みなさんは、世の中に出回っているファストファッションのほとんどが、リサイクルが難しい化学繊維を含んでいることをご存知でしょうか。
着なくなった服は古着屋に出したり、ネットで販売したり、最終的には資源ごみとして出せばいい。そうすればゴミにはならないから、地球を汚さないのではないか。
私はそんな風に思い込んでいました。
しかし実際は、服のほとんどが最終的に埋立地に行く運命にあります。
その数、毎年およそ100億枚。
ファストファッション業界は、非常に多くの繊維廃棄物を生み出しました。
そう話すのは、今回の記事の主人公、「Marine Layer」創業者のMichael Natenshonさん(以下、マイケルさん)。マイケルさんは「Marine Layer」というブランドを立ち上げ、”永遠に着られるTシャツ”を目指し、古くなった服をリサイクルしたコレクション「Re-Spun」を展開しているのです!
「Re-Spun」を展開する背景には、マイケルさんの「消費者にもっと認知してもらいたい」という思いがありました。
私たちは、埋め立て地から服を救出したいと思っています。
そして、服を購入している人々にこの環境問題を知ってもらうために、リサイクルプロセスに参加してもらうことが必要だと思ったのです。
彼らは、「水も化学物質も染料も使わないリサイクル」を目指し、それを実現できる技術を持っていたスペインの工場と提携。コレクションを披露する洋服をつくるのに必要な古くなったTシャツをおよそ1万枚集めるため、店舗や郵送で回収しようと尽力しました。
そして2019年4月、「Marine Layer」は「Re-Spun」コレクションを発表したのです。
コレクションにあるTシャツは全て、コットンTシャツからリサイクルした繊維が50%、プラスチックからリサイクルした繊維が50%使われていて、100%リサイクル素材使用なのです!
どれも、一目でほしくなってしまうほどクールなデザイン。その中でも「Recycled」のロゴが入ったTシャツには、これを着て友たちに「どんなストーリーがある服なのか」を話してほしいというメッセージが込められています。
そして、このTシャツをもっと人に自慢したくなる仕掛けがこちら。
デザイン別に付けられたタグ。そこには、「このTシャツには、90’sのボーイズバンドTシャツが16.4%含まれています」など、どんなTシャツからリサイクルされたのかが書いてあり、くすっと笑えます。
誰かのお気に入りのTシャツがいつまでも残されていくことを、タグを使って表現しているのです。
どのデザインも色使いが特徴的なのですが、実は、一切染料を使っていないのです。古くなったTシャツの色のついている繊維を集めることで、染料を使うことなく鮮やかな色を出すことができているのだとか。
リサイクルの過程で地球を汚したくないという想いと、それを実現した技術に驚きです。
そして2019年6月現在、アメリカ中から7万枚もの古くなったTシャツを集められ、そこから毎日新しいTシャツが生まれています。
何よりも、自分が着たくなるTシャツを
このように、かつてない方法で服のリサイクルを実現した「Marine Layer」。
意外なことに、彼らのビジネスのはじまりは環境問題へのアクションではなく、「お気に入りのTシャツをずっと着たい」という気持ちだったのだとか。
「Marine Layer」のストーリーが書かれているページには「自分がお気に入りだったTシャツを、彼女に捨てられてしまった。だから、もう一度つくろうと思ったんだ」というエピソードがあり、自分のためにつくり始めたことがわかります。
そしてTシャツを生まれ変わらせるアイデアを出し、仲間を集めていくうちに、「Tシャツは人々がもっとも簡単にリサイクルプロセスに参加するきっかけになるのではないか」と気がついたのです。
「Marine Layer」のコレクションやこだわりからは、つくり手がどこまでも純粋にファッションや暮らしを楽しみ、同時に地球を愛していることが伝わってきます。
彼らの、リサイクルによって生まれ変わったTシャツに可能性を感じたワクワクが伝搬し、その空気感に多くの人が共感したことが、7万枚もの古くなったTシャツを集めることに成功した理由なのではないでしょうか。
どんなことも、楽しくないと続いていかない。
環境問題など、長期的に取り組まなければならない課題ならなおさらだと思います。「Re-Spun」ように、どんな人も参加できて「人に自慢したくなる」ビジネスが広がっていったらいいですね。
[Via FAST CAMPANY, Marine Layer]
(Text: 森野日菜子)