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地球に優しいエネルギーを、お隣さんから買おう。ブルックリン発、電力会社に頼らずに住民間での電力取引を実現した「Brooklyn Microgrid」

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創設者のローレンスさん(左)と運営者たち

わたしたちエネルギー」は、これまで“他人ごと”だった「再生可能エネルギー」を、みんなの“じぶんごと”にするプロジェクト。経済産業省資源エネルギー庁GREEN POWER プロジェクトの一環で進めています。エネルギーを減らしたりつくったりすることで生まれる幸せが広がって、「再生可能エネルギー」がみんなの“文化”になることを目指しています。

近年、大きな電力会社だけに頼るのではなく、再生可能エネルギーを地産地消しようという取り組みが、世界各地で広がりを見せています。

greenz.jpでも、里山の農地を利用してエネルギーをつくる「ソーラーシェアリング」や、食料廃棄物で地域の電気をつくり出すバイオガス発電機「the HORSE」などを紹介してきました。

このようにさまざまな取り組みがあるなかで、人々に注目されているひとつが「マイクログリッド」です。太陽光や風力発電所と、住宅・施設など小規模な地域内をグリッドでつなぎ、効率よく電気を分配する画期的なシステムは、巨大な発電所から一方的に電気を受け取る従来の構図に変革をもたらしました。

そんななかニューヨークのブルックリンでは、ご近所さんとの電気取引を可能にしたマイクログリッド「Brooklyn Microgrid」が立ち上がりました!

今年4月に「Transactive Grid」というベンチャー企業がスタートさせたこのプロジェクトは、ソーラーパネルなどの発電機をもつ住民と、近隣の住民同士をマイクログリッドでつなげ、再生可能エネルギーを供給しあうというもの。

遠方から送られる電気に比べ、地域内での送電は電気ロスの発生が格段に抑えられるため、費用的な効率も良いのだとか。さらに、従来の電力網から分離して運転できるため、台風や地震で中央供給源が落ちてしまったときも、電力を維持できます。

2012年に「ハリケーン・サンディ」にとって、850万人が電力供給を断たれた経験があるニューヨークにとって、このようなバックアップシステムはとても重要といえるでしょう。

お隣さんから電気を買おう!

さらに注目すべき点は、住民が自宅で発電した電力をグリッドに流し、直接、近隣に販売できること! 一般市民が電力会社などを介さず電力を売買できる世界初のシステムは、エネルギーの経済を考える上で、一種の革命ともいえそうです。

これを可能にしたのが、中央管理者を必要としないプラットフォーム「Ethereum」。ビットコインの取引にも使われる「ブロックチェーンネットワーク」という技術を用いた「Ethereum」上で、コミュニティ内の発電量や取引を全て管理でき、参加する地域住民全員がアクセス可能。不正なデータ書き換えの心配もなく、人件費コストもカットできるといいます。
 
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「Ethereum」の画面。PCやMacでアプリをダウンロードして使うことができます

すでに住民間の電力取引はスタートしており、パークスロープに住むEric Frumin(以下、エリックさん)が自宅のソーラーパネルで発電した電力の一部を、近隣住民のBob Sauchelli(以下、ボブさん)が買い取ったそう。

エリックさんは、電力会社に売電するより多い金額を得ることができ、一方ボブさんはソーラーパネルがなくても、地球に優しい再生可能エネルギーを使う選択肢ができたので、満足している様子。「Brooklyn Microgrid」が浸透していくことにより、本来、国の大きな電力会社へ流れてしまっていたお金を、コミュニティ内に循環させることが実現するので、地域の経済振興にもつながりますね。
 
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電力取引を終えて握手する、エリックさん(左)とボブさん

「Brooklyn Microgrid」を創設したLawrence Orshini(以下、ローレンスさん)は、このプロジェクトに託したビジョンをこう語ります。

私たちは、市民がエネルギーマーケットに参入するバリアを失くそうとしています。小規模な発電機でも、地域の電力をつくり、利益も得られるのです。どこから来たのかわからない電力を使い続ける必要はありません。私たちは、そこに革命を起こしているのです。

ローレンスさんは将来的に、アプリを使った簡単な操作で、利用者や地域に最適の供給方法を設定できるようにすることを目指すそう。実現すれば、休暇で家をあけるときは全ての電力を売ったり、余剰電力を必要とする人に寄付したりというやりとりが、ご近所で行われるかもしれません。
 
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ソーラーパネルのメーターを導入し微笑む住民のエリックさん(右)と、創設者のローレンスさん

「Brooklyn Microgrid」は、まだブルックリンの一部でスタートしたばかりですが、これまで同地区にある130件もの家がこのネットワークに興味を示しているそう。

日本でも、2014年に「全国ご当地エネルギー協会」が発足するなど、より持続可能なエネルギー社会の実現を目指す動きが盛んになっていますが、ローレンスさんのように立ち上がった人々や活動をサポートしていくことから始めてもいいかもしれません。

[Via Brooklyn Microgrid, TransactiveGrid, FASTCOMPANY, Motherboard, New Scientist, YouTube]

(Text: 日南美鹿) 

わたしたちエネルギー」は、これまで“他人ごと”だった「再生可能エネルギー」を、みんなの“じぶんごと”にするプロジェクト。経済産業省資源エネルギー庁GREEN POWER プロジェクトの一環で進めています。エネルギーを減らしたりつくったりすることで生まれる幸せが広がって、「再生可能エネルギー」がみんなの“文化”になることを目指しています。