天才として後世に語り継がれるだろうスティーブ・ジョブズ。そんな彼が実は「発達障がい」を持っていた可能性が高いということをご存知でしょうか。他にもアインシュタインや坂本龍馬も同様だったと言われています。
発達障がいの早期発見・早期療育
ADHDや自閉症などの発達障がいには、それぞれのキャラクターによって苦手なことがあります。つい人と比べられ、出来ないことばかりに目を向けられがちですが、それぞれの障がいを持っているからこそ得意なことや才能があるはず。幼児の時期にその苦手なところを発見し、療育をすることで改善することができ、得意なことを伸ばすことができれば、その子らしく活き活きと暮らすことができるのです。
このような早期発見・早期療育事業をおこなっているのがNPO法人「発達わんぱく会」。彼らが運営する「こころとことばの教室 こっこ」が、2011年3月に浦安に開設されました。
ここでは発達障がいのある幼児を対象としたサービスと、保護者への子育て支援を提供しています。個別療育・グループ療育・「音と色の教室」という音楽造形療法が3つの大きな柱です。
全てに共通していることは、子ども一人一人を毎回しっかり見て個別計画を立て、発達段階に応じた支援をしていること。臨床心理士、臨床発達心理士、言語聴覚士、音楽療法士、保育士、看護士、社会福祉士等の資格を持つ方々がスタッフとして支えてくれます。
スタッフの皆さん
このような発達障がいを持つ子どもが個別支援を受けられる場は少ないのでしょうか。さっそくお話を伺ってみました。
まだ数は不十分でありますが、身体障がいや知的障がいの分野ではあることはありました。しかし発達障がいの子ども向けのサービスは本当に少ないというのが現状です。
というのも発達障害者支援法という法律ができ、行政による支援の対象と認識されたのが2004年のことなんです。需要に対して供給が全く足りていない。そこで、われわれ民間が療育の受け皿になれたらと思いこの活動に取り組んでいます。
こう語るのはNPO法人発達わんぱく会代表の小田知宏さん。このようなサービスを始めるに至った経緯について伺いました。
NPO法人「発達わんぱく会」代表 小田知宏さん
忘れられなかった障がい福祉の仕事の楽しさ
中学の時から社長になりたいと思っていました。起業にあたって成長産業として興味を持っていたのが介護分野でした。まずは商社で勤務した後、当時急成長していた介護ビジネスを展開する会社で8年間働き、高齢者や障がい者と関わる機会を持つことが出来ました。
その後、経営の勉強をするために事務機器を販売する会社で上場企業の役員として働くことになったのですが、そのときに思い出したのが前職で障がい者と関わること・障がい福祉分野で働くことが楽しかったということです。
福祉分野は決して楽ではないと分かっていたのですが、やはり自分が楽しめる分野で起業したいと思い、妻を説得し、会社を辞めて始めたのがNPO法人「発達わんぱく会」です。
発達障がいを持つ天才
具体的に発達障がいの早期発見・早期療育事業を立ち上げようと思ったきっかけとなるエピソードについてはこう語ります。
介護の会社に勤めていたときに、発達障がいをお持ちの成人の方と出会いました。その方は耳から聞いた情報を理解することが困難で、学校生活もうまくいかず自立した生活を送れていませんでした。でも実は1日2冊、なんと月に60冊も本を読めて内容を理解できるという天才的な脳の持ち主だったのです。
この特性をまわりが理解し、彼にピッタリの支援ができる環境があれば、その方はきっと日本を動かす天才になったかもしれないと思ったんです。その経験から、発達障がいの早期発見・早期療育の必要性を感じました。
どうやら発達障がいのある方は自分らしく生きづらい環境にあるようです。実際にどのような暮らしをしている方が多いのでしょうか。
まず、自分に自信を持てない方が多いです。それは周りから普通の人と違うから「ダメだ」と言われ続けているからです。その結果、自尊感情が育たずに学習機会を奪われ、せっかく可能性があるのに実現できていない人が多いと思います。
早期療育の成果
実際、子どもたちの療育をおこなっていると、日々苦手なことが改善されるなど、具体的な成果を実感しているそうです。
話せなかった子どもから言葉が発せられるようになったり、壁紙を剥がして食べてしまう子どもが食べなくなったり、目に見えた変化があります。週1回しか通わない子どももどんどん成長していくので驚くばかりです。将来、この子たちが日本を動かす存在になるのかと思うと、本当にワクワクしますね。
発達障がいのある子どもたちにとって周りの人がよき理解者となり、このような療育のサービスにつなげることが重要です。とはいえなかなか幼児の発達障がいを発見するのは難しいというのが現状。子育て初心者のお母さんにとっては、子どもに苦手なことがあると気付いても「子どもだからこんなもんなのかなぁ」と思ってしまい、早期療育につながらない場合が多いそうです。
そのような現状を打破するために、発達わんぱく会ではどのような活動を行なっているのでしょうか?
発達わんぱく会では自治体と協働して母親向けの勉強会だったり、悩みを共有できるサロンを開催しています。イベントの対象者には発達障がいとあえて書いていません。子どもについて気になることを相談してもらっている中でお子さんの発達障がいの早期発見に、そして「こころとことばの教室 こっこ」にいらして頂くことで早期療育につなげたいと思っています。
地域の子どもは地域の大人が育てるのが1番!
子どもに気になるところがあるとき、発達障がいの疑いがあるときに、このような頼れる存在が地域にあるのは安心です。しかし、「これからも浦安市内だけで教室を開いていくつもりです」と小田さんは言います。それは何故でしょうか?
やはり地域に根ざして事業をおこなうことに様々なメリットがあります。保護者の方にとっては、いつでもすぐに相談できる機関が近くにあることで安心できます。子どもはたとえ小学校に入学し教室を卒業しても、自分の理解者が近くにいることは心強い。自分の苦手なこと得意なことの情報を教室の担当者が学校側に提供することも可能です。
私たちにとっては連携する施設が少なくて済むのも地域密着型サービスの大きなメリットです。私も事業を始める際、市役所に毎日通ったり、地域の他施設で実習するなど少しずつ関係を構築してゆきました。
浦安という現場にまずはフォーカスをしていますが、全国の発達障がいを持つ子どものサポートもしたいという思いもある小田さん。NPO法人「発達わんぱく会」のビジネスモデルを公開し、自分の地域でも挑戦してみたいと思う人が多く出てくることを願っています。
教室には現在約50名の幼児が通っています。プログラムの料金は、初回の相談は無料で、障がい者自立支援法からの給付を含めて一回につき約10,000円ほど。1日に6回授業を開催するなど回転率を高め、保育ではなく療育にフォーカスすることで黒字経営ができると思います。
障がい者に対するサービス業を日本に誇れる産業に
子どもたちと関わる小田さんは本当に楽しそう!
最後に、小田さんからは障がい福祉分野の仕事を若者に将来の仕事として考えてもらいたいとメッセージをいただきました。
私たちの事業は福祉というより、サービス業です。経営を工夫すれば質も高く、利益の出る仕組みはつくれます。また、この産業は成長すれば世界に誇れるものとなる可能性もあります。積極的に若者が障がい者に対するサービス業に挑戦したいと思ってもらえるようにしたいです。
ニーズはあるのに全く供給が足りていない障がい福祉サービス。次世代の若者の活躍の場がここにあります。そして、何より小田さんの言葉からが障がいを持つ方と関わることの充実感が伝わってきます。
未来のジョブズが輩出されるかもしれない現場に、あなたも足を運んでみてはいかがでしょうか。
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