米国NPOの「StoryCorps(ストーリー・コー)」は、ふつうの人々の声と物語を録音するというシンプルな活動を地道に続けてきました。2003年からはじまったこの活動の参加者は、すでに8万人に上ります。
みなさんには、じっくり話を聴いてみたい家族や友人はいますか?
StoryCorpsのシンプルだけど意義深い録音活動について紹介します。
「Every voice matters」すべての人の声に、意味がある。
http://storycorps.org/
StoryCorpsは、ふつうの人たちのインタビューを良音質で録音し、残していく活動を進めています。
一番の特徴は、誰でも参加できるということです。自分の両親や祖父母、お世話になった人、友人など、大切な人との会話を録音したいと思った人は、誰でも録音することができます。
録音する方法もいろいろです。全国に3か所にあるStoryCoprsのスタジオに訪ねて行ってもいいですし、録音キットを送ってもらうこともできます。施設やコミュニティでStoryCorpsのスタッフを呼んで録音してもらうDoor-to-Doorサービスもあります。
ウェブサイトでは、自分で録音するための注意点、録音する前に準備しておくことや心構えなどもまとまっており、落ち着いて録音に入るための情報が提供されています。
こうして、2003年から始まったこの活動は、4万ものインタビュー、つまりインタビューする人とされる人でその2倍の8万人に上る人たちの声を残してきました。家族のこと、ふるさとのこと、戦争のこと…。どんな人の人生にも、語るべきストーリーがあります。
StoryCorpsの活動がふつうのインタビューと少し違うのは、インタビューする人とされる人が、すでに知り合いだったり家族だったり、気心が知れているという点です。お互い顔見知りの二人が、改めてマイクの前で語りあいます。そうすると、プロのインタビューとも違う、普段の会話とも違う、味わい深い話が引き出されるようです。
どんな人にも語るべきストーリーがある
録音されたストーリーは、CDとして本人たちの元に残るだけではなく、承諾を得られたうえで米国議会図書館にも収蔵されます。そして、その一部はNational Public Radio(全米公共ラジオ)というラジオ放送局のMorning Editionという朝の番組のコーナーで紹介されます。
最近では、バイクの交通事故から立ち直って妻に感謝しているおじさんのストーリーや、家庭が崩壊している子どもが出会った先生に感謝しているストーリー、余命いくばくもないおじいさんが息子と語り合っているストーリー、離婚して親友になった二人のストーリーなど、ふつうの人たちのストーリーがラジオ番組で紹介されています。インターネット上から聴くこともできます。
ほんとにふつうの人たちのストーリーなんですが、こうしたストーリーを聴いていると、どんな人にも語るべき物語があるのだなぁと思わされます。そして、なによりも声の力に感動してしまいます。そのひとの声が、その人の思いや気持ちがよりストレートに伝わってくるのです。
国立の図書館に残っていくので、ストーリーを残した人の孫の孫が、曽祖父や曾祖母にあたる人たちの生の声とストーリーを聴くなんてこともあるかもしれません。
大切な人との会話を録音し、残す。本当にシンプルなことで、ICレコーダーを持っている方なら今すぐにでもできることです。それを誰にでもできるように仕組みをつくり、データをしっかり残し、発信していく。StoryCorpsの活動は、シンプルですが、いろんな意義や可能性に満ちています。
声や音を、絵にするサービスも