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誰もが自分らしく生きられる社会を目指して。LGBTの思いがひとつになる「ピンクドット沖縄」

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「ピンクドット」というイベントを聞いたことがありますか?これは、LGBT(L=レズビアン、G=ゲイ、B=バイセクシュアル、T=トランスジェンダーなどのセクシュアルマイノリティ)の人たちが生きやすい社会を目指して、その存在を可視化するため、LGBTやアライ(支援者)の人たちがピンク色を身につけて集まるという、2009年にシンガポールで始まったイベントです。

今年夏、日本初となるピンクドットが沖縄県那覇市で開催されました。その「ピンクドット沖縄」について、実行委員会共同代表の砂川秀樹さんにお話をおうかがいしました。

パレードではなくゆったりと集まる場を沖縄で

これまで東京でプライドパレードなどに関わっていた砂川さん。プライドパレードとは、ピンクドットと同様の目的で、LGBTやアライの人たちがパレードをするイベントで、世界各地で行われています。砂川さんはその実行委員長などを務めていましたが、2年半ぐらい前、出身地である沖縄に帰ります。

ピンクドット沖縄実行委員会共同代表の砂川秀樹さん
ピンクドット沖縄実行委員会共同代表の砂川秀樹さん

沖縄でも何かをやりたいという想いが、ピンクドット開催へと向かっていきました。そこには、沖縄ではパレードより、集まるほうが合っているかもという想いがあったそうです。パレードとピンクドットはどう違うのでしょうか。

東京でも、東京プライドフェスティバルというのを2010年にやったんです。ただ集まるだけだと、雰囲気が変わるんですよね。パレードのようなピークのある高揚感はないんだけれど、ゆったり過ごせるんです。それはそれでいいなと思って。

パレードだと、歩くか歩かないかに分かれちゃうんですけど、集まる場合は、それぞれの距離感で集まれるんですね。遠目から見つつ過ごすのもある種の参加だし。それに、広場で集まるほうが、LGBTではない人も集まりやすいのかもしれませんね。

開催までの苦労、そして支えてくれる人たちの存在

「ピンクドット沖縄」は、沖縄でオープンな形で独自の企画運営で行われたLGBTのイベントとしては初めてのイベント。そして、ピンクドットが行われるのは、日本初。東京でパレードに関わってきたとは言え、やはり苦労はあったそうです。

資金を集めるのが大変でしたね。初めてということもあって、どういうものが皆イメージもつかめなくて。東京だと、大きな外資系の企業ががっつり支援したりするんですけど、沖縄ではそういう大きな企業のサポートを得るのがなかなか難しかったです。

また、東京だと、ゲイバーとかゲイビジネスから広告をもらうというのが中心だったんですけど、沖縄では一般にも配布される冊子に、ゲイバーとして広告を出すのが難しいという面もありました。

その一方、「ピンクドット沖縄」は、さまざまな人の協力を得ることもできたといいます。

「ピンクドット沖縄」当日に配布され、支援企業の広告等が載っている冊子「In-Q」と、キャラクターマスコット「ぴんくま~る」のステッカー 「ピンクドット沖縄」当日に配布され、支援企業の広告等が載っている冊子「In-Q」と、キャラクターマスコット「ぴんくま~る」のステッカー

沖縄とか、地方はどこもそうだと思うんですけど、フェイストゥフェイスのネットワークがすごく強いので、僕がもともとつながっている人から、その人がもともとつながっている人っていう風に支援の輪が広がっていく感じがおもしろいですよね。

今回、支援してくれた「ANTENNA」という会社は、僕の高校時代の同級生です。そういうつながりが大きい感じはします。

さらに、まだまだ沖縄では強い影響力を持つという地元の新聞、沖縄タイムスと琉球新報が、開催まで何度も記事を載せ、当日の模様も翌日の一面に写真入りで大きく取り上げたというのは、東京などの大都市では考えにくいことかもしれません。

また、砂川さんが長くお付き合いがあったという「なは女性センター」を介し、那覇市の共催を受けたり、「沖縄観光コンベンションビューロー」という公的な位置づけのある観光の組織が後援につきました。

なぜ観光の部署がと思うかもしれませんが、世界各地でLGBTのイベントはいろいろなところから人が集まる観光資源ともなっているのだそうです。もちろんLGBTは人権の問題ですが、海外からの観光客をたくさん呼びたいと思っている沖縄では、イベントを実行する側にとってはそこをひとつの梃子として、公的なところからの協力などを得る可能性も秘めています。

800人もの想いが一つにつながった場

そして迎えた7月14日、会場である那覇市の国際通り沿いにあるテンブス前広場には、800人もの人が集まりました。どのような人たちが集まったのでしょうか。

印象としてはLGBT自身とアライと半々ぐらいかなっていう気がしました。僕としては、思った以上にLGBTが来たなと思いました。地元のゲイは全く来ないだろうなって思ってたんです。

狭いネットワークの社会なので、やっぱり集まれば誰かに見られますよね。だから集まらないだろうなと思ったんですけど、自分がたまに行くゲイバーの人も来てくれたりして、見た顔がいるというのはすごく嬉しかったですね。

会場で開催されたオリジナルウッドブレスレットづくりのワークショップ 会場で開催されたオリジナルウッドブレスレットづくりのワークショップ

当日は、ステージでの音楽演奏や、オリジナルブレスレット作り、メッセージを書くワークなどのブースを皆で楽しみました。また、オリジナルのカップル証明書を作り、二人で名前を書くという試みもあり、ゲイカップル2組とレズビアンカップル1組が参加したそうです。

楽しく過ごしてもらえた感じがしてよかったです。そこでは、自分らしくいられるということですよね。自分たちはLGBTに対してサポーティブである、当事者であるみたいな人たちが、ああいう場所で緩くつながっている感が心地いい、そういう雰囲気がありました。

パレードに比べると、わかりやすい意味でのメッセージ、言葉はないかもしれないけど、そこでつながること自体に意味があるという気がするんですよね。目的としてはもちろんLGBTがより生きやすい社会を作ることなんだけれども、そう思っている人たちがこんなにいるんだと見えることがメッセージで、そこに集まる人たち自身がそこで力づけられたことに一番意味があるかな。

 東京から参加した砂川さんの友人で、パートナーシップ証明書にサインしたカップル。11月に東京で結婚式を挙げるそう。 東京から参加した砂川さんの友人で、パートナーシップ証明書にサインしたカップル。11月に東京で結婚式を挙げるそう。

実際、TwitterやFacebookを通して寄せられた感想には、「悩むこともいっぱいあるけどゲイでよかった、とても楽しかった」という高校生ぐらいの子の声もあったそうです。その声からも、どんなにいい雰囲気があったのかが伝わってきます。

いろいろな人がいていいというメッセージが広がれば

日本でのプライドパレードなどは、東京や大阪、札幌などの大都市で多く行われてきました。沖縄という地方で、このようなイベントが行われたことの意味をおうかがいしてみました。

LGBTの問題を取り上げて活動できるのは、大都市だけだよねっていうイメージがあるんです。地方になればなるほど、地方はそうはいかないよって皆思ってる。でも実は動いてみると、意外と理解してくれる人は必ずいるということが見えてくることに意味があるかな。

沖縄のほかの問題との絡みで言うと、沖縄は社会問題に関心がある人は、基地の問題に集中しがちなんです。確かに基地の問題は沖縄が抱えている一番大きな問題ではあるんだけど、そのことだけが問題であるかのように見えたりとか、そのことのせいか、沖縄県内での差異、いろいろな人がいるんだということが目に見えてこないのかなと思います。沖縄の中にも当然いろんな人がいるし、基地の問題だけではないということが見えてくるといいですよね。

砂川さんは、これからどんな活動を続けていくのでしょうか。

ピンクドットはできるだけ継続したいと思っています。実は今年が結構赤字だったんですけど、でも今年の成功感を受けて、じゃあ来年はっていう話も出てるので、できれば来年、再来年とやれたらいいなと思っています。

ピンクドットは、LGBTの人だけが楽しいんじゃなくて、いろいろな人がいていいんだというメッセージでもあるんですね。ジェンダーの抑圧感を感じている人もいっぱいいるわけで、その枠が取り払われると言うか、自由な気持ちになれるといいですよね。

ピンクドットのような活動は、誰にとっても無関係ではありません。

そして、ピンクドットとあわせて砂川さんが取り組んでいきたいという、LGBTの人たちを取り巻く具体的な問題に対しても関心を持ってみては?それが、誰もが自分らしく生きられる社会へとつながる一歩になることでしょう。

(Text:村山幸)