【カリフォルニア出張報告No.4】GOODで働く人たちの本音を直撃!メディア誕生秘話から苦労話しまで聞いてきました。

good office inside

カリフォルニア出張報告最終回。No.3のGOOD Magazine オフィスレポートに続いて、今回は、GOODで働くグッドピープルに注目!greenz チームから預かってきた質問を引っ提げてかなり突っ込んだ質問をしてきました。彼らへのインタビューを通して、GOODの過去、いま、未来を見つめてみましょう。

GOODの過去。そもそも、GOODはどうやって始まったの?

アメリカでは、2004年頃からブッシュ政権や長期化するイラク戦争への不満、不安から、次第に「社会にGOODなことをしよう!」、という気運が高まっていた。しかし、それまで” Doing GOOD” (=良い事をする)のは一般的に利他主義(Altruism) だと言われてきた。自己利益は脇に置いて、義務的に良い事をやるというのが、今まで”GOOD”と呼ばれていることだった。良いことをするということは、No Fun, No Sex, No Money, No Results (楽しんではいけない、セクシーなことをうたってはいけない、お金儲けをしてはいけない、そして、たいした結果も得られない)というのが暗黙の了解になっていたほどだ。

でもそれは違うのではないか。自分たちがやりたいからやる、それが結果的に社会の利益(ソーシャルグッド)につながる。良いことをすることが楽しくて、ドキドキ感があって、儲かるような、いわば “GOOD” であることのリブランディングが必要なのではないか。そう考えたGOODの共同設立者たちは、長年温めてきたアイディアをついに実行に移し、エンターテイメント性があって、人々にとって重要で必要な情報を提供できる新しいメディアをつくることになる。2006年9月、GOOD Magazine の創刊だ。

GOOD magazine issue 01
創刊号

GOOD というコンセプトはとても複雑だ。でも、人によっていろいろな解釈がある言葉だからこそ、みんながアイデアを出し合う。そうやってGOODがオープンであることで、様々な分野の人がGOODにかかわり、コラボレーションが生まれる。そのオープンさを象徴しているのが創刊号の表紙だ。よくあるセレブの写真ではなく、読者がそれぞれ気になるトピック=パーソナルなマニフェストを書ける空欄のスペース “Like you Give A Damn” が用意された。それは、「あなたの気になるものが何であれ、それが大事だと思うのなら、全身全霊かけてそれを一緒にやりましょう」というGOODからの呼びかけだった。そして、このメッセージが原点となり、雑誌をつくるというよりは、いろいろな人たちが集まってきてアイディアを出しあいながら、それぞれのパッションとスキル、知識が交差するプラットフォームへと成長していく。

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コラボレーションのいい例として、またGOODの知名度を上げた一つの事例に、インフォグラフィックスの表現がある。GOODでは、コミュニケーションの達人であるデザイナーたちとあらゆるデータを視覚化することで、データけでは見えなかった事実を浮き彫りにし、複雑な社会問題を、よりリアルに、シリアス且つ楽しく、クリエイティブに伝えている。

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2006年から2007年にかけての二酸化炭素増加率を国別に比較したインフォグラフィックス。図をクリックするとGOODのページに飛び、図が拡大表示できます。

ちなみに、気になるスタートアップの投資(資本金)だが、現CEOの Ben Goldhirshが相続した莫大な遺産(その金額は30億ドルとも!)が元手となっているそうだ。Benは、高校生のときに母親を、大学生のときに偉大なビジネスマンだった父親を亡くし、GOODを立ち上げるに至った心境を、コチラのインタビュー記事(全文英語)に語っているので、詳しく知りたい方はあわせてどうぞ。

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Good Inc. CEO Ben Goldhirsh. いつも元気で子どものように無邪気

GOODのいま。GOODってどんな組織?

Ben と一緒にGOODを立ち上げたのが、現コミュニティディレクター Max Schorr と現クリエイティブディレクターCasey Caplowe だ。マックスとベンは高校時代の親友、ケイシーとベンは大学時代のルームメイト!全員が1979年生まれの30歳。在学中から自分たちが将来やりたいこと、すなわちGOODの構想、アイディアについて3人でアツく語り合ってあっていたそうだ。今回オフィスとLAの街を案内をしてくれたのは、今年2月に開催されたSocial Design フォーラムのため来日していて意気投合したマックス(今回は、マックスのリビングルームにちゃっかり居候!)とケイシー。

前回の記事で紹介した通り、GOODのオフィスがあるのは、ウェストハリウッド地区。現在30名弱のスタッフが働いている。しかしここに引っ越してきたのは今年に入ってから。昨年までは、同地区のメルローズ通り(メインストリート)に面した1階にGOOD Spaceとよばれるイベントスペース、2階にオフィスを構え、50名弱在籍したスタッフも増強していくはずだった。それが、昨年秋に始まった金融危機、経済不況により、よりシビアに自分たちのビジネス、戦略、組織、ビジョンをも見つめ直す必要がでてきたのだ。その結果、いくつか大きな決断を下すことになる。それが従業員の解雇(当時の社長も解雇)であり、コスト削減(オフィス移転や開催イベントの削減)であり、ビジネス構造のリストラクチャリング(再編成)であり、必要なところにしかるべきリソースと資金を投入することであった。

成長過程のビジネスが陥いりやすい試練に直面し、経営者としての悩みも抱えていたケイシーは、当時を振りながら、こう語ってくれた。

The biggest achievement is… I think the fact that we are still here, compared to where we were last year. (いままでの最大の功績は何かって?いま、まだここに存在してビジネスをしていられることじゃないかな。去年の今頃は本当に大変で辛い時期だったから ).

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GOOD Inc. Creative Director, Casey Caplowe . 一緒にサーフィンもしました!

昔もいまも、GOODが大切にしているバリューは、Transparency(透明性)、Creativity(創造性)、Authenticity(信頼・誠意)、Utility(効用)、そしてLove(愛)の5つだ。彼らには、設立当初から仕事=好きなこという理念がベースにあり、 “WORK + LOVE = GREAT THING” であり、本当にそれをやりたいという気持ちが仕事をつくり、そこに情熱をかければ、必ずいいモノを生み出せると信じている。GOODでは、本当にいいモノとは、Pragmatic(実用的)であり、同時にIdealistic(理想的)であり、Profit(利益)とSocial Value(社会的な価値)が両立することを意味している。 

その両立の実例が、、マックスの手がけた「Choose GOOD 」キャンペーンだ。これは、スタートアップのメディアが購読者獲得のために通常行うDM(ダイレクトメール)をやめ、理念に共感するNPOと提携し、GOODの購読申込によってNPOへの寄付になるという画期的な仕組みだ。DMだと一件あたり平均45ドルの費用がかかるのに対し、こちらでは一件20ドルで済むうえに、GOODの理念に沿う素晴らしい活動をしている団体を支援できる。寄付金額も、2009年までに100万ドル以上を超えるなど大きな成果を生み出した。

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GOOD Inc. Community Director, Max Schorr .初代編集長は彼!

GOODの未来。これからGOODはどうなっていくの?

昨年より行ってきた事業の選択と集中、適切な人事配置、予算管理により、組織に透明性がうまれ、全社員が会社の状況を把握し、会社の将来に対して危機感をもつようになったという。しかし、その戦略転換、新しい考え方に違和感を感じて辞めていったクリエイターもいたという。昔のGOODは、どちらかといえば、良いモノさえつくってれば結果はあとからついてくる、好きなモノを好きなだけつくる、というクリエイティブ集団としての個性が強かったという。が、現実は違った。予算ばかりが膨らみ、期待していたほどの結果や売上には近づいていなかったのだ。

GOODに必要なのは、クリエイティビティとビジネスのバランス。

とは、昨年5月に入社したセバスチャン・バック(Head of corporate and product strategy, Sebastian Buck)の言葉だ。彼の任務は、編集部やITチームと連携して「売れる商品・サービス」の戦略を考え、適切な予算配分を行うことで、いま注力しているのはコミュニティの活性化だ。雑誌やウェブのコンテンツにテクノロジーを駆使して、ユーザーをどう巻き込んで実際のアクションにつなげ、収益性を担保していくか。(詳細は教えてもらえなかったが)近い将来、個人や団体がそれぞれのプロジェクトを登録、共有し、参加者が支援できる(金銭的なものではなく)仕組みをローンチする予定だそう!

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Good Inc. Head of corporate and product strategy, Sebastian Buck

ビジネスカルチャーに斬新なクリエイティブという付加価値が加わり、GOODは、すでに単なるコンテンツプロバイダーからリアルなアクションに結びつけるインフルエンサーになってきている。そしてその成長をさらに加速させるために、ベンをリーダーに7人の営業チームがスターバックスIBMなどとのパートナシップに見られるような企業とのコラボレーションを今後どんどん強化していく計画だ。企業とのパートナーシップというと、どうしても商業っぽくなったり、グリーンウォッシングの手助け、とも見られるかもしれない。でもGOODが目指すのは、あくまで「自分にとっても社会にとってもグッドで気持ちが良いこと」だ。クライアント営業や戦略立案を手掛けるべス・ストーンは、

GOODというオープンなプラットフォームをベースに人と人をつなげ、よりよい世界、生きていることが気持ちいいと思える世界をカタチにしたい

と語ってくれた。

beth
Good Inc. Director of partnership stategy, Beth Stone

以上2回にわたってお届けしたGOOD Magazineへの取材を通して感じたのは、greenzとGOOD、規模は違えど、同じ時期に設立され、同じような悩みをもち、同じようなことにワクワクし、自分たちのメッセージ(メディア)とビジネスを通して社会を変えようとしていることだった。そのことを肌で感じて、さらにgreenzに対する期待と愛情も感じられ、憧れていたGOODがなんだか急に身近な存在になった気がした。まだまだgreenz もやればできる!そんな決意を胸に、greenz × GOOD のコラボレーションを近い将来実現させるために、頑張らなくては。引き続きgreenz をどうぞよろしくお願いいたします!