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ゼロカーボン・シティの時代がやってきた!World Future Energy Summit 2008

(c)Foster+Partners | greenz / グリーンズ

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1/21〜23まで世界第8位*の原油生産国アラブ首長国連邦のアブダビで開催された第1回「World Future Energy Summit」。石油資源で繁栄を続ける中東の産油国がホストになり、再生可能エネルギーの開発と普及を主題にした初の世界サミットだ。開催初日のオープニングセレモニーでアブダビ皇太子は、太陽光、太陽熱、風力、そして水素エネルギーなどの再生可能エネルギーとクリーンテクノロジー事業に初期投資として150億ドルを投じると発表した。

今まで石油や天然ガスなどの炭化水素系エネルギーで富を築いて来た同国が脱石油社会へ向けて、リーダーシップをとろうと先陣を切った形になる。この150億ドルは、未来のエネギー開発促進を目的として設立された政府系機関マスダール(MASDAR=源の意味)を通して各プロジェクトに配分される。2006年に発足した、先進技術の開発と次世代のエネルギー社会構築を目的とした「マスダール計画」を、今回更に具体的に公表したともいえる。東工大のビーム・ダウン方式による集光太陽熱発電技術の共同テストなどを含め、あくまでもエネルギーの「源」のシフトがテーマとなる。

中心的プロジェクトの一つとなるのが、CO2排出ゼロの「ゼロカーボン・シティ」の建設だ。イスラムの伝統的都市のように外郭に囲われた6平方キロメートルの敷地内に5万人が居住、長期間の比較テストから選ばれた最良のソーラーシステムを中心に、再生可能エネルギーで全電力を賄い、廃棄物や水もすべてリサイクルされる循環型の都市となる。敷地内への車の乗り入れは禁止で、徒歩、自転車以外の移動手段は路面電車とオートポッド(automated transport pods:行き先を告げれば自動運転してくれる水平移動するエレベーターのようなもの)。住居以外にもビジネス地区とイノベーションセンターがあり、MIT(マサチューセッツ工科大学)とアブダビ政府共同設立の新エネルギーの研究を中心とした大学も構える。この都市の建設は来月からスタートし、2016年の完工予定となる。


Masdar Initiative – Worlds First 100% Carbon Free Community

もう一つの中心プロジェクトは世界初の水素発電プラントの建設だが、その規模は出力500MW級と大規模なものだ。天然ガスの水蒸気改質で水素を取り出し、同時に発生するCO2を地中に注入して原油採掘の効率をアップさせる手法で、グリーンというよりはグレーな水素精製方法だが、この地域の現状の環境から考えて、CO2排出を最大限抑制し、天然ガスそのものを戦略資源と捉えていないあたりは、水素エネルギー社会へのシフトを視野に入れた政治的判断であることが伺える。再生可能エネルギーの自給、エネルギーの地産地消という未来へ向けて、これらの取り組みから更なるイノベーションテクノロジーが生まれることを期待したい。この会議のオープニングセレモニーもう一つのトピックは、建築家でソーシャルデザイナーのウィリアム・マクドナー(WilliamMcDonough)や自然エネルギー大国のアイスランド大統領オラフル・グリムソン(Olafur Ragnar Grimsson)も出席していたこの会議に、英チャールズ皇太子が3Dのホログラムで登場し、特別スピーチを行ったことだろう。そもそもチャールズ氏は当初この招待にはあまり気が進まなかったらしい。というのも、彼が側近たちとプライベートジェットで移動しただけで、約20トンものCO2を排出してしまい、環境団体から再び非難を浴びてしまうことを危惧していたからだ。そんな彼にサミット主催者側が、ホログラフィー映像での参加を提案。2007年のLiveEarthコンサートでアルゴア氏が東京に現れたのと同じ手法で登場し、3Dホログラムの仮想現実姿で、アブダビ政府の変化への意欲にエールをおくり、温暖化対策に対するアクションが急務であることを訴えた。ちなみに、原油高と金融不安に揺れる世界第2位*の石油生産国アメリカのサミュエル・ボドマンエネルギー省長官は、アブダビ政府に対し原油の増産をお願いすることを忘れなかったようだ。

参考:
AbuDhabi announces US$15 billioninvestments in alterative energy projects
Masdar Announces major progress on future energy strategy
*世界の原油生産国に関するデータは石油連盟 石油産業データ集(2006) より