最近「二拠点居住」という言葉をよく耳にしませんか?都会で仕事をして、自然豊かな地方にも拠点を持つ。そんなライフスタイルに憧れはあるものの、時間やお金の制約があって、なかなか難しい選択です。
ところが新宿駅から電車でわずか1時間半から2時間で行ける奥多摩に、気軽に通えるシェアヴィレッジがあります。一軒家を数人でシェアして、月々わずか5000円!アウトドアの拠点としてもよし、のんびり過ごすもよし。
リピーターを増やして、この地域に活気を取り戻したいと考える菅原和利さんは、奥多摩を心の休まる場所、第2のふるさととして活用してもらいたいと語ります。
目指すは、奥多摩にリピーターを増やすこと
かつて奥多摩は、ダム観光で賑わいを見せた場所。小河内ダムが建設されたのは昭和32年(1957年)。当時は建設に関わる住人も多く、観光客も多かったのだそう。それが今、奥多摩の人口は6000人になり、このまま減少傾向をたどれば10年後には半数の3000人になると言われています。
学生の頃から、この地でフィールドワークを行っていた菅原さんは、奥多摩に活気を取り戻すには一過性のイベントや活動では意味がないと考えます。何度も通ってくれるリピーター、将来ここに住んでもいいと思える人を増やそうと「アートマンズ株式会社」を立ち上げ、奥多摩で数々の試みを始めました。
その柱となるのが、今年3月に始まったシェアヴィレッジ事業です。
奥多摩には家が2800軒近くありますが、そのうち300軒ほどが空き家です。オーナーは、見ず知らずの人に家を貸すことには消極的。もちろん町に活気を取り戻すには、若い人が来てくれたほうがいいとわかっていても、知らない人へ家を貸す不安があります。
そこで僕たちのように、日頃から地元の人たちとコミュニケーションをとっている人間が間にはいって、外から来る若い人たちに家を貸すことで、リピーターが増えたらと考えたのです。
使い方は人それぞれ!のシェアヴィレッジ
青梅線終点の奥多摩駅から2つ手前の鳩ノ巣駅すぐそばにあるのが、今回ご紹介するシェアヴィレッジです。駅からは歩いて3分ほどの便利な立地。
今年3月から入居者の募集を始めて、現在利用登録しているのは約10名。家には、ロッカーやキッチン、お風呂もついていて、生活には困りません。布団もあるので、雑魚寝でかまわなければ、実費500円のみで宿泊も可能。インターネットもつながるため、ここで仕事することだってできるのです。
シェアヴィレッジの使い方は、本当に人それぞれ。週末のんびりしにくる人、アウトドア遊びの拠点として利用する人、奥多摩でイベントを仕かけたい人など、さまざまな目的で利用しています。
昼間はそれぞれで活動していても、夜になれば自然と住人同士一緒に食卓を囲みます。そんな交流から、自ずとコミュニティもでき始めている模様です。
運営側がルールとして決めていることはほとんどなく、会員同士がFacebookをとおして連絡を取り合い、利用日など細かい調整をしているのだとか。自主運営に近いのです。登録者が増えれば利用する家の数も増やす予定。まずは会員100名を目標にしています。
奥多摩ファンの100名が、入れ替わり立ち代わり奥多摩を訪れるようになれば、町も活気づくし、定住希望者が現れれば、人口も増えていく。それが、菅原さんの思い描く奥多摩の未来像です。
このシェアヴィレッジ第1号がある「鳩ノ巣」という場所を、菅原さんが案内してくれました。実際に歩いてみると、その良さがとてもよくわかります。
どこに居ても顔を上げれば壮大な山景色。家からものの数分で多摩川の河原に立つことができ、深い渓谷にいる実感があります。近辺の集落には、昔ながらの細い路地がめぐり、ところどころに畑が目につくのんびりとした光景も。
なんとこの鳩ノ巣を実際に訪れる散策&シェアヴィレッジの体験ツアーを、グリーンズ読者のために菅原さんたちが行ってくれることになりました。シェアヴィレッジに興味のある方や、奥多摩を歩いてみたいという方、一緒に現地を歩いてみませんか?
今月はちょうど蛍の季節!夜には河原で蛍観賞ができるかも、ということで「greenz tour @奥多摩」を行います。
集合:14:00 JR青梅線「鳩ノ巣駅」集合(13:56着の電車あり)
人数:15名限定
参加費:3,000円
内容:鳩ノ巣散策、 「奥多摩の魅力を知る」(奥多摩に詳しい語り部より)、奥多摩ワサビ醤油BBQ、螢の鑑賞、シェアヴィレッジ体験。21時に解散予定。(宿泊はオプションで2000円の実費が別途かかります。)
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アウトドアウェディング
こうした魅力ある土地の資源を活かして、アートマンズでは、さまざまなイベントを仕掛けています。「green drinks 奥多摩」をはじめ、「アウトドアフェスティバル」など多岐にわたりますが、そのうちのひとつ、アウトドアウェディングは、奥多摩という立地を生かすのに最適な企画です。
以前greenz.jpのこちらの記事でもご紹介した、柿原優紀さんの「H.O.W.(ハッピーアウトドアウェディング)」プロジェクトをモデルにしたもので、特に柿原さんとも連携しながら、奥多摩らしい演出で結婚式のマネジメントを行っています。
僕らが目指すのは、人が出会って、結婚して、家族になって、子どもを育てて…というような、人のライフサイクルの節目節目に関わって、その人の人生を豊かにすることです。
ウェディングもその一つ。ここで結婚式を挙げた夫婦は、またいつでもこの地へ戻ってくることができます。結婚式そのものも、地元の食材や飲食店を巻き込み、地域全体で式を創りあげる「コミュニティウエディング」になっているのです。
私が取材で訪れた日にも、ウェディングの相談に訪れたカップルがいらっしゃいました。
基本は新郎新婦の友人の方々に企画や当日の運営をしていただくことをお勧めしています。菅原さんたちが、舞台となる奥多摩の地元の人たちとの間で調整を行ったり、ここで調達できるものを手配するイメージ。その方がゲストもすんなりとその場に入っていけて楽しめるのだそう。結婚式を行う頃には、新郎新婦両方の友人がすっかり親しくなって友だちの輪が広がります。
町の活性を考えるだけでなく、地に足のついた事業体へ
今でこそ仲間も増えて日々忙しい菅原さんですが、はじめはたった一人でこの地へやってきてからのスタートでした。バイトで生計を立てながら、まずは、町の寄り合い場でもある、カフェや山荘のオーナーと知り合い、地元の人たちとのネットワークを広げてゆきました。
初めの頃に地元の人に言われたのが、「地域を活性化しようと気負わなくても大丈夫だから」ということ。ここにいる間に思うことを精いっぱいやってくれれば、それに惹かれて多くの人が集まってくるはず。そう言ってくれる人がいて、菅原さんはずいぶん気持ちが楽になったと言います。
その後少しずつ今の活動を始めて、アートマンズ株式会社を立ち上げます。先に紹介したシェアヴィレッジ事業やイベントに加えて、今では町の活性事業にも携わります。
シェアヴィレッジの会員が100人になる頃には、その背景に一度はここを訪れた人が200~300人はいます。その人たちがメディアの役割を果たしていくことになると思うのです。そこから、あらゆるビジネスも考えられます。
僕たちは、あくまでこの土地の自然を利用してサービスを提供する一企業にすぎません。もちろんこの地を元気にしたい思いがベースにありますが、真摯に地元の人たちとコミュニケーションを取りながら、ビジネスとしてしっかりやることが大切だなと考えています。
身近なようでいて、なかなか奥深そうな、奥多摩の魅力。せっかく電車で行ける距離に居るのだから、もっと頻繁に通って発掘してみるのも楽しそうです。そんな時の強力な味方、シェアヴィレッジの活用を、まず検討してみませんか?