2009年6月2日、日本経済新聞の朝刊に、ひときわ目を引くマンガ調の広告が掲載された。広告主は、国際的な市民団体Avaaz.org。日本政府に対し、温室効果ガスの積極的な排出削減目標設置を求める意見広告だ。
意見広告と聞くと、とかくお堅いイメージを連想してしまうが、この広告は、そんな世間一般のイメージとは正反対。色も鮮やか、イラストにマンガを使用し、ポップで取っ付きやすいヴィジュアルに仕上がっている。
一方、こちらの広告より一足先に、同じテーマで意見広告を出している団体がある。広告主は、業界団体の連合体。3月17日と5月21日との二度にわたり、高すぎる温暖化目標は経済に悪影響をもたらすことを訴えている。
3月17日に朝日新聞に掲載された経済界の意見広告。
環境問題スペシャリスト・小澤徳太郎氏のブログより転載。網掛けは小澤氏による。
5月21日に日経新聞に掲載された経済界の意見広告。
環境問題スペシャリスト・小澤徳太郎氏のブログより転載。網掛けは小澤氏による。
最終的な政府決定は、両者痛み分け(?)の2005年度比15%減(1990年度比8%減)となったが、広告のクリエイティブのクオリティだけ見れば、Avaaz.orgの圧勝ではないだろうか。
ここで、海外の公共広告の事例を二つ紹介したい。まずは、同じくAvaaz.orgの温暖化・温室効果ガス排出削減に関する事例。
インドネシアの英字紙ジャカルタ・ポストに掲載された意見広告。
Avaaz.orgのサイトより引用転載
(”CLIMATE CHANGE, BALI, AND AUSTRALIA: HUMOUR AND POLITICS”の記事)。
舞台は、2007年12月にバリで開かれていた気候変動枠組条約の第13回締約国会議(COP13)。さながらタイタニックのごとく、国際合意に反対する三国のリーダーを、主演としてフィーチャーしている。批判も、こんな形でされたら、むしろ気持ちいい?!
続いて、国際的な人権保護団体Amnesty Internationalのスイス支部が2006年5月に展開したキャンペーン。
これらの写真はいずれもAdlandより引用転載。
“It’s not happening here but it’s happening now.”’(ここではないが、今実際に起きている)というコピーと、街並と同じ背景写真を使って、目の前ではないものの、今まさに世界のどこかで起きている人権抑圧の様子をレトリックに描いている。見る者の心をドキリとさせるこのキャンペーンは、真面目な御託が並んだ意見広告よりも、どれほど影響力があることだろう。
まだまだ硬いイメージがつきまとう日本の意見広告の世界。今回のAvaaz.orgのように、遊び心や洗練されたデザインなど、クリエイティビティの力が加わるようになれば、社会の流れも変わるような気がする。
ちなみに、このAvaaz.orgの広告制作に、greenzコントリビューターのecogrooveこと丸原さんが関わっています。丸原さん、日本のソーシャルコミュニケーションを担う旗頭として、これからも活躍を続けてくださいね!
温室効果ガス削減の中期目標について色んな意見を見てみよう。