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クローゼットの一着が、意識を変えるスイッチに。“土に還す服”を通じ、循環を楽しむカルチャーを育てる「Syncs.Earth」

カルチャーが生まれるとき、背景には必ずコミュニティの存在があるように思います。

これまで取材してきた中でも、環境再生の実践を広げていく取り組みの多くは、コミュニティと共にありました。

「“土に還す服”を通じて、循環をカルチャーとして広げていきたい」

ファッションデザイナーの澤柳直志(さわやなぎ・なおし)さんがそんな思いで立ち上げたのは「Syncs.Earth(シンクスアース)」というブランド。全て土に還る素材でつくった服を販売したのちに回収し、自社の畑で分解する仕組みを実現しています。

ここ数十年、アパレル業界ではいつの間にか「できるだけ安く、早く、たくさん、トレンドのものを」が当たり前になり、人びとは服をとても刹那的に、使い捨て感覚で楽しむようになりました。その結果、日本国内では現在1日あたり約1,200トンもの衣類が焼却・埋め立て処分され、大きな環境負荷を与えています。(参照:環境省「SUSTAINABLE FASHION」

つくり手も、売り手も、使い手も、意識と行動を変えていく必要があるこの業界において「循環」をカルチャーとして広げていくために、澤柳さんが大事にしているのもまた、さまざまな人とのつながりであり、コミュニティでした。

Syncs.Earthの服や、畑に戻す仕組みはどのようにつくられているのでしょうか。また、共鳴する人たちとどのようにつながり、価値を広げているのでしょうか。畑や取扱店を訪ね、伺いました。

澤柳直志(さわやなぎ・なおし)
Syncs.Earth代表。ファッションデザイナー。大学在学中に自身のブランド「ナオシサワヤナギ」を立ち上げ、東京コレクションにも出展。その後さまざまなアパレルメーカーのデザインを請け負う中で廣田拓也さんに出会い、共同で土に還る服のブランド「Syncs.Earth」を創業。現在は長野県松本市と東京の二拠点生活を送る。

服ではなく「循環」を意識するスイッチを売る

Syncs.Earthのコンセプトは“Own nothing.”(誰のものでもない)
この言葉通り、このブランドのユニークポイントは、消費者が服を「所有しない」ところにあります。

(画像提供:Syncth Earth)

生地のみならず縫製の糸やボタンまで、全て「土に還る」素材でつくった服を顧客に“貸与”したのち、着古したものを“回収”して自社の畑で“分解”する循環の仕組みをつくり、実践しているのです。

製造工程で発生する生地の残反も全て回収し、畑に還している(画像提供:Syncth Earth)

澤柳さん 私たちは決して「土に還す」ことをミッションにしているわけではありません。ビジョンは、循環型社会を世界に広めていくこと。その一つのピースになりたいと思っています。

服を販売するというよりは、お客さま一人ひとりが「これって土に還すものなんだ」と、循環を意識するスイッチを売っているような感覚です。

キャプション:自社のオンラインショップでは「循環購入」(貸与型)と「通常購入」(所有型)から選べるが、ほとんどの購入者が前者を選ぶ(画像提供:Syncth Earth)

服の素材は全て「畑に還す」ことを前提に厳選されたものばかり。例えば「オーガニックコットン」一つとっても、アパレルの品質表示基準に合わせるのではなく、ケミカルな処理を全く施さない素材を、自社畑で分解できることを実証してから採用するという徹底ぶりです。

染色にはケミカルな処理が必要になるため、自ずと無染色の服ばかりになるが、そのインパクトがブランディングにもなっている(画像提供:Syncth Earth)

たとえ土に還る素材であっても、土壌の生態系を壊してしまう素材や身体によくないと感じる素材は積極的に選びません。なぜなら、畑で土に還し、そこで野菜を育て、自分たちが食べるから。まさに、循環を意識したものづくりのあり方です。

ファッションデザイナーが服の“最期”と向き合う

学生時代に自身のブランドを立ち上げ、東京コレクションなどのファッションショーにも出展していた澤柳さん。やがてデザイナーとしてさまざまなアパレルメーカーのデザインを受託するようになり、大量生産の業界でも活動の幅を広げていく中で、葛藤を覚えるようになったといいます。

澤柳さん アパレル業界を知らないうちに自分のブランドを始めたので、自分のブランドと量産系の仕組みの違いにショックを受けたんです。もちろん仕事としてはしっかりやっていましたが、私を含めものづくりに真剣に携わっているデザイナーたちのデザインが、どんどん消費されているという感覚がありました。シーズンに追われて次から次へと新しいものをつくらないといけなくて、でも売れなければ半分ぐらい捨てられていく。そんな状況を目の前で見てきたんです。

澤柳さんは30歳になる頃に自身のブランドをたたみ、一念発起。「デザインを大切にしたい」という思いで、デザイナーと企業のマッチングをして、デザインの価値を企業に理解してもらった上で仕事をしていくための会社を立ち上げ、今もその活動を続けています。

その時にビジネスの相談をしたのが、Syncs.Earthの共同創業者である廣田拓也(ひろた・たくや)さんでした。

澤柳さん 知り合いに紹介してもらって、経営に関する相談をしたのが廣田との最初の出会いです。その中で、他社の仕事だけでなく自分たち発信のものを世に出したいね、という話になって。「デザインの力だけではない、カルチャーをつくるブランドを立ち上げよう」と。いろいろなアイデアを出し合う中で、廣田から「土に還す服」というアイデアが出てきました。その時初めて知ったのですが、実は彼は東京農工大学の出身で、土壌の分解について知見があったんです。

廣田拓也さん(画像提供:Syncth Earth)

このアイデアであれば、自身が業界に対し抱えていた葛藤を踏み台にしてブランドを築けると考えた澤柳さん。それと同時に、いわゆるグリーンウォッシュ(※)が多いアパレル業界において「土に還す服」を打ち出すのであれば、畑までやらないといけない、と決意したそうです。

(※)グリーンウォッシュ:自社のサービスや商品について、実態を隠して「環境にやさしいものである」と見せかけるマーケティング手法のこと。

澤柳さん 私たちデザイナーは、自分がデザインした服が誰の手にわたるのか、どんなふうに着られるのか、なかなか見ることができません。でも土に還る服って、デザインした服の“最期の部分”を見ることができる。これまでものづくりの部分ばかり見てきたので、そこにすごく魅力を感じました。だからこそ、畑までやっていこうと決めたんです。

そうして2020年、澤柳さんがデザイナー、廣田さんが循環型農業のコーディネーターとして共同でブランドをスタート。畑を借りて素材ごとに分解の実証を進めながら、「土に還す服」のあり方を探っていきました。

土壌の生態系を壊さない素材のみで服をつくる

実は、服に使われている素材=品質表示タグの通り、というわけではありません。「綿100%」と書かれていても、実際にはポリエステル糸で縫製され、プラスチックボタンや金属ファスナーが使われていることがほとんど。でも、土に還すのであれば、服を構成する全ての素材に配慮が必要です。

澤柳さん もとの土地になかったものを入れていくので、「畑に異物を入れる」という感覚でやっています。

最初は大きめのコンポスターに落ち葉と一緒にいろんな種類の生地の端切れを入れ、本当に微生物がしっかり食べるのかという実証から始めました。単純に「オーガニックコットンだからいい」というわけではなく、「全部分解され、土に還る」というのを目で見て確かめ、かつ廣田が「土壌の生態系を壊さない」と判断した素材だけを使います。今は基本、無染色の和紙とオーガニックコットンだけですね。これらは落ち葉や植物と同じ、セルロースという成分でできています。

2020年当初は「paper」というブランド名で和紙素材のTシャツを発表。クラウドファンディングで販売し、市場との相性を確認した。その後はサブスクで月額980円で販売していたが、より長く使ってもらうために現在のブランド名、仕組みに転換(画像提供:Syncth Earth)

縫製の糸は全てオーガニックコットン。綿糸での縫製は、ポリエステル糸に比べると強度も作業効率も劣るため、ミシンのスピードを落としたり、冬は乾燥して切れないように加湿器をつけたりと、技術も工夫も必要です。生産を委託する国内の工場にはしっかりとブランドの意志を説明し、共感してもらった上で依頼しているそうです。

オーガニックコットンの調達は輸入に頼る分、トレーサビリティを重視。オンラインショップではコットンの生産農園の情報も公開。さらに、全ての工程で化学物質未使用の認証を取った素材を選んでいる(画像提供:Syncth Earth)

生地は和紙かオーガニックコットン、付属品に使えるのは貝や木のボタンのみ。ここまで制限された中でデザインをするのは、かなり難易度が高いように感じます。

澤柳さん おっしゃる通り、すごく制限のあるデザインをしなければいけません。しかも、ブランディングとしては木のほっこり感をあまり出したくないので、使うボタンは貝だけです。染色も難しいので、色展開も諦めました。デザイナーとしての許容範囲と土壌の許容範囲のせめぎ合いですね。

でも、これってデザイナーとして試されている状況じゃないですか。限られた中でやっていくのは、本当に楽しいんです。

Syncs.Earthではシーズンごとに新作を発表するのではなく、全てが定番商品。新作を不定期に発表するほか、既存の商品を少しずつアップデートする形で商品を展開しています。

コミュニティメンバーとともに、自社の畑で探究を続ける

Syncs.Earthの畑は、東京都日の出町にあります。伺ったのは秋のはじめ。久々に都内が猛暑日を記録した、残暑の厳しい日でした。

Syncs.Earthの畑。JNCエンジニアリング株式会社が運営する大久野倶楽部の畑の一部を借り、放置されていたビニールマルチを取り外す作業から始まった

見ての通り、こちらの畑は特別な手入れはしていません。自然農をベースに、返却された服や製造工程で出る端材を堆肥にして土壌を改良し、作物を育てています。基本は不耕起ですが、畝をつくっている一角も。「いろいろなやり方を組み合わせながら、一番分解する方法を探っています」と澤柳さん。

廣田さんがここから近くに住んでおり、パートナーが地域の自然農コミュニティに参加していたことから、最初はその人たちにアドバイスをもらいながら畑づくりを始めました。現在は、Syncs.EarthのInstagramでの呼びかけを見て集まったコミュニティ「Syncs.Lab」のメンバーで、週末に農作業をしています。服の購入をきっかけに参加する人もいれば、循環農業を研究する大学生もいて、誰でも参加できる気軽なコミュニティ。多い時で1日に10名くらいが集まるそうです。

コミュニティのメンバーで山から切り出してきた竹でつくった動物よけの柵。畑に参加してから服の存在を知るメンバーもいる

澤柳さん 最初は育てた野菜をお客さまに還元したいと思っていたのですが、この5年間で試行錯誤を繰り返し、ようやく畑らしくなってきたところです。ただ、夏の暑さの影響や、鹿や猪に掘り返されてしまうことも多く、まだまだ野菜を安定して収穫することはできていません。今はコミュニティのメンバーが作業後に持ち帰ったり、その場でみんなで食べたりしています。

熟れたピーマン。夏野菜の収穫が終わった後だったので、この日実っていた作物はわずか。野菜の種は、本来の自然に近い固定種(自家採種を繰り返すことができる種)を使うようにしている

この畑で、服や残反をどのように土に戻し、分解させていくのでしょうか。

澤柳さん 分解には十分な湿度が必要なので、本当はやりたくなかったのですがビニールマルチを張ってその中に生地を裁断した端切れを入れていきます。分解期間は素材によりますが、暑い季節は和紙だと早くて3週間、コットンでも3ヶ月ほどで全て分解されます。

逆に冬は全く分解しないので、寒いうちにマルチを仕込み、春夏へ向けて端切れを入れ土壌づくりをします。気温が高くなるとともに微生物が活性化して分解が進むので、その頃に種をまき、作物を育てていきます。

あいにくこの日は、暑さのあまり直近に入れた端切れは全て分解されてしまったようで見つからず。そこで、澤柳さんが新たな端切れや畑で見つけた糸状菌の塊を用いて、土に戻す作業を再現してくれました。

<左上>①土を掘って生地の端切れを置く→<右上>②竹の裏や土の中についた糸状菌の塊をミルフィーユ状に被せる→<左下>③その上から雑草を被せる→<右下>④最後にしっかり土を被せる。糸状菌のつきやすい古い竹を入れ込むこともあるそう

澤柳さん この畑の土壌にはもともと、糸状菌と呼ばれる菌がたくさんあったんです。糸状菌にはセルロースの構造を壊して微生物が食べやすい姿に変換する役割があって、微生物がそれらを食べることで糞や酵素がでて、土壌の栄養になっていきます。糸状菌は古い竹の裏にも白くくっついたりするので、近隣の山から竹を切り出して、一緒に土の中に埋めることもあります。土壌づくりは廣田がしっかり管理をしていて、菌が少ないと感じたときには追加で入れ込むようにしています。

畑の中をのぞくと、あちこちに糸状菌の塊があった。農家はこれを「はんぺん」と呼ぶことも

売り手が実践することで、消費者の意識が変わる

仕組みを整えたところで、消費者がこの服をファッションとして楽しむことではじめて成り立つSyncs.erarthのサイクル。アパレル業界ではどのように受け止められているのでしょうか。

別の日、澤柳さんはSyncs.Earthの服を取り扱う、大阪市西区のセレクトショップ「THE GOODLAND MARKET(以下、TGM)」堀江店へ案内してくれました。テラスでバッグ型コンポストをかき混ぜながら「こんにちは!」と声をかけてくれる店員さんとともに出迎えてくれたのは、TGMの発起人であり部長の新山浩児(にいやま・こうじ)さんです。

TGMは、アパレル大手の株式会社アーバンリサーチから2020年に誕生したブランド。「人や環境に配慮した循環型ファッションライフスタイルを提案するプラットフォーム」をコンセプトに衣類から生活雑貨、食品まで品揃えする。写真右が新山さん(撮影:安國真理子)

30年以上のバイヤー経験を持つ新山さんもまた、最近のアパレル業界に葛藤を抱いていた一人。「コミュニティをベースにしたブランドをつくり、何があってもブレない軸を保ちたい」と思うようになり、TGMを立案しました。ところが開始当初は「全然売れなかった」と振り返ります。

新山さん TGMでは、商品の“背景の力”を大事にしています。例えばSyncs.Earthの服を売るためには、スタッフ一人ひとりが澤柳さんの活動を理解して、お客さまに伝えていく必要があります。でも、当初僕らは環境に対する取り組みについて「何が本物なのかもわからない」というのが実際のところでした。やっている人のことをちゃんと知らないと、商売にならないと感じましたね。

TGMで取り扱うブランドのうち、「Syncs.Earthがもっとも“尖っている”ブランドです」と新山さん。つくり手とのコミュニケーションを大事にしており、澤柳さんも信頼を寄せている(撮影:安國真理子)

そんな中でSyncs.Earthを取り扱い、その背景や澤柳さんの意志と向き合っていくことで、スタッフにもお客さんにも、実践のきっかけが生まれていったそうです。

新山さん 澤柳さんに出会った頃は、「とても真似できない」と思っていました。でも、僕と一緒にTGMをつくってきたデザイナーが僕より先に「ハマった」んです。店の屋上で畑をやり出して、澤柳さんの畑にも見学に行って、まるでSyncs.Earthの一員かのように、一緒にものづくりについて考えるようになった。

そこから盛り上がっていきましたね。僕ら自身がSyncs.Earthの服を通じて少しずつ、一生懸命に実践していくことで、「この素材だと服は土に還るんだ」「こんな循環の形があるんだ」と多くのお客さまにわかってもらえる。そうやって意識を変えていくことが必要だと気づきました。

最初は商品を借りて店頭に並べ、ほしい人はSyncs.Earthのオンラインショップで購入する形式だったそう。それが今ではお互いに不可欠なビジネスパートナーとなり、TGMだけのオリジナル商品も展開。定番商品とあわせてしっかりとスペースを割いて販売するまでになりました。

店内のSyncs.Earthコーナー。畑で分解されてボロボロになったTシャツが手前に立てかけられていて、まるでアートのよう。ボディが着ているワンピースがTGMだけのオリジナル商品で、一番人気(撮影:安國真理子)

澤柳さんがスタッフ向けの勉強会を開くこともあり、今では全員が澤柳さんの活動をきちんと理解しているといいます。Syncs.Earthの服のデザインに惹かれ、手に取ったお客さんに、「実は…」と語りかけ、ブランドの背景を知ってもらう。そして購入時には、全員が「土に還す服」であることを知った上で、「いつか着なくなったら返そう」というモチベーションでお店をあとにする。デザインと背景が相まって価値となっています。

スタッフのみなさんは澤柳さんが想定していなかったような着こなしを考えるなど、ブランドに共感しながらファッションとしても楽しんでいる(撮影:安國真理子)

TGMでは、Syncs.Earthの購入者向けに、服を長く楽しんでもらうためのイベントも実施。染色作家を招き、土壌に悪影響を与えない材料で染めるワークショップをしたり、残布でつくったワッペンを縫いつけるサービスをしたり。当日は澤柳さんも店頭を訪れ、顧客とのコミュニケーションを深めています。

新山さん 金額的に大きな仕事はできていませんが、お金には代えられない、お客さまとの信頼関係をつくることができています。そういうことが最終的にお店のファンづくりや、売り上げにもつながっていくのだと、最近になって見えてきたところですね。

業界の垣根を越え、カルチャーとして広げていく

現在、畑へ戻すために返却された服は、まだ数十枚。限られた素材を駆使して長く使えるようにデザインした服ですから、澤柳さんの望み通りです。

生産から販売、土へ還す仕組みが確立した今、ブランドとして注力しているのが、「to B」のものづくりです。Syncs.Earthの理念と親和性の高い企業や飲食店の制服をつくったり、芸能人とのコラボレーションを展開したりしています。

大阪府の能勢妙見山でat FOREST株式会社が展開する「循環葬(R)︎ RETURN TO NATURE」の制服として手がけた「循環服」(画像提供:at FOREST株式会社)

京都の地下水で関西のハーブやフルーツなどを蒸留してカクテルをつくる、循環がテーマのバー「カクテルスタンド フレく」の制服も手がけている(画像提供:Syncs.Earth)

澤柳さん 私たちの考え方に共鳴していただけるような方や企業とコラボレーションを行っています。芸能人の方とのコラボレーションは、ご本人が「循環」への思いを強く持っていて、うちの畑に見学にきて「一緒に端切れを土に還す作業をやっていきたい」と言っていただき、始まりました。そうやっていろんな業界と組むことで少しずつ、私たちが目指す循環のカルチャーが広がっている感覚があります。

中でも、より気軽に取り組めるコラボレーションとして、企業やブランドのロゴでつくる「ワッペン」に可能性を感じているといいます。澤柳さんが着ているTシャツには、これまでつくってきた各社のワッペンがずらり。

TGM、循環葬®︎、みんな電力……と、理念に共感し合うさまざまな企業やブランドとつくったワッペン。もちろん、縫い付ける糸を含め全て土に還る素材。販売したり配布したりと、クライアントによって使い方はさまざま

澤柳さん ワッペンは、業界を問わず活用できるので、今後広めていきたいと思っています。私たちがストックとして持っているTシャツやエプロンをベースにして、ノートパソコンにステッカーを貼るような感覚でいろんな企業のワッペンを縫いつけて楽しみながら、長く着てもらえたらいいなと。一人ひとりが自分なりにアレンジできるよう、現在オーガニックコットン糸のリペアキット販売を企画中です。

全て白いからこそ、企業の大小も競合同士も関係なくフラットに並べられるのが魅力。型さえつくれば、最低1枚から発注できるそう。「グリーンズさんもぜひ!」と澤柳さん

澤柳さんたちはこうして、多方面にわたってブランドに共鳴する人たちとつながり、小さなコミュニティを築きながら、ファッションを楽しんだ後に土に還すことを、まさにカルチャーとして育んでいるように感じます。ゆくゆくは各地のミニマムなコミュニティとつながり、それぞれの場所でSyncs.Earthの循環を実践していくような想定もしているそう。

今後は海外とのタッチポイントをつくり、グローバルな展開も見据える。また、ものづくりの背景が買い物の基準として染み付いている若い世代とのつながりを強め、彼らの価値観を企画にいかすことも考えているそう

Syncs.Earthは決して、服の選び方を押しつけません。あくまで「クローゼットの一着にしてほしい」と言うのみ。ただ、彼らの服には、循環の実践に向かうスイッチがあるのです。

ワンピースを一着購入した私は、「これを目一杯着倒して、土に還すぞ!」と、これまでとは違うファッションの楽しさを感じていますし、「その服いいね」と言われるたびに「土に還るんだよ」と熱く語り、TGMで開かれたイベントには友人たちを誘って参加しました。一人にスイッチが入ることで、共感の輪が広がり、コミュニティが生まれ、カルチャーになっていく。今、その過程を目の当たりにしているところです。

あなたもクローゼットの一着にSyncs.Earthを選び、このスイッチを押してみませんか。

(撮影:イワイコオイチ)
(編集:増村江利子)

– INFORMATION –

4/5開講! リジェネラティブ デザイン カレッジ 2025
〜自然環境を再生して、社会と私たち自身もすこやかさを取り戻す〜

本カレッジは「環境再生」を学ぶ人のためのラーニングコミュニティ。第一線で挑戦する実践者から学びながら、自らのビジネスや暮らしを通じて「再生の担い手」になるための場です。グリーンズが考える「リジェネラティブデザイン」とは『自然環境の再生と同時に、社会と私たち自身もすこやかさを取り戻す仕組みをつくること』です。プログラムを通じて様々なアプローチが生まれるように、共に学び、実践していきましょう。

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