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【カリフォルニア出張報告No.2】子どもの成長と未来の地球を考えることは一緒!パタゴニア社に学ぶオーガニックな子育てとは?

top image_recycling baby


カリフォルニア出張報告No.1
の記事では、サステナブルカンパニーの代表格、パタゴニア社らしいオープンでアットホームなワークプレイスの様子をお伝えした。今回は、先進的な取り組みとして評価の高い社内託児所の様子と、そこで実施されている「パタゴニア流」子育てについてご紹介しよう。

とその前に、何故アウトドアウェアメーカーである同社が、子どもの教育を考えるに至ったか、その設立の背景について少し触れておこう。

まだ託児所の施設や産休制度も整備されていなかった1980年代、創業者イヴォン・シュイナードは、優秀な女性が出産を機に職場を離れていくことに悩んでいた。仮に出産後、復職した場合でも、子どものことが気になって以前のように能力が発揮できないのを見ると、経営者として悔しい思いをしていた。そこで、妻のメリンダに相談したところ、「会社がすべての面倒を引き受け、教員全員を雇用したらどうか」という提案を受けた。パタゴニアなら子どもをどう育てるか。イヴォンは、子どもの成長を考えることと、未来の地球に対して責任を持つことは同じだと考え、メリンダの助言に従い、育児にも会社の方針を取り入れることにしたのだ。

1982年にメリンダの後押しを受けて始まった小さな試みとその理念は、数年もしないうちに全米で先進的な取り組みとして称賛され、マスコミの注目を集め、ここに子どもを預けたいがために人材募集に応募してくるシングルマザーも多くなったという。Great Pacific Child Development Center と名付けられた同施設は、National Association for the Education of Young Children (NAEYC) の認定を受け、今日では、生後6週間から4歳までの子ども41人(0~2歳が13人、2歳~4歳が28人)と大人23人(教師+職員)が学んでいる。

playground
カフェテリアの隣にある子どもたちの遊び場。何かあればすぐに親(社員)が駆けつけられる近さ

「子育てか仕事か」という親の都合で子どもを育てるのではなく、子どもが社会から愛され必要とされ、自由にのびのびと学べる環境をつくることが大人の責任と考える同社では、最低でも毎年500,000ドル(4500万円相当)を施設の運営資金として拠出している。その補助制度のおかげで、同施設の利用料(月額)は、0~2歳の保育所が1,003ドル、2~4歳の保育園が656ドルで、これは州内の他の認可施設よりも安い価格だそうだ。

企業側からしてみれば、相当な出費、手厚い福利厚生だと思うかもしれないが、パタゴニアでは、優秀な女性が妊娠・出産によって退社することで、新たに人材を募集、発掘、採用、トレーニングするコストと比較すると、社内託児所を設置したほうが経済的、さらには社員の精神的にもいいとの考えだ。「社員に責任を持つのなら、その子どもの育成にも同様に、企業は責任を持たなければならない」、とはイヴォンの弁。

kids playing

シュタイナーモンテッソーリの教育哲学にインスパイアされながらも、、「子どもが生まれながらにして持っている「学ぶ」という本質的な欲求をよくよく観察して、そのニーズを満たすことが大人の役目」という独自の教育理念を創造し、ここではカリキュラムは一切存在しない。クラスで何をすべきかは、子どもたちを中心に朝の話し合いによってきまり、それをうけて、先生たちは対人能力、社会性、観察力、思考力、身体能力をバランスよく習得できる多様なプログラムを組み合わせる。

activity board
赤ちゃんルームに飾られていたアクティビティボード。子どもたちの発達にあわせて、その時にもっとも必要とされるスキル・知識を描いている

カリフォルニア州法では年齢別に部屋を分けなければいけないそうで、こちらは生後6週間~20か月ぐらいの赤ちゃんルーム。この部屋では、すべての子どもが「大人に守られている」という安心感と愛情を感じられるよう、州法が定める大人1人あたりの子どもの定員数(0~2歳児の場合、大人1人:子ども4人)が、大人4人:子ども6人と非常に高い割合になっているのが特徴だ。

infant room

この部屋の外は、赤ちゃんが自由にのびのびとハイハイで行き来できるような芝生の遊び場になっている。奥に植えられているのは、バナナの木!

grass playfield

同施設の敷地内には、オレンジ、シトラスなどの果樹のほか、子どもたちが種蒔きから収穫までを担当しているお野菜がプランターで育っていた。将来的には、“Edible Schoolyard (食べられる校庭)” のような食育プログラムを取り入れていく計画もあるそうだ。

growing vegetables

1歳半の赤ちゃんでも”Recylcing”と書かれたゴミ箱へゴミの分別ができている。パタゴニアならではのエコロジー教育!

recyling baby

こちらは、2歳児のお部屋。2歳は、子どもの情緒面が飛躍的に伸びる時期といわれ、創造的なコミュニケーションができる教師が多く揃っているそうだ。この時期、子どもたちはまだきちんとした言葉は話せないが、彼らなりのコミュニケーション方法で願望や理想を大人と共有したがり、それを受け入れてくれる大人が近くにいないと子どもは自分に自信を失いやすいという。

2 year old room
このときは、ちょうどランチタイム中。自分でお弁当を広げて食べている姿がほほえましい

3歳児のお部屋。3歳になると自覚も必要になる。ここでは、自分で食べて自分で片付け、週に一度は自炊もするという。

3 year old room

4歳児のお部屋。置いてある家具や遊具も他の部屋より大きいサイズ。

4 year old room

砂場からカフェテリアを臨むとこんな感じ。とても企業の敷地内とは思えない。カリキュラムは存在しないので、子どもたちは先生に聞かれるまでもなく、毎日自発的に遊びをつくり、砂場に水を張って川をつくったり、お絵かきをしたり、その日その日をクリエイティブに過ごしているようだ。

playground with teachers

さらに、この施設がすごいのは、就学児(5歳以上)の放課後プログラムも充実している点だ。同社専用のバスが学校まで子どもたちを迎えに行き、ここへ連れてきて、親(社員)が勤務を終える時間まで、子どもたちはさまざまなプログラムに参加して放課後の時間を活発に過ごしている。

after school program

この日は、子どもたちが大好きなライスクリスピー(お菓子)作り!

after school program - rice crispy making

また、同施設では、育児だけでなく、妊婦のメンタルサポートも行っている。妊娠時に陥りやすい不安や混乱に対して、専門のセラピストがカウンセリングにあたり、出産前から母子と教師との信頼関係が築かれているのだ。

遊びの天才を自由に放ち、自然に触れさせ、地球意識の高い人間を多く輩出しているパタゴニアの教育プログラム。ネイティブ・アメリカンが7世代先の子孫のことを考えているように、パタゴニアでは、地球のことを考えることと、子どもを育てることは同義だ。自分たちのためではなく、子どもたちにこそ美しい自然は残されるべきであり、そのために未来を担う一番大切な人間を育てているだけなのだから。

一方日本では、待機児童の問題や育児休暇中の不当な解雇など、企業や行政の対応、社会の仕組みはまだまだ不十分だ。鳩山新政権が掲げる「子ども手当」もいいが、本当に求められいるのは、子育てをしやすいような環境をつくること、そのために、社会や企業のあり方をリデザインすることなのではないだろうか。

以上、2回にわたってお届けしたパタゴニア社内見学レポート。カリフォルニア出張報告No.3は、greenzも大ファンのメディア、GOOD Magazine のオフィスレポートです!お楽しみに。

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