インターネットからダウンロードするだけで読みたい本や雑誌が瞬時にゲットでき、多くのコンテンツをデータで保存できる「電子ブックリーダー」。アマゾン・キンドル(Amazon Kindle)やソニーのReader(ソニー・リーダー)、シャープのGALAPAGOS(ガラパゴス)など、日本でも普及しつつありますね。このデジタルデバイスを発展途上国の教育現場に導入しようという取り組みが始まっています。
発展途上国での電子書籍の普及に取り組むスペインのNPO「Worldreader.org」は、2010年3月、ガーナ・Ayenyahの「OrphanAid African School」で、電子ブックリーダーのトライアルを実施。あわせて16機のアマゾン・キンドルを6年生の子どもたちに与え、10日間使わせました。
最初は馴染みのないデバイスに少し戸惑いも見せる子どももいたそうですが、コンピュータを使ったことがない子どもたちでも、すぐに操作方法を覚え、教科書や本を楽しく読みはじめたとか。オンラインライブラリでは数多くのコンテンツが配信されているので、様々な書籍・雑誌を読むことができ、デバイスの辞書機能などを使えば、見慣れない語やフレーズも瞬時に調べられます。
電子ブックリーダーをこれらの地域に普及させる上で障壁となるのは、電力とインターネット回線の確保です。しかし、このトライアルによって、携帯電話のための既存インフラが活用できることがわかりました。携帯電話の充電に使われている風力や太陽光からの電力は、電子ブックリーダーの充電にも利用できますし、携帯電話が利用している衛星インターネット接続を使えば、たった45秒で電子ブックリーダーにコンテンツをダウンロードできたそうです。
そこで、「Worldreader.org」では、このトライアルに続き、2010年11月には、規模を拡大したパイロットプログラムを立ち上げ。ガーナの6ヶ所の学校で、500人以上の生徒に電子ブックリーダーを提供しました。生徒たちは、思い思いに、小説や雑誌をダウンロードし、読書を楽しんでいます。また、教鞭をとる先生たちにもこのデバイスは大好評。冬休みの間に、ニーチェやシェークスピアの作品など、178ものコンテンツをダウンロードした先生もいたそうです。
今後、ガーナをはじめとするアフリカ諸国、そして他の発展途上国の教育現場で、電子ブックリーダーを普及させるためには、いくつかの課題があります。まずは、発展途上国のニーズに合った電子ブックリーダーの開発。「Worldreader.org」はメーカーと協力し、耐久性のあるデバイスの開発を検討しています。また、世界的に著名な作品に比べ、地元のコンテンツがまだ少ないのも課題のひとつ。「Worldreader.org」では、アフリカの出版社と提携し、ローカルコンテンツや教科書のデジタル化に努めています。
電子ブックリーダーを教育に活用できれば、子どもたちの読み書きのスキルアップにつながるのはもちろん、世界中のコンテンツにアクセスし、世界の知識を広く得られるという利点があります。子どもたちの「学びたい!」という意欲を刺激し、想像力を豊かにする効果も期待できそう。電子ブックリーダーは、子どもたち一人ひとりにとって、手の平から世界に広がる「マイ図書館」になることでしょう。
[via Mashable]
アマゾン・キンドル向けコンテンツマーケット「Kindle eBooks」を覗いてみよう。