みなさんは「レイブル」という言葉をご存じでしょうか。
レイブルとはlate bloomer(レイトブルーマー)を略した言葉で、“遅咲き”という意味があります。
2011年度に大阪府によって提唱され、普及させようという動きが広まっています。その一環として11月23日の勤労感謝の日に、東京・日本財団ビル、大阪・オーバルホール、名古屋・名古屋クラウンホテルで、「三都市レイブル100人会議」が開催されました。
この会議は2011年度に大阪で開催されて話題を呼んだ、大阪ニート100人会議を大きくスケールアップさせたもの。それぞれの会場には“働き方”に高い関心を持った人たちが集まり、働くことについて真剣に意見を交わしました。
東京会場には応援団としてお笑い芸人のロバートが駆けつけてきてくれたほか、ゲストとして株式会社ソウ・エクスペリエンスの西村琢さんも登壇。豪華なメンバーが揃うなか、どんな話し合いが行われ、どんな学びや気づきがあったのでしょうか。当日の様子をお届けします!
新たなキーワード「レイブル」
これまで、仕事に就いていない若者はニートと呼ばれ“甘えているだけ”怠けてるだけ”など、ネガティブな印象でひと括りにされる傾向がありました。そういった負のイメージのため、採用する企業側もニートの雇用にためらいを感じてしまうなんてケースもあるようです。
一方の「レイブル」は、ニートと同じように仕事に就いていないけれど、職に向けての準備をすすめている人たちのこと。たとえば資格を取得するために勉強をしていたり、仕事の情報を集めながら自分探しをしていたり。ニートのようでニートじゃない。それがこのレイブルという層なのです。今回の三都市100人会議では、レイブルについて深くほりさげつつ、仕事についてや働き方について改めて考えてみるという試みを行いました。
東京会場で司会進行を務めたgreenz.jp編集長のYOSHは、こんなオープニングトークで始めました。
僕自身もふくめて、誰にでもレイブルな頃ってあったんじゃないかと思います。これまで当たり前とされている働き方が合わなくて、レイブルを選ぶことも選択肢としてあっていいはずです。僕はレイブルのことを希望のカケラだと感じています。
どんな話がはじまるのか、わくわくした雰囲気が会場に広がりました。
応援ゲストにロバートが登場、「芸人」という働き方を語る!
人気芸人さんを前に、上着のボタンを掛け違えるくらい緊張していた編集長YOSH(左)
オープニングトークに続いて、山本博さん、秋山竜次さん、馬場裕之さん(以下、敬称略)からなるお笑い芸人ロバートが100人会議の応援団として登壇。司会のYOSHと一緒にトークで会場を盛り上げてくれました。
お笑い芸人として、また、トリオのコント師として安定した評価を受けるロバートは今年で活動15年目。タレントとして盤石のポジションを築いているように見えるけれど、本人たちは安心しているわけではないようです。
秋山 僕ら芸人は人を笑わせてナンボという仕事。「ウケなかったらどうしよう…」って不安はいつもあります。たとえば、大きな舞台の前は何日も眠れなかったり、胃が痛くなったりすることも。ウケなかったら一人旅に出たくなりますね。そのくらいのリスクは感じながらやっています。
山本 新ネタをおろすときは本当にこわいんですよね。
秋山 毎年毎年、東京吉本だけでも1,500人もの後輩が入ってきますからね。勢いのいい若手がどんどん伸びてくるなかでやっていくのは本当に大変です。
馬場 そういうなかで、僕みたいに全然しゃべらないでお金をいただくっていうポジションもあるから面白いですよね。
山本 そんなポジションねえよ!
秋山 馬場はこの感じで15年やってますからね。ときにはこういう図太さも必要かもしれないですね。
根っからのお笑い芸人に見える3人ですが、実は芸人になりたくてこの道に進んだという人は誰もいないのだそう。
山本 僕は子どもの頃、フォークリフトの運転をすることに憧れていました。実は就職先としてフォークリフトを扱う会社への入社が決まっていたのですが、友だちに「東京で何かやろうよ」って誘われて入社を取り辞めることにしたんですよね。あと一週間遅ければ入社している予定でした。「会社に入るのを辞める」って言ったら、親には殴られましたね(笑)。
秋山 僕と馬場もお笑い芸人になりたいなんて思っていなくて。いろんなアルバイトをしていましたよ。
馬場 僕は20~30個くらいはバイトをやったと思います。なかには一日で辞めたバイトもあります。ガソリンスタンドのバイトで、車のキャップ締め忘れたことを怒られて、それで辞めました(笑)。
最後に秋山さんが
レイブルって遅咲きという意味らしいですが、いつ花が咲くかなんてわからないと思うんですよね。僕らにしても15年やってきてますけど、業界のなかではまだまだ若手と呼ばれてる立場ですし。あと、40歳になってからお笑い芸人に挑戦している人なんかもいますからね。いまはつかめていないのなら、ゆっくり考えてもいいいんじゃないかなって思います。
と、締め括ってくれました。ちゃんと笑いのエッセンスも振りまきながら、働くというテーマについて芸人さんらしい視点で話をしてくれたロバート。さすがのトーク。退場時には会場を大きな拍手が包みました。
続いてソウ・エクスペリエンスの西村さんが登壇!
続いて登場したのはソウ・エクスペリエンスの西村琢さん。陶芸やヨガなどさまざまな体験をギフトにパッケージして販売している西村さんは、自由大学では『未来の仕事』というテーマで授業も行っています。
これまで、ビジネスコンテストで優勝したり、体験ギフトという新しいサービスを提供したりと、ユニークな観点から仕事の創造を行ってきた西村さん。まずは2歳になるご自身のお子さんがおしゃべりをしている映像を流してから、仕事についての話がはじまりました。
いま見ていただいた映像は2歳になるウチの子です。子ども自慢がしたいわけではありませんよ(笑)。なぜ、この映像を流したのかと言うと、彼の様子を見ていると、毎日少しずつ、いろいろなことができるようになっていっているなってことなんです。
会社のプロジェクトなどで、よくゼロイチなんて言葉が出てきますよね。0(ゼロ)か、1(イチ)か。でも、その0と1の間にも、実は0.1、0.2など、細かい段階があるんです。白と黒の間にもたくさんの色があるのと同じように。なにかが出来るようになる過程には色々な段階があるという意識はどんなポジションにいる人も大切にしていいんじゃないかと思います。
西村さん流、仕事についての考え方あれこれ
また、フランスの哲学者、思想家のクロード・レヴィ=ストロースが著著『野性の思考』で発表した、ブリコラージュという考え方についても紹介してくれました。
「ブリコラージュ」とはフランス語で「寄せ集めて自分でつくる」といった意味になります。一見、無駄に見えるようなことがあったとしても、直感的に必要性を感じたことを集めておくと、あとで違う用途に使えるようなことって実は非常に多いのだそうです。そういう意味では、まだ評価が定まっていないものに注目することはとても大事なことなんじゃないかと思うんですね。
この「レイブル」という概念も、まだそれほど当たり前になっているものではありません。でも、だからこそ伸びしろが大きいと思います。もしかしたら、3年後、5年後、10年後に成長していくかもしれない。そのような物事に早くから着目して触れておくことに、実は大きな価値があるように感じています。
また仕事は考え方ひとつでどんどん広げることができるという発想についてもレクチャー。
先日、とあるカメラマンさんから、仕事のギャラがさがってきびしいという話を聞きました。その一方で、妊婦さんを撮影するスタジオは予約でいっぱいだという話も聞いたんですよね。ふつうに「カメラマンです」とだけ言っているのでは大変なのかもしれませんが、別の視点を加えれば、やっていることは同じでも新しい仕事が生まれるかもしれません。ちょっとしたアイデアです。そんな視点をいくつも持てれば、仕事はいくらでも広がるような気がするのですが、いかがでしょう?
地上に出ていくために、地中に根を張る時期
たまには自分の棚卸をしてみるのもいいかもしれませんね。自分にはどんな仲間がいて、自分自身は何に興味があるのか。そういった興味関心に向かっていけば、レイブルとして、実際に仕事を生みだしたり、新しい価値を創り出すことに繋がっていくような気がします。
と、トークを締めくくった西村さん。その後はいま終えたばかりのトークを振り返りつつ、YOSHとセッショントークを行いました。
YOSH 評価定まっていないところにも目を向ける、自分の棚卸をしてみるなど、大切なポイントがいくつか出てきたと思いますが、レイブルについての印象を改めて聞かせてください。
西村 レイブル期間中もなんとか食いつないでいかないといけないので、何かしらの収入が得られるといいですよね。レイブルである間にいろいろな体験をして、それを積み上げていけばいいのではないでしょうか。
YOSH 確かに何かを蓄えていくことって必要ですよね。花が咲く前には地面にしっかりと根を張って安定してから地上に出ていくものだと思います。レイブルって、そんな時期なんだなって改めて思いました。
と、ここまでであっというまのトークは終了し、後半は参加者が主役の対話の時間に入ります。
理想の働き方を実現するネクストステップは?
まずは参加者全員によるワールドカフェでのワークショップ。
(1)レイブル世代についてどう思う?
(2)あなたにとって理想の働き方ってなんですか?
(3)それを実現するネクストステップはなんですか?
という3つのテーマについて、セッションごとにメンバーを入れ替えながら、参加者それぞれが意見を述べてテーマを掘り下げていきました。
3つのセッションが終わると、ワールドカフェを通じて見つけたキーワードをひとつ、参加者それぞれがピックアップ。今度は同じようなキーワードを持った者同士が集まり、もう一度、「それを実現するネクストステップはなんですか?」という問いのもと、ワークショップを行いました。
キーワードの似た者同士が集まると、さらにその場はヒートアップ。セッションを経て各グループそれぞれが、ネクストアクションを3つのポイントに集約。各グループで発表を行いました。
ここで生まれた小さな芽が、立派な実をつけました
イベントを楽しんで、時間がきたら解散。…なんてイベントはちょっとさびしい。せっかくいろんな人と話をして、意見を交えたのだから、そこで学んだことや気づいたことは持ち帰って、実行してみることに価値があります。
東京100人会議では、そんな想いを込めつつ、一人ひとりが今日学んだこと、気づいたことをリンゴ型の付箋に書いて、大きなリンゴの木に貼り付けていきました。
豪華なゲストによるトークセッションやワークショップ、3都市の中継など、盛りだくさんの内容で行われた三都市100人会議。みんなで話し合ったアクションプランを、ひとりひとりが実行しはじめたら、きっとなにかが変わっていくはず。
100人会議で芽生えた小さな芽は、こうしてリンゴの実へと結実しました。きっとまた来年も、勤労感謝の日にこの会議は継続して行われるはず。そのときに、みなさんがどんなふうに成長しているのかがとっても楽しみです!
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