私たちの身の回りには、様々な木が溢れている。しかし、身近な木材製品がどこから来ているか、果たしてどれだけ知っているだろうか?
違法伐採、森林減少・劣化の問題から、木材製品の消費とのつながりなどを、皆に知ってもらおうというのが、フェアウッド・キャンペーンだ。そして、そのキャンペーンの一環としてドキュメンタリー映像「木の来た道 – ways of experiencing wood」が製作され完成した。3/27(金)のイベントで初上映される。
私たちの身の回りには、様々な木が溢れている。建築材、家具や紙類、その他木から出来たものは数えきれないほどある。日常の本当に多くの場面で、木から派生した製品や燃料を、使い続けているのが現状だ。それにも関わらず、一体これらの木材製品がどこからくるか、私たちは果たしてどれほど知っているだろうか?
製品の原料となる木材は、欧州やロシアの北方林、東南アジア・南米の熱帯林など、世界各地からやってくる。国内産木材もあるが、それは2割程度でしかない。中には、違法に伐採され、生態系など環境への負荷を考えずに消費されていく木々も沢山ある。日本は高度経済成長とともに、安い木材輸入相手を、東南アジアを手始めに、北米、極東ロシアと広げてきた。東南アジアからの日本の木材輸入は、1980年代にピークを迎える。一時は日本が、熱帯林の破壊の元凶だと批判されていたほど、南方材の輸入は激増した。
1987年、イギリスの国際的な環境NGOである「地球の友」が、熱帯木材のボイコットを呼びかけたのを皮切りに、80年代の後半から90年代の前半にかけて、ヨーロッパにおいて、地方自治体や欧州議会などを巻き込み、不買運動が急速に広がった。1992年には、オーストリアが熱帯木材製品に対する、ラベル表示義務づけの法的措置をとるという事態にまで発展した。
しかし、同年、リオデジャネイロで開催された、地球サミットを前に繰り広げられた、これらのボイコット運動は、強烈な批判を浴びることになる。というのも、この熱帯木材だけをターゲットにした不買運動は、実際には、熱帯木材の市場価値を引き下げ、現地の従業者たちに、森林を農地やそのほかの用途に転換する動機を与えることになってしまったからだ。その結果、熱帯林の伐採は、止まるどころか加速してしまうこととなった。そのため、地球サミットで決議された森林原則声明の中で、一方的な林産物のボイコットを「除去ないし回避すべきもの」と明記することとなった。
インドネシア森林の乱伐後
沿海地方の大量伐採
また、極東ロシアの沿海地方の森林開発は、早くは1930年代から始まっていたが、それが本格化したのは、50年代から60年代に、日本向けの広葉樹材の輸出が増えるようになってからだ。当時、日本では国内の森林資源が不足する一方、経済成長期に入り需要が大幅に拡大し、輸入関税の引き下げや木材貿易自由化なども手伝って、外材輸入が急増していた。広葉樹材の供給地であった北海道と同様な樹木が生育し、距離的にも近いロシア沿海地方は、日本にとってタモやナラなど広葉樹原木の最大の供給先となったのだ。
それ以降、日本向けを中心としたロシアの森林開発は続いたが、90年代終盤に入ると、輸出志向の森林開発はさらに加速した。それまでは、日本向けが大半だったのが、99年以降、中国向けの輸出が増大し、2004年には半分以上が中国向けとなった。
中国の木材輸入が大幅に伸びた理由は、急速な経済成長と、それにともなう国内資源の枯渇、それに対応した天然林保護政策の展開などが挙げられる。さらには、木材製品の加工貿易の増大など、需要と供給のギャップの拡大も原因の一つとして挙げられる。
中国北部ハルビンの木材集積場
国際貿易都市に急成長した大連
このような、木材の国際商品化が進む中で、消費者である私たちの行動は、増々重要になってきている。80年代のボイコット運動から教訓を得てスタートした、最初の森林認証制度が1993年に始まり、その動向も注目される。
6千年あまりの文明の歴史の中で、木材は、常に人間のエネルギー源として利用されてきた。また、森林は、人間が生きることにもっとも必要な酸素や水、そして食料に繋がる土への栄養素までも育んでくれる、「いのちの源」と言っても過言ではない。
しかし、残念なことに、人類は歴史上現在にいたるまで、森林の保護に成功していない。それはなぜか?このドキュメンタリーを見ながら、一緒に考えてみてはどうだろうか?
トーク&スライドショー「木材のきた道〜紙・木材製品のふるさとを知ろう〜」
日時:3月27日(金)19:00-20:30
スピーカー:三上雄己、木村輝一郎(映像ディレクター)
ファシリテーター:中澤健一(国際環境NGO FoE Japan)
定員:先着40名
参加費:500円
申込方法:電話もしくはメールで当館まで。定員になり次第、受付終了。参加者募集中。
TEL:03-3283-3536
E-mail: saezurikan@yahoo.co.jp