4月、日本における持続可能で平和な世界へのシフトを提案したWorldshift Forum。その個人レベルからの社会変革への宣言と時を同じくして、地球の裏側でも民衆からの社会変革を予感させる出来事が起きていました。その舞台は、ボリビア。発展途上国の人々が立ち上がったのです。
4月19日から4日間、ボリビアのコチャバンバにて、「第1回気候変動と母なる大地の権利に関する世界民衆会議」が開催されました。この会議は、政府主導ではなく民衆の主導によって、気候変動問題についての話し合いを行おうというもので、COP15での国益中心主義にしびれをきらしたボリビア大統領エボ・モラレスらの呼びかけにより実現しました。
今回の会議には、政府関係者だけでなく、科学者、活動家、先住民の代表ら、140カ国から3万5千もの人が参加したと言われています。そこでは、COP16に向けた政策提言などが話し合われ、成果として「コチャバンバ合意」が採択されました。ちなみに、合意が採択された4月22日は、昨年の国連総会にて認められた、国際Mother Earth Dayにあたります。
私たちの母なる大地は傷つき、人類の未来は危機に瀕している
という言葉から始まる「コチャバンバ合意」は、母なる大地(Mother Earth)の権利宣言と資本主義からの転換の必要性を軸とし、その実現に向け以下のような提言をしています。一言でいうと、発展途上国の立場から先進諸国に対しての‘正義と公平性の訴え’だと言えるでしょう。
・「母なる大地の権利のための世界宣言」の制定
・気候変動と環境に関する国際法廷や「(気候変動への)適応のための」基金の設置
・先進国の責任の具体化
(気候債務返済、技術移転、温室効果ガス削減目標の数値化など)
気候の悲劇から人類を救う方法は、グローバル民主主義の実施しかない
ボリビア国連大使パブロ・ソロンがこう話していますが、この会議は、気候問題に対して発展途上国の人々の声をいかに反映させるか、という試みでもあります。というのは、気候変動の影響は、自然災害に弱い地域にあり、対応策にも乏しい発展途上国の人々が受けやすいと考えられています。しかし、政府主導の会議では、その当事者たちの声は重要視されてこなかったのです。この会議が‘World People’s Conference(世界民衆会議)’と呼ばれるのは、「民衆による、民衆のための」という強い思いを象徴しているような気がします。
とはいえ、懸念はあります。資本主義を打倒しない限り気候変動へのどのような対策も不十分とするモラレス大統領の強行姿勢が、気候問題の解決には逆効果だとする人もいます。また、非公式の分科会mesa18では、ボリビア国内で政府が進める石油や天然ガスなどの資源開発がこの会議の内容と矛盾するとの指摘もあったようです。しかし、このような様々な視点からの議論もまた、この会議の成果だと言えるのだと思います。
現在、「コチャバンバ合意」は国連に提出され、11月にメキシコで開催予定のCOP16での討議が呼びかけられています。また、来年の国際Mother Earth Day(2011年4月22日)には、2回目の世界民衆会議が予定されており、そこでは、気候変動に対する世界中の人々の意思を確認するための世界一斉投票も検討されているとか。実現すれば、発展途上国の人々の声が「もうひとつの世界」を作るという新しい世界の幕開けとして、10年後のテストに出るなんてことも!?
COP16の動向とともに注目していきたいと思います。
「コチャバンバ合意」(英文)を読む。
日本語で全文を読む。
カナダのジャーナリスト、ナオミ・クラインの解説を見る。