道路と道路の間に横たわる、ひょろっとした森。これは、フランスの首都パリに誕生した「タイニーフォレスト」第1号です。
2018年、市民ボランティアの手によって1,200本の植物がこの土地に植えられました。そしてたった3年で人の手がほぼいらない安定した森に。今では、30種類以上の植物が生い茂る、もはや人が横断できないほど豊かな森となりました。
「タイニーフォレストは土壌を良くしてくれて、生物多様性をサポートしてくれます。さらに、日陰をつくる。雨を吸収する。大気を冷やす。騒音を遮断する。都会にとって良いことづくしでしょう? 」
森の見廻りをしながらこう話してくれたのは、タイニーフォレスト第1号をきかっけにNPO団体「ブームフォレスト」を仲間と立ち上げたDamien Saraceni(以下、ダミアンさん)。
2018年の創設から今まで、ブームフォレストは20個以上のタイニーフォレストをつくってきました。その活動は今やパリだけに留まらず、リヨンなど他の街にも広がっています。
30年はかかる森づくりが、たった3年で。日本生まれの植樹法「宮脇方式」とは?
ブームフォレストが森づくりで採用しているのは「Miyawaki Method(ミヤワキ・メソッド)」という植樹法。日本では「宮脇方式」と呼ばれています。植物学者・森林生態学者の故・宮脇昭(みやわき・あきら)さんが1970年代に生み出したもので、ヨーロッパ、アメリカ、アフリカ、アジア、南米、ロシア、中東などなど、今では世界各地で宮脇方式で森がつくられています。
宮脇方式では、潜在自然植生と呼ばれる、人が一切関わらないと仮定したときに、その土地と気候が育てられるであろう植物を中心に植えます。高木から低木まで、たくさんの種類の植物を1㎡あたり3〜5つの苗を混植・密植。その土地に、かつてあったであろう原始林を再現するのです。
宮脇方式のもう一つのチャーミングな特徴は、ポット苗を使うこと。植樹と聞くと、重機をつかったり、大きな穴を掘ったりという重労働を思い浮かべてしまう人もいるかと思いますが、宮脇方式では、誰でもどこでも、スコップひとつで森をつくることができるのです。素敵ですよね。
宮脇方式の森は、従来の森よりも約10倍成長が早く、より多くの生物多様性を生みだすのだそう。場所を問わず、幹線道路の空き地、ロータリーや工場、校庭などなど、あらゆる土地を使うことができます。
例えば、ブームフォレストが植樹したこの土地は、鉄道の車両センターとビルの間の小さな小さな傾斜地。使い道がなく、自生したツルのせいで他の植物も育たず、乾燥した土が剥き出しのまま、ずっとほったらかしにされていました。そこで、もともとあったツルを残しながら、将来的にここで養蜂ができるように、花と低木が多めに植えられました。

左が植樹前。右が2年後
リヨンの都心部、住宅街の道路に挟まれた400m²の傾斜地に植えられたのは、約40種の地元の植物。この緑地は、ヒートアイランド現象を防ぎ、さまざまな昆虫の避難所となっています。

左が植樹前。右が1年後
公園のような広い土地での植樹では、宮脇方式の更なる効果がみてとれます。樹木は霜や干ばつにも耐え、1㎡に約3本の密度で安定して育っています。1本のニレの樹は、植林後 3 年も経たないうちに樹高4メートルを超えたとか。

左が植樹前、右が2年後
小さくていい。誰でも参加できる、開かれた活動であること
誰でも参加できる、開かれた活動であること。小さくていい。
これは宮脇さんの言葉です。
ブームフォレストでは、宮脇方式の哲学をうけて、森づくりの手順や予算などのノウハウをオープンソース化しています。公式HPにアップされている子ども向けの資料はこんなに親しみやすくてキュート。
今までブームフォレストがつくってきた森のデータも丁寧にまとめられていて、ビフォーアフターの写真をみるだけでも希望がわき、わくわくしてきます。
また、宮脇さんはこんな言葉も残しています。
植樹とは、明日を植えること、いのちを植えること、そして心に樹を植えることなのです。
小さな森が生むたくさんの心の樹。それは将来、私たち人間にとっても地球にとっても、大きな収穫となることでしょう。日本でも、各地で植樹や森の再生の取り組みが生まれています。まちと心に、あなたも樹を植えてみませんか。
(Via: ブームフォレスト公式HP、時ノ寿の森クラブHP、ATMOS、Reasons to be Cheerful)
(編集: 岩井美咲、greenz challengers community)