突然ですが、みなさんは「竹だけでつくられた紙」の存在をご存知ですか?
わたしは先日その紙で名刺をつくったのですが、仕上がりを手にした瞬間「すごいものに出会ってしまった!」という心地よいザワザワ感に襲われ、脳内で何かがピカーンと光るような気持ちになりました。
昔の人が”同じようなものが次々に出現すること”を「雨後のたけのこ」と表現したように、竹はどんどん生えて成長が早い植物。そのためかつての日本では資源として活用し、竹細工という芸術的な文化にも発展したという歴史もあります。しかし安価なプラスチック素材などに押され、いつのまにか竹害(ちくがい)という悲しい言葉がうまれるほど各地で放置された竹林が存在するようになってしまいました。
1998年、製紙メーカーの中越パルプ工業株式会社による地道な努力の末、この竹紙が開発され、現在ではその社会的価値に共感した方々がいろいろなグッズを販売しています。
ちなみにわたしの名刺は「竹紙ラボ」というオンラインショップにお願いしました。デザインデータを送るか、もしくはデザインそのものから相談することもできます。
オーダーから数日。自宅に届いた名刺の竹紙は、思わずなでたくなる柔らかな手触りと、独特のあたたかさがありました。光にかざすとほんのりと透ける「ホワイト」と、植物性の風合いがストレートに感じられる「ナチュラル」の2色から選ぶことができ、印刷した時に、それぞれ個性がある。この竹紙そのものの特徴こそが、「すごい」と感じた最大の理由でした。
この数年はエコの観点から、年賀状をだすことも、名刺をどんどん消費することも、書類を出力することも極力ひかえていたのですが、「ひょっとして竹紙なら、むしろつかった方が環境保全になるのでは・・・?」と思い始めたのです。
そう思ったらなんだか色んなものをつくりたい欲が芽生えてきました。これを「クリエイティビティ」と呼ぶのか「想像力」と呼ぶのか。たかが紙ですがされど紙、わたしというイチ個人の概念がガラッと変わってしまった瞬間です。
デジタルデータのまま出力しないでも済むことが増え、手紙やハガキなどを手書きする機会も減っている昨今だからこそ、今一度、紙の可能性に魅せられたいと思うこのごろです。