「育てる」ことで環境負荷が小さくなる?!ユニークなバイオレンガが登場

レンガ1

未来の環境に貢献するデザインを募集したMetropolis 2010 Next Generation Design Competitionで最優秀賞に輝いたアイデアは大変ユニークなものでした。それは、砂漠にあるような普通の「砂」に、「バクテリア」、海水にも存在する「塩化カルシウム」、そして、人間の尿に含まれる「尿素」という手に入れやすい材料を配合して、常温で‘レンガを育てる’というもの。でも、「育てる」ってどういうことなのでしょう。

レンガが使われた歴史的建造物といえば、万里の長城ですね。 Photo by topgold

レンガが使われた歴史的建造物といえば、万里の長城ですね。 Photo by topgold

日本でレンガが建築材料として本格的に作られ始めたのは19世紀半ばからですが、世界における歴史はメソポタミア文明にまでさかのぼります。紀元前4000年(紀元前7000年~8000年という説もあります)には日干しレンガが、紀元前3000年には焼きレンガが、すでに建築物などに使用されていました。また、古代エジプト・インダス・黄河の各文明においても独自のレンガが発明され、身近にある土を使って作ることが出来るレンガは古くから広い地域で使われてきた建築材料の一つと言えます。そういえば、バベルの塔の物語(『創世記』)でも「レンガを作り、それをよく焼こう」なんて記述がありましたね。

数千年以上も作られてきたレンガですが、古くにはある大きな問題が・・・。というのは、焼きレンガは製造過程で大量の薪を必要とし、それが悲劇を引き起こすこともあったようです。例えば、インダス文明衰退には環境の変化が関係するという説がありますが、その一因として、要塞や城壁に使われるレンガを作るための薪用に過剰な森林伐採が行われていたのではないか、その結果、土壌流出や塩害を加速させたのではないか、などの原因が推測されています。「たかが、レンガのための薪が?」とも思えますが、1000年以上も繰り返すと「たかが」でなくなるのでしょう。仮説ではありますが考えさせられる話だと思います。

インダス文明の都市遺跡 モヘンジョ=ダロ  Creative Commons. Some rights reserved.

インダス文明の都市遺跡 モヘンジョ=ダロ Creative Commons. Some rights reserved.

さて、今回、Metropolis 2010 Next Generation Design Competitionにて最優秀賞に輝いたアイデア‘The Better Brick’は、「砂」に「バクテリア」「塩化カルシウム」「尿素」を配合し、化学反応を起してレンガを作るという‘バイオレンガ’とも言える面白いアイデアです。材料を混ぜるとバクテリアが接着剤の役割を果たすようになり、時間が経つにつれ強いレンガへと育っていきます。現状では1週間程度でレンガができあがり、最終的には粘土でできた焼きレンガや大理石と同じくらいの強度に達するという計算のようです。

作り方は材料を合わせるだけ?!

作り方は材料を合わせるだけ?!

メリットは、燃焼させずにできるため製造過程における環境への負荷が抑えられること(このコンテストを主催するMetropolisの記事によると、世界では1兆3000億個以上のレンガが作られており、その製造過程での環境への負荷は、世界中の航空機のそれよりも多いと計算されるそうです)、そして、手に入れやすくシンプルな材料でできるので、どこででも作れることだと思います。インドや中国などには、莫大なエネルギーを消費する古い方法でレンガを作る地域が残っています。そういった地域での活用も期待されるのではないでしょうか。

この製造方法なら、モルタルなどの接着剤を使わずに複数のレンガをつなぐこともできるそうです。

この製造方法なら、モルタルなどの接着剤を使わずに複数のレンガをつなぐこともできるそうです。

このバイオレンガのアイデア以外にも、インドネシアの学生が開発した牛の糞から作られたエコレンガ・Eco Fae Brickやベトナムの「無焼成レンガ発展計画」(2020年までに無焼成れんがを使うことで、排気の減少や燃料の節約を目指した計画)など、さまざまなアプローチでレンガ作りが見直されています。人間の暮らしと共にある素材こそ、時代の要求に応える深化が必要なのかもしれません。

Metropolis 2010 Next Generation Design Competition