ISSUE☆おすすめの連載! わたしたちエネルギー

1 year ago - 2015.04.04

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これからの農業は発電も! 里山とエネルギーの新しい関係をつくる「ソーラーシェアリング」

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ブルーベリー畑の上にソーラーシェアリング用のパネルを設置(提供:いすみ自然エネルギー)

わたしたち電力」は、これまで“他人ごと”だった「再生可能エネルギー」を、みんなの“じぶんごと”にするプロジェクトです。エネルギーを減らしたりつくったりすることで生まれる幸せが広がって、「再生可能エネルギー」がみんなの“文化”になることを目指しています。

ノンフィクションライターの高橋真樹です。「ソーラーシェアリング」という言葉を知っていますか?

初めて聞いた方も多いかと思いますが、かんたんに説明すると、農地の上にパネルを並べて、農作物による収入だけでなく売電収入も同時に得るという方法です。

太陽の光を農作物のためだけではなく発電にもシェアしようということから、「ソーラーシェアリング」と名付けられました。

ぼくはワクワクするような自然エネルギーの取り組みをまとめて、最近『ご当地電力はじめました!』という新刊を出版しましたが、その本の中でも福島県南相馬市で始まったソーラーシェアリングについて取り上げています。

ぼくはこのソーラーシェアリングが、これからの農業とエネルギーとをつなぐとても大事なキーワードになると考えているんです。

農家を救うかもしれない「ソーラーシェアリング」とは?

自然エネルギーを農地でやると言うと、作物の栽培そっちのけで、太陽光パネルでつくった電気を電力会社に売電するものと思われがちです。でも、このソーラーシェアリングで発電する目的は、あくまで農業を持続可能なものにするためのものです。

農業を続けていく上で、大きく変動する農業収入だけに頼るのは財政的に立ち行かないという状況があります。そこで、継続的に安定した収入が入る太陽光発電を農業と並行してやれば、農業にとってプラスになるはずだという思いで考え出されたアイデアなのです。農地をつぶして、太陽光発電だけをやるというプロジェクトとは、主旨がまったく違います。
 
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作物の栽培と太陽光発電を同時に行う仕組み(提供:東光弘)

でも、説明を聞いただけではよくわかりませんよね。そこでソーラーシェアリングを、農園の所有者や地域の人たち自らの手で組み立てる作業があるというので、取材に行ってきました。2月末に作業を行った農地は、千葉県いすみ市にあるブルーベリー農園です。

主催したのはソーラーシェアリングをコーディネートしている「市民エネルギーちば」で、地域のための市民発電所づくりをめざすこの会社が、発電事業主の地域エネルギー会社である「いすみ自然エネルギー株式会社」から委託を受けて建設をになっています。

いすみ自然エネルギーの代表者を務める農園所有者の藤江信一郎さんは、ブルーベリーの有機栽培を始めて13年になります。ブルーベリー栽培をはじめたのは、気候的にいすみに合っているということと、大型の機械が不要であるという理由からでした。

ここは観光農園として、年間およそ500人のお客さんがブルーベリーを摘みに来ています。ただ収穫時期の8月はとても暑いので、パネルを設置することで日陰ができるという効果も期待していると言います。
 
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農園主の藤江信一郎さん

ソーラーシェアリングを積極的に進める理由を、藤江さんはこのように語ります。

このあたりには遊休農地も多いのですが、うちの農園がソーラーシェアリングの成功モデルになれば、いまは使っていない農地も活用していこうという流れができるかもしれません。実際、すでにこの地域では他にも5カ所でソーラーシェアリングをやることになっているんですよ。

誰でも参加できる組み立て作業

この日の組み立て作業に集まったメンバーは、ボランティアを入れて15名。パネルの準備をするチームと、上に登って屋根にパネルを設置するチームに分かれて進めました。

設置するパネルは720枚で、完成すると出力は約49.5キロワット時になります。これは一般家庭では約15世帯分の電力となり、農家の売電収入は年間で180万円になる予定です。(固定価格買取制度で36円で売電した場合)
 
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パネルに部材を設置するボランティア。Facebookで知って今回初めて参加した三澤幸夫さん(手前)は、「長野県にブルーベリー畑を持っているので実際にどんな感じになるのか見てみたかった」と言います

作業当日にはすでに、ブルーベリー農園に高さ3メートルほどの架台ができていました。これは費用がかさまず、撤去もすぐにできるように工事現場などでよく見かける単管パイプで組んであります。藤棚のように組み上げられたパイプにパネルを設置するわけです。

この日行った作業は、特注した720枚以上のパネルを箱から出し、単管パイプとつなぐ強化プラスチックの素材をネジで止めることでした。あとは架台に上げて、ひたすら単管パイプと固定していきます。

ひとつひとつのパネルの重さは5キロ程度。誰でも簡単に運ぶことができます。大変なのは、小さい分とにかくパネルの数が多くなり、手間がかかることです。
 
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この高さに組んだ架台に720枚を設置していく。下に茂っているのがブルーベリーの木

ただ作業そのものはシンプルなので、専門の事業者ではなくても組み立てることができるというのは魅力です。Facebookなどでの呼びかけに応えて当日参加したボランティアも、手順を教わりながら一通りの作業をこなすことができました。

この日完全に設置したパネルは80枚、取付準備が終了したパネルは360枚。翌週の2月28日には、720枚すべてを設置し終えて、メディアや周辺の住民へのお披露目を無事に行いました。3月2日にはさっそく発電も開始しています。
 
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すべてのパネルを設置し終えて(提供:市民エネルギーちば)

ちゃんと作物は育つの?

でも、ソーラーシェアリングによる農業への悪影響はないのでしょうか?農地の上にパネルを並べたら、光が少なくなって作物が充分育たないじゃないか、というのが誰もが心配しますよね?

実は初めて話を聞いたとき、ぼくもそう考えていましたが、実はこれ植物についての誤った常識を信じていただけだということがわかりました。作物によっては、太陽の光や熱が強すぎると光合成による成長が止まったり、低下する種類が数多くあります。

そこで、パネルである程度の太陽光をカットしてあげて、作物にとってもよりよい環境をつくり出すというのがソーラーシェアリングの大事なところなのです。

ソーラーシェアリングで使うパネルは、屋根などに載せる通常のものと違って28cmと幅が短く、細長いサイズです。それを隙間だらけにして設置します。きちんと計算していれば、必要な光が届かないということはありません。

この日の組み立て作業に参加した千葉県市原市の高澤真さんも、自らの農地でソーラーシェアリングを手がけています。

高澤さんの農地では、2013年に農業委員会の許可を取り、正式に農業重視型のソーラーシェアリングをはじめた第一号です。実家の農地で2年間実践をしてきた高澤さんは、収穫量が落ちることを心配する人が多い中で、実際には増える作物もあると語ります。
 
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ソーラーシェアリング経験者の高澤真さん

農地では、落花生、トマト、キュウリ、大根、白菜、キャベツなどあらゆる作物を栽培しています。そしてそのどれもがとてもよく収穫できています。そして、里芋などはパネルを設置する前よりも収穫量が増えているのです。

里芋は水やりをしても真夏は太陽の熱でどんどん蒸散してしまうので大変なのですが、パネルが適度にあることでそれが抑えられます。こうしたデータを積み重ねていって、ソーラーシェアリングの可能性を紹介していきたいと思っています。

ソーラーシェアリングの先駆者の一人である高澤さんは、農家にとって嬉しい副産物があると言います。

60年農業やっているうちの父も、パネルが3分の1あっても農作業にはまったく邪魔にならないと言っています。むしろ真夏は日射を浴びながらの農作業が大変なのですが、パネルが日よけになって喜んでいるくらいです。

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千葉県大網白里市にある光太陽農園。高さがあるので、上で発電をしていても、トラクター作業の邪魔にならない(提供:東光弘)

新しい技術より、新しい発想を!

ソーラーシェアリングは、国の法律が改正されて農地で施工しやすくなった2013年から徐々に広がり、今では約100カ所で実践されるようになりました。

高澤さんや藤江さんの農地での成果を参考に、その数はこれからますます増えていくはずです。もちろん新しい取り組みだけに、困難も少なくありません。

ソーラーシェアリングの許可を最終的に出すのは各市町村に置かれている農業委員会ですが、それぞれ方針が違い、今の所は許可を出さない地域もあります。また、電力会社との接続協議なども簡単ではありません。古い社会システムの中で新しい試みを行うことは、いつも険しい道のりになるようです。
 
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当日のボランティア作業に参加した人たち

しかし、太陽光発電の技術そのものについては、どんなことをすればどんな結果が出るかはわかっています。また、農業との共存もこの数年で十分可能なことが証明されつつあります。

細かいことは別としても、やってみないとわからないことはほとんどありません。規制や枠組みを変えるのは困難を伴いますが、いずれはそうした現実に合せて修正されていくのではないでしょうか?

ソーラーシェアリングの取り組みを取材して、ぼくは改めて最新のテクノロジーが必要なのではなく、新しい発想と人々の熱意が社会を変えていくのだと実感しました。ひとつひとつ実証をしながら、農地を活かすことをめざす「畑の上の発電所」をつくる取り組みに、これからも注目していきたいと思っています。

(Text: 高橋真樹) 

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高橋真樹(たかはし・まさき)
ノンフィクションライター、放送大学非常勤講師。世界70カ国をめぐり、持続可能な社会をめざして取材を続けている。このごろは地域で取り組む自然エネルギーをテーマに全国各地を取材。雑誌やWEBサイトのほか、全国ご当地電力リポート(主催・エネ経会議)でも執筆を続けている。著書に『観光コースでないハワイ〜楽園のもうひとつの姿』(高文研)、『自然エネルギー革命をはじめよう〜地域でつくるみんなの電力』、『親子でつくる自然エネルギー工作(4巻シリーズ)』(以上、大月書店)、『ご当地電力はじめました!』(岩波ジュニア新書)など多数。

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