地方創生から、ローカルインキュベーションへ。
日本の人口は、2008年の1億2,808万人をピークに既に減少段階に入ったとされ、高齢化や少子化が進むなかで地域の活性化は一層難しくなっています。国が主導してきた「地方創生」は、こうした状況を踏まえ、人口減少と地域の衰退の問題に一体的に取り組もうとするものとして全国で施行されました。
「地方創生元年」と呼ばれる2015年から約10年。コロナ禍を経て、地域移住やリモートワークなど、暮らし方や働き方の新たな選択肢が生まれている今、全国の自治体でもそれぞれの持続可能性を追求するために、新たな局面を迎えています。
持続可能な地域をつくるために必要なことの一つ、それは自然や産業、そこに暮らす市民など地域が持つさまざまな資源に目を向け、活性化させていくことでしなやかな地域経済をつくること。そうした文脈の中で、近年注目されているのが「ローカルインキュベーション」です。
ローカルインキュベーションで「つづいていくまち」を模索する
「インキュベーション」には、もともと英語で「卵が孵化する」という意味があり、そこから事業の創出や起業家を育成・サポートすることを「(ビジネス)インキュベーション」というようになったといわれます。しかし、近年、ローカルインキュベーションは、ローカルでビジネスを生み出す人を支援するだけでなく、地域に根ざした企業や自治体が、地域外の企業とつながって新たな事業創出に取り組んだり、大学や研究機関の技術やデータを活用して新たなイノベーションを地域から生み出すなど、さまざまなシーンで用いられるようになりました。
なかでも、長野県伊那市の「inadani sees(いなだにしーず)」は、「農と森」をテーマに持続可能な地域を想像するための「企て」を生み出し、それを見えるカタチに変えていく産学官連携の「ローカルインキュベーション」施設として、2023年4月に誕生しました。市内外の民間企業や信州大学発のベンチャー企業が入居しながら、地域資源を活かした事業創出に取り組んでいます。
自分たちのまちを「つづいていくまち」にしていくには、その地域で暮らす人が「この場所で生きていったらおもしろそうだな」という期待感や希望を感じられることが大切です。つまり、「ローカルインキュベーション」とは、持続可能な地域を目指して、地域に眠る資源を活かして新しい可能性を生み出すムーブメントなのです。
イベント内容
本イベントでは、それぞれ異なるフィールドで活動しているゲストをお招きしながら、ご自身の経験のなかで培われた知識やノウハウなどの生の情報を持ち寄っていただき、会場にいるみなさんと共に「ローカルインキュベーションの現在地」をさまざまな方向から紐解いていきます。
1人目のゲストは、奥田悠史さん。「株式会社やまとわ」で森林ディレクターとして、伊那の木材を活用したプロダクトづくりなどを行いながら、森の面白さや豊かさを再発見・再編集する仕事をされています。「inadani sees」ではマネージャーとして産学官連携のインキュベーションに取り組まれています。
2人目のゲストは、丑田俊輔さん。家族で移住した秋田県五城目町で茅葺き屋根の古民家再生のため、会員である「村民」に「年貢」を納めてもらう参加型の村づくりを実行。その他にも、地域に根ざした起業家「土着ベンチャー(ドチャベン)」を育成するプログラムや、コロナ禍で休業してしまった300年続く「湯の越温泉」を町民の手で再生するなど、様々なプロジェクトを仕掛けています。現在は、オンラインの村づくりプラットフォーム「Share Village」を通じて自律分散型の村づくりを全国で推進しています。
3人目のゲストは、加形拓也さん。電通マーケティング部門で様々な商品開発に携わったのち、電通デジタルでは「未来デザイン」を担当する事業部長として、都市工学をバックグラウンドとした未来予測とデジタル時代のビジネスモデル分析を組み合わせた事業デザインのサポートを多数経験。また「各地で地域独自の魅力を活かした観光を育てたい!」という思いから、富山県上市(かみいち)町や神奈川県三浦市の自宅でゲストハウスの運営を開始するなど、地域視点での事業立ち上げも自ら経験されています。
地域資源を活かしたローカルビジネス創出に取り組んでいる、または取り組みたいと考えている方はもちろん、都市部の企業で地方創生や自治体と連携しながらの新規事業創出を担当されている方は、ぜひご参加ください。
開催概要
【テーマ】持続可能な社会をこの地域からつくろう。ローカルインキュベーションの現在地
【日時】2024年3月4日(月) 14:00-16:30
※受付時間 13:45-14:00
【会場】SHIBUYA QWS(渋谷キューズ)
渋谷スクランブルスクエア(東棟)15階
東京都渋谷区渋谷二丁目24番12号
渋谷スクランブルスクエアの【地下2階または2階のオフィスエントランス】より、
エレベーターで15階受付にお越しください。
※渋谷スクランブルスクエア商業フロアとは異なります。ご注意ください。
【参加費】無料
【定員】50名
【お申込み】Peatixにて前日までに事前申し込みをお願いいたします。
【タイムスケジュール】
13:45 開場
14:00 本編開始 / イントロ
14:15 ゲストプレゼン / トークセッション
15:45 交流会
16:30 終了
【共催】NPO法人グリーンズ
inadani sees
【注意事項】
・マスク着用は任意となりますが、手洗い等の感染症対策にご協力をお願いいたします。
・荷物、貴重品の紛失・盗難、その他のトラブルに関しましては、責任を負いかねます。ご自身での管理をお願いいたします。
・スタッフによって撮影された写真、映像は各種サイトやプロモーションなどに使用する場合がございます。不可の場合はお申し出ください。
【個人情報について】
ご入力いただいた情報は、NPOグリーンズと共催団体内で共有いたします。取り扱いについては、各団体のプライバシーポリシー/個人情報保護方針に則って管理いたします。
https://greenz.jp/privacy/
登壇者&モデレーター紹介
【登壇者】
株式会社やまとわ 取締役/森林ディレクター
森の面白さや豊かさを再発見・再編集してそれをプロダクトやサービスにしていろんな方に届けるのが仕事。学生時代にバックパッカーで世界一周へ。帰国後、編集者・ライターを経て、2015年にデザイン事務所を立ち上げる。2016年10月、「森をつくる暮らしをつくる」を目指す株式会社やまとわを立ち上げる。暮らしの提案を通して豊かな森を育むことを目指して、森づくりからものづくりまでトータルで実践。
主なプロダクトには、赤松を使った経木ブランド 信州経木Shikiや文具ブランドShikibun、地域材家具のpioneer plants、などがある。自然とクリエイティブを掛け合わせる企画チーム「森ノ企画室」や農と森のインキュベーション施設 inadani seesの運営などを担当。
シェアビレッジ株式会社 / ハバタク株式会社 / プラットフォームサービス株式会社 / 一般財団法人 私立新留小学校設立準備財団
会津生まれ、東京育ち、秋田の五城目暮らし。「遊びと学び」「コモンズとコミュニティ」を肴に様々な活動を行っている。公民連携まちづくり拠点「ちよだプラットフォームスクウェア」、遊休施設を遊び場化する「ただのあそび場」、住民参加型の小学校建設「越える学校」、住民出資による温泉再生「湯の越温泉」、コミュニティプラットフォーム「Share Village」等。この冬、半径30km圏内の森林資源とデジタルファブリケーションを活かした小さな集落「森山ビレッジ」が竣工した。最近は、鹿児島県姶良市の廃校を舞台に新たな小学校を立ち上げる準備中。
電通コンサルティング プリンシパル/パーパス&デザインリード
電通グループ各社で一貫して企業の商品・サービス開発に携わる。保険会社の2050年構想/自動車会社のスマートシティ構想/食品企業の新事業、地方銀行での地域商社立上げ支援など、未来予測×都市工学をバックグラウンドとした事業デザインが得意。でもほんとは富山県、神奈川県でのゲストハウス経営やカレー屋さんサポートなどの現場感ある運営側も好き。東京大学大学院工学系研究科 (都市持続再生学) 修了/東大×電通デジタル共創イノベーションラボ主任研究員/日本ビーチ相撲協会理事
<著書・寄稿>
『テクノロジーロードマップ マーケティング・流通編』(日経BP社)
『地域と一緒に長く歩む クリエイターの関わり方』(宣伝会議)
【モデレーター】
greenz.jp編集長 / NPO法人グリーンズ副代表
国立音楽大学卒業後、Web制作、広告制作、編集を経てフリーランスエディターとして活動。2017年に東京から長野県富士見町に移住。3児の母。家族5人、犬2匹、猫3匹とともに、あらゆる生活家電を手放して約9坪の小屋で暮らすミニマリスト。2020年に竹でつくったトイレットペーパーの定期便「BambooRoll」の販売を手掛ける、おかえり株式会社の共同創業者として取締役に就任。2023年4月、WEBマガジン『greenz.jp』編集長に就任。春になると、どんな山野草が芽を出すか、庭を観察するのが日課。ミニヤギを飼いたいと考えている。