大きなドーム球場で、コンサートを観たことはありますか?席が遠いと、演奏しているミュージシャンたちが米粒ぐらいにしか見えないし、なかなか自由に楽しめないことも多いですよね。とはいえ、観客とミュージシャンの距離が近いライブハウスでは、観客の会話やマナーに気を取られて、音楽に集中出来ないことも。
このような状況を「どうにかしたい!」と、Rafe Offer(以下、レイフさん)が始めたのが、今回紹介する「Sofar Sounds」です。
ライブはロンドンのどこかの家のリビングで不定期に行われます。観客には前日まで、どこで開催されるか一切発表されません。前日の発表をサイトで目にして、運良く先着チケットを入手できた人々にのみ場所が知らされ、その家のリビングが一夜限りのライブ会場と化すのです。
こちらは実際に行われた演奏の様子です。
「Sofar Sounds」は、レイフさんが、友人でミュージシャンのDave Alexander(以下、デイヴさん)とともに、2009年にロンドンでスタートさせました。
もっと新人ミュージシャンに機会を与えたい。もっと音楽が真剣に聞かれる場を作りたい。
と2人は考え、色々な場所を候補に挙げてきました。
そしてある日、デイヴさんが数人の親しい友人を自宅に招いてリビングで演奏をしている様子を見た時、レイフさんは「リビングこそ、人が音楽に集中してくれる場所だ」と気づいたそうです。
「Sofar Sounds」では、演奏中の私語、携帯電話の使用、途中退出が禁止されています。限られた人数がリビングという親密な空間に集まり、ルールを守って音楽を楽しむことで、レイフさんは「音楽への敬意を取り戻したい」と考えています。
当初は、口コミだけで広まり始めた「Sofar Sounds」ですが、やがてREUTERSに取り上げられたことがきっかけになり、世界35都市まで広がりました。そしてライブイベントの運営以外に、参加ミュージシャンの楽曲を音楽業界・広告業界に仲介する「Sofar Creative」や、「Pledge Music」でのクラウドファンディングを利用したコンピレーション・アルバムの制作、イベントのLive Streamingにまで活動の幅を広げています。
その一方で、2人が優れたミュージシャンの発掘と同様に重視しているのが、集った人々のつながりを作ること。大規模なコンサート会場やライブハウスでは、他の見知らぬ観客とのコミュニケーションの機会は少ないですが、リビングという場所と規模に後押しされて、自然と演奏前後に観客同士が会話することも増えているそうです。
レイフさんは「楽しく暖かい人々との交流を大事にしたい。新たな友人との出会いは人生を豊かにしてくれるからね」と話しています。
どこか場所を借りなくても自宅のリビングを上手く使うことで、ワクワクするポップアップ・イベントが開催できる。このアイデアはライブ以外にも色々な応用できそうです。あなたなら、リビングという空間を使ってどのようなイベントを仕掛けたいですか?
(Text: 鈴木康太)
[via PSFK, venturevillage, artpit]