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2001年以来、日本のソーシャルベンチャーの草分けとして最前線を歩んできたフローレンス。駒崎さんが21歳のときに感じた「なんとかしたい!」という思いは、時を経て、病児保育という”新しいあたりまえ”をつくり出しました。
その成果を評価され、フローレンスは経済産業省『ソーシャルビジネス』55選(2009年)やニューズウイーク日本版 「日本を救う中小企業100」(2011年)に選出。駒崎さんご自身も内閣府「新しい公共」専門調査会推進委員を務め、社会問題を生み出す制度や法律を変えていくアドボカシー(政策提言)活動に積極的に関わるなど、「これからの日本」をデザインしていく上で重要な役割を果たしています。
いわば”自分ごと”からはじめるマイプロジェクトを、大きな社会のイノベーションにつなげてゆくためのロールモデル的存在。そんな駒崎さんは「日本は人類のためにもっと貢献できるんです。」と言い切ります。その確固たる根拠はどこにあるのでしょうか?駒崎さんに、「これからの日本」のこと、そして「今チャレンジしていること」について、お話を伺いました。
駒崎弘樹さん
これからの日本、どうなると思いますか?
YOSH greenz.jp では”自分ごと”として「何とかしたい!」という思いから始まったプロジェクトを”マイプロジェクト”と呼び、さまざまな形で応援していますが、フローレンスも駒崎さんの「何とかしたい!」という思いからはじまり、今や事業として社会問題を解決していくひとつのモデルを構築されています。同時に、世の中のルールそのものを変えていくアドボカシーにも注力されるなど、マイプロジェクトの先輩のストーリーとして「いろんなお話を聞きたい!」とずっと思っていました。今日はお会いできて本当に嬉しいです!
駒崎さん こちらこそ、よろしくお願いいたします。
YOSH ちなみにフローレンスという名前は、ナイチンゲールのファーストネームが由来ですよね。実は、グリーンズの編著本『ソーシャルデザイン』でも、ソーシャルデザインのわかりやすい事例として、統計学に基づく「近代看護」の概念を構築したナイチンゲールを紹介しているんです。
実はその続編の出版が決定していて、次のテーマを「日本をソーシャルデザインする」にしようと考えています。そこでお伺いしたいのですが、駒崎さんにとって、「これからの日本」はどんな変化があると感じられていますか?
駒崎 そうですね。既にさまざまなところで言われていることではありますが、「ゆるやかに衰退していく」ことはやむをえないと思っています。ただそれは今までうまくいっていた仕組みが崩れつつあるということであって、その先にはきっと新しいものが生まれてくるはずです。それはかつての高度成長期のような暮らしに戻るのではなく、まったく違ったものになるでしょうね。
低成長でも、みんなが豊かに幸せになれる。その方向にイノベーションが起こってくるでしょうし、新しい担い手もどんどん登場してくると思います。
YOSH まさにフローレンスが切り拓いてきたことですね。
駒崎 特に震災以降は、ソーシャルセクターとビジネスセクターが出会ったことが大きいと思いますね。今まで公共分野や社会貢献の分野は、ビジネスセクターに見向きもされなかったのですが、お互いリソースが違う二つが出会うことで、事業として社会的課題を解決することが、もっとやりやすくなるのではないでしょうか。
フローレンスがアドボカシー(政策提言)に取り組む理由とは?
YOSH 最近では特にアドボカシーに注力されていますよね。その理由は?
駒崎 ゆるやかな衰退のあとに生まれてくる新しい時代は、自分たちでつくっていくしかありません。政治家や行政にも果たすべき役割と責任がありますが、それらに頼りきりになるのではなく、みんなが”当事者”になる必要があると思っています。その中で政策提言は、政府に実際に提案したり、働きかけることで、制度や法律といった社会問題を生み出す構造そのものを変えていくという意義のある関わり方と言えるでしょう。
例えば政府の政策基盤を話し合う「審議会」というものがあります。この委員になることで、具体的に制度改正や新制度創設に貢献することができるんです。
YOSH 僕たちグリーンズも、”審議会”ではないですが、経産省の「生活者起点による新しいものづくりモデルの検討会」や「製品のカーボンニュートラル研究会」など、公的な案件でお声がけをいただくようになりました。霞ヶ関の会場で半ズボンなのはひとりだけだったりするのですが(笑)僕たちの周りの気付きを吸い上げて公的な文書として残していくことは、とても貴重な機会だと捉えています。
駒崎 特にフローレンスの場合、”現場”を持っていることが大きいです。実際に課題やニーズを把握し、事業として解決しているからこそ、単なる批評家ではない当事者としての意見を出すことができるんです。
政治家や官僚の方々に、現場で本当に困っていることや、「こんな制度があったら、多くの人が助かるのに」というアイデアをお伝えすることが、より良い制度設計に寄与します。目の前で困っている人を助けるだけでなく、社会の仕組みそのものを変えていくという選択肢もあるということです。
フローレンスのビジョン:フローレンスが目指すあるべき社会の姿
YOSH 実際に法律になった事例はありますか?
駒崎 例えば都市部で課題となっている待機児童問題を解決するために、空き住戸を活用した小規模保育園「おうち保育園」を開園しました。都市部には認可保育園をつくる広い土地はありませんが、空き住戸は住戸全体の約10%あるといわれています。定員10人前後の保育園をうまく運営できれば、国の政策を変えることができると考えました。
その結果、内閣府 「平成23年度版子ども子育て白書」の「地方自治体における待機児童解消に向けた取り組み事例」の中で”待機児童問題解消につながる取り組み”として紹介され、そのアイデアを盛り込んだ「子ども子育て関連3法」の法案が、2012年6月に衆議院で可決されました。
YOSH それはすごいですね!「マイプロジェクトから政策へ」それが当たり前になると、僕たちもグッドアイデアだけでなく、「これからの日本」をつくっていくグッドポリシーを伝えるメディアに進化していくのかもしれません。
駒崎 それはメディアの重要な役割だと思いますよ。いま積極的に取り組んでいる「休眠口座」をぜひ取り上げていただけませんか?
YOSH おお、それはどんなプロジェクトですか?
駒崎 長い間引き出しや預け入れなどの取引がされていない、”眠っている”銀行預金のことです。日本全体で毎年1,000億円に上るとされていますが、今の日本ではそれらは銀行の利益として計上されています。そのお金を基金化し、災害時緊急支援への活用や震災遺児の進学費用など、社会のために有意義に活用できるようにしようというアイデアです。
ノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌスさんのグラミン銀行のような日本版のマイクロファイナンスを通じて、本当に必要としている方にお金が流れるような仕組みをつくりたいのです。
休眠口座について考えるための情報サイト http://kyumin.jp/
ひとことでいえば、止まってしまったお金を生きるお金として使えるようにすること。この8月から古川国家戦略担当大臣を中心に、「休眠預金の活用にかかる意見交換会」がはじまったばかりです。
とはいえ、さまざまなメディアに取り上げられ、預金泥棒と言われることもありました。それらの指摘は誤解で、預金者の権利が失われるわけではなく、通帳や印鑑などを持って窓口に行けば、いつでも払い戻しが受けられます。仕組みの一部を切り取るのではなく全体像をしっかり伝えていくことを、グリーンズさんとご一緒できるといいですね。
YOSH もちろんです!ぜひ改めて打ち合わせをさせてください。
※駒崎さんの休眠口座についての思い、論点については「休眠口座基金」を貧困・被災地支援対策に 駒崎弘樹(NPO法人フローレンス代表理事)/SYNODOS(シノドス)が詳しいです、合わせてぜひ!
日本から世界に発信できること。
YOSH 最後に「NRI未来創発フォーラム」に参加する方へのメッセージをいただけますか?
駒崎 先ほども言いましたが、日本はゆるやかに衰退に向かっています。でもそれは別の角度から見れば、世界の最先端でもあるということです。特に少子高齢化については、世界一のスピードで進んでいます。早急に何か手を打たなくてはいけない。
フローレンスでは最近、韓国や中国などアジア各国からの視察を受け入れています。10〜20年後に日本と同じような人口構成になるという国が世界にはたくさんある。ということは日本が先駆けてさまざまな課題を乗り越えることができれば、解決策を輸出することができるということです。そういう意味で、日本は人類のために貢献できることがまだまだたくさんあります。
当事者として取り組むほかない、のっぴきならない状況から生まれたイノベーションこそ、日本から世界に発信できること。そのような対話をこのフォーラムでできるといいですね。
最後に:編集長YOSHより
未来はもっと素敵だと思いますか?
自分の手で、未来をもっと素敵にできると思いますか?
グリーンズ編『ソーシャルデザイン』は、こんな書き出しからはじまります。本文でも少し触れましたが、おかげさまで多くの反響をいただき、このたび続編の出版が決定しました(感謝!)。その際に編集担当の菅付雅信さんあったオファーが「さらに進化させてほしい」ということ。試行錯誤を重ねた結果、はっきりと見えてきた次のテーマが「日本をソーシャルデザインする」でした。
自分ごとからはじめたマイプロジェクトが、本当に日本の新しいあたりまえになるには、どんなサポートがあればいいんだろう?あるいは、さまざまな経験をした今の日本だからこそ、世界に発信できることは何だろう?大きなことのように聞こえるけれど、確かな手応えも感じつつある、それらの「問いかけ」を座右に置きながら、ライターさんたちと一緒に動き出しています。
そのなかで「次の本にぜひご登場いただきたい!」と考えているのが、この記事にご登場いただく、病児保育問題の解決に取り組むNPO法人フローレンス代表の駒崎弘樹さんでした。
今回はお時間の都合で短いインタビューとなりましたが、ぜひ続編ではたっぷりと、マイプロジェクトから政策提言に至るまでに道筋を伺いたいと思っています。そちらを楽しみにしつつ、ぜひ駒崎弘樹さんや山口絵里子さんなど様々なソーシャルデザインを実践している皆さんの生の声を聞きに、「NRI未来創発フォーラム」まで足を運んでいただけると嬉しいです。
今年で開催10年目を迎える「NRI 未来創発フォーラム」。
今年の未来創発フォーラムのテーマは、「新しい可能性への挑戦。」です。社会全体が大きな転換期を迎える中、直面する課題を乗り越えて、新たな可能性やイノベーションを生み出すことに挑戦していくために、講演やパネルディスカッションを行います。さまざまな分野の有識者交えての議論に、ご期待ください!
【名古屋】
日時:2012年10月12日(金) 13:30~17:00
会場:名古屋国際会議場[センチュリーホール]【地図】
定員:1,800名
参加費用:無料(事前お申込みが必要です。)
講演者・パネリスト(敬称略):
原 研哉(グラフィックデザイナー )
村上 輝康(産業戦略研究所 代表)
佐々木 雅幸(経済学者)
新井 紀子(数学者)
駒崎 弘樹(NPOフローレンス 代表理事)
三﨑 冨査雄(NRI パートナー) ほか
【東京】
日時:2012年10月29日(月)13:30~17:00
会場:東京国際フォーラム[ホールA]【地図】
定員:2,500名
参加費用:無料(事前お申込みが必要です。)
講演者・パネリスト(敬称略):
奥山 清行(工業デザイナー)
村上 輝康(産業戦略研究所 代表)
石田 秀輝(工学博士)
山口 絵理子(マザーハウス代表・デザイナー)
瀬名 秀明(作家・薬学博士)
松下 東子(NRI 主任コンサルタント) ほか
今年で10年目を迎える「NRI 未来創発フォーラム」に参加しよう
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