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表参道でソーラー発電フェス「MIDORI‐GO FES.」にて太陽光とDJがつくり出すサウンドを聴きながら、僕らの未来の暮らしを考えてみた。

東京中の感度高めの人たちが集まるんじゃないかと思しき、表参道のcommune 2nd (旧
Commune 246)。このクールでヒップな場所を運営しているのがメディアサーフコミュニケーションズという会社です。

この、通称「メディアサーフ」は、青山ファーマーズマーケットの運営をしている会社でもあります。毎週土日に青山の国連大学前で行われているマーケットといえば、東京に住んでいる人なら聞いた・訪れたことがあるかもしれませんね。

そのメディアサーフコミュニケーションズ主催で、「MIDORI‐GO FES.2nd at COMMUNE2nd」が2017年3月26日に、行われました。

会場となったCOMMUNE2nd

これは「GREEN POWER プロジェクト」の一環で、青山ファーマーズマーケットで行われた第一回に続く開催となります。「GREEN POWER プロジェクト」とは何かというと、経済産業省・資源エネルギー庁がイニシアチブをとって、官民共同で再生可能エネルギーを考える取り組みのこと。greenz.jpの「わたしたちエネルギー」プロジェクトの一連の記事とイベントも、その一部です。

フェスの主役はソーラー発電自動車「みどり号」

「MIDORI‐GO FES.」の名の通り、このイベントの主役がこちら、「みどり号」。

みどり号の屋根の3枚のソーラーパネルが今回のフェスの動力源。

お披露目以降、毎回の青山ファーマーズマーケットでも活躍しており、徐々に認知度が上がっているみどり号。いかにも電気!とわかりやすいイナズマとデンキウナギのマークが入ったみどり色の車です。

3枚のソーラーパネルと蓄電池を搭載しており、車の動力と火力以外の電源を太陽光からの電気でまかなうことができるという、イベントにもってこいの自動車なのです。
みどり号のお披露目会と内部の様子はgreenz.jpのこちらの記事からご覧いただけます。

実は「MIDORI‐GO FES.」は、このみどり号に積まれたソーラーパネルと当日会場に設置されたソーラーパネル、また当日までに蓄電した電気によってサウンド周りの電力全てをおぎなったフェスなのです。

もともとは太陽光発電で貯めた電気で料理をする「オフグリッドキッチンカー」であるみどり号ですが、「MIDORI‐GO FES.」ではDJライブで使用する電力の供給源となりました。

ちなみに、みどり号の蓄電池はターンテーブル2台、ミキサーを使ってDJプレイを約10時間楽しむことができる量の電気をためておけるそうですよ。森の奥の、何もないところでだって夜通し音楽を流し、踊ることも可能なわけですね。

ワークショップ「希望の未来を考える –エネルギー編-」特別講座

屋外会場でのDJのプレイに並行して、commune 2ndに併設されているカフェIKI-BAでは、メディアサーフと自由大学のコラボレーションワークショップ「希望の未来を考える-エネルギー編-」が3時間にわたって開催されました。

これは自由大学で実施している講座、「希望の未来を考える-エネルギー編-」の特別編。講座のキュレーター・本村拓人さんとメディアサーフの松井明洋さんを中心に、世界の動向や社会を変える取り組みの事例を紹介しながら日本・そして世界全体の「希望の未来」を考える参加型トークセッションです。

本村拓人さん
1984年4月 東京都生まれ。2004年名古屋にて人材派遣会社の立ち上げに参画。米国留学中アジア、アフリカを放浪。この経験から新たに貧困の定義(=想像力が枯渇している状態)を提唱。以後、世界を移動しながら具体的にこの”貧困”問題に取り組む株式会社Granmaを2009年に設立。以後、メディア&イベントプロデュース業、キュレーション業、プロダクト&ビジネスモデルデザイン業の3つの”業”を通じて問題解決に取り組む。

松井明洋さん
メディアサーフコミュニケーションズ株式会社 取締役社長。大学卒業後、2006年に黒崎輝男氏が創立した新しい学びの場「スクーリング・パッド」を卒業後、同氏が設立したメディアサーフコミュニケーションズに参加。企業のプロモーション戦略や東京のユースカルチャーシーンとのコラボレーションなどを軸に、「COMMUNE 2nd」や「Farmer’s Market @ UNU」といった同社の様々なプロジェクトに携わっている。また現在は、世界中の様々な都市を訪れ、「何が都市を突き動かして行くのか」という点を探求中。

國崎泰司さん
1982年生まれ。 2010年より、DIY八百屋集団「Sunshine Grown」を立ち上げる。 八百屋事業や、ケータリング事業、レストラン「EDIBLE GARDEN」を運営。 2016年よりTOKYO DESIGN FLOWやFARMER’S MARKETやCOMMUNE246、企業のプロモーション戦略等を行なうMEDIA SURF COMMUNICATIONSに在籍。みどり号プロジェクトでは松井さんと共に企画運営をメインで担当した。<

屋外会場には名実ともなうDJたちによるプレイ、そしてダンスに夢中になっている人々。そしてIKI-BAの中では、音楽のビートを背景に、真剣な眼差しで議論が進みます。たくさんの参加者・聴講者の間で行き交うトークに屋内の気温が上がり、窓がくもるほど。さあ、どんな議論が交わされたのでしょうか。

エネルギーから考える、混沌の時代の希望の未来。

3名のキュレーターを中心にセッションがスタート

「ソーラー発電にまつわるイベントの日に限って、雨が降る…。」という松井さんのつぶやきと、それに続く会場の温かな爆笑で始まったトークセッション。自由大学の講座の中で受講者の方から出た質問に答えつつ、参加者の方とのインタラクティブな議論で話を広げてゆくスタイルです。

まずはキュレーターの本村さんから趣旨が説明されます。本村さんは、これまでに世界70カ国を訪問してきたツワモノ。今もキャンピングカーで世界を旅しながら、一方で拠点はインドに置き、社会の変革に取り組んでいます。

そんな本村さんは、「エネルギー供給源を自分で確保するのはかなり大きな社会変革だ」という思いをもっています。 個人が自立するにしても、地域や国が自立するにしても、エネルギーの確保ができるかどうかはかなり重要なことです。

大概の発電事業はスケールが大きすぎて、時には複数の国家が絡む外交問題にもなるほど。日本でも、2011年の東北大震災の後、電力をはじめとするエネルギーをいかに社会や自然に負担をかけずに確保するか、という課題にたくさんの人が注目し始めました。

オフグリッドな電力というのは、そんな意志を実現しシンプルなアクションで大きな社会問題を自分ごとにできるツールなのです。そんな状況があって、自由大学で「希望の未来を考える-エネルギー編-」が開催されたのでした。

そして、このワークショップで最初に提示された質問はこちら。

日本、世界において未来のエネルギーの活用はどうあるべきなのか。また日本において再生可能エネルギーの比率を上げていくために何をすればいいか。

ウォーミングアップのようなものはなく、いきなり骨のある問いから始まりました。

もともとの興味に加えて5回のシリーズを受け終えたことで知識も熱量も増した講座の参加者の方々から出た意見は、「エネルギー収支に気をくばること」、でした。

エネルギーをつくるまでのコストが経済、自然への負荷を踏まえた上で適正か。これまではそれを看過してきたことから今になって様々なしわ寄せが起こっています。これから、エネルギー収支を考慮した利用が日本、そして世界で広まればいいですよね。

また別の参加者の方によると、日本に市民グループがつくる小規模発電システム、いわゆる市民発電所は139箇所あり、その動きが活発化してきたのは「過疎地域」からであったといいます。過疎地域こそエネルギーコストが高いから、市民電力をつくろうという動きが出てきた、と。これも、地域で自活し、自分たちの自立性・耐久力を高める有用な手段でしょう。

それから、國崎さんがつけ加えました。

國崎さん みどり号をつくってみて、ソーラーパネル・蓄電池の搭載は思ったよりもかなり安くできることがわかりました。現在の技術があると、手の届く値段でソーラーパワーを使うことができる。ソーラーパワーだとグリッド送電網ではできないこともできる。もっと知る人が増えたら、そこからやってみようという人もまた出てくるんじゃないでしょうか。

みどり号を自分でつくってみてわかったことをシェアする國崎さん

北欧に学ぶ、「持続的な社会づくり」への向き合い方

話はそこから、他国はどうエネルギー問題に意識を向け、またどのような社会変革への関わり方をしているのかに移りました。

デンマークに2年間留学されていたという参加者の方がお話しされていたエピソードは興味深いものでした。市民が社会を変えていく意識を持つには「教育」がとても大事、と言う彼女。デンマークでの市民の社会参加の視点は、SDGsの指針のもとに向かうべき社会のあり方を見据えた教育をしていることで、より先を見据えた持続性のあるものになっている、とのこと。

ところで、SDGsってご存知ですか?

SDGsとはSustainable Development Goals(持続可能な開発目標)という、2015年に国連サミットで採択された「人間、地球及び繁栄のための行動計画」としてかかげられた宣言および17つの目標のことです。(参考: 国連広報センター

これは、まだ貧しい発展途上国だけの目標ではなく、日本や他の先進国も含め、世界中で取り組んでゆくべき目標として定められました。日本は少々出遅れてしまっていますが、世界を見渡すと先進国を中心に、SDGsを指針として国の政策を決めているところは少なくありません。また、国連や国際協力の場では当たり前のように頻繁に聞かれるワードだそうです。

すでにある「充足」からより豊かな生活を求める現代…
そんな時代の「安定」とは?

社会問題に関する鋭い質問に、言葉を選びながら真剣に答える松井さん

次の質問は、「私たちの未来における《安定》とは何か?」 というもの。

もうずいぶん前、バブル経済崩壊のころから「安定を求める若者」という言葉はよく聞こえてきます。安定ってなんでしょうか。正社員であり福利厚生があるキャリアを持つこと?インフラが整った社会に生きること??

そのとき、ワークショップの直前まで屋外会場でプレイしていたDJの方が、ふと声をあげました。

自分は、なかなかお金がなくて、生活が大変な時もありました。そんな中で思った 《安定》とは、明日の支払いを気にしなくていいことや、明日買う食べ物を心配しなくていいこと。明日出て行くお金を心配しなくていいって言うのは、すごく安定だなあと思います。

とても洞察に満ちた言葉だと感じました。人間は、明日のくらしの見通しが立たなければ未来に投資をしよう、とは思わないものです。今日・明日の食べるものもままならなければ、未来に希望を見出すことも難しいでしょう。

まったく予想のつかない《安定》の捉え方も出ました。それは松井さんが紹介してくださった、メディアサーフの創立者・黒崎輝男さんの言葉です。

いわゆる普通の安定、は求めない。けれども僕にとっては、常に変わり続けているっていう状態が安定なんだよね。

未来を見すえて、東京のカルチャーを牽引してきた方にとっては、ポジティブな変化こそが安定の状態であるようです。

「なにをやってるかが50%、どう伝えるかが50%」

自由大学の講座参加者、一般聴講者の他にキュレーター陣の友人・仲間たちもかけつけた

エネルギーや安定した生活、の話は広がり、続いて「良い社会変化を生み出し、それを広げるにはどうしたらいいか」という話題に。

Commune 2ndは前体制の時から数えると、もう5年目に差し掛かっています。人が出会う場所としては大きな役割を果たしてきたが、これからはそうであるだけでなく如何に未来をよくするかっていうことを考える場所にしていきたい、と松井さん。

メディアサーフの人々の思いは、ここで社会実験的なことをして、未来を変えられる可能性を提示する、そして「かっこいいって思ってもらう」こと、にあるようです。

例えばSDGsを出しているのは国連で、でも国連は問題を提示する機関であり、わたしたちの生活習慣まで入り込んで変えてはくれません。そこを文化レベルで落とし込み、広げる役割を担うのが、メディアサーフや志を同じくする仲間たち、というわけです。スケールの大きな問題提起を「自分ごと」に変換するのは、大きな体制の中では難しいことですからね。

例えば青山ファーマーズマーケットという場所が、単に野菜や果物を対面で買っていく場所から、様々なイベントが中庭であったり、フードカートがいたり、ライブがやっていたり、と土曜もしくは日曜の人々の時間の過ごし方を少なからず変化させていると思うのです。つまり、入り口は野菜だけど、ライフスタイルの転換の一助になっている、と。

同じようにみどり号は、出会う人たちが再生可能エネルギーについて考えるためのキャッチーなとっかかり。エネルギーについて考えようって言ったって、それが自分ごとじゃないと誰も本気で考えないけれど、いいDJだけを選りすぐってプレイしてもらうパーティで、ソーラー発電した電気が使われてたと知ったら、ちょっと興味を持つきっかけになると思いませんか?

力のあるDJのみを揃えたDJブースでのパフォーマンス

大事なのは「ソーラー発電ってかっこいい!やってみたい!」という、心を揺り動かす気持ちなのですが、それにはやっぱり状況もだけれど見た目も重要。松井さんと國崎さんは、みどり号につけるライトを、どうしてもエジソンランプにしたかったそうです。

最初はぼんやりとした淡い明かりが徐々に灯っていく、という過程そのものに美しさがあると思うから。効率性だけで語ることのできない、手触りのある感じを大切にしていきたいですよね。

「一目見たときにどう感じるか」はひとの心の揺れ動き方、そして意識の向け方を大きく変える、ということを改めて気づかされた発言でした。

みどり号には、温かくゆらめくエジソンランプのフィラメントの光がどうしても必要だった。

松井さん なにをするのか、ということと同じくらい、それをどう伝えるのか、ということが重要だと思っています。そのためには、良いことをやっているからわかる人だけわかれば良い、というのは僕らのスタイルではなくて、そのやっている良いことをわかりやすく、そしてカッコよく、たくさんの人たちに伝えられて初めてそれが意味を持つと思っています。

松井さんは、最後にこんな例を出していました。

松井さん さっき、外国人のお客さんが「このイベントはなんなんだ?」と聞いてきたので、ソーラー発電した電気だけでやってるフェスなんだ、というと、いいことやってるじゃないか、って肩をたたいて褒められましたよ。「お前たち、いい奴らだな!」って(笑)

Commune 2ndではいつも国際色豊かな集いを目にすることができる


急ぎすぎない成長と多様性が、より生きやすい未来をつくる

明るく、楽しく、真剣に、未来を話すメンバーたち

トークセッションの終わりに、フロアから「10年後どうしてたいですか?」という質問が上がりました。

キュレーターの本村さんはこう結論づけました。

本村さん 会社の成長神話の時代とは違って、モノには事足りている一方多様性が求められている時代。幸せを大きなひとつのものに定義しようとしても、だれも幸せにならない。一見意味のわからないものや、弱い者に目を向けるように仕向けていかないと。

これにうなずいたのが参加者の中で、大学院で海の生態系を学んだという方。そこで「ガイア理論: 人間も含めて地球が一つの生命体」という考え方を教わったそう。

そこでも言われていたのは多様性が大事だということでした。地球が一つの生命体と考えると、地球上の異なる種の多様性が生き残り戦略の中で大事になってくる。人間も「宇宙船地球号」の乗組員ですから、人間の中にも多様性が大切だということですね。

松井さんは、

松井さん 個人の社会へ持っている意識の熱量がもっと消費のあり方につながっていったらいいと思うし、そういう消費行動を促すビジネスが増えてもいいですよね。メディアサーフでもプラットフォームや仕組みづくりをしていきたいと思っています。

と話し、

本村さんも

本村さん 理想を言いながら、生活が矛盾していたら元も子もない。自分の生活、消費にも意志を持った選択をしていきたいですね。インドに住んでいると選択肢が少ないから全てはどうしても無理だけれど、できる範囲で。

と同意していました。

世界各国での経験を語り、それぞれのエピソードに同意しあうお二人

國崎さんの締めくくりは、こちら。

國崎さん 今の資本家優位の経済社会では難しいけれど、会社という組織をゆっくり育てていくということが伝わって行かないかな、と思っています。マネジメントは個人の主体性を奪ってしまったほうが本当は簡単で。マネジメントされる人間も、それが当たり前になるとその方が幸せだと思ってしまう。でも、そうじゃないですよね。時間をかけて、組織もひとも、育っていく社会をつくっていけたらいいですよね。また、これからの時代 “職業”の名前はどうでもいい。それよりも何をやっているのか、を大事にしていきたいです。

ここで、トークセッションはおしまい。その後屋外会場のDJブース前で飲んだり踊ったり、語りあう人々の姿が見られました。

この「希望の未来を考える –エネルギー編-」のワークショップは、それぞれが考えている未来像を持ち寄り、それぞれが少しずつそれをクリアにできたイベントだったのではないかと思います。これを読んでくださったあなたの「希望の未来」は、どんな姿をしていますか?

(Text: Haruka Tonegawa / Photo: 木村文吾)