千葉県いすみ市にある、エコビレッジ「ブラウンズフィールド」で毎年開催される「収穫祭」。1年間、ブラウンズフィールドに関わった人々や自然の恵みに感謝して、実りの秋をお祝いするお祭りです。参加者のポットラックによる「持ち寄りご飯品評会」や、イマジン盆踊り部による「盆踊り」などで盛り上がります。
2021年11月7日に開催された収穫祭で、地球コクリ!の三田愛さんとともに「書と歌のパフォーマンス」を行ったのが、間-awai-をつなぎ、自然のさざ波を紡ぐ歌い手、山口愛さんです。
パフォーマンスのテーマは、「祈り」。一人ひとりの「意」を「乗り」合わせていくことで世界は形づくられていくと考えるふたりが、今ここに居ることに感謝をこめながら声と書で表現するパフォーマンスとなりました。
ー 目次 ー
▼パフォーマンス書道『祈り』
▼すべては振動。声の響きで自分自身を整える
▼書と歌から広がるコ・クリエーション。パフォーマンス書道が生まれるまで
▼「整う」ということ
▼呼吸、トンビ、虹。自然とのつながりを体感したピースウォーク
▼私たち人間がいま発揮すべき力はなんだろう?
▼足りていることに気づき、意図を持って循環を起こす
山口愛(やまぐち・あい)
間(あわい)を繋ぎ・音で旅するうたうたい
東南アジア・中南米・NY・ヨーロッパ・カザフスタンなど国境を越えて歌い、アースデー・Natural high!・森道・大使館国際交流イベントなどに出演。アメリカ大陸横断Walkでネイティブアメリカンのセレモニーに参加し、自然と歌のつながりを体感。原始の歌、深い心の響き、自然のさざ波を歌い紡ぐ。2022・冬至に初のソロ名義アルバム「◯」をリリース。(https://aiyamaguchi.bandcamp.com/album/-)
湘南では「イマジン盆踊り部」の歌い手を務め、全国劇場公開中のドキュメンタリー映画「発酵する民」エンディング「祈り」を歌唱。地球の上で音で繋がる喜びを体現し続けている。(HP:ai-otodama.com)
三田愛(さんだ・あい)
「コクリ!プロジェクト」創始者/株式会社リクルートじゃらんリサーチセンター研究員 兼 サステナビリティ推進室/英治出版株式会社フェロー
集合的ひらめきにより社会変容を起こす「コ・クリエーション(共創)」の研究者。地域イノベーター、首長、企業経営者、官僚、農家、クリエイター、大学教授、社会起業家など、約300名のコミュニティメンバーと共に実証研究を行う「コクリ!プロジェクト」創始者。現在は自然と人間の分断を超えた共創をテーマに「地球生態系全体のコ・クリエーション(地球コクリ!)」の研究に取り組む。米国CTI認定プロフェッショナル・コーチ(CPCC)。内閣官房、国土交通省、経済産業省など官公庁での各種委員を歴任。
パフォーマンス書道『祈り』
午後3時、会場の賑わいが一段落したところで第2部が始まります。笛奏者・中西悦子さんを先頭に、笛の音に合わせて儀式隊が入場してきます。
儀式隊は総勢6名。それぞれのエネルギーを持ち寄り、パフォーマンスが始まります。
山口愛さんによる音瞑想。収穫祭に参加したみなさんにも輪になってもらい、みんなで意識をひとつに重ねるように声を出し、振動を整え、つながりあいます。
参加者がひとつになったところで、山口愛さんによる『祈り』の独唱。
音の波の中で場全体のエネルギーを全身で受け取り、三田愛さんが書を書き始めます。
大きな筆とたっぷりの墨で、力強く。
完成した作品は、「祷(inori)」。
エネルギーが放出され、ぶつかり合い、混ざり合い、天地とつながる。
まるで厳かな儀式のような時間と場をつくり上げたふたりに、このパフォーマンスのこと、そしてそれぞれの源にあるものや、人間と地球のつながりに対して思うことなど、たっぷりとお話を伺いました。
すべては振動。声の響きで自分自身を整える
ーー まずはおふたりの出会いから、今回の書と歌の「祈り」のパフォーマンスをすることになるまでの経緯を教えてください。
三田愛 山口愛ちゃんに初めて会ったのは2020年のブラウンズフィールドの収穫祭だよね。そのときはちょっとお話したくらいだったんだけど、その後にお試しボイストレーニングをしてもらったんです。そのときに改めてお互いに自己紹介をしたら、「めっちゃ共感する!」っていう部分がたくさんあったんだよね。
私にとって愛ちゃんは「同じことを考えてるけど、ちょっと違う分野にいる人」。私の場合はコクリ!や書道が自分の願う世界の実現や表現の方法なんだけども、愛ちゃんは歌でそれをやっているんだなと思った。
私自身、地球コクリ!をスタートしてから、相手に伝えたいことがある時に「何を伝えるか」より「自分がどうあるか」が大切だと感じるようになってきていて、そのためにも声を大事にしようと思っていたタイミングだったんだよね。それで愛ちゃんのボイトレを継続的に受けることにしたんです。実はこのインタビューの前も、愛ちゃんにボイトレしてもらってたんですよ。
山口愛 そうそう、このインタビューが始まる前までやってたんだよね。ボイトレで何をしているかっていうと、単に発声のトレーニングをしているというより、「声を通して自分自身が良い状態でいましょう」ということをしているんです。
というのも、私は「声を出す」ということは「身体や細胞、つまり自分自身を振動させる」ことだと考えていて。声は波動発生装置であり、それが骨振動や細胞に伝わって、脳波や心の状態にも影響を与える。結果、人や生き物たちはその個体の振動を響き合わせながら日々生きているんですよね。あんまりそこに注目することってないんですけど。
そして、その「声」というものには、疲れてるとか元気があるといった体の状態や、悲しいとか嬉しいという心の状態が全部乗ってきます。だから、そこを内観して認識してあげることで、良い状態で在れるように整えてあげることができる。
太陽の光とか風とか、この地球にあるものもすべて、振動でできていると考えることができるんだよね。自分が良い状態に整うと、地球にあるものからの振動を感じられるし、しかもそれがすっごく美しいと気づいていく。そこに気がつけば、世界が調和して、人と人もハーモナイズしていくし、いろんなものに対する感謝が出てくるんじゃないのかなっていうのを、声や歌を通してやってるんです。
書と歌から広がるコ・クリエーション。パフォーマンス書道が生まれるまで
三田愛 そういえば、(山口)愛ちゃんがレッスンの中で「こんなことやってみよう」と言ったアイデアを、実は私がすでにやっていたこともあったよね。
たとえば、地球コクリ!を進めていく上で「地球とコ・クリエーションしているってこういうことかも!」という感覚を掴んだのが、島根にある大きな滝との出来事で。その滝を目の前にした時になぜか声を出したくなって、滝の流れる音や波動に合わせて声を出してたの。その時に「地球とハーモナイズするってこういうことじゃないか」と感じたことがあって、その話をしたら愛ちゃんが「それそれ!」って。
三田愛 そういう「それそれ!」というようなことが何度かある中で、「いつか一緒に歌と書道ができればいいよね」みたいなことは言っていて。それが今回、ブラウンズフィールドの収穫祭で実現した感じだよね。
山口愛 日々、自分たちがとっている選択や考えていること、感じていること、つまり自分の意思で、自分の周りの世界、ひいては全部の世界はできている。それを乗り合わせていくというか、一緒に形にしていったらどういうものができるのかっていうことを、(三田)愛ちゃんは「書」で、私は「声」という表現でやってみることにしたんだよね。
すると私たちが「こんなことをしたい!」という意思を出した瞬間に、そこに必要な人が共鳴して集まってくれたし、愛ちゃんのイマジネーションもバーッと広がってきて、まさにコ・クリエーションが起こったね。すごくいい時間だったね。
三田愛 前年も収穫祭で書のパフォーマンスをしたんだけど、その時は一人だったから、私も感覚が全然違ったな。今回は、(山口)愛ちゃんの歌だけじゃなくて、えっちゃん(笛奏者・中西悦子さん)っていう笛の天才も入ってコ・クリエーションしたことによって、自分一人では描けなかった世界へと展開していった感じがすごくある。
最初に愛ちゃんが音瞑想で場を整えてくれたじゃない。その中で私も整ってから書くことができたし、みんなのエネルギーをたくさんいただいた上で、笛のリズムにも乗りながら表現できた。
私の書道の師匠、嶋田彩綜先生が「エゴ(自我)が手放せたら、真我がやってくる」って言ってるんだけど、本当にエゴが抜けたフローの状態で書けました。
ーー 「祈り」というテーマはふたりの中ですぐ決まったものだったんですか。
山口愛 私が提案したんだよね。ドキュメンタリー映画『発酵する民』(※)の挿入歌として『祈り』という曲を歌わせてもらったことがあるんだけど、その曲の中に「すべての声に もう一度 心あわせ 手をあわせて 思い出して その胸の中に 愛の炎があること」という歌詞があって、地球コクリ!のコンセプトに合ってるなと思って。
(※)『発酵する民』はこちらの記事でも紹介しています。
三田愛 そうそう、「これ、どう?」みたいな感じで(山口)愛ちゃんが送ってきてくれて、すごくいいなと思った。私としても、パフォーマンスを見せたいというよりは、エネルギーの波動を整えたいという気持ちがあったから、そういう意味でも「祈り」というテーマはばっちり合うなと。
『祈り』山口愛
「整う」ということ
ーー 「整う」というキーワードがおふたりから出てきて、それぞれが大事にすることの一つなのかなと感じました。なんとなくその感覚って分かる気もするんですが、どういう状態のことを指すのか、「整う」という言葉を使わないとしたらどう表現されますか?
三田愛 「本物の自分に戻る」っていう感覚でいることかなぁ。そうするためには、コクリ!の活動の中でも繰り返し言っているけど、「自分の根っこにつながる」ということが大事だと思っていて。
普段はどうしても頭で考えがちで、「これはやった方がいいよな」とか「この方が得だし…」ってメリット・デメリットや、恐れや不安といったもので動いてしまいがちだけど、そうじゃなくて、頭でも心でもなく、もっと奥の肚(ハラ)、根っこにつながっていく、丹田につながっていく。そうすると、ふうーっと落ち着いて、そこに本当の自分の願いがあることに気づけると思うんだよね。それは自分を通じて脈々と続いてる地球ともつながるような感覚なんだけど・・・そんな感じかな。
山口愛 私にとって整うっていうのは、「嘘をついてない状態」ですね。人に対しても、自分に対しても、嘘ついてない状態。気持ちいいとか嬉しいとか楽しいというような、自分が「そうしていたい」ということを、ちゃんとありのままで受け入れられる状態だと、整ってるなって感じがする。
嘘が生じると、声の微妙なトーンとかそういうものにも出てくるから、相手にもやっぱり違和感って伝わるんですよね。「そんなふうに思ってないよね」、「口ではいいことを言ってるけど、なんか違和感がある」みたいなことが起こる。だから、モヤモヤしていることも含めて素直に発信できる自分でいると、整ってくるみたいな感じはある気がするな。
ーー 本物の自分に戻る。嘘をついていない状態である。そうあるために、おすすめする環境や方法があれば教えてもらえますか。
三田愛 自然のそばにいたり、自然と共に暮らすということをすると整いやすいなというのは、いすみに移住して感じています。東京に住んでたときも、西表島とか屋久島、ハワイ島とか、そういうところに行くとやっぱり整っていたかな。
でも単に「自分と根っこでつながるために、自然に行こう」ということではなくて。自然の中に行っても、それを「きれいだな」「癒されてよかった」みたいな感じで消費的に見ているだけだと、自分とはつながれないんだよね。
大切なのはそのときに、自然にしてもらってることに思いを馳せたり、その場で循環してることは何だろうなと想像力を働かせることだと思う。改めて自分が本当に大事にしたいことは何だろうなあって問いかけてみることもいいかもしれない。
たとえば、私は温泉が大好きで、ただ入るだけでもすごく気持ちいいんだけど、最近はこのお湯がどこから来たのかなっていうところに思いを馳せたりするの。雨が降って山にしみ込んで、地下水になってマグマで温められて、それを誰かがポンプでくみ上げて設備を整えて。
そうやって始まりから、ここに届くまで、たくさんの生き物のつながりで、いま、私が温泉につかれてるっていうところに思いを馳せると、ありがたいというか、地球と同期している幸福感があるというか。まるで母なる地球の子宮の中にいるような感覚なんだよね。
山口愛 わかるなあ。自然って嘘つかないからさ、めっちゃ気持ちいいし、嬉しくなっちゃうんだよね。まったく人に合わせないじゃない。自然のタイミングで日は登るし、花は咲く。
呼吸、トンビ、虹。自然とのつながりを体感したピースウォーク
三田愛 自然との関わりでいうと、そういえば以前、先住民の長老から学んだって話してたよね。
山口愛 そうそう。もう10年位前なんですが、ネイティブアメリカンの独立運動を指揮してたデニス・バンクス(※)っていう方の、アメリカ横断ピースウォーク(Longest walk)に参加させてもらったことがあるんです。途中、スウェット・ロッジっていう生まれ変わりの儀式があったり、パイプセレモニーがあったり、歌の奉納があったり、いろんなことをしながら歩いていくんだけど、その中で「君は自然とつながっている感覚があるか?」みたいなことを何度も問われたりするの。
(※)Dennis Banks 1937-2017。ミネソタ州北部のインディアン居留地出身。米国先住民公民権運動家、アメリカ・インディアン運動のリーダーとして、日本でも多くの活動を行った。
山口愛 でも当時の私は、「いやぁ、正直自然とつながると言われても、よくわかんないです」って感じだったから、「どういう状態が自然とつながった状態なんですか?」と聞いてみたんだよね。そうしたら、「呼吸してるのももう、自然とつながってるから」って言われて、「えっ?」みたいな(笑)
「呼吸って自分一人でしているものだし、呼吸したら自然とつながるって、意味がわかんない」って言ったら、「あなたが出してる二酸化炭素を木が受け取って、今酸素を出してるんだよ。そしてその酸素をあなたは吸ってるんでしょう。もうそこに循環が生まれてるじゃないか」って言われて、「本当だ!もうつながってるんだ!」って、ハッとしたんだよね。
「あなたが食べてる作物はどこからできてるの? 大地でしょ。もうそれで大地とつながってるんだよ。作物がないと生きられないでしょ。だから作物を生み出す大地を汚すっていうことは自分自身を汚してることと一緒だよ」とも言われて、「うおー!本当だ!」みたいな。それは土に限らず、空気も水も全部一緒だよねって教えてくれたの。
あと、歩いている最中にお祈りをしたり歌ったりするんだけど、そうするとトンビとか鷹とかがぴゃーって飛んできたり、気持ちいい風が吹いたりして。「わあ、すごいの来た!」って言ったら、「自分たちが今そういう振動で地球を歩いてるから、空とか鳥とかは反応してこうやって来てくれるんだよ」って。歌ったら虹が出ました、みたいなことが日常茶飯事で起こるんだよね。
自分たちの振動というのはこういうふうに伝わっていくんだなというのを目の当たりにして、もう説得力がありすぎて何も言えなかった。
三田愛 本当、その通りだよね。
山口愛 地球からのメッセージっていうとすごい大それた感じになるけど、それをしっかりと受けとることと、自分の内側から出てくるいろんな思いとかを大事にする。それが大事なんだということを教えてもらった経験だったんだよね。
私たち人間がいま発揮すべき力はなんだろう?
ーー 三田愛さんは「どうやったら人間が地球全体とコ・クリエーションできるだろうか」という大きな問いを持って、地球コクリ!の活動をされていると思うんですけど、今おふたりが語られたような「整う / 本物の自分に戻る / 嘘をつかない」ということが、人間が地球全体とコ・クリエーションしていくことにつながっていくのではないか、ということを感じながらお話を聞いていました。
三田愛 たしかに本物の自分に戻る中で、自然や地球に対して思いを馳せるとか、つながりを思い出すみたいなことって大事なんですけど、それはあくまでも一歩目で。その次に、自分がどうアクションするかってところが大切だと最近は思っています。
たとえばすごく良いリトリートに行っていろいろ気づきをもらって帰ってきても、日常でまたいつもの生活に戻ってしまうと、本人自体も進化できないし、結果的に地球と調和した、共創した社会にはならないじゃない。
だから、気づいたあとで元に戻ってしまうのではなく、いかに日常の中にその気づきをいかし続け、築き続けるかみたいなところに、人間は知恵や力を発揮するべきなんじゃないかな。
三田愛 それは、暮らしの中のちょっとしたリズムや習慣を変えることかもしれないし、住む場所や食べるものを変えるということかもしれないし、仕事の仕方を変えるということかもしれないし、仕事というものを通じて表現していくことかもしれない。
どんなことでもいいから、気づいた違和感を、「でも難しいから…」とか、「どうせ変わらないから…」って見て見ぬふりをしない。見ないふりをして放置されたのが今の世の中なんだけど、諦めずに少しでも変化を起こし続けていくことが、今、人間がやるべきことだなと感じています。
山口愛 コ・クリエーションに大切なものというと、私は自己信頼と他己信頼、安心感に尽きるなと思っています。やっぱり恐れや不安、欠乏感があると、自分とも世界ともつながれないでしょう。ということは逆に、もうこの世界には必要なものは満ちてるし、心配しなくても与えられるし、相互関係でちゃんとつながっていれば何も怖いことないんだよと思えれば、地球とも他者ともコ・クリエーションしながら生きていけると思うの。
人間がいろんな問題をつくりがちだなとも感じていて。本当は何も問題がないはずなのに、難しくする動きが今の社会にはあるな、と。 本当はもっとシンプルで安心できて心地いい場所のはずなんだけど、人間の心が問題をつくり出している側面もある気がします。
足りていることに気づき、意図を持って循環を起こす
三田愛 (山口)愛ちゃんは、「人間の役割」ってなんだと思う? というのも、地球上で他の生物とはちょっと異なる動物として人間って存在するけど、それでもその中に調和していた時代もあったと思うの。どこからか調和しなくなって、ここ数百年で地球や他の生態系を崩す存在になってしまっているけど、でも人間なりの知恵や力を一番発揮することが、実は地球をよくすることにつながるだろうと私は信じてて。
山口愛 人間の役割は「自然のお手伝いをすること」じゃないかな。私たちは技術とかいろんな能力があるわけで、それを地球上のさまざまな生物が一番いい循環を生む方向に使っていくことができれば、地球って良くなるんじゃないかと思う。
(三田)愛ちゃんが言うように、今は自分たちだけが儲かるようにとか、快適に生きられるようにとか、何か違う方向にその力を使ってしまっているから、本当に地球にとっていい形が何なのかということに技術や思いを使えるといいよね。
三田愛 なんで今はそういう役割として力を使えていないんだろう。何が邪魔しているのかな。
山口愛 繰り返しになるけど、不安感や焦燥感、欠乏感、信頼感のなさっていうところに尽きると思う。他人を信用できなかったり、無いと思い込まされていたり、実際に足りない状態にさせられていると、他に気持ちを向けることってできないから。
でも、ちゃんと分け合うことができれば、シェアすることができれば、いろんなことってうまく回るはず。うちなんてしょっちゅう大家さんから野菜とかをいただくんだけど、それを「お供え」って呼んでて、「お供えが今日も縁側に来た〜!」って言ってるの(笑) 大家さんは、つくっている野菜をひとりじゃ食べきれないからってシェアしてくれるんだけど、そうすると私たちも嬉しいから、いろんなことでお返しをする。
山口愛 大家さんは野菜はまた育つって信じきってるから、分けてくれるわけだよね。それが「あげたらなくなる」、「足りなくなる」ってなると絶対くれないと思うんだけど、大家さんみたいにちゃんと野菜や自然の力を信頼できて、人に分け与えるってことをみんなができれば、嬉しい、楽しい、有難いしかない。私も余ってるものを他に回そうとか、力になれることあるかなって、そういう循環が自然に起きてくる。
みんな結構いらないものを持ってると思うの、家の中に。シェアして使えばいいのにっていうものもあると思うし、食材を余らせて腐らせそうだったら、隣の人におすそ分けしてみたらいい。本当は足りているんだ、ということに気づけるといいよね。
ーー 三田愛さんは、「人間の役割」は何だと思いますか?
三田愛 「そうぞうりょく」を働かせることかなと思う。イマジネーションの想像力と、クリエイティブの創造力。クリエイティブの創造力の中に技術力とかもあるかなと思うんだけど、意図をしっかりと持った良い想像力ができたり、感性が開いていくと、創造力や技術力も変な方に使われるみたいなことがなくなるんじゃないかな。
(山口)愛ちゃんも、一番いい循環を生む方向に技術や思いを使えたらって言ってたけど、私も意図がすべてをつくってると思ってるんだよね。祈りには「意(意図)を乗り合わせる」っていう意味があるけど、不安や怒りからその意図の視点が下がると、自分や自分の会社、自分の周りだけがいいようにという意図になって、破壊や搾取が起きてしまう。
逆に、「他の人も生物も、みんな仲間だな」とか「自然からの恵みをいただいているんだよな」というように意図を働かせる対象が広がっていくと、地球全体が調和に向かっていくよね。
私がいつも思っているのは、数百年っていう短い期間で、私たち人間はこれだけ自然を破壊できてしまったのだから、意図を広げて、人間の力の使う方向を変えたら、短い時間で不可能だと言われている大きな変化も起こせると信じてる。
三田愛 そう考えたら、地球コクリ!は「地球に対して意図を広げる」ということにフォーカスしていけばいいのかもしれないって、今話しながら思った。
不安やエゴからくる意図だと自分中心、人間中心になるけど、「地域のため」とか「地球がもっとよくなるため」とか、「何世代先までも美しい環境を残したい」とか「すべての生命がいかされますように」とか、そういう方向に意図や問いが広がっていくための活動というイメージかな。
たとえば、「自分の企業の利益を上げる」ということに意図を持っていた企業が、「地球生態系全体がいい状態にあるために、自分の会社がどうあるか」と考えるようになると、そういう方向に人間の力をつ使うようになる。個人でも、みんなそれぞれ得意分野があるから、「地球のために私ができることってなんだろう」っていう意図を持って考えたらいろいろ思うつくはず。そういうところを地球コクリ!として探究していけたらいいな。
– INFORMATION –
4/23(土)17:30- アースデー東京/山口愛ソロwith アナスタシアドレス・宮下公園 Day1 フィナーレ
https://earthday-tokyo.org/earthda…/event/miyashiya_stage/
5/6(金)16:00- 葉山芸術祭@葉山ファクトリー(イマジン盆踊り部少人数編成)
5/27(金)18:00- 帝塚山音楽祭@大阪・やまとのやしろ(Cosmic⭐︎Caravan)
5/28,29 同イベントにてGospel & 盆踊り
●New アルバム
https://aiyamaguchi.bandcamp.com/album/-
●その他、各地でvoiceワーク開催
○FB→https://www.facebook.com/UtautaiYamaguchiAi/
○instagram→ https://instagram.com/aiutavoice0621
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(撮影:竹本裕乃、吉村直繁)
(編集:廣畑七絵)
ライター:三輪ひかり(みわ・ひかり)
編集者/ライター/保育者。
1989年東京生まれ。日本とカナダでの保育士の経験を経て、編集や執筆をはじめる。「その人がより、その人らしく生きる」ことを軸に仕事と暮らしをしています。 暇さえあれば、散歩と生け花、庭仕事。葉山在住。