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田舎でエネルギーを考える!山村で開催の「ミニ太陽光発電ワークショップ」[イベントレポート]

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わたしたち電力」は、これまで“他人ごと”だった「再生可能エネルギー」を、みんなの“じぶんごと”にするプロジェクトです。エネルギーを減らしたりつくったりすることで生まれる幸せが広がって、「再生可能エネルギー」がみんなの“文化”になることを目指しています。

全国で100回以上開催されている、藤野電力さんの「ミニ太陽光発電ワークショップ」が岡山県北東部、鳥取との県境に位置する西粟倉村にある「西粟倉・森の学校」で開催されました。

この日はワークショップだけでなく、西粟倉村役場から電気自動車の体験試乗会や、「森の学校」から牧さん、「村楽エナジー」から環境学博士の井筒さん、「藤野電力」から講師の小田嶋さんのプレゼンテーションも行われ、人工林率80%の山村でエネルギーのことを考える一日となりました。

当日は3月後半なのに吹雪の中開催された一日をレポートします。

吹雪の中でも発電できるの!?

エネルギーを考える一日として、この日最初に開催されたのがミニ太陽光発電キットの組み立てワークショップ。会場には地元西粟倉村のおじいちゃんを始め、岡山県内の方、遠くは広島県からの若者グループ、神戸からの子ども連れの家族など、老若男女・広いエリアからの参加者が集まりました。持ち帰る人や、まずは試しに見てみたいという人も含め、DIYできる太陽光発電への関心の高さが実感できます。

そんな賑やかな会場で、「藤野電力の講師である、小田嶋さんの説明を受けながら実際に発電してみよう!」と始まりました。当日の天候は前日までの暖かい春の日差しを見事に裏切り、午前から降り出した雪が午後のワークショップ時間には吹雪にかわってしまうという悪条件。果たして発電できるのか? 参加者も主催者も不安な中でのスタートとなったのでした。
 
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まずは電気のことを知ろう!

太陽の光で「電気」をつくる今回のワークショップは、まず始めに電気のことを簡単に勉強するところから始まりました。

発電キットに含まれる装置を、配線で繋いでいけば簡単に組み立てられる太陽光発電キットですが、ワークショップに参加した人が家に帰ってから自分で工夫して活用してもらいたいというのが藤野電力さんの考えでもあります。

そのため、いきなり組み立てるのではなく、「ボルト」「アンペア」「ワット」など、子どもの頃に習ったことがある懐かしい電気の用語を噛み砕いて、水の流れに例えながらの説明を受けました。

参加者は高齢の方や家族連れ、若者などそれぞれでしたが、意外と覚えていない電気の仕組みに、皆さん真剣に耳を傾けていました。
 
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自分で組み立ててみよう!

一通りの説明が終わった後は、いよいよ実践編の組み立て作業になります。今回の開催では5名の参加者が発電キットを購入し、各テーブルに一台ずつ他の参加者と一緒に組み立てることになりました。

発電キットの内容は、

・50Wソーラーパネル
・チャージコントローラー(バッテリーからの電流の逆流、過充電を防ぐ装置)
・インバーター(直流の電気を交流に変換し、家庭用電気製品に繋ぐ装置)
・シガーソケット
・バッテリー
・ケーブル

 
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配線の接続の順序や注意点など、配線のことをやったことがない人でも分かりやすい様、丁寧に進められていきます。といっても作業自体は各機器を繋いでいけば出来上がるシンプルなものなので、身構えずに誰でも始められそうなのが印象的でした。
 
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みんなで組み立て!

後は順番にそって、各機器を繋いでいく作業になります。

テーブルごとに参加者の皆さんで協力して作業していくので、わいわいと賑やかな雰囲気で進みます。「この風景どこかで見たことあるなー」と思い出してみると、まさに工作の時間! 子どもの頃の図工や理科の実験の時間と似てるんですね。まさに大人の工作で楽しみながら実際に使えるものを作るというのが、特徴的なワークショップです。

そしていよいよ配線を繋いだ状態でパネルをかざしてみると。。。
「ついたー!!」
 
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和気あいあいとやりながらも、真剣な眼差し作業していた参加者の歓声で、会場が一斉に賑やかになります。外は吹雪、決して光量が多くはないのでしょうが、パネルに繋いだチャージコントローラーのランプが赤く点灯し、光を受けて電気が作られているのが見てわかります。この電気の視覚化も発電の楽しさのようですね。

最後にキットに付属のバッテリーも繋いでスマホを充電してみたり、木工用の電動工具を動かしてみたりと、自分たちで作った電気を使ってみました。自分で作った電気で工具が動いた! 思わず撮影大会になるほど、皆さん子どもに戻ったように楽しんでいました。

田舎で考えたエネルギーのこと

WS終了後は吹雪の中のEV試乗会があり、そしてゲスト3人のプレゼンテーションが行われました。会場となる部屋は、廃校をリノベーションして生まれた森の学校さんの元教室で、部屋の隅に設置された大きな薪ストーブで部屋全体を暖めていました。

トップバッターは「藤野電力」から講師でお越しの小田嶋さん。
 
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そもそも藤野電力は法人や組織の名前ではなく、トランジションタウン活動から生まれた、住民有志のエネルギーに関する地域活動とのこと。トランジションタウンとは、イギリスの小さな街で始まった、持続可能な社会へ移行するための市民運動のこと。日本で最初に生まれたのが神奈川県の旧藤野町(現相模原市緑区)で、その流れでできたのが藤野電力だったのです。(詳しい記事は、こちら

自立分散型の自然エネルギーで未来を考えることをテーマに、エネルギーの自給を目指して活動が続けられています。具体的には「ひかり祭り」という地元のイベントでは、電源のすべてを再生可能エネルギーでまかなって開催したり、市民発電所の建設、全国での太陽光発電ワークショップの開催などが行われています。

「自分たちでできることをやる」を合い言葉に極力DIYで取り組んでいて、そこで蓄積されたノウハウはオープンソースの理念でweb上で公開されてもいます。

二番手が今回のイベント主催でもある、「村楽エナジー」代表の井筒さん。井筒さんは環境学の博士でもあり、この3月末から西粟倉村へ移住され、木質バイオマスの利用の仕組みづくりで活動されています。
 
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近隣の山で伐採された間伐材を薪ボイラーの燃料として販売するため、ご本人も山に入りチェンソーで伐採もやるワイルドな博士でもあります。ここ西粟倉村でも3カ所ある温泉施設を、すべて薪ボイラーへと転換していく計画があるそうで、地元の木で湯を沸かすエネルギーの地産地消の取り組みが始まろうとしています。そこで計画的に薪を調達するためにも、井筒さんの活躍が期待されているのです。

井筒さんのプレゼンテーションでは、再生可能エネルギーの種類やその長短などを客観的な数字と、もっと個人的な好みを交えて解説されていました。特に「周回遅れの最先端」と銘打った太陽熱温水器は、ちょっと前までの田舎の家の屋根にはどこにでも載っていましたが、今は人気がないところを、メンテナンスの簡単さやランニングコストの低さから、5年で投資回収できるおすすめ装置とのことでした。

井筒さんは西粟倉だけでなく、お隣美作市にある湯郷温泉という、岡山では有名な温泉街の旅館にも薪ボイラーの普及活動を続けています。薪ボイラーのメリットは経済性の高さもさることながら、燃料となる間伐材を近隣で調達することで、これまで遠い国から輸入してくるために支払われていたお金が、地域に支払われることが大きなポイントです。

エネルギーを自給しお金を地域内で循環させることで、地域の経済的な自立性を促す役割も果たしてくれる。薪ボイラーはまさに田舎にぴったりなエネルギーの活用法なのでした。

そして最後が「西粟倉・森の学校」の社長、牧さん。
 
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これまで放置されてきた人工林の復活を目指して、始められた西粟倉村の取り組み「百年の森林事業」で、伐採された間伐材から商品開発し都市部へ売り込む地域商社として事業を行っています。間伐材を資源としていかに活用していくか、その商品開発の裏側やマーケティングの方法が紹介されました。

現在の主力商品は「ユカハリ・タイル」といって、都市部の賃貸物件で誰でも気軽に床を張り替えられるもの。一般的な床材として販売すると、間伐材の「材木屋」としては同じマーケットで価格競争に晒されては勝負ができないため、新築物件のための床材ではなく、賃貸物件向けというニッチなマーケットを攻めていて「家を建てない人向けの材木屋」を標榜しています。

建築材料としての柱や床、壁材の販売もしていますが、その端材を使って生活雑貨などの小物の商品も開発し、間伐材を余すことなく商品にしてお金に換える。そのお金をまた森の維持に投資して、50年後の豊かな森づくりをするサイクルを生み出しています。

現在取り組んでいるのが、田舎に住みたい人向けの間伐材スモールハウスの開発。上物だけで1000万円程度の価格で、食やエネルギーをできるような家づくりを目指しているとか。田舎の古民家はなかなか借りられない事情もある中で、もっと気軽に田舎に住み始められるような仕組みづくりを目指しているんだそうです。

今年中にはモデルハウスとして一棟森の学校さんの敷地内に建築予定とのことですので、その完成も楽しみですね。

西粟倉村で開催された田舎でエネルギーを考える一日。普段はなかなか気づけなかった田舎だからこそ、身近にあるエネルギー資源をちゃんと活用していけば、田舎から素敵な未来を作っていけるのかもしれません。

(Text:鈴木宏平)

鈴木宏平
宮城県仙台市の農家に生まれ育ち、大学入学で憧れの東京へ上京。その後、妻と学生結婚し長男誕生が人生の転機となり、食べ物や農業のことに関心を持ち、東京に違和感を抱くようになる。大学4年の頃からフリーデザイナーとして活動を始め、2011年いよいよ実家に引っ越そうとした矢先に震災が発生し仙台帰りを断念。その後現在の岡山県西粟倉村に移住し、nottuo デザイナー・難波邸 企画広報・ソメヤスズキ ブランドマネージャー、そして二児の父として田舎暮らし中。