一人ひとりの暮らしから社会を変える仲間「greenz people」募集中!→

greenz people ロゴ

社会を変える第一歩は、あなたが変わること。京都でこれからの経済と社会を考えた「DEMOCRATIC MARKET:「僕らの市場経済」への対話」をレポート!

image1

こちらの記事は、greenz peopleのみなさんからいただいた寄付を原資に作成しました。

京都市では、ソーシャルビジネスに取り組む企業や、それらを応援する人々が集い、京都の未来を共に創出する「ソーシャルイノベーションクラスター構想」を打ち出し、市をあげて社会的課題の解決に積極的に挑戦することを掲げています。

そんななか、2016年1月に開催したのが、「MAKING OUR MARKET KYOTO 2016 〜みんなのマーケットを考える2週間〜」。期間中は、消費者である市民やソーシャルプロダクトを提供する事業者が集い、大きな変化が求められる現在の経済と、これからの社会について共に考えるイベントが、京都市の至るところで開催されました。

今回はその一つ、左京区にあるイベントスペース「KYOCA」で行われたイベント「DEMOCRATIC MARKET:「僕らの市場経済」への対話」の模様をお伝えします。

3日間に渡って開催されたイベントでは、現状の市場経済のリアルを写した映画の上映と、ソーシャルイノベーションを起こすマーケットを実際につくり出している実践者8名によるトークセッションが行われました。


みなさんのお話はどれも楽しいものだったのですが、今回は関根健次さんのお話について詳しくレポートさせていただきました!

 
image2
左上から時計回りに、流石創造集団株式会社代表 / MEDIA SURF COMMUNICATIONS INC.代表黒崎輝男さん、恵文社一乗寺店元店長/誠光社・堀部篤史さん、NPO法人Co.to.hana代表・西川亮さん、『エディブル・シティ」映画の翻訳者である鈴木栄里さん、一般社団法人エディブル・スクールヤード・ジャパン共同代表であり、食の活動家である西村和代さん、greenz.jpシニアエディター、京都精華大学講師YOSHさん、NPO法人FOOD DESIGNERS NETWORK代表・中山春奈さん

消費行動を見直す”ソーシャルシネマダイアログ”

一日目は、栄養価が高く健康的な食べものを手に入れるための市民活動を写したドキュメンタリー映画『エディブル・シティ』を鑑賞。

こちらは、経済格差の広がる社会背景があることから、新鮮で安全な食を入手するのが困難だと言われている、サンフランシスコ、バークレー、オークランドの3都市が舞台となっています。
 

『エディブル・シティ』

2日目、ファッション業界の裏側で起こっている真実を写した映画『ザ・トゥルーコスト』を鑑賞。作中では、大量生産・大量消費を推し進めた結果、人権侵害や環境汚染といった問題が起きてしまっている現状を、バングラデシュ・カンボジア・インドの過酷な労働環境で働く人々の声とともに紹介しています。

 

『ザ・トゥルーコスト』

鑑賞後は、参加者全員でダイアログタイム。さまざまなファッション消費についての意見が飛び交い、盛り上がりをみせました。ここからは、イベントの主催者である法人RELEASE;の桜井肖典さんと、この映画を配給しているユナイテッドピープル代表取締役社長である関根健次さんの対談の模様をお伝えします。

ファッションとの向き合い方

関根さん 僕は、この映画を観てファストファッション買わないってなるのも良いと思うんですけど、買うのも良いと思うんです。

でも、長く愛着を持って長く付き合うという選択をする。もちろん、より良い選択としては、気に入るブランドを決めて、そのブランドはどんな方針で、どんなところで、どんな人たちがつくっているのか、原材料まで知ることですね。

image5
国際平和映像祭代表理事/ユナイテッドピープル代表取締役社長・関根健次さん

多くの服の原料となっている綿花、その70%が遺伝子組み換えだと言われています。(出典元)遺伝子組み換えの種子は、大量の農薬や肥料を必要とするだけでなく、そのことによって農家の健康被害が生じてしまっているのです。

また、農薬や肥料を大量に買うことを余儀なくされた農家のなかには、資金難で買うことができずに自殺してしまう人も後を絶ちません。

そして、大手ブランド製品もつくられている皮革工場では、大気・水・土壌が汚染され、皮膚疾患や呼吸器系疾患など、周辺に暮らしている人々の健康被害に甚大な被害を及ぼしています。これは日本の原発問題と同じことが起きてしまっていることに他なりません。私たちの便利のために、遠く離れた人々の生活が脅かされてしまっていることを、私たちは知る必要があります。(出典元

桜井さん でもこの類の話になると必ずと言っていいほど、結局は高くて買えないでしょっていう意見が出てくる。買ったものを長く使いましょうというのはもちろんなんですけど、どうやって高くなってしまうものを、自分たちの中に取り入れることができるのか。そのモヤモヤに対するご意見はありますか?

image6
一般社団法人RELEASE;の桜井肖典さん

関根さん 高い・安いの値段について言うと、高いものには高い理由があって当然のことだと思うんですよね。

高い理由は、手間暇が違いすぎる。それから食べものにしても、安全な食材であるとか、農薬を使っていないとか。服にしてもオーガニックコットンや国産であるとか、より良いものを選択することは価値があって、長持ちするかもしれない。で、この愛着と長持ちするところがポイント。


大量生産・大量消費・大量廃棄って、現代社会の貨幣経済におけるグローバリズムの弊害だと思うんですよ。つまり、心が置き去りにされている。

安いから、簡単に買う。簡単に捨てるから簡単に生産する。ファストファッションが悪いかって言ったら完全に悪くない。消費者が簡単に捨てるから、買い替え需要が生まれて、ビジネスが成り立ってしまう。

例えば、アメリカ人女性の平均は5週間で着なくなる。5週間ですよ? 1年で何着必要なの? 10着ですよ。10着のセーターを1年買う。1着15ドルですよ。年間で150ドルですよね。

150ドル、1万5,000円のオーガニックコットンのセーターが高いか安いか。長く付き合えば高くない。だから、ものとの付き合い方をしっかりと精神性を持って、責任を持って買い物する方が良いと思うんですよね。

循環型の経済を選ぶ

必要量をつくって使い、使い終わったらまたつくる。そして、余分なものができない上に、フェアトレードが実現できる。少し前から注目されているアメリカ・ポートランドでも実践されているこのような循環型の経済は、すでに日本の中にも見ることができます。


関根さん 例えばですね、ボールペンも100円とかでポイポイ捨てたりできますが、せめて芯だけを変えるとか、万年筆を使うとか、リフィル型にする。使い捨てのチャッカマンじゃなく、リフィル型ジッポを使う。

要するに、リフィル型の事業って存在しているし、商品も存在しているし、それを選択するかしないか。マイボトルもそうですし。そういった循環しているビジネスから生まれるものを選択する。それを一人ひとりがしなければならない。

これは個人から世界につながっていくことであって、こういう消費行動によって地球環境や生物多様性を失っていると同時に、今この資本主義をほとんどのところが採用している。

経済が多様化する中で、何が起きているか? いろいろな人が同じ服を着ている。そして、資本の執着が起きている。ある企業や資本家などにお金が集まる。ビジネスをしている人よりも、金融機関、そして投資家にお金が集まっている。ものすごい不均衡が起きるんですよね。

少しの意識改革を積み重ねていく

「必要なのは、ほんのちょっとの意識変革。いきなりひとっ飛びに階段を上ることは難しいけど、一段一段上るのは大丈夫」と関根さん。例えば、靴下はオーガニックコットンにしてみる、たまには古着屋さんで買いものしてみる。そういった小さな積み重ねを少しずつ増やしていくことなら、誰でもトライしやすいはず。

関根さん 富の集中がどれくらいかというと、世界の1%の人々が世界中の富の50%を所有している。つい今月のCNNの報道でもありましたが、世界の62人が世界の35億人の富を所有しているんです。加速してるんですよね。(出典元

この資本主義の構造を是正していくことが必要。だからなんとなく買って捨てるということをやめなければいけない。

例えば、僕が非常に意識しているのは、ペットボトルとの付き合い方。毎日買って、毎日捨てる。これだけのゴミ問題がある中で、買ってはすぐ捨てるというのは、カッコ悪いことだと思うんです。

エネルギーや自然資源は限られているし、リサイクルもコストがかかるんですよね。ただそれを、マイボトルに変えるとか我慢するとか、どこかに変えていくと違う選択ができるようになるんですよね。

北欧デンマークでは、ペットボトルではなく瓶が主流です。瓶もリユースを促進するために、デポジット制を採用しています。ペットボトルもありますが、25回リユース可能なもの。(出典元

そして、話はスモールスケールのビジネスと経済システム、ミクロからマクロの話題へ。

関根さん この数十年ぐらいでシステムが大きくなりすぎている。特にこのファッション業界で。

自分たちの行動の結果が見られなくなっている。誰かが傷ついて、誰かがいなくなっちゃっている。

作中の働いている女性が、「私たちの血の入った服は着てほしくない」と訴えているんですよ。要するに、暴力的な経済に成り果ててしまった。

すべての基準がお金になっているので、秒単位のものすごいスピードで上下する金融市場に連動し、何気なく株式投資をしている人がいるし、何が起きているかわからなくなっている。

このグローバルで巨大化してしまったシステムは、誰一人正確にこういうものですって言える人はいないと思うんですよね。これは無くなるわけじゃなくて、変えなきゃいけない。

さまざまな企業の広告や飲食店で見る「安くて早くて便利」。そういったサービスや商品によって、豊かな時間や人とのつながり、そして人の心と身体の健康までもが失われつつあります。

また、どんどん機械化が進むことによって人の仕事は減っていき、環境も汚染されてしまっている。その先に見える世界は、果たして本当に私たちが心から望んでいるものなのでしょうか? 関根さんは、そんな世界の現状に警鐘を鳴らす、ある女性活動家の話をします。

関根さん 僕の好きな人で、『幸せの経済学』を書いたヘレナ・ノーバーグ・ホッジさん、”グローバリゼーションをローカリゼーションしていく”と言っている専門家の方ですが、彼女がおっしゃっていたのは、ローカリゼーションのいいところは結果が見えるということ。

この野菜は誰がどのようにつくったのかも見える。そして買う場所も、巨大なスーパーではなくて、そのあたりの八百屋さんやフードマーケットで買うとか。

そうすると、顔が見えるから、つくり手がより誤魔化せない。彼女の表現で言うと、ヒューマンスケール。人間大のビジネスにすることで、より社会に倫理的になる。

桜井さん ローカリゼーションしていくなかで起こることは?

関根さん ローカルのいいところは、その地域の人がイキイキとすることですね。

今は社会全体的に外注の世の中。生命保険、自動車保険、服、教育も全部外注。そのようなものを一つひとつ、自分たちがつくり手になって取り戻していくのは面白いですね。

コミュニティでやる。野菜や保険をつくる。今ヨーロッパで見つめ直されていて、オランダでは大きな保険会社に任せずに、毎月1,000円ずつ出し合い、何かあったら困った人に渡すという仕組みをつくっている。やればできちゃうわけですね。

例えばエネルギーについても、ドイツのあるまちの議員さんが、わがまちは自然エネルギーでいくぞ!と宣言して、まずは地域で自然エネルギーを電力会社が高く買うような法案を通したんです。そして、のちの固定価格政策になった。自然エネルギーの普及につながった。

太陽光の電力の需要が高くなってくると、さまざまな会社が参入するようになってくる。その時に、大きな会社ではなく、地域にコミュニティ電力ができている。地域の人が共同組合をつくって出資をしあったり、土地を買って設営していく。これは何がいいかというと、つまりお金が外に逃げず、そして投資のリターンが自分たちに戻ってくることです。

デンマークに行ってきたんですけども、自然エネルギー100%の島がいくつもある。映画『パワー・トゥー・ザ・ピープル』では、サムス島というところが事例として出ています。

関根さん あとは、首都コペンハーゲンから車で1時間半のところにあるロラン島というところに行って、議員さんに話を聞いたら、なんと自然エネルギー発電率500%。100%は消費して、400%はヨーロッパ中で消費しているんですよ。

それは地元の利益になるんですよね。それも条例が始まっていて、簡単に入ってこれないように、新規の出資率のラインが決まっているんですよ。

風力だと、騒音で日本では通らない。しかし、地元の人が出資しているので風車が回るたびに「10ユーロ・・・20ユーロ・・・」と数える(笑)だから、新しい世界がどんどん世界に広がっている、21世紀らしい世界が広がっているわけですよ。

デンマークは、もともと90%を原油に依存していましたが、1970年のオイルショックでの大打撃を受けたこともあり、国を挙げて国産エネルギー開発や省エネ、エネルギーの多様化を進めてきました。今では、自然エネルギーを推進を掲げ、2050年までに化石燃料からの脱却を国の目標に設定しています。(出典元

さらに、こういった施策を推し進めるため、1995年に炭素税が導入されています。これは、電力消費量1KWhに対し、0.1クローネ(約2円)の割合で徴収される税金のこと。この炭素税や、電気税の一部が風力発電やバイオマス発電などの自然エネルギーの売電価格補助に使われており、自然エネルギーが儲かる仕組みができているのです。(出典元

特に多い風力発電では、85%が個人や地元協同組合が発電機を所有。投資家や企業が、株式や証券ではなく、こういった自然エネルギーに投資し、資産運用の手段にしていることも、普及を後押ししています。

関根さん 地球も有限、ごみ捨て場も有限で、人口も100億人になる。いち早く循環型社会の21世紀らしいモデルになる。そのための方法としてローカリゼーション。DIY。自分たちでやって無理をしない。要は、仕組みやシステムの使い方だと思うんですよね。

image10
Some rights reserved by Tony Webster

桜井さん 最後に、望むマーケットが広がるような新たな動きを見ていて、自分が投資したいとか、ここに共感が集まらないかなと思うものはありますか?

関根さん 是非「ユナイテッドピープル」に投資してほしい!

会社という存在はなんなのか。どこの会社も社会貢献している。社会貢献をしないと生き残れない。だからいいことをしている会社が全部なんですよ。それが本当のはず。

ただごまかしたり、結果環境を壊していたりとか。見えないところで生まれている。最低限社会に迷惑をかけない。そういう会社が社会に貢献するようになればいいですよね。

ユナイテッドピープルという会社は、社会課題を解決し、よりよい社会を目指してます。課題解決をミッションに掲げているのと、その解決のために必要な仕事、必要な人材と、という必要なもののみ持っている。成長はいらない。

一昨年に、会社の理念でこういうことをやる・やらないをウェブサイトに載せたんですよ。例えば、どんなにお金積まれても、人を傷つけるビジネスはやらないとか。今後は21世紀らしい会社が増えなければならないし、その上で21世紀らしい会社にまず自分がならなければならないと思っています。

image11
会場には、京都市ソーシャルプロダクトマーケットの展示も

今回のイベントで感じたのは、社会課題解決の鍵は、私たち消費者の日々の生活の中にあるということ。一人ひとりが丁寧に未来へとつながる選択を重ねていき、それをみんなに広げていく。そうすれば、大きな変化へとつないでいくことができます。

私たち自身がまず、私たちが世界に見たい変化そのものでなければならない。

これは、非暴力・不服従運動で、インドをイギリスから独立させた指導者、マハトマ・ガンディーの言葉です。一人の力は小さく感じるかもしれません。それでも一人ひとりが少しずつパラダイムを変えていくことで世界は変化していきます。

あなたも何かを選ぶとき、その先にどんなストーリーがあるのか、立ち止まって考えてみませんか?

– INFORMATION –

 
『MAKING OUR MARKET KYOTO 2017 〜素材から学ぶ暮らしの学校〜』
大好評の2016年に続き、今年も『MAKING OUR MARKET KYOTO 2017 〜素材から学ぶ暮らしの学校〜』「料理をつくる」「ものをつくる」授業を通して、大人と子供が私たちの暮らしを支える経済や地理、歴史を共に学べる、1日だけの学校を2017年1月22日(日)に開催決定。
http://social-innovation.kyoto.jp/spread/1289