旅先で待つ家族や友人のようでありたい。パーフェクトなガイドと介護で障がい者の海外旅行をサポートする「GoGoJapan バリアフリートラベル」 [マイプロSHOWCASE]

Some rights reserved by Wisconsin Department of Natural Resources

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旅先には、いくら事前に調べても知ることのできないモノやコトが待ち受けています。未知の土地での出会いは、私たちが旅に出る理由でもあると思います。

でも、もしも、身体に障がいがあったら? 特別な介助が必要だったら?

現地の基本情報にくわえて、病院の場所やバリアフリー情報を調べておくだけでなく、車いすを押してくれる人が必要です。身体の状態に合わせて、特別な食事をホテルに依頼することもあるでしょう。慣れないな言葉で、文化や習慣の違う国で、誰かに助けを求めるのはとても大変なことです。

「バリア」には、大きく分けて2種類あります。ひとつは設備面のバリア、もうひとつは「人の手助けを得られない」という人的バリア。「GoGoJapan バリアフリートラベル」の周 佩欣(チョウ ペイシン)さんが挑戦しているのは、ふたつめのバリアを自らの手で取り除くことです。

「車いすの押し方がわからない!」が人生を変えた

「GoGoJapanバリアフリートラベル」周 佩欣さん

「GoGoJapanバリアフリートラベル」周 佩欣さん

周さんは台北生まれ。日本の教育を受けた祖父母と暮らした経験から日本に興味を持ち、大学では国際関係と日本語を勉強しました。卒業後は1年間働いて資金を貯め、同志社大学大学院総合政策科学研究科へ留学。「日本と台湾の架け橋になりたい」と外交関係の仕事を目指して国際援助(ODA)の研究をはじめます。

そんなある日、台北から「お母さんが骨折して入院した」と連絡が入り、あわてて帰国して看護にあたります。

母の車いすを押してエレベーターに乗ろうとしたら、どうしても前に進めないんです。ペダルを踏んで軽く持ちあげればいいだけなのに、そんなこともわからなくて。身体が不自由だからと簡単な外出もあきらめてしまう人が多いのではないかと気づいたのはそのときでした。

周さんは、大学の同級生であり、バリアフリートラベルをサポートする「旅のお手伝い楽楽」の社長 佐野恵一さんのことを思い出して、すぐに国際電話をかけました。「インターンシップで働かせてほしい」と。

佐野さんのことは、大学で受けた社会起業をテーマにした授業で知って、指導教授に紹介してもらっていたのです。母の骨折は完治しましたが、「一生障がいを持つ人たちの外出や旅行にまつわる不便さを取り除きたい」と真剣に考えて、佐野さんの会社で学ばせてもらおうと思ったんです。

佐野さんは周さんの申し出を快諾。「旅のお手伝い楽楽」で国内の障がい者や介助者の旅行サポートの現場を経験するチャンスを手に入れました。

すぐそばにある“世界の課題”から取り組みたい

京都のお寺へご案内。バリアフリー情報はすべて事前チェック済みです。
京都のお寺へご案内。バリアフリー情報はすべて事前チェック済みです。

台北での学生時代、周さんは「社団法人台北バリアフリー促進協会」で福祉やバリアフリー旅行に関する文章の日中翻訳のボランティアにも参加していました。「世界が抱えている多くの課題を解決するために、私にできることはなんだろうか?」と考え、台湾と日本の交流に貢献したかったためです。

ところが、母の骨折をきっかけにして「もっともっと身近なところから課題解決に取り組むことができるんじゃないか」と発想を転換。自分が今気づいている、すぐそばにある“世界の課題”を解決するところから始めてみようという気持ちが湧いてきたのです。

「旅のお手伝い楽楽」でインターンとして働きながら、障がいを持つ台湾の人たちに日本の旅行を楽しんでもらいたいと考えるようになりました。

日本と台湾の交流に役立ちたいという思い、翻訳ボランティアとして「社団法人バリアフリー促進協会」に関わった経験、そして大学で国際関係を学んだことなどが、母の骨折をきっかけにして「バリアフリー海外旅行を手伝いたい」という気持ちにまとまったのだと思います。

大学院を卒業後は「旅のお手伝い楽楽」に就職。バリアフリー旅行のサポート経験を積みながら日本でガイドヘルパーの資格を、台湾でツアーガイドの資格を取得して、台湾から障がいを持つ人たちの旅行受け入れに着手していきました。

「立ちあがろう!」兄の言葉に背中を押されて

周さんには、台北で旅行ガイドをしている兄がいます。日本語、英語、中国語を話す兄と連携すれば、日本の障がい者に台湾への旅行をサポートすることもできます。兄と相談して、協力体制を作り「GoGoJapanバリアフリートラベル」を立ち上げることになりました。

ETICのソーシャルベンチャー・スタートアップマーケットのことを知って兄に相談したら「立ちあがろう!」と言われて。兄はとても前向きな人なので、その言葉に背中を押されて応募したらスタートアップメンバーに選んでいただけたので、まずは個人活動としてスタートしいずれは起業を目指すことにしました。

ETICからの助成金は、モニター旅行企画に活用。料金を低く抑える代わりに、旅行の様子を写真や記録に残してブログやFacebookページで紹介させてもらい、口コミの誘発を狙います。

ガイドヘルパー付きの旅行料金は個人旅行よりも高くなります。また、台湾の物価は日本の約2分の1ですから、「高すぎる」というイメージを持たれてしまうんです。「どんなケアを受けられるのか」を経験してもらわないとなかなか伝わらないと思ったんです。

GoGoJapanバリアフリートラベルのFacebookページ

GoGoJapanバリアフリートラベルのFacebookページ

「GoGoJapanバリアフリートラベル」のFacebookページは、旅行中の写真に対して旅行者の知人から「日本に行ってきたの?」などのコメントが寄せられるなど和気あいあいとした雰囲気。日本への旅行に関心を持ってもらうことに成功しつつあるようです。

台湾では、海外旅行先の人気ナンバーワンは日本なんです。そして、日本はアジア各国のなかでは福祉先進国。障がいを持つ人たちからの関心も高いです。

「GoGoJapanバリアフリートラベル」のサービス内容がきちんと伝われば、もっと多くの障がいを持つ人が日本を訪れたくなるはずだと周さんは考えています。

旅先で待っている家族や友人のようなサービスを

行ったことのない国であっても、もし家族や友人たちが待っていてくれるならそこは「安心できる場所」になりますよね? 周さんは、海を越えてくる障がいを持つ旅人とその介助者の抱えている不安を、できるだけ取り除くために旅行前からきめ細やかなやりとりを重ねます。

お申込みをいただいたらアンケートを書いてもらって、その内容に沿ってこちらで準備するべきこと、旅行に対するリクエストを確認していきます。行きたい場所に関するバリアフリー情報はもちろん、食事についても「やわらかめのごはんがいい」と言われたら、用意していただけるかをお店に確認。一日のうちに何度か横になって休む必要がある人なら、そのような場所を確保します。

一日のルートを作成したら、エレベーターやスロープの位置、駅の出入り口や行き先までの道、観光する場所やお店の施設まで調べ上げます。また、新幹線やホテルから特別な医療機器のレンタルまであらゆる手配をぬかりなく行う必要があります。

日本と台湾では、医療のルールが違うので医療機器の手配のために何度も電話をしなければいけないこともあります。また、「今日は暑いからヨドバシカメラに行きたい」と急に予定変更を希望されることがあっても慌てず対応する心構えも必要です。

お客さまをヨドバシカメラにご案内。

お客さまをヨドバシカメラにご案内。

長期の旅行の場合は、朝7時から夜9時までぴったり付き添って車いすを押して歩き、夜になると腫れあがった足に湿布を貼って翌日の行程をチェックすることもあるそう。それでも、お客さまには決して疲れた顔は見せません。

お客さまには「あなたはどうしてそんなに元気なの?」と聞かれることもあります。でも、いろんな不安を抱えて日本まで来ている人たちに心配をかけられませんから。

本当の意味で誰もが自由に旅する世界をつくりたい

障がいを持つ息子とともに東京ディズニーランドに行ったお母さんは、「ここに来れるなんて思ってもいなかった」と感動のあまり泣きだしてしまったそうです。そして、帰り際に周さんに「台湾に帰ってきたらいつでも私の家に遊びにきてね」と何度も言葉をかけてくれました。

東京ディズニーランドにて台湾のお客さんと一緒に撮影

東京ディズニーランドにて台湾のお客さんと一緒に撮影

やはり、お客さんの感謝の言葉や笑顔を見るたびに、もっともっとしてあげたいという気持ちになります。周りの人には「サービスの対価も考えないとだめだよ」とアドバイスされるのですが、お金の範囲だけでサービスをするという気持ちにはなれなくて。まだはじめたばかりですから、収益性については今後の課題だなと思っています。

今は、障がいを持つ人たちが自由に世界を旅できるようにすることが何よりも大切――「暮らしていくお金はなんとかなっていますから」と笑う周さんを見ていると、本当に「なんとかなる」気がするから不思議です。次の周さんの夢は、世界中の国々にバリアフリートラベルを提供する仲間を見つけてネットワークを作ること。

本当の意味で、誰もが自由に、気軽に行きたい国へ旅することができるような世界になってほしいんです。

「お母さんの骨折」という家族の課題解決から国境を越える世界の課題解決へ、周さんのチャレンジは今はじまったばかりです。

GoGoJapanバリアフリートラベルについて調べてみよう。

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