誰かに「問う」こと、自分に「問う」こと。「問い」は、ときに、自分や相手に変化するきっかけを与え、人生の冒険へと導いてくれます。あなたは日々、どんな「問い」を持ち合わせて生きていますか?
山形県鶴岡市に、「問い」とともに歩み続ける、人生の冒険者たちの合流地点のような場所があります。保育者、カメラマン、美術館職員など、さまざまなバックグラウンドを持つ方々が集う「やまのこ保育園」。現在、保育体制の充実と海外への事業所内保育所開設準備中につき、新たな仲間を募集中です。
保育園という子どもたちの暮らしの場ではあるのですが、なんだかここは、社会の小さな縮図のようであり、子どもも大人も全員が冒険できる遊び場のようであり、多様な人々が集う村のようでもあって。子どもという未知の存在とともに過ごすなかで、大人たちの中に次々に問いが生まれ、そのたびに対話をして、場が変化し成熟していく。その実りを社会へと落とし込んでいく。日々、そんな循環が巻き起こっています。
「やまのこ保育園」の子ども観やユニークな取り組みについては、以前こちらの記事でご紹介し、たくさんの反響をいただきました。今回は少し視点を変えて、「働く」をテーマに、保育者や経営者のみなさんの言葉を通して、そこにある働き方や人としてのあり方を見つめてみたいと思います。
「やまのこ保育園」で働くということ。その答えを紐解くため、まずはこれまでの歩みを振り返りつつ、昨年秋に新園舎がオープンし、2園体制になった「やまのこ」の“今”を覗いてみましょう。
変わらぬあり方と、広がっていく人間関係と。
2017年9月に開園した「やまのこ保育園」は、持続可能な社会の実現に向けてタンパク質素材の開発などに取り組む企業・Spiber(スパイバー)株式会社が運営する企業主導型保育所です。
企業主導型というと、運営を別の会社に委託する例が多いなかで、Spiberは、保育園を自社運営することを決意。保育者を社員として採用し、社員一人ひとりがで自分で給与額を決める「給与宣言制」を、Spiber社員と同様に保育園にも導入しました。
保育においても、「子どもと一緒に暮らしをつくる」という考えから、子どもたちが自分で洗濯や配膳ができる環境を用意したり、行事を最小限にして子どもがじっくり探求できる時間を保障したり、独自のスタイルで運営を続けてきました。
開園当初は0〜2歳児のための小さな園でしたが、昨年9月には規模を拡大。全天候型の児童遊戯施設「キッズドームソライ」の建物の一画に新たな園舎を構え、「やまのこ保育園」と「やまのこ保育園home」の2園体制(以下、2園の総称を「やまのこ」と呼びます)になりました。それとともに、3〜5歳の子どもたちも加わり、スタッフも増員。人数も活動の幅も大きく広がり、現在に至ります。
園長の遠藤綾(えんどう・あや)さんによると、2園になったことによるもっとも大きな変化は、関係性の広がりだそう。もともと身体知と感情知を大切に保育をしてきましたが、3〜5歳が加わったことで、特に感情知の部分に関して視野が広がってきているようです。
「子どもを未知の存在として捉えていくということは変わらず大事にしているのですが、個と集団、双方向に影響を与えあってダイナミックに変化していく様子が見えてきて、すごく面白いですね」と、遠藤さんは語ります。
また、そういった関係性の広がりは、スタッフの集団にも言えることなのだとか。スタッフの数は前回取材時の13人から倍以上に増え、2019年7月現在では2園で28人に。「やまのこ保育園home」の園長には新たに仲間に加わった長尾朋子(ながお・ともこ)さんが就任し、お互いの経験をいかしあいながら、運営体制もよりパワーアップしているそう。
「いろいろな才能をもった人が増えていて、メンバーがお互いに影響しあっている様子がすごく嬉しい」と遠藤さんは顔をほころばせます。コアメンバーが20人ほどに増えたことで経験値による力関係が出にくくなったとともに、ゼロから「問う」という姿勢も、パワーが格段に上がってきていると言います。
そして現在は、2園の保育内容の充実を目指すとともに、タイにSpiberの工場が稼働開始するにあたり、2020年を目指して工場併設の小規模園の開設を準備中。それに伴い、新たな保育者を4名募集しています。
現在も変化の真っ只中にいる「やまのこ」で働くということ。ここからは、スタッフのみなさん一人ひとりの言葉やあり方から、そのリアルを感じ取ってみたいと思います。まずは、3〜5歳児の「あけび組」を担当する個性豊かなスタッフのみなさんにご登場いただき、チームや個人のあり方についてお話を伺っていきます。
一般的にはタブー?
多様な視点が交わる、問い続ける保育スタイル。
あけび組の子どもたちは、現在17人。活動も感情もより豊かになる3〜5歳の彼らを、4人のチームで担当しています。
幼稚園教諭として7年間働き、世界を旅した後「やまのこ保育園」に合流した谷口千尋(たにぐち・ちひろ)さん。アメリカでの留学、都市農園での住み込みの仕事を経験し、帰国後はパーマカルチャーについても学んできた今井彩恵子(いまい・さえこ)さん。自然と遊びが好きで、大学時代にプレイパークや自然遊びのプロジェクトに関わったのち、新卒で入社した柏木拓人(かしわぎ・たくと)さん。カメラマンのアシスタント、カメラの修理など写真にまつわる仕事でキャリアを積んできた一児の母・大野歩(おおの・あゆみ)さん。
経歴も年齢も実に多様な4人ですが、明確な役割分担があるのは、ガーデンティーチャーとしての彩恵子さんと、撮影・記録の歩さんのふたり。午前午後、どちらかが半日ずつあけび組の保育に入り、残りの時間は彩恵子さんは庭や畑づくり、歩さんは撮影という得意なことをいかした働き方をしています。
そのほかにも、千尋さんは月間の計画づくり、拓人さんは木工や園庭の遊び場をつくるなど、なんとなく役割はあるものの、4人はいつも平等。子どもたちとの暮らしを育むチームとして、それぞれが子どもを観察してそれぞれの視点を共有し、ともに学び合っています。
千尋さん 私は以前は保守的な一斉教育の幼稚園で働いていて、「絶対にこうありたい」みたいな凝り固まった想いがあったな、と思っていて。予定もビシッと決まっていたほうが安心するタイプで、「なにかわからないけどやってみようか」といった実験的な感じに最初は抵抗感があったんです。
でも、今はわからないからこその面白さや、その場で話して考えるやり方を受け入れられるようになりました。柔らかに考えられる方々が近くにいるので、新しい発見があり、自分自身もすごく変わってきているな、と実感しています。
千尋さんの言う「予定」に関しては、1日の流れはおおよそ決まっているものの、子どもの様子や興味に合わせて柔軟に活動を変えていけるよう、お昼ご飯も含めて、時間による管理は最低限にしているそう。
外出もお昼寝もお味噌汁をつくる当番も、誘ってみてしたくないようなら子どもたちの選択に任せる。子どもたちが分かれて活動してもそれぞれに保育者が寄り添える、チームならではの柔軟なあり方と言えるでしょう。
また、「その場で話して考える」スタイルを支えているのは、毎日10分の共有タイムです。
千尋さん 毎日、その日にあったことについて、「自分はこう見た」と、みんなで出し合う時間を取っています。
たとえば以前、ちょっといたずらをする子がいて、私は相手が嫌がっていることに本人が気づいているのなら、やめさせたいと思っていたんですね。でも拓人くんは、「なぜそうしているのかもうちょっと見る必要がある。やりきらせることのほうが大事なんじゃないか」と。答えはないんですけど、そうやってずっと問い続けているという感じです。
拓人さん やりたい気持ちを聞く人もいれば、叱る人もいて、見守る人もいて。ひとつの出来事に対していろいろな視点がその子に伝わることで成り立っている、というのもあると思うんです。
彩恵子さん バランスが取れているというか。
歩さん それが支柱になっている。
彩恵子さん ここでの1日って波のような感じがあって、常に今に着目しているので、過去に起こったことを私は忘れがちなんです。でも4人で話し合って、自分がいかにひとつの視点で見ていたかということに気づいて、さまざまなできごとを立体的に捉えられるようになってきたことは私にとって大きいなと思います。
それぞれの視点が行き交う保育は、一見すると子どもたちに混乱を招くようにも思えます。これまでの保育現場の考え方からすると、NGなのでは? そう問うと、千尋さんは「タブーかもしれません」と笑いました。
「でも社会ってそんなもんじゃないかなぁ」と、拓人さん。千尋さんはさらに、
千尋さん 視点や行動を統一しなくても混乱しないのは、その判断の根本にある保育の考え方や時代の捉え方、生命についての考え方など、合宿などを通してみんなでじっくり話し合っているからです。行動の選択の理由は、保育目標に照らしてそれぞれが説明できる、その上で視点の多様性がある、ということだと思っています。
と言い、しっかりとした軸を持ちつつ、それでいて実にしなやかな考え方がチームに根付いているのを感じます。
とはいえ、ここは保育の現場。唯一経験のある千尋さんがリーダーシップを取る場面が多いのかな、と思いましたが、その平等なあり方は、かなり徹底してみなさんの中に浸透しているよう。
歩さん 普通なら、保育経験が長い千尋さんに「言い出せない…」みたいになっちゃうと思うんですけど、ここでは保育の知識があろうとなかろうと、みんなが同じ重みを持って受け止めてくれるので、誰もが同じように発言できる。みんなが多様なバックグラウンドを持っているので、話し合いのときでもヒエラルキーがなくてすごくいいな、と思っています。
拓人さん 保育の経験はなくても、その人なりの重みはあるから。千尋さんは保育経験があって、歩さんは母としての重みがある。僕は自分に保育経験がないことは自覚していますが、抵抗なく意見を言える環境です。
もちろん、保育の専門家ではない人たちのチームでは、子どもの発達や行動に関することなど、専門的な視点の共有に難しさを伴うこともあるでしょう。それでも、「多様な人たちといる方が明らかにいい」と、千尋さん。
歩さん 園として、子どもたちにも多様性を認めてほしい、多様でいい、という想いがありますが、私たち大人がまず多様で、みんながみんなを尊敬しあっている感じがすごくあります。それがそのまま子どもたちに伝わっていくといいですね。
子どもたちに「多様であれ」と言うのではなく、大人たちがまず真の多様性をそのあり方で示す。それはとても本質的なことですが、実際には難しさも伴います。でも、それを現実のものにしているのは、「やまのこ」の根底にある「ゼロから問う」という一貫した姿勢。絶えず問い続け、視点を共有することでお互いをいかしあう4人のあり方に、チームとしての力強さを感じました。
まずは自分が気持ちいい存在でいたい。
自分の中の違和感を手放さずに生きるということ。
一方、1〜2歳の小さな子どもたちを担当しているのは、本倉理恵(もとくら・りえ)さん。すでに3歳になった子も含めて11人が属する「わらび組」を、この春から新卒で入社した浅野寧菜(あさの・ねいな)さんと2人で担当し、ともに暮らしをつくっています。
あけび組と同様に、お散歩など日課はあるものの、1日の決まった時間的な流れはなく、基本的にはいつでも自由時間。特にその日にやることも決めず、外で遊んだり本を読んだり、歌を歌ったり、子どもの興味に合わせて即興で活動を広げているそう。
理恵さん 大人が用意しても、子どもはそこに乗ってこないことの方が多いので、子どもが持っているものを一緒に楽しむ方がどちらにとっても豊かな時間かなと思っていて。1〜2歳はその日の気分で、何かができなかったり眠たかったりして大泣きしちゃうこともある。だから、即興で歌をつくったりして子どもたちと楽しむようにしているんです。
そんなふうに小さな子どもたちに丁寧に寄り添い、ともに暮らしをつくることを楽しんでいる理恵さん、実はユニークな働き方をしています。開園前の2017年5月、保育園の準備段階から「やまのこ保育園」に関わってきましたが、半年ほど前からは、他の保育者のみなさんと同じ8時間ではなく7時間勤務へシフトしました。
理恵さん 立ち上げから1年間ずっと突っ走ってきて、生活の大半が仕事ベースになってしまっていて。仕事ももちろん大事だけど、自分の中ではこの土地で暮らすということもすごく大事。このままの状態で走り続けると私はベストな状態で子どもの前に立てないな、と思って、綾さん(園長)に相談したんです。
綾さんは快く受け止めてくれて、その働き方が可能なのか一緒に考えながら業務の調整をしてくれました。自分が一番いい状態で働けることを応援してくれたので実現できた。一緒に働いている人を大切にしてくれるのはすごくありがたいな、と思います。
あけび組の4人からも感じた、自分の気持ちを正直にシェアする文化。特に前例のない働き方を自ら言い出すのは相当の勇気を要するように感じますが、それを後押ししてくれたのは、やはり子どもの存在だったようです。
理恵さん やっぱり子どもにとって、そばにいる大人の影響はすごく大きい。私の心がざわざわしているときはクラスもざわついているし、私が穏やかならクラスも穏やかになるというのを日々実感していて。だから自分のためだけじゃなくて、子どもたちにゆっくりしたエネルギーを手渡したいという想いが後押ししてくれたのかな、と思います。
私がそうすることで、自分のニーズを信頼できる仲間に伝えてもいいんだ、という安心感をみんなに持ってほしいという想いもどこかにありました。
過去に別の保育園で働いていたとき、日本以外の国の子どもたちのことが気になり、世界への旅に出たという理恵さん。そこで価値観が変わり、その後NGOスタッフとして働いたり、モンテッソーリ教育を2年間かけて学んだり、実に多様な経験をしてきました。いつも人生の選択においては、常に自分の中の直感や違和感を後回しにせずに歩んできたとのこと。
理恵さん 私は社会を変えたいとか大きいことは思っていなくて、自分が気持ちいい存在でいるということが周りを変えて、気づいたらみんな気持ちよくなっていた、みたいになるといいのかな、と思っています。
あけび組の4人とは、また違った理恵さんの働き方、あり方。「やまのこ」の「問い」とともにある文化が、さまざまなあり方が心地よく共存し、お互いのあり方をいかしあえる環境をつくっていっているのだと感じます。
保育園の存在が、会社を確実に変えている。
理想と現実のギャップも、諦めずに問い続ける。
さて、ここまでは保育現場の方々の声を聞いてきましたが、最後に、「やまのこで働くということ」をテーマにした座談会をお届けします。
集まってくださったのは、「やまのこ」の2園を運営するSpiberの創業メンバーであり、現取締役兼執行役の菅原潤一(すがはら・じゅんいち)さん、保育園の事務兼コミュニティコーディネーターである佐藤縁(さとう・ゆかり)さん、そして、あけび組チームの今井彩恵子さん。
まずは現場で働くおふたりに、働く環境として特徴的だと感じることについて聞きました。
縁さん 私の中では給与宣言制が始まったことが、大きなインパクトでした。年に2回の給与宣言を繰り返すことで、半年前の自分と今の自分を見比べてどのくらい成長したか、目標にどのくらい近づけたか、といった伸びしろを見て振り返りができる。とても良い機会だな、と思っています。
彩恵子さん 私もここに来るまではずっと時給制のフリーターだったので、自分の労働に価値をつけるということをやったことがなくて。そもそもそういうシステムがあることにびっくりでした。
実際にやってみて、なぜ私がこれだけもらえるかということについて、以前の私がいかに咀嚼していなかったかすごく気付かされました。何かを得るためのプロセスというよりは、私が何をして、その結果何が生まれているか。簡単に答えは出ないんですが、問い続けるプロセスを与えられていると感じました。
ふたりの発言に対し、菅原さんは「すごく実験的な取り組みで、私たちも悩みながら取り組んでいるという前提はお伝えしたい」と前置きをしつつ、この制度を始めたきっかけについて語り始めました。
菅原さん Spiberに集まっている人たちは、一人ひとりが内発的な動機を持っていて、自分はこういうことがしたい、こんな風に社会に貢献したい、それを実現するためにここに来た、という独立した考えを持った人が多いんです。そんな中で、誰かが誰かを評価して、一方的にお給料を決めてしまう、という行為に違和感を覚えたんですよね。
とはいえ、評価の一定の基準がないと困ってしまうと思うのですが、そこは情報をオープンにしておけば一人ひとりが判断できるんじゃないか、それこそが真に一人ひとりのメンバーが独立している強い組織なんじゃないか。そういうディスカッションの中で始まった制度なんです。
菅原さん 実際にやってみて、働くってなんだろう? とか、お給料もらうってどういうことなんだろう?とか、ある種答えのない哲学的な問いをみんなが考えるようになりました。思考がチーム全体として成熟したような感覚を持っています。
縁さん お給料を決める理由について、最初は自分の資格やスキルにばかり着目していて本質的に何が大切なのかというところまで落とし込めていないなぁ、と思っていたんです。でも、毎日子どもたちと一緒に営みを大事にしていくなかで、ひとりの人間としてどうありたいか、ということにたどり着いて。
彩恵子さん 保育の現場って子どもたちと生きるということを営みにしているので、何をもってパフォーマンスが高い状態とするかがわからないんですよね。その影響は私たちに出てくるのか、子どもたちに出てくるのか、そもそも出てくるものなのか。チームでも対話を続けて、問い続けていますね。
また、縁さんは、「自分が主役になってアイデアが出せる現場」であると感じているそう。
縁さん 以前、判断を迷ったときに立ち返るような「やまのこ」のミッションをつくろうとしていたときに、私が提案した「子どもたちとともに冒険する」という言葉からいろいろなディスカッションが生まれて。そこから派生して、現在掲げている「問い駆動形」という話になったんです。
彩恵子さん 子どもたちの言葉、態度には、100以上の解釈、捉え方があります。だからこそ、常にわたしたちの中に問いが生まれ続けて、その試行錯誤は終わることがない。いつも模索している状態で子どもたちと関わっていて。私たちも昨日の答えから一歩踏み出して今日はもう少し冒険したいし、子どもたちも冒険していく。
結局、話し合いでミッションとなる言葉は決まらなかったんですが、固定化された言葉ではなくて、「問い」によって保育が変化していく、そんなスタンスを一人ひとりがしっかりと持っていくことこそがミッションだという結論になりました。そういった保育に関わる姿勢を「問い駆動形」と呼んでいます。
菅原さん それ、面白いですね。大人も悩んでいるという姿を子どもに見せることって重要だと思います。子どもも大人も、答えが与えられ続けると思考停止になってしまうじゃないですか。そうやってみんなできちんと考える習慣や環境が人それぞれの思考力を高めていくと、結果的に自立性とか主体性になっていくと思うので、Spiber全体として大事にしたい考えだな、と思いました。
ふたりの発言を受けて、菅原さんは改めて「やまのこ」の現場での取り組みに価値を感じた様子。そのほかにも、園長の遠藤さんからは、「やまのこ」の子どもたち同士や子どもと大人の関係性から学んだことについて、フィードバックを受けているのだとか。
菅原さん 相手との関係性のなかで調整していく力をみんなが身につけるために、その過程をどうつくっていくかというのは私も常々考えていますが、遠藤さんは、「学習する組織」や「システム思考」をベースに考えていて、それは会社のチームづくりにもいかせるなと学びを受けています。
「やまのこ」ができたことでSpiberも変わってきていますね。単純に職場に子どもがすごく増え、いい雰囲気をつくってくれているという意味でも、変わりました。
彩恵子さん この前も、あけび組でつくった土筆のおにぎりを会社に売りに行ったんです。子どもたちがお父さんお母さん以外の人とも触れ合っていて、とても良い雰囲気でした。
「会社は社会のためにある」というSpiberの普遍的な企業理念のもとにつくられた「やまのこ」。今、保育園の存在が会社を変えるという逆の矢印が生まれ、企業と保育園の間に、いかしあう関係性が芽生えようとしています。
一方で3人は、まだまだ働き方に関する課題も感じているそう。彩恵子さんは、こんな個人的な想いを切り出してくれました。
彩恵子さん 「もっと休みがほしい」という気持ちにどうやって忠実に向き合えるか、というのは正直あります。自分もここだけが成長の場ではなく世界がフィールドで、外から学べることもたくさんあって、循環と成長と恵みがあると思うんです。でも、保育という場がある限り、「3週間ガンジス川に行きたい!」みたいなのは、なかなか難しいというのが個人的な葛藤ですね。
そんな彩恵子さんの想いに対し、菅原さんは「遠藤さんには怒られちゃうかもですが」と笑いながら、「僕個人としてはどんどんやっていただきたい」と断言。
菅原さん 偽善者っぽく聞こえるかもしれませんが、僕らの会社は「会社は社会のためにある」と思っていて、判断基準のひとつは「どっちのほうが社会のためになるか」という考え方なんです。
たとえばその人が会社の外でさらに大きな価値を生み出せるんだったら、僕らはその人の背中を押すべきだと思っていますし、逆に会社にいることで最大の価値を生み出せるのなら「ぜひいてください」って言います。
リスクはあるし勇気のいることではありますが、逆に彩恵子さんがそれで成長して戻ってきてくれるかもしれないし、長い目で見るとそれは大きな価値を生み出すことにつながると思う。そういう会社にしていきたいという想いがあります。
ただ、現実問題として業務が回らなくなってしまうといったこともありますので、理想と現実の間をどう埋めていくかを考えていきたいと思います。
理想と現実のギャップを埋めるため、今年、まずは初期メンバーである8人から、年の初めに一週間まとめて休む日程をそれぞれが決めるという試みを始めたそう。そのほかにも、開園当初から、毎日確実に1時間の休憩を取れるようにする仕組みづくりに継続的に取り組んでいます。
また、理恵さんは1時間短縮勤務、彩恵子さんや歩さんはフレックス、というように全体やチームの状況を見ながら個人のニーズにあわせた働き方ができるようになってきています。
常に問い、トライ&エラーを繰り返していくなかでは、当然のことながらうまくいかないことも多々あるでしょう。それでも、彩恵子さんは変わり続けることに価値を感じている様子。菅原さんも、そのあり方にこそ、未来を変える力があると語ります。
彩恵子さん 私は「やまのこ」で働くことって、液体的というか、固定していないものと捉えていて。1年前は今の「やまのこ」と全く違うし、1年後の風景も全く違うと思っていて、すごく楽しくて、ワクワクもあれば未知への不安もあり過去への誇りもある。どこに辿り着くのかはわからないけど、船に乗って、みんなで荒波に向かって行くぞという感じです。
菅原さん 僕は「やまのこ」のあり方も働き方もすごくユニークだと思っていて、そのユニークさが大切だと思っています。世の中には素晴らしい教育や制度や方針がたくさんあって、でも、正解は一つではありません。ユニークであればそれが選択肢になるし、人類のひとつの知識になっていきます。
みんなが同じことばかりやってしまったら社会から多様性が失われてしまいます。ユニークであることを恐れずにやり抜くということが、Spiberの大切な価値観のひとつだと思っています。「やまのこ」で働くことも、そういうことへの挑戦なのではないかと思います。
それぞれのあり方、それぞれの働き方、組織としてのあり方。それは問い続けることで、常にアップデートされていきます。
「問う」という文化を持つ「やまのこ」のみなさんに共通しているのは、自分の感覚に正直に生きるという姿勢、そして、多様性を認め合い、お互いをいかしあい、変化を恐れないしなやかさ。今、この鶴岡の地で合流したメンバーたちは、この場を大切にしつつも、今後もそれぞれの人生を自分の気持ちに正直に歩んでいくのだろうと思います。
もしあなたが「やまのこ」に合流したら…。きっと彼らはあなたのあり方を認め、受け入れ、チームのあり方も変化していくことでしょう。そしてそれが、世界にただひとつのユニークな組織をつくり、いつか社会を変えることになる可能性だってあるのです。
今回の求人では、保育経験者はもちろん、未経験の方の応募も受け付けています。ゼロから問う姿勢を持ち続けることは、決して楽なことではありませんが、人が好きで、人と人が及ぼし合う変化にワクワクを感じるあなたなら、大丈夫。鶴岡の地であなたの合流を心待ちにしている冒険者たちのもとへ、一度足を運んでみませんか?
– INFORMATION –
エントリーに興味を持った方は、ぜひご参加ください。
2019年7月31日(水)19:00-20:00
2019年8月3日(土)15:00-16:00
2019年8月19日(月)19:00-20:00
2019年9月3日(火)19:00-20:00
現地採用説明会
2019年9月13日(金)9:30-16:00