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築100年超の古民家がアーティストやクリエイターの拠点に!古民家シェアアトリエから起こる化学反応とは!?

こちらが今回の記事の舞台 旧・原田米店

こちらが今回の記事の舞台 旧・原田米店

千葉県の松戸駅周辺エリアで”クリエイティブな自治区”づくりを行っているMAD Cityプロジェクト。クリエイター向けに、賃貸なのに改装OK!という変わった物件を扱う不動産事業や、イベントを通じたエリアプロモーションを展開しています。(詳しくはこちら)今回はそんなMAD Cityのシンボルのひとつ、「旧・原田米店」とそこから生まれた様々なプロジェクトについてご紹介します。

旧・原田米店は松戸駅西口から徒歩約5分の、旧水戸街道沿いにある築100年超の古民家。2006年までお米屋さんの店舗として使われていましたが、現在はMAD Cityに集うアーティストやクリエイターなど12組が入居し、アトリエとして利用しています。

入居者は、現代アートのアーティストや映像作家、子ども向けアート教室「アトリエミルクル」や松戸市観光協会のメンバーが民間団体として立ち上げた「松戸探検隊ひみつ堂」など様々。そんな入居者同士のコミュニティの中から面白い化学反応が起こっているんです!

アトリエミルクルでの工作教室のようす
アトリエミルクルでの工作教室の様子

松戸探検隊ひみつ堂
松戸探検隊ひみつ堂

MAD Cityがこの家を貸し出すきっかけになったのは、2010年に行われた「松戸アートラインプロジェクト」。その際に、オーナーさんから作品展示スペースとして使わせていただいたことをきっかけに、その後アトリエとして貸し出すことになりました。

アトリエ内外での出会いから、まちへ、東北へ

旧・原田米店の入居者たちの間ではお茶会や餅つきなどを通じて、交流が盛んに行われています。こういった出会いから入居者同士で新しいプロジェクトを始めたり、まちの中での活動を始めたアーティストもいます。

現代アート作品を制作するアーティスト、池田剛介さんは、同じく旧・原田米店の入居メンバー(当時)である大山エンリコイサムさんらとともに「Kesen Transplant」というアートプロジェクトを岩手県南部の気仙地域(大船渡、陸前高田、住田)で行いました。

これは気仙地域に外部から来たアーティストが一時的に移住(Transplant)し、津波で流されてしまった場所に地域の人々の交流の場を生み出すアートプロジェクト。ソーラー発電所などを建て、エネルギーや暮らしをテーマとした展示を通じて被災地の未来のヴィジョンを描く試みを行いました。

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気仙藝術発電所

その他にも、旧・原田米店にアトリエを構えるRE(アルイ)さんは、松戸の地域アートプロジェクト「暮らしの芸術都市-松戸アートラインプロジェクト2012-」に参加し、松戸の「大多福」やその近くの「寿センターシノダ」というお店の壁画を描きました。同じく建築家の森純平さんは老舗提灯屋「八嶋商店」リニューアルの改装を手がけるなど、入居者の活動はアトリエの外へと広がっています。

松戸の料理屋「大多福」の壁画
松戸の料理屋「大多福」の壁画

「寿センターシノダ」の壁画を製作中のREさん
「寿センターシノダ」の壁画を製作中のREさん

そして、こちらは建築家・森純平さんが手がけた八嶋商店の店内。建て替え前の店舗で使われていた材木をできるかぎり再利用しています。

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こちらは入り口側。少し斜めに柱を設置することで開放感を出しているそう。

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海外へ飛び立ったメンバーも

MAD Cityから海外へ飛び立ったクリエイターもいます。その一人が、ヨーロッパの伝統的な技術を使って椅子作りを行う職人の遠藤友嘉里さん。

遠藤さんは工房として使うため、改装できる物件を探していましたが、他のところではなかなかこのような要望は真剣に聞いてもらえなかったといいます。しかし、「MAD City不動産」をインターネットで見つけ、寺井さん(MAD City代表)に話を聞いてもらえたことが嬉しくて、ここで借りることを決めました。

入居後はまず「アトリエを改装できる状態にすること」が大変だったそう。土埃や虫のフンなどの掃除から始めました。その後、壁の板張りなどをして工房作りを進めていきました。

もともとこのような状態だったのが…

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こんな立派な作業場に!

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遠藤さんいわく、壁作りとペンキ塗りが一番楽しくできたとのこと。壁を板張りにしたことでとても明るく、ぬくもりを感じる工房になりました。

遠藤さんが行う椅子張りとは、長い間使った椅子の骨組みを生かし、古くなった座面や背もたれなどの張替えを行う仕事。伝統的な工法では馬毛やヤシの実の繊維など天然素材のみを使い、縫う作業も手縫いで行われています。それゆえ、一つひとつの椅子から温かさが伝わってきます。


遠藤友嘉里さん

ここで作業をしていくうちに、前回の記事でご紹介した「Lift Cafe」や、まちの眼鏡屋さん「金松堂」からの依頼を受けて店内の椅子を作ることに。徐々にその活動がまちに認知されていったからこそのできごとといえます。Lift Cafeにも遠藤さんの作品が販売されているのでぜひ見てみてくださいね。

現在遠藤さんはイギリスのケンダル・アポーストリーという椅子張り工房会社で本場の職人さんのもと、椅子張りの仕事をしています。

旧・原田米店にアトリエを構えてよかったなぁと思うのは、人との出逢いや付き合いがあったこと!MAD Cityを通して旧・原田米店に入居しているアーティストさんだけではなく、地元の人たちとも知り合えたことは宝物です。

旧・原田米店のアトリエ&アーティストたちの作品をチェック!

現在、遠藤さんが使っていたアトリエは入居者を募集中です。出世箱として縁起もいいこの物件。気になったらぜひ早めにチェックしてくださいね。(物件情報はこちら:「旧・原田米店N」

このように、入居者同士やまちの人たちとの出会いから、次々と新しい動き起こっている旧・原田米店。それは、単なる物件提供ではなく、その後のコミュニティ作りに力を入れているMAD Cityだからこそ起きている化学反応といえます。

そんな旧・原田米店を一般公開する「古民家オープンスタジオ」が3月15~17日に予定されています。前述の池田さん、森さんらの作品展示も行われます。ぜひ、直接入居者たちの話を聞きに足を運んでみてくださいね。

(Text: 猪鹿倉陽子)