皆さんが最近気になっていることは何でしょうか?原発を始めとしたエネルギーのことが気になっていることが多いと思いますが、エネルギーも含めた地産地消/ローカリゼーションが気になっているという方も多いのではないでしょうか?
しかし、都会にいるとローカリゼーションというのはなかなか難しいもの。そこで、現在公開されているニューヨークでローカリゼーションに挑戦した一人の男を追った映画『地球にやさしい生活』をご紹介しましょう。
世の中で疑問に思われていることに対して何らかのヒントを提示しようというドキュメンタリー映画が最近多く見られます。例えば原発については『10万年後の安全』だったり、ローカリゼーションについては『しあわせの経済学』だったり。
『しあわせの経済学』はローカリゼーションの大切さを説き、都会でもそれが不可能ではないことを提示してくれました。でも、実際に出てくる例は地方のものばかりで今ひとつピンとこなかったのも事実です。果たして実際に都会、例えば東京でローカリゼーションは可能なのか?フードマイルを減らすといっても都民の食生活を支えられるだけの農地は東京にはありません。東京のビルにソーラーパネルを設置しても都内の電力をまかなえるとは思えません。
そんな疑問を解くヒントを与えてくれるのが『地球にやさしい生活』です。典型的なニューヨーカーだった作家のコリン・ビーヴァンは自分の生活に疑問をいだき、環境にやさしい生活を実践してみようと思い立ちます。ゴミを出さないようにし、車に乗らず、テレビは見ず、最終的には電気をやめ、1年間新しいものは何も買わず、食べ物は近郊でとれたものだけにするという生活が出来るか実験してみようというのです。
彼のそんな生活の記録を綴った「no impact man」というブログについては、以前greenzでもちらりと取り上げましたが、この映画はその1年間の実験を追ったドキュメンタリーなのです。
ノーインパクト「マン」と言いながら、この実験を実行するには生活をすべて変えるほかなく、それはつまり家族を巻き込むことも意味します。彼には経済誌の編集部に勤める奥さんと幼い娘がいました。大変だったのは実はコリン自身よりも、カフェイン中毒で買い物中毒の奥さんのミシェルの方だったのです。
実験の結果が何より気になるところですが、それは映画に譲るとして、この映画のいいところは、そのミシェルの葛藤やコリンとの衝突を包み隠さず映像化してるところです。都会で持続可能な生活を送るために何より必要なのは、手を伸ばせば手に入る便利なものではなく、手間と時間とお金がかかる不便なものをあえて使う、その選択をすることかもしれません。もう一つの問題は、彼らはパソコンでブログを更新したり、雑誌を発行するのに大量の紙を使ったり、持続可能性とは矛盾することもやっていることです。そのような都会ならではの問題を抱えながらも、彼らはその生活に心地よさや満足を発見していくのです。
ニューヨークで持続可能な生活をどの程度送ることが可能なのか、それを追求するためにできるところまでやってみるというコリンの実験、大変ではあるけれど楽しそうでもあります。彼は「やってみたらこんなに大変だけどできないことはないんだ」ということを私たちに伝えてくれます。
この映画を見るときは、必ず「自分だったらできるかなぁ」と考えてしまうと思います。まあできないですが、彼らがやったことを一つ一つい分解して、「移動は自転車ならできる」とか「野菜はファーマーズマーケットで買うならできる」とかいうふうにできることから始めれば、都会でも持続可能な生活に近づくことができる、そのように感じました。
このような実験を東京でやってくれる人がいれば、楽しいですけど、それもなかなか難しいと思うので、今のこの生活に疑問を持っているなら、コリンのようにとりあえず何かを始めてみるのもいいのではないでしょうか?
2009年/アメリカ/92分
監督・プロデューサー:ローラ・ギャバート
監督・撮影:ジャスティン・シャイン
出演:コリン・ビーヴァン、ミシェル・コンリン
10月8日、新宿武蔵野館・ヒューマントラストシネマ有楽町他、全国順次公開!