はたらき方や暮らし方など、様々な価値観が急変化した2020年。個人も組織も地域も国家も、まさに世界中が新たなあり方を模索しています。もしかしたらグリーンズ読者の皆さんにも、街から田舎へ越したり、完全リモートワークができる仕事に変わったり等、すでに何かしらの変化へと動いた方もいるかもしれません。
不確定なことも多い中改めて、2018年の大ベストセラー『ティール組織』(英治出版)を手に取りました。組織マネジメントを解くビジネス書のジャンルに止まらず、世界中でランキングを席巻し、日本だけでも販売部数は10万部を超えているんだとか。600ページ近い大作だけに、関連書や解説書も増えています。
この本を一言でまとめるのは難しいのですが、主なメッセージのひとつは、所属する業界を問わず、進化する社会における「幸せのありかた」の考え方です。
例えば、多くの人が(希望通りか否かは別としても)何かしらの組織に関わって仕事をし、対価を得て暮らしているので、その組織がどんな組織であるかは個人の幸せに大きく影響します。
ある一人の絶対的存在が君臨する組織や、上下階級が差別的なほど強い組織では、当然ながら個人の幸せの優先順位は低くなります。残念なことにそのような組織もまだ現代に存在するのですが、歴史上、文明とともに進化する人々は変化も続けてきました。筆者が解く「ティール組織」とは、近い未来に増えるであろう次世代型の組織モデルの名称です。
著者のフレデリック・ラルー(Frederic Laloux)氏は、階層的な上下関係も、厳しい規則も、時間を費やすばかりの定期ミーティングも、さらには、売上目標や従来型の予算設定などが存在しない、しかし、売り上げは成長するという「ティール組織」は、すでに成功例も出ていることを紹介。さらに今後、変革後には増えていくことを解説しています。本書の原題もまさに、『Reinventing Organizations』(組織を再発明する)でした。
もうひとつ、個人の幸せにつながる働きかたとしてホールネス(全体性)の大切さを伝えていました。極端に言えば、個人がありのままでいい、という考え方です。これまでのように、誰か一人の全体性から一部だけを仕事に活かしていたのでは、本来その人がもっているリソースが使いきれてない、ということ。確かに言われてみれば、自分自身の一部分だけ毎日オフィスに連れて行っている、という人もいるかもしれません。
最後にこれだけ力作の本に圧倒されながら読み進めていると、決して進化したティール型が最終形ではない、と言われます。ここから先がさらに未来に向けたワクワクする部分でした。激動の年の最後に、進化が続くこと、幸せの形が広がることを感じてみるのはいかがでしょうか。
(協力:幸せ経済社会研究所、東急エージェンシー SDGsプランニング・ユニット POZI)
この記事は、東急エージェンシーのSDGsプランニング・ユニット POZIのホームページで展開している「幸せ経済社会研究所 読書会レポート」から参考に構成しています。
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