ISSUE☆おすすめの連載! a Piece of Social Innovation

2 years ago - 2013.07.26

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商品を通じた、心の交流を。 手織りストールとともにカンボジアの魅力を伝える「ポレポレ」

商品はすべて手織り

特集「a Piece of Social Innovation」は、日本中の”ソーシャルイノベーションのカケラたち”をご紹介するNPO法人ミラツクとの共同企画です。

カンボジアという国名を聞くと、どんなイメージが浮かびますか?地雷や内戦といったイメージでしょうか。それともクメール文化の残る遺跡がたくさんあるイメージでしょうか。いずれにしても、カンボジアにゆかりがない人にとって、カンボジアは生身の人間の息づかいを感じられるほどのイメージがないのではと思います。

そんなカンボジアを「価値のある商品」を通じて身近にする、NPO法人ポレポレの取り組みを紹介します。

カンボジアのメコンブルー

撮影:深津陽子

撮影:深津陽子

この美しい絹のストールは、カンボジアの「メコンブルー」というブランドの商品です。非常にクオリティが高く、技術も機材もないゼロからのスタートであったにも関わらず、日本の第三者機関で品質検査を行った結果、百貨店で扱える基準を上回る「最高級品」の保証を得るほど。2004年、2005年には3つのデザインでUNESCOが東南アジアの手工芸品に与える賞を受賞しています。

すごいのは品質ばかりではありません。実はこのストールを作っているのは、読み書きのできない女性たち。読み書きができないと簡単なマニュアルも読めないために、仕事に就くことが難しくなり、生活は困窮します。その状況を見て、創設者で元難民のチャンタ・ヌグワンさんが立ち上げたのが、このメコンブルーというブランドなのです。

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商品はすべて手織り

チャンタ・ヌグワンさん チャンタ・ヌグワンさん

メコンブルーは、カンボジア最北部ストゥントゥレン州という農村で作られています。そこでは、読み書きのできない女性たちが共同で農作業を行い、助け合って子育てをし、互いに技術指導を行って、暮らしながら働いています。

使っている絹糸は、ゴールデンシルクという希少な繭から生み出されたもの。それをドイツ製の環境に配慮して作られた染料を使って染め上げています。表現したい色に染めるまで3年かかった絹糸もあるという、すばらしく鮮やかな色合いが特徴です。

すべて手織りで作られているため、糸を紡ぐところからストール一枚を織るのにデザインによっては2ヶ月かかるほど、手がかかった商品。滑らかな質感は、いつまでも触れていたくなるようです。

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すばらしい品質と理念に裏打ちされ、高いオーナーシップを保ったまま作られている商品なのですが、一つ残念なのが販売チャネルを持っていないところ。カンボジア国内でも地方といわれる場所で生産しているため、マーケットへのアクセスがないのです。その状況に支援を始めたのが、NPO法人ポレポレです。

NPOポレポレの高橋邦之さんは、

この素晴らしい商品の売上を伸ばしていく、というミッションがあるのはもちろんです。しかし、これをもっと心の通ったものとして紹介したいのです。

と言います。一体、どういうことなのでしょうか。

作り手の姿を紹介することで、国際交流をはかりたい

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NPO法人ポレポレ代表の高橋邦之さん

高橋さんが考えているのは、商品を通じて「国際交流をする」ということ。その発想は、メコンブルーの前にエストニアのニット製品を販売したときの経験から生まれたものです。

当時、ネット通販専門のアパレル雑貨のセレクトショップを起業していた高橋さんは、問屋さんたちが自分たちでネットに出店し始めたため、「これからは自分たちでオリジナル製品を輸入しなくてはならない」と感じました。そして商品探しに向かった先がエストニア。そこで手編みの高品質なニットの商品を見つけて、商品に決めたそうです。

このニットはエストニアの小さい島々で農閑期に高齢者の女性の仕事がない間に作られていたものでした。

エストニアの人々と エストニアの人々

しかし、エストニアという国があまりにも知られていないため、商品はなかなか売れません。そこで高橋さんが行ったのは、エストニアという国をホームページで徹底的に紹介すること。エストニアの切手や看板、昔話などをガイドブックや書籍、ネットの情報を翻訳したりまとめたり、自分がエストニアに行って知ったことを書いたりして、紹介しました。そうやってエストニアを紹介していくうちに高橋さんはあることに気づいたそうです。

自分たちが独自で作っているコンテンツの方が、圧倒的に評価が高かったんです。特に、編み職人のトンベルクさんというおばあちゃんたちのことを書いた記事は、非常に人気でした。トンベルクさんがどんな風に商品を編んでいるかを綴った連載記事でした。

「トンベルクさん」なんて、ショップのホームページを読んでいない人は誰一人知らない、エストニアの一般のおばあちゃんです。でもお客様には有名人。「トンベルクさんがああやって丹誠込めて編んだニットだから買いたい」とお客さんが言ってくれたのです。

ものを作る過程を丹念に紹介することで、国際理解が深まるのではないか、国際交流と言える状態になるのではないかと思いました。

商品とともに届けたいのは「人とのつながり」と「人のぬくもり」

エストニアの町並み エストニアの町並み

エストニアの商品を取り扱い始めたのが2000年。日本人の好みを伝えて商品開発を行い、当初は編み職人の方々が原材料を購入できるように、商品代金を前払いするなどしていました。しかし10年の間にエストニアの経済状態は急速に改善。取引を続けてもトンベルクさんたちの生活にメリットを提供しにくくなったこと、ニット製品が現地で販路を見つけ、軌道に乗ってきたことから、高橋さんはエストニアでの事業の収束を決めます。

最後に、エストニアの編み職人のおばあちゃんたちのところに挨拶に行ったら、「今まで本当にありがとう。お礼に、今日は世界で一番きれいなところに連れて行くね」と言われたんです。

そのおばあちゃんが住んでいるところは、ガイドブックに載るような名所などない小さな島。でも、そう言われて田んぼの中をついて行って木立を抜けたら……そこは小さな入り江から続く一面の花畑でした。

海はキラキラと輝き、色とりどりの花が咲いて静かな空気が流れていて、天国のような場所でした。そして、ふと気づいたんです。そこが島の人たちの墓地だということに。

そして、おばあちゃんはぼくにこう言いました。「もし、つらいことや悲しいことがあったら、私たちはここにいるからおいでね」って。この仕事をしてきて、良かったと思いました。

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「始めた当初は、エストニアのビジネスがフェアトレードと呼ばれる取引の形だと気づいていなかった」と高橋さんは話します。しかし、エストニアの商品を紹介することで、ただ単に物を販売する以上に、お客さんに「人とのつながり」や「人のぬくもり」、幸福感や安心感を届けられたというしっかりとした実感はありました。

そこで高橋さんは「途上国の社会的課題を解決する商品の販路を開拓すると同時に、卸先で国際交流となるような情報の提供やイベントを行おう」と決意したのです。

カンボジアのメコンブルーも、若い女性織り職人が子育てをしながら無理なく技術を身につけたり、クメール文化を守るための商品開発があったりと、カンボジアならではのストーリーがたくさんあるとのこと。その織り職人のストーリーを発信したり、イベントを行ったりして、カンボジアを身近に感じられるような発信を行うことで、多くの人が商品を通じてカンボジアについて、生身の人間の住む場所としてのイメージを感じられるようにしていきたいそうです。

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国際理解、国際交流は今後ますます必要に

高橋さんがそこまで国際交流を大切に感じているのはなぜでしょうか。その理由を、高橋さんはこう教えてくれました。

先進国と発展途上国に住む人の双方が交流することによって、新しい仕組みが作れるのではないかという想いからきています。『サバイビングプログレス』という映画でも語られていたのですが、今後、中国やインドが先進国並みの進み方をしていくと地球環境には壊滅的なダメージを受けます。

しかし、だからといって途上国の人たちに「先進国みたいに発展したらいけないよ。地球環境に壊滅的なダメージを受けるからね」なんて言っても、「先進国の人たちは経済発展をして良い生活をしておいて、途上国の人には発展を許さないなんてずるい」と言われるのがオチです。

発展途上国に住む人たちから見れば先進国である日本は、学校にも行けるし欲しい物も買える夢の国かもしれません。でも、日本に住む私たちは、今、夢の国にいる気がしますか?おそらく、多くの人はしないのではないでしょうか。

メコンブルーのなかにある託児所 メコンブルーのなかにある託児所

例えば、カンボジアのメコンブルーでは子育てなど通常の生活の中で無理なく働く方法をとっています。一方で日本には、働きながら子育てをすることの難しさがなかなか解消されない現状があります。

先進国に住む人は、発展途上国に住む人に学べるところがたくさんあります。発展途上国に住む人は先進国に住む人と話すことによって、自分たちの持っているものの価値を再発見できるはずです。

先進国と発展途上国に住む人が対話をすることで、新しい価値観や新しい仕組みが作れるのではないでしょうか。例えば、日本では完全に切り離されている子育てと仕事の場をもっと近づけよう、子どもが走り回る職場を作ろう、という動きが出てくるかもしれません。

そんな想いから、ポレポレはイベントも手がけています。イベントの軸は「自分ひとりでもできること」「明日からでもできること」。

前回のイベントでは、人と和のために仕事をし、企業や市民とともに、都市の社会環境問題に取り組むNPO GoodDayの荒昌史さんと、100%天然のオーガニックコットンを使用し、職人の手仕事によって一つひとつ、寝具やタオルなどを生産する「プラネッタ・オーガニカ」代表の嶋田美由紀さん、そしてフィリピン・カリンガ族の無形文化を継承するためにジュエリーを作って販売する「EDAYA」の山下彩花さんが登壇。先進国・途上国が学び合う、多様性・双方向性に満ちた国際協力や、あたらしい未来のきざしを語り合いました。

カンボジアのメコンブルーを取り扱い始めたのは、人の縁がきっかけ

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イベントを行い、社会的課題を解決する商品の販路拡大する事業を行っていると聞くと、さぞ高橋さんは、精力的に買い付けの旅に出ているのだろうと思うかもしれません。しかし、高橋さんの持つ仕事に対するある哲学により、精力的に仕事を探しに行っているわけではないそうです。高橋さんがもつその哲学とは、「仕事は“呼ばれる”ものだ」ということ。

最初、「ぼくは、運だけは良いんです。運が良かったから、販路に困っている良い商品を教えてもらえただけですよ」という高橋さんに、あえてお聞きしたら、こう教えてくれました。

アルバイトをしていたときに気づいたのですが、同じことを頼まれたときに、他の人より早くやったり、きちんとやったりすると、もっと良い仕事に呼んでもらえるものなんですよね。最初から楽しいことやおもしろいことだけをやろうとしても、できるわけがないんです。だって、仕事を与える権限のある人は、その仕事をこなせそうな人にしか与えないから。

それをアルバイトのときに気づいたので、頼まれたときにちょっとずつがんばってみたんです。それだけです。そうやってきたら、いろんなところに呼んでもらえて、ここまできたという感じです。

今取り扱っているメコンブルーも、NPO法人ミラツクの清里の合宿で出会った、『辺境から世界を変える—ソーシャルビジネスが生み出す「村の起業家」』の著者である加藤徹生さんから紹介されたとのこと。また、この清里合宿にも、高橋さんが誘われて参加している「ソーシャルベンチャー・パートナーズ東京」代表の岡本拓也さんが紹介してくれたそうです。

NPOにしている意味

ポレポレが商社ではなくNPOである意味を、高橋さんは次のように教えてくれました。

手がける製品が、市場に認知され、軌道に乗るまで支援すること、そして、生産国へユーザーの方が興味を持ってくれたり、訪問したり、また、生産者との交流を楽しみにしてくれる「交流の場作り」を、一番の目的にしたいと考えているからです。たとえ売れる製品であっても、文化的な背景や、魅力的な取り組み、生産者でなければ、ポレポレの流通支援は機能しないと考えています。

また、ポレポレの取り組みを、なるべく多くの人に関わってほしいということもNPOである理由の一つ。ポレポレは常にプロボノやイベント時のボランティアなどで、様々な形で協力してくれる人を募集中です。

HUB Tokyoでのポレポレの打ち合わせ風景 HUB Tokyoでのポレポレの打ち合わせ風景

ポレポレの今後、メコンブルーのような、社会的課題を解決しつつ高品質な商品を20くらい取り扱いたいとのこと。そして、売り上げのうちの10%を基金として還元し、8%を現地のソーシャル課題の解決に、2%を作り手を日本に呼ぶ費用に充ててイベントを行って交流したいという展望があるそうです。

先日、高橋さんはインドに国際交流基金の助成でインドに“呼ばれて”行ってきたそうです。ポレポレが取り扱う商品が増えるごとに、私たちが理解を深められる国も増えていきます。今後、どんな商品を取り扱っていくのか、ポレポレの動きに目が離せません!

メコンブルーの商品を買おう!
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writer ライターリスト

FelixSayaka

greenz ライター フェリックスさやか。大学院卒業後、小学校非常勤講師を経て教育系出版社に編集者として勤務。退職後、フリーランスで執筆活動を行う。在職中から外国人向けテニススクールの運営を手伝い、「地球人としての日本人のありかた」「日本人の国際人教育」について興味を持つ。 Twitter:@SayakaFelix

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ミラツク

ミラツクは、対話を通じて、異なるセクター、異なる地域、異なるステークホルダーの間に協力を生み出し、より良い社会に向けたイノベーションを生み出すことに取り組むNPOです。 ミラツクが応援するのは、未だあまり知られていない社会を良くする取り組みとそこにいる”人”たちです。1人の人が生み出す未来の可能性を世の中に伝えていくことで、また新しい次の未来の種が生まれる。そんな未来をつくるサイクルを共につくっていければと思います。 ⇒ 特集「a Piece of Social Innovation」ミラツク×グリーンズ対談!Facebookページ

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