みなさんは最近、誰かに贈りものをしましたか?
誕生日のお祝いや、ちょっとしたお礼など、「贈りもの」はただ何かをあげるだけでなく、相手への気持ちを伝えてくれます。
そんな想いを伝える贈りものを集めたECサイト「TOHOK(とーほく)」が誕生しました。ここには、東北の暮らしを感じながら、東北で丁寧に作られたものが揃っています。
運営する「一般社団法人つむぎや」の友廣裕一さんと、デザインを手がける「NOSIGNER」の太刀川英輔さん、編集・取材を担当する「taraxacum」の柿原優紀さんにお話を伺いました。
左から、友廣裕一さん、太刀川英輔さん、柿原優紀さん
東北の本当にいいものを揃えました
「TOHOK」に掲載されているのは、丁寧に作られ、暮らしのなかで長く使えるもの。
例えば岩手県久慈市でつくられている「みちのく手ぼうき」は、村の人たちがほうき草の種を撒くところから手作りしています。種を撒いて、収穫して、乾燥させて、一つずつ編んでいく。ほうきを作るのに、丸一年かかるんです。
また福島県会津若松の若手が運営する「IIE」がつくるのは、この地域に古くから伝わる会津木綿に新たなデザインを加えたストール。震災後、会津に避難して仮設住宅で暮らす女性たちの仕事づくりのために考案されました。
素敵な商品が並ぶ「GIFT」のページ
友廣さん 僕と太刀川さんは、震災後、東北のお母さんのアクセサリーブランド「OCICA」の立ち上げもともに行いました。そして、ぼくらが作ってきたOCICAのように、震災後に新たに生まれたものづくりは200以上あると言われています。
少しずつ技術をつけて、いいものをつくる人たちも出てきている。しかし、震災復興の商品だけを集めて扱うと、逆に東北に距離を感じてしまう人もいると思います。
だから、今回は、震災復興商品だけではなく、東北に続く丁寧なものづくりの伝統を引き継いだものを紹介して、「ここにいけば贈り物にぴったりな東北の商品に出会える」というようなサイトにしたいと思っています。
ほかにも岩手県の伝統工芸である南部鉄器の調理道具や、喜多方の漆でできた地元の給食でも使われている漆器など、現在、10点ほどの商品が掲載されています。これらはすべて現地に行って取材しているのだそう。
柿原さん 取材で東北に通いながらも、この広い東北の地には、まだまだ素敵なものがあるんだろうなと感じています。これからの出会いもとても楽しみですね。
また、ただ買うだけでなく「そのものが作られた東北の暮らしを知ってほしい」と、東北で暮らす人たちの、贈りものにまつわる物語も紹介されています。
柿原さん 作られているものを知ることって、作り手の顔とか素材を知るということだけではなくて、それがどんな暮らしの流れで生まれてきたのか、ということだと思うんです。
東北という土地で、贈りものがどんな風に贈り合われていたのか、贈るという行為はどういう意味をもつのか、そういった角度からそこに暮らす人たちの思いや暮らしを一つずつ掘り下げていきたいと思っています。
3人が「ロマンチックだよね」と言っていたのは、福島県喜多方市で農村民泊を営む女性が、20歳の誕生日に幼なじみ(後の旦那さん)からオルゴールをもらった、という心温まるお話。贈りものをもらったときの思い出を含む全てが宝物になっているのだなと気づきました。
あなたに縁をもたらすブランド
「TOHOK」というブランド名には、「そんなストーリーやものを通して、『東北への憧れや縁を感じてほしい』という思いが込められている」と、ブランドデザインを担当する太刀川さんは言います。
太刀川さん そのブランドが大事にしていることがストレートに名前から伝わるといいなと思っていて、できるだけそのままの名前にしたかったんです。そして、「TOHOKU」から、「U」を削ってみた。
「縁をあなたにもたらすブランド」として、「U(you=あなた)」がつくと完成する。そんなブランドがいいんじゃないかなって。
ロゴは、水平線から「TOHOK」の姿が昇り、一本の線でつながっているような形に。なんと、ギフトボックスにも描かれている水平線は、一箱ずつスプレーで描かれているのだそう。
太刀川さん 本来、波の形は時間によって変わるし、全部ちがってもいいわけですよね。だから、それぞれ微妙に違う手書きの水平線が贈られているのもいいな、と。
さらに、ギフトボックスには2種のストーリーペーパーが同封されます。一つはTOHOKの「贈る想い」を記したブランドカード。もう一枚は、表に各ギフトが生まれる背景が書かれた商品紹介、裏には「暮らしと想いの物語」を一つ選んで掲載したリーフレット。
あなたが読んだ物語を、ギフトと一緒に贈ることで、受けとる人はそのものの品質以上の価値を感じることができます。そして、贈ってくれた人の気持ちに思いを寄せることもできます。
贈りものは誰かを想うこと
東北には、手仕事の文化が色濃く残っています。ずっと昔から暮らしの中で受け継がれてきたものから、震災後に生まれたものまで、良いものがたくさんあるのだと友廣さんは言います。
友廣さん 震災後、東北を駆けまわる中でたくさんのつくり手に出会いました。ほうきや竹かごなんかは、原料になる植物を育てたり、採取するところからはじまって、一つ作るのに1年も2年もかかるんですよね。そんな風に時間をかけて丁寧につくられて、今もあたり前のように暮らしの中でつかわれているものがあるなんて、今まで知らなかった。
そして、震災後には多くの商品が生まれ、そのなかには、技術を蓄えたものだったり、物語られるだけの魅力が詰まったものがたくさんある。でも、一つの商品だけで発信しようとしても、なかなか広がっていかないんですよね。TOHOKというブランドで、東北のものづくりの魅力をしっかり伝えていけたらと思っています。
コンセプトを「贈りもの」とした背景には、そんな想いがあったのだそう。
友廣さん 丁寧に作られたその商品たちが一番喜ばれるシーンって、贈りものなんじゃないかな、と思いました。
一つひとつ丁寧に作られたものを贈ることで、自分がその人のことを大切に思っていることや、丁寧な気持ちが伝わると思うんです。
取材旅で泊まった農家民宿のお母さんと。
また柿原さんと太刀川さんは、取材を通して、贈りもの文化の豊かさに気づいたと言います。
柿原さん 取材先で出会う東北の人たちに、最近贈られたものや贈ったもの、今まで贈られて嬉しかったものについて聞いてみると、どの人からも贈りものストーリーを聞くことができる。贈りものを楽しんでいて、すごく豊かだなと感じます。
相手の顔を思い描いて考えたり、贈りものを用意したり、手紙を書いたり…。「人を思う暮らし」っていいな、と改めて思うんですよね。
太刀川さん 今、簡単にものが手に入る中で、「いい暮らしってなんだろう?」と見なおしている人が増えていると思うのですが、東北にはそんな理想の暮らしの形を感じることができる。例えば集まって話し合うとか、何日もかけてなにかを準備するとか、面倒くさいことを厭わない、というのが基盤にある。合理性はないから失われかねないけど、豊かさを担保するためには必要だと思うんです。
ストーリーを書くときに柿原さんが抽出しているのはそういう丁寧さだと思います。僕たちもギフトをいっぱい売りたい、というよりは、丁寧さを摘み取って伝えていきたいですね。
「商品を選ぶ前に、まずは東北の美しい暮らしを知ってほしい」と3人。その思いはウェブサイトにも反映されていて、「暮らしと想いの物語」をしっかり届けようとしています。
そしてコピーも「暮らす、想う、贈る」。「贈りものとはなにか」を本質的に突き詰めているからこそ、こうしたメッセージになっているのだと思いました。
日々の暮らしの中で、誰かを想い、丁寧に作られたものを贈る。もちろん、自分用にもおすすめです。「本当に自分たちが使いたいものが揃っている」という「TOHOK」で、誰かのことを想って、贈り物をしてみませんか?