企業に社会貢献型のコミュニケーションを提案するとともに、NGO/NPOのクリエイティブを積極的にサポートしている。社会課題を解決するアイデアを提案するプランング・ユニット「POZI」のプランナーとしても活動中。

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