自然の中でのびのびと子供の自主性や創造力を育む学校。環境負荷の少ない材質で建てられた校舎は、再生可能なエネルギーで自給自足。インドネシア・バリ島に、こんなすてきな学校が存在する。その名はずばり、「グリーンスクール」(Green School)。2008年9月に開校し、サステナビリティ教育の場としての一歩を踏み出したこの学校について、詳しく見てみよう。
「グリーンスクール」でのサステナビリティ教育
「グリーンスクール」には、プレ幼稚園、幼稚園、小学校、中学校のクラスがあり、世界中から集まった100名以上の子供たちが学んでいる。この学校のミッションは「21世紀を担う子供たちに”地球人”としての責任を全うする力をつけさせること」。数学、科学、社会学、外国語、文化研究などの学業に勤しむのはもちろんのこと、キャンパス内での農作業や家畜の飼育、チョコレート作りなどのユニーク課外活動や周辺住民との交流を通じて、子供たちに、自主的かつ積極的に考える力、学ぶ力に身につけさせようとしている。
新しい学びのカタチを作りたいとの思いから、「グリーンスクール」を創設しました。子供たちにはぜひ、この世の中に適応できる感受性を磨き、感性を養い、直観力を育てていって欲しいと思っています。これこそ、私たちが代々受け継いできたものですから。
「グリーンスクール」の創立者・ハーディ夫妻(John & Cynthia Hardy)はこう語る。
30年以上バリで在住してきた彼らは、新しいカタチの学校を創るにあたりバリこそ、自分たちの理想の地にふさわしいと感じ、「グリーンスクール」を創立した。アメリカ・コネチカット州の名門進学予備校・Miss Porter’s Schoolで長年教鞭をとってきたBrad Choyt氏を初代校長に迎えるとともに、25年以上教育研究に携わってきた教育コンサルタント・Alan Wagstaff氏やベルリン・Free UniversityのJürgen Zimmer教授もこの学校の企画・運営に参加。「グリーンスクール」では、サステナビリティを子供たちにどう教えるかだけではなく、環境問題を学習や日常生活にいかに深く取り入れるかという点を重視した教育を目指している。
自然と地域に調和する「グリーンスクール」のキャンパス
教育の場であるキャンパスは、もちろんエコ仕様だ。
自然に富み壮観な景色で名高いアユン川(Ayung River)沿いに、8ヘクタール(東京ドームの約1.7倍 !)のキャンパスが広がる。キャンパスはアユン川で西と東に分かれており、西側は教室、図書館、トイレ、食堂、東側にはカルチャーセンター、寄宿舎、ゲストハウスが設置され、「クルクル橋」(Kul-Kul Bridge)というかわいらしい響きをもつ竹製の橋で行き来する。ちなみに、「クルクル橋」は、生徒や教職員のみならず、地元の人も通勤・通学に日常的に利用しており、地元の人々と「グリーンスクール」との文字通り、”橋渡し”の役割を担っている。
教室は、竹やバリの伝統的な泥壁など環境に配慮した資材で建てられ、運動施設にも可能な限り環境負荷の低いものを使用。キャンパス内の建物は水力、バイオディーゼルなど、再生可能なエネルギーで自給自足をしている。また、広大なキャンパスには池、野菜畑、庭園があり、米、野菜、果物からサトウキビ、チョコレートまで栽培され、魚や家畜が飼育されているという、これが学校?と疑いたくなる環境だ。
このような「グリーンスクール」のユニークな取り組みは、もちろん世界中から注目されており、米国テレビ局・CNNの特集でも「グリーンスクール」の様子が紹介されている。その様子は下記の動画からどうぞ。
地域と共生する「グリーンスクール」
「グリーンスクール」は、地元の村との交流もプライオリティの高い項目としてみている。実はこの学校の年間授業料は約7000ドル~9000ドル(およそ63万円~81万円)と、けして安くはないのだが、地元の子供たちもこの学校で学ぶことができるようにと、奨学金制度を設けている。
開校してまだ半年も満たない「グリーンスクール」にとって、サステナビリティを追求した学校づくりはまだ始まったばかり。サステナビリティ教育の地球的モデルとして「グリーンスクール」の今後を楽しみにしている。