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バリ島が社会起業家たちの楽園になっている! 先進的な方法で事業を興す人びとを訪ねる、“大人のスタディツアー”に参加してきました!

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2016年9月、インドネシア・バリ島にて一般社団法人アース・カンパニーが企画した「ソーシャル・イノベーション・ツアー」を敢行。6日間のツアーに筆者が帯同した体験レポートを前後編でお伝えします

この記事はグリーンズで発信したい思いがある方々からのご寄稿を、そのままの内容で掲載しています。寄稿にご興味のある方は、こちらをご覧ください。

いま、バリ島に世界中から革新的な社会起業家が集まり注目されている。

友人である濱川明日香・知宏夫妻の社会起業家を発掘して支援する「アース・カンパニー」という団体のお手伝いをしていることもあり、彼らがなぜバリに集まるのか興味を持っていました。

例えば最先端の教育を行うことで有名な「グリーンスクール」や世界中からノマドワーカーが集まる「フブド」、ほかにもCNNの「世界を変えるヒーロー」に選ばれた女性が起ち上げた助産院、日本人が代表を務める世界的に有名なNGOもみんなバリを拠点にしています。

そこへ、2人からバリでスタディツアーを主催するので取材しないかというお誘い。遅い夏休みを兼ねて参加することにしました。社内SNSでバリ行きを報告すると、同僚から餞別のひと言。

なぜきみはバリなんてチャラいとこ行くんだ?

古っ!それ”ギャルの楽園”時代のバリだっちゅーの! ギャルも一流大学行ったり社長になる今の時代、バリは次の”イケてる時代”に突入してるんです、きっと。当然、既読スルーのまま休暇へ突入。

友人いわく「先進国より先進的な方法」で事業が興っているそう。そんな社会起業最先端の現場をお伝えしたく、社会起業家だけでなく参加者たちとの出会いや思いも取材して来ました。

次世代の働き方を追求する世界で最も注目を集めるシェアオフィス「HUBUD(フブド)」

バリで合流したツアー参加者は計9名。会社経営者が多く、教員や外資系企業勤務など濃いメンバーぞろい。自己紹介を済ませ、最初に訪れたのはバリで会員制のコワーキングスペースを提供しているフブドです。

建物内は竹や木でできており、カフェのようにおしゃれな空間。さまざまな国籍の人たちが大きなテーブルを囲み、パソコンとにらめっこしたり盛んに議論を交わしています。

ハンモックに揺られながらパソコンを叩く人もいます。各々自由なスタイルで仕事をすることを楽しんでいますが、表情は真剣そのものといった様子。
 
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開放的で快適なワーキングスタイルを実現しているオフィス内。写真奥や2階には広いミーティングスペースもある

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ハンモックで寝そべりながら働くなんて、あこがれません?

聞けばバリ島で最初にできたコワーキングスペースらしい。ここはウェブデザイナーなどのクリエイティブ系からトレーダーなど金融系まで、登録するノマドワーカーは多岐にわたる。その場で知り合った人たちと情報交換するだけでなく、なかには協業から起業に発展する人もいるとか。

コワーキングスペースなら日本でもめずらしくありませんが、特筆すべきはイベントの多さ。昨年一年間でなんと371のイベントを開催したそう。交流イベントから講師を招いたセミナー、ワークショップまでその全てをスタッフが主催しているというから驚きです。

施設の見学後、フブドのディレクター、クリス・トンプソンの話を聞きました。

クリス いま、従来の働き方が変わってきており、これからは3つの「CO(協力)」が重要だと考えています。

・CO-Working(ともに働く)
・CO-Learning(ともに学ぶ)
・CO-Giving(ともに与える)

CO-Workingはノマドワーカーでも他の分野の人と一緒に働けること。CO-Learningは、一緒に働くことでお互いが学び合えること。CO-Givingは、働くことでどれだけ社会に貢献できるかを追求することです。

CO-Givingの場合、期限を決めて成果を生むことも重要。1か月を逆算して何ができるかを意識して行動しなければいけません

会員の中には世界的に有名な企業の仕事を受注している人もいるそう。つまり、ここで働く人たちはそれぞれの才能や高いスキル・知識を持ち寄ることで、ともに学び働き、個人ではできない事業を成功させ社会に貢献している。フブドが描く次世代の働き方を文字通り実践していると言えます。

ストレスの少ないリゾート地で理想の働く環境を実現しているだけでうらやましいのに、ノマドワーカーたちがともに働くことで新たな機会や可能性が広がるような環境まで整えてくれるのです。世界中から人が集まってくるのも納得です。

バリ発で世界に支援を届ける!日本人が代表を務めるNPO「コペルニク」

次に訪れたのはアース・カンパニーの共同創業者である濱川知宏さんが所属するコペルニク本部。コペルニクは革新的なテクノロジーを途上国の人々に届けることで支援を行っているNGO団体です。

世界の途上国には、清潔な飲料水が確保できず毎日4000人以上の人が亡くなり、途上国の80%の人々が電気のないため灯油ランプを使うことで呼吸器の病気や火事で亡くなる人が年間160万人もいます。

そこで政府や世界的企業などから資金を集め安価な浄水器を開発・販売し、ソーラー充電式のLEDランプを届けるプロジェクトのサポートを行っているのです。
 
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コペルニク1階の「テックキオスク」には実際に支援に使われている商品がずらり。

5代表の中村俊裕さん(右列中央)を囲んでランチトークが開催されました

オフィスの1階部分はショップになっていて、一般の人でもそれらの商品を購入することができます。また、最近は日本ではおなじみのベネッセの教育玩具、例えば安価な顕微鏡や望遠鏡なども支援に使われている点も興味深い。

電気のない地域にソーラーライトを提供することで大人たちは日が暮れてからも仕事することができ、教育玩具を提供することで子どもたちは学びの機会を得られます。家庭の収入増や教育の向上、さらには国の発展にも繋がっていくかも知れません。

商品の開発には高い技術が必要でも、インフラの整わない途上国で使えるものを開発提供する。日本人はこのような世界を驚かすことができる「技術」はたくさん持っていることでしょう。ただ、視点を変えるだけで「技術」は世界で困っている人を救うことができる「革新的なテクノロジー」になり得るのです。

コペルニクはこのありそうでなかった支援方法を生み出し、現地リサーチを綿密に行った上でニーズに合った支援を行うというスタイルで世界的に知られています。日本では2014年に「日経ソーシャルイニシアチブ大賞」を受賞しています。

後日、代表の中村俊裕さんを囲んでお話を聞くことができましたが、このビジネスで成功しているにも関わらず、おごらず気取ることもない、格好いい方でした。

中村さん 日本人として活動しているという意識はあまりないですね。それは国連時代からずっと変わりません。

団体としてだけでなく個人としても小気味よく世界中を駆け抜ける中村さん。日本人に生まれ、恵まれているからそうでない国の人を救う、それは単なる自己満足な考えに過ぎないかも知れない。

国境や国籍など関係なく、ただ貧困で困っている人へ、手を差しのべる。中村さんとコペルニクはシンプルにそれを実行しているから、余計に格好よく見えてしまう。世界の中の一人の人間として、自らのあり方を考えなおすきっかけになりました。

新生児から老人まで理想の地域コミュニティづくりを目指す「ブミセハット助産院」

以前、記事で紹介させていただいたことがある、どんな人でも、どんな宗教の人でも、どんな病気の人でも、24時間365日無料で医療サービスを受けられる助産院が、このブミセハット助産院です。

創設者であるロビン・リムは、お金がないという理由だけで安全な環境で赤ちゃんを産むことができない女性や家族たちを受け入れ、ウブドの地域コミュニティにイノベーションを起こした社会起業家。

助産院を見学すると、想像していたよりも小さい施設に感じました。たくさんの患者が駆けつけ、分娩室の行列で十数人、鍼灸用のベッドも定員の3倍は埋まっているかのよう。さらに同じスペースでヨガの講習まで行っている…そう聞いていたからです。

ブミセハットは世界中からロビンの指導を求めて助産師のたまごたちがやってくるほど有名な施設です。これでは狭すぎでは?参加者のほとんどがそう感じたと思います。続けて移動したのは、工事中の施設でした。
 
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当日は多忙のため会うことができなかったブミセハット助産院創設者のロビン・リム(左から2番目)

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訪問時はたまたま出産がなくゆっくりと分娩室を見ることができました

ここは以前に記事で紹介した、ブミセハットの新しい助産院。建物のうちの一つは前述のアース・カンパニーが支援者から1,000万円以上の寄付を募り、一棟丸ごとプレゼントすることができたものでした。

この立派な施設で新しい生命が誕生し、将来有望な子どもたちは語学やパソコン操作などを習い合い成長していく。そんな姿を介護施設で過ごす老人たちが穏やかな表情で見守る…。そんな美しい光景が見られるのも、もうまもなくです。
 
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完成間近の新しいブミセハット助産院。手前の建物はアースカンパニーの寄付により建設

平和の理想郷のような光景を思い浮かべた瞬間、私は全身に鳥肌が立ちました。今回は残念ながらロビンに会うことができませんでしたが、これから使われるこの施設の未来に地域コミュニティの理想の姿を見た気がしました。

記事を書いた当初はブミセハットのような施設をバリ以外でつくることは難しいだろうと思っていましたが、日本にもこんな施設があったらどんなに素敵なことだろう、そう思えるようになっていました。

持続可能な社会づくりを目指す、世界一美しい学校「グリーンスクール」

ツアー最後の施設見学は、ジャングルとも言えそうな大自然の中にある学校でした。竹でできた巨大な建物全体は深い緑に囲われ、入口付近にあるサッカーグラウンドの鮮やかな芝生の色と織りなす景色は、見た者の心を一瞬にして捉える美しさがあります。

建物はすべてが竹で作られているだけでなく、造形美、デザインとしての美しさも兼ね、釘はほとんど使われていない日本の神社仏閣のように非常に高い技術で建てられています。
 
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とても教室には見えません。室内には壁も窓もありません

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すべて竹でできた建物の美しさに息をのむ参加者たち。こんな教室なら勉強もはかどりそう!?

グリーンスクールは東南アジアでジュエリービジネスを成功させたカナダ人のジョン・ハーディが、持続可能な社会づくりを目指して教育を行うことを目的に2008年に設立した学校です。生徒は数十か国から集まった3歳から18歳までの約400人が通っています。

彼らの教育で特徴的なのは環境教育と人材育成。環境教育は、先進国が歩んできた環境破壊を伴った発展を繰り返さないための資源リサイクルや開発方法を学びます。

人材育成では社会をよりよく変えていく次世代リーダーの育成に力を入れ、生徒が主導となって政府に働きかけるプロジェクトなども頻繁に立ち上がっているそうです。

建物の美しさもさることながら、教育方針に共感する人々が世界中から視察に訪れ、施設見学はなんと毎日行われています。2014年には国連の事務総長まで視察に来るほど、世界中から注目を浴びる学校がバリにあるんです。
 
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敷地内には川が流れ、そばには水力発電機もある

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個人的に一番の驚き&感動は、竹でできた太陽光発電システム。まるで絵本の世界のような光景です!

敷地内には川があり生徒はプール替わりに泳ぎます。泥のプールでレスリングもします。また、川岸には水力発電所があり、竹の架台でできた太陽光発電所と合わせて校内の電力のほとんどを賄っているそうです。

トイレはすべてコンポスト式で、飼育する牛や鳥などの排泄物とあわせて有機肥料を作り、無農薬野菜を育てる食育も実践しています。

また地域との繋がりも重視していて、近隣住民から集めたゴミをリサイクルするプロジェクトも行っています。生徒の親やグリーンスクールのスタッフも参加し、ごみを数百に仕分けしてそのすべてをリサイクルします。これは地元コミュニティへの意識改革を促し、啓蒙する意味あいもあるようです。

もう一方では地元コミュニティから学ぶ機会も設けていて、地元の子どもや親が集まり(約250名も!)、インドネシア語やお供え物の作り方、バリ文化について学んでいるそう。

やがてゴミのリサイクルプロジェクトは、バリの州知事にビニール袋の使用を完全に撤廃させる案に調印させるまでに発展しました。生徒はこうしてエネルギーや食、環境問題まで身をもって持続可能な社会づくりの方法を学んでいます。

見学当日バリは日本のお盆で休日だったため、生徒が学ぶ姿を見られなかったのはとても残念でしたが、このような環境で育つ子供たちは一体どんなすてきな顔をしているのでしょうか。
 
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以上でスタディツアーの施設見学は終了。どの事業も、「バリ発」の革新的な提案で地域社会に根差している印象を受けました。

その根底には美しい景色や環境のなかで働きたいという思いと「世界を変えたい」という強い思いがあり、さらにはバリの人々には自分たち先進国がしてきた過ちを繰り返してほしくないという切実な願いがあるのだと思います。

今後公開予定の後編では、ツアー参加者たちが感じた”最先端”バリの現実をお伝えし、そこから見えた日本がバリから学ぶべき点について考えます。

(Text: 上田洋平)
(Photo: 一般社団法人アース・カンパニー(集合写真、フブド)、榊原真理子(コペルニク、グリーンスクール、ブミセハット助産院))