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死後、土に還り森の一部になるという選択。新しい埋葬サービス「循環葬® RETURN TO NATURE」を通じて、命の循環を考える

亡くなったあと、あなたはどうしたい? どうありたい?

通常、若かったり、健康で過ごしているうちは、死について考え、語る機会はなかなかないのではないでしょうか。しかし、人の数だけ生き方があるように、死後のあり方もまた、人それぞれです。

「ただ自然に還れたらいいのにね」

そんな母親のひとことと現在のお墓への違和感から、小池友紀(こいけ・ゆき)さんは、同じ課題意識をもっていた正木雄太(まさき・ゆうた)さんとともに「at FOREST株式会社」を共同設立。2023年7月に「循環葬® RETURN TO NATURE」という新たな埋葬のサービスを開始しました。

正木さんは「日本の現行の法律内で、環境に優しく、人にも優しい方法を考えたときに、僕らが思いついたのが循環葬®でした」と語ります。いったいどんなコンセプトのもとで開発された埋葬方法なのでしょうか。

火葬大国・日本に合わせて考案された、新しい自然葬「循環葬®」とは

at FOREST株式会社・CEO 代表取締役の小池友紀さん(左)と、同COOの正木雄太さん(右)

「循環葬®」は、火葬後の遺骨を粉骨し、墓標も何も残さず、寺院所有の森林(墓地)の土の中に埋める埋葬方法。遺骨をお墓ではなく自然に還す埋葬形式を指す「自然葬」の一種に当たります。

埋葬の仕方は、その国の法律や慣習、宗教、地形などによってさまざまです。土葬、風葬や鳥葬、日本でも近年盛んになっている海洋散骨など、多様な埋葬方法が存在しています。循環葬®は、火葬が99.97%を占める世界一の火葬大国・日本に合わせて考案された、新しい形の自然葬だと言えます。

小池さん 私たちは、森林についても土壌についても、もちろん埋葬・埋蔵についてもまったくの素人でした。だからこそ、企画やアイデアは出すけれども、これが本当に環境にいいかどうかを専門家に聞き、きちんと検証することを大切にしています。人骨を埋めるのが土壌に悪影響を与えるのだとしたら、その時点でこの事業は辞めていた。それこそグリーンウォッシュになってしまう。素人だからこそ「なんとなく環境によさそう」というフワッとしたものにはしないように心がけました。

そこで、会社設立前から、廃棄物の土壌への循環型利用に関わる研究​​をしている、神戸大学大学院農学研究科 土壌学 助教の鈴木武志(すずき・たけし)さんに相談し、会社設立後は環境アドバイザーに迎えて、科学的根拠に基づいた、遺骨が循環しやすく、森林に負荷をかけにくい埋葬方法を監修してもらいました。

環境アドバイザーの神戸大学大学院農学研究科 土壌学 助教の鈴木武志さん

例えば、遺骨のままだと風化が遅く、細かすぎると風で舞って埋蔵しにくいため、土の定義と同等の大きさに粉骨することとしました。

鈴木さん 日本は酸性土壌が多く、酸性のほうが遺骨は循環しやすいんですね。特にリター層(地面に落ちて堆積した葉や枝が層をなしたもの)は、妙見山の気候下では微生物の働きにより酸性になりやすく、風化もしやすい。そこで、この森の土と遺骨をどのぐらいの割合で混ぜ、どのぐらいの深さで埋めるべきかを調べ、基準をつくっていきました。

左側がこの森の土、右側が実験用に粉骨した豚の骨の焼生物。ほぼ同じ大きさに粉骨している

鈴木さん また、遺骨はアルカリ性で、主要な成分はリン酸カルシウムです。これは、樹木が育つための肥料の役割を果たすものですが、たくさん入れてアルカリ性にしすぎると土壌や樹木に負担がかかり、かえって良くないことになりかねません。その比率をいろいろと試し、環境への負荷が少なく、より循環しやすいバランスを調べました。

いずれは土に還り、ときには樹木の養分になるとしても、闇雲に入れることはしない。一度埋葬した場所に、その後一定期間はほかの遺骨を入れないこととしているのは、遺族の気持ちへの配慮に加え、土壌を含む森への負荷がかかりすぎないよう検討し、決めたものだそうです。人の都合やビジネスの都合だけでなく、森への影響も最大限考慮し、さまざまなルールを策定しているのです。

取材はデッキで行ないました。風が吹いたり、陽が差し込んだり、鳥の鳴き声がするたびに、誰かが「あー気持ちいいー」と言い、しばし沈黙して、森を眺めたり、耳を澄ましたり、空を見上げたりしていました

一方、サービスとしての「循環葬® RETURN TO NATURE」は、ただご遺骨を埋葬するだけではない点が非常にユニークです。契約者や遺族は埋葬地となる森「RETURN TO NATURE」に来て森林浴することができ、森の中に用意されたデッキでは、生前葬や法事、お別れ会を開くことも可能です。希望者は、森の整備や間伐作業へ参加できるようにしていきたいとも考えているのだそう。自らが眠ることになる森を自らの手で整えることができるなんて、なんだかすてきではないですか。

また、契約金の一部は「RETURN TO NATURE」の保全に充てるとともに、国内外で森づくりを行なう森林保全団体に寄付され、日本各地の豊かな森づくりの一助となります。契約者が増えれば増えるほど、寄付金によって日本の森がどんどんきれいになっていく仕組みです。誰にでも訪れる“死”を森づくりにつなげ、自然豊かな未来に貢献する。「循環葬® RETURN TO NATURE」は、生と死、人と森を結びつけ、未来まで続く大きな循環をつくり出すサービスになっているのです。

墓標も看板もない、ただ森だけが広がる埋葬地

森の入り口には、地層をイメージして作ったウォールがある。妙見山の様々な土や石を集め、ラムドアース(版築)という工法で形にしたそう(画像提供:at FOREST株式会社)

では、実際の森の様子をもう少し詳しくご紹介しましょう。「RETURN TO NATURE」があるのは、大阪府能勢町と兵庫県川西市の県境にあるお寺「宗教法人真如寺能勢妙見山」が所有する森林の一画。ゲートをくぐると、その先が循環葬®が行なわれている森「RETURN TO NATURE」です。

小池さん 埋葬エリアの面積は約1,000㎡、お散歩エリアなどを含めると約2,000㎡くらいあります。私たちが森を整える前は、鬱蒼とした森でしたが、能勢妙見山の整備を長年手がけている「森林整備隊」のみなさんに間伐や整備をしていただき、風通しの良い森にしました。

何十年も放置されていた山小屋は、建屋部分だけを撤去し、基礎はそのままいかしてデッキに。耐久性と安全性の観点から、デッキ板は人工的な素材にしましたが、それ以外の資材は、ほとんどがこの森に放置されていたものを再利用するか、間伐材を使いました。

森だけでなく人にとっても心地よい空間になるよう、憩いの場ぐらいはほしいと、山小屋の基礎を活用する形でデッキをつくった。見学に来た方から「ここでお別れ会ができたら気持ちがいいだろうなぁ」と言われたことをきっかけに、能勢町に店舗を構え、地元の食材を使ったケータリングサービスを行なう「TOGO BOOKS nomadik」をフードパートナーとして、森の小さなお別れ会「Forest Gatheringサービス」も開始した/Photo by Mitsuyuki Nakajima (TO SEE inc.)

埋葬エリアには、契約者やご遺族が森の中を散策しやすいよう、間伐材を使った歩道が整備されています。その歩道と歩道の間、木々が生えているところが遺骨を埋めるところです。レイアウトは、大まかなイメージを伝え、森林整備隊に意見を聞いてこのような形になりました。

合葬のほか、7年間は同じ場所に他の方の遺骨を埋葬しないことを約束する個別葬、ペットと飼い主が同じ場所で一緒に眠れる合葬withペット、ペット専用のペット葬に分かれています。料金は2024年5月現在、合葬の生前契約で48万円ほど(能勢妙見山の場合)。合葬ペア割なども用意されていて、通常の墓地の1/2~1/3程度の価格設定となっています。

間伐材も有効活用/Photo by Mitsuyuki Nakajima (TO SEE inc.)

取材に伺ったのは3月。まだ肌寒く、葉も茂っていませんでしたが、きちんと整備がされているため、とても気持ちのよい空間になっている。風と光がほどよく入り、いつまでも立ち話ができてしまう

能勢妙見山のロゴを模してつくったベンチの土台には、森にあった廃レンガを再利用。埋葬エリアの最下部にあり、森を見上げる位置にある。ベンチとデッキは設計士に依頼し、デザイン・制作してもらった/Photo by Mitsuyuki Nakajima (TO SEE inc.)

ベンチの横にあるのはアート作品かのような鉄の扉。まるで向こう側の世界へいざなわれるかのよう。実はこの場所には百年以上前に建てられた小さな火葬場があったのだそう。しかし、戦後はその役目を終え、遺跡として森の中にひっそりと残っていた。その扉をオブジェとして使用することに/Photo by Mitsuyuki Nakajima (TO SEE inc.)

木の根元にひっそり置かれた小さな小鳥の置き物。この先がペット葬ゾーンだという目印になっている。なるべく物を持ち込まないことを徹底しているため、看板は立てなかった

ご覧いただいたとおり、森の中は間伐や整備はされていますが過度な開発は一切なく、目に入るのは大きなデッキとベンチぐらい。訪れる人々のために歩道の整備はしてあるものの、舗装などはしていません。墓標もなく、看板もない。何も知らない人が訪れたら、おそらくここが埋葬地だとは気づかないでしょう。

「循環葬® RETURN TO NATURE」が目指すのは、それほどに、ただ“森に還る”こと。純粋な自然の循環の中に私たちの命を置くことなのだと実感しました。

(画像提供:at FOREST株式会社)

小池さん 私たちも最初は落ち葉を掃除したり、表面をきれいにしたりしていたんです。そうしたら鈴木先生から「いやいや、落ち葉や枝にも微生物がいっぱいいるからそのままで!」と言われました。なので埋葬したあとも現状維持。葉っぱも何もかも全部元どおりにしています。

鈴木さん 遺骨が樹木の栄養分として吸われ、循環を促す。僕はただ、遺骨も自然の中に存在する多様な“アクター”のひとつとなって土に還っていけば、それだけでじゅうぶんなのではないかなと思います。

私たち人間も大きな生態系の一部であり、大きな舞台の演者のひとりである。そう意識するだけで、死というものの見方が違ったものになっていくような気がします。

理想のお墓がないならば、自分たちでつくろう

もともと小池さんはフリーランスのコピーライター、正木さんは社会福祉士と、まったく違う業界で働いていました。そんな二人が、なぜ埋葬に興味をもったのでしょうか。

小池さん 最初のきっかけは、両親が所有するお墓の改葬を検討したことでした。母親とも話し合い、メディアでよく取り上げられていた樹木葬に興味をもって見に行ったんです。

そうしたら、シンボルツリーの周りに墓石がずらっと並んでいたんですね。樹木の下に石製のケースがあり、そこに骨壷を置くタイプや、土管の底に布袋に入れた遺骨を埋葬するタイプだったり。樹木葬というネーミングですが「あれ?思っていたものと違う」と違和感を覚えたんです。

誤解のないようにお伝えすると、樹木葬を日本で最初に始めた岩手県の知勝院のやり方は、現在の循環葬®に近い、直接土中に遺骨を埋葬して自然に還す方法でした。しかし、新たなお墓のあり方として注目が集まる中で、他の民間事業者によって少しずつアレンジが加えられ、形態が変わっていってしまったのだそうです。

小池さん 一緒に見に行った母もモヤモヤしたみたいで、帰り道にポツリと「木が枯れるみたいに、自然に還れたらいいのにね」と言ったんです。私も同じ気持ちでした。今のお墓はとても形式的で、もっとシンプルなお墓はないのかなと思いました。

そこでお墓について詳しく調べてみると、さまざまな問題が複雑に絡み合っていることがわかってきました。

日本には、1948年に制定された「墓地、埋葬等に関する法律」、通称「墓埋(ぼまい)法」という法律があり、それをもとに埋葬・埋蔵が行なわれています。ただ、この法律は70年以上経った今も改正されておらず、現代とそぐわない点が出てきているのだそうです。

墓埋法によると、墓地の経営主体になれるのは、地方公共団体と宗教法人、公益法人とされています。また、散骨に関しては何も触れられていません。厚生労働省から散骨についてのガイドラインは出ていますが、法律では特に規定がないので、民間事業者も行なうことができるのです。近年、海洋散骨が増えてきているのは、こうした事情があるからです。

正木さん 日本が土葬から火葬に変わっていった経緯については諸説あります。ひとつは病原菌対策で火葬を推奨したということ。それからもうひとつは、スペースの問題です。昔は土葬の個人墓だったけれども、戦争があったり、関東大震災があったりで、たくさんの人が亡くなりました。すべての人を土葬してお墓を建てると、家を建てる土地がなくなってしまう。そこで火葬して、家族がひとつの墓に入る「家墓」が主流となっていったという説もあるそうです。

火葬や家墓といった、私たちが“当たり前”だと思っているお墓の常識も、歴史はそれほど長くないのです。加えて家墓となると、家制度やジェンダーの問題も絡んできます。

小池さん 私は一度結婚したのですが、相手が長男だったこともあり、親戚の方から「友紀さんもこのお墓に入るのよ」と言われたんですね。私の両親は、私が子どもの頃から「自分で選ぶこと」を大切にしてくれていましたし、社会に出てからも何をするにも自分で選ぶのが当たり前でした。それなのに、人生最後の死に関わることとなると、女性は選びにくい雰囲気がまだ残っている。家制度の名残が色濃いお墓は、ジェンダーの視点からも問題があるなと思いました。

うちの母も、父のことが嫌いなわけではないけれど、父の家のお墓に入るのは消極的で、「私は私で選びたい」と言っていました。でも昔は、それさえ言い出すことができない空気があったようです。母は「周りの友だちもそう思っている人が多いわよ」と言うんですね。そうか、私の母の世代でも家制度に違和感を感じている人はいっぱいいるし、私たちと同じように個の選択を望んでいるのだと気がつきました。

実際に、シニアを対象にインタビューやアンケートを行なうと、「墓標はいらない」という方がたくさんおられたそうです。ただ、それを言い出せる雰囲気が醸成されておらず、実現する術もないというだけだったのです。

「TOGO BOOKS nomadik」では、これからの生と死を考える全3回のトークイベント『DEEP TIME』を開催。ブックカフェでもある店内では、「RETURN TO NATURE」の特集が組まれ、循環に関する本がずらりと並んでいた

正木さん もちろん石のお墓がいいという方もいらっしゃると思うし、家族で一緒のお墓に入りたいという方もいると思います。しかし、おひとりさまも当たり前の時代。「家」にとらわれないお墓があってもいいのではないかと思いました。時代はどんどん進み、変わっている。お墓にも新しい選択肢があってもいいだろうと。

理想のお墓がないならば、自分たちでつくろう。今のお墓のあり方に違和感を感じている人々の選択肢を増やしていこう。こうして二人は、自然に還ることができる死後のあり方を模索し、事業化の検討を始めました。

能勢妙見山との出会い

能勢妙見山からの風景

最初に注目したのは民間事業者でもできる散骨です。山を買い、そこに散骨する方法を検討しました。海ではなく、山を選択したのは、シンプルにお二人が森が好きで、「森に還りたい」という思いをもっていたから。しかし、近隣の土地所有者からの理解はなかなか得られず、山への散骨は難しいのではないかという結論に至りました。

次に考えたのが、宗教法人と組んで事業展開していく方法でした。循環葬に共感してくれるお寺と組めば、墓地という形で運営ができる。現行の法律内でやるとしたら、これしかないと思いました。とはいえ会社は設立前で、何の実績もない状態です。「正直、実現の可能性は低いと思ってました(笑)」と小池さんは笑います。

小池さん それこそ当たってくだけろ。ダメ元ですね。実現までには何年もかかるだろうと覚悟していました。でも、お寺を訪ねると意外とお話を聞いてくださるんです。そして、あるお寺の副住職が「森林保全活動に力を入れている副住職がいるよ」と能勢妙見山のことを教えてくださったんです。

能勢妙見山を訪れ、住職の植田観樹(うえだ・かんじゅ)さんと副住職の植田観肇(うえだ・かんじょう)さんに循環葬の構想を話したところ「実は僕らも森林葬のようなことを考えていた。けれども、時間も人員も足りず、構想だけでそのままになっていた」と言われたのだそうです。

小池さん 同じような想いをもっておられたとは、びっくりしました。お寺さんから「前向きに、進めてみましょうか」と言われた帰り道、これからのことを想像して、武者震いしたのを覚えています。それが2年くらい前のことですね。

お寺を回り始めてまだ数軒。想定外のスピード展開でした。

能勢妙見山は400年以上の歴史をもつお寺。駐車場も500台分あり(有料)

そこからは、お寺と何度も話し合いを重ねたそうです。細かなところまで話し合い、方向性や考え方のズレが起きることがないよう配慮しました。

小池さん 墓標を立てるかどうかについては、かなりの時間をかけて議論しました。お寺は「さすがに墓標ぐらいはあったほうがいいのではないか」という意見だったんですね。しかし私たちは「お墓ではなく豊かな森をつくることが目的なので、ないほうがいい」という意見でした。お寺として、墓標を建てないことをOKして良いのか。住職や副住職だけでなく、お寺の総代の方々も含めて、話し合いをしてくれました。

正木さん 歴史的にも墓標は必須ではなく、お墓は地域や時代によってさまざまに変化してきました。昔は両墓制といって、家から近いお参り用の参り墓と、ご遺体を埋葬した場所である埋め墓というふたつの墓がありました。両墓制の埋め墓には墓標がなかったことがわかり、お寺も納得した上で、墓標は立てないことに決まりました。

何事も専門家やプロの意見を聞き、不明なことは徹底的に調査して、根拠や理由に基づいた事業をつくる。それはお二人が常に大切にしてきたことでした。

なぜスギ・ヒノキの人工林なのか

2024年1月には、自然葬の先進国であるイギリスに視察に行き、慈善団体「Natural Death Centre」を訪問。「循環葬®︎」は、火葬大国・日本における、森林保全を目的とした独自の自然葬として高く評価され、「Natural Death Centre」が発行する世界の自然葬地リスト『Natural Death Handbook』にアジアで初めて掲載された

実は「RETURN TO NATURE」の森は、スギ・ヒノキの人工林です。循環葬®のコンセプトに共感し、興味をもつ人は、そもそも自然に還りたいという思いのある人ですから、原生林ではないことをちょっぴり残念に思うかもしれません。しかし、日本の森の4割は人工林。人工林は、人の手入れを必要としています。

小池さん お寺の森なのになぜ人工林なのかというと、戦後にお寺の土地に民間業者がスギ・ヒノキを植えたからなんですね。当時は林業が儲かっていたため、スギ・ヒノキがたくさん植えられました。しかし林業が衰退し、それが放置された。このままだとどんどん森が荒れていくということで、お寺が整備を始めようと思っていたけれど、現実には手がまわらなかった。その森に墓地があり、そこを使わせていただけることになったんです。

最初に森を見たとき、私たちは元の原生林に戻したい、広葉樹の森に変えたいと思いました。契約者一人につき1本ずつ植樹するのはどうだろう。そのほうがサービスとしてもわかりやすいし、命を与える感じがして「いい気分」になれそうですよね(笑)。しかし、お寺の森林を長年整備して、この森のことをよく知る森林整備隊の方々に森づくりの相談をしたところ、そんなことをしたら、それこそ森にとって負荷になると言われました。

針葉樹林には針葉樹林の美しさがある。この森をいきなりガラッと変えるのは、ただの人間のエゴであると。むしろ、これをいかしてやるべきではないか。その上で、きちんと間伐して森に光が入るようにすれば、自然と今の土地に適した樹木が生えてくるはずだと。生えてきた樹木に合わせて植樹を行ない、徐々に転換していけばいいと言われて、とても納得しました。

自然に還るために、自然を操作することはしない。その価値基準が定まると、循環葬®はどんどんシンプルになっていきました。

小池さん 森づくりという意味では、ここが元の広葉樹林に戻るまでには何十年も何百年もかかるかもしれません。でも、永続的に続くことになるお墓の事業とは、すごく相性がいいのではないかと思っています。

針葉樹林の中に、自然に生えてきたと思われる広葉樹もある。デッキの横にはヤマザクラの大木があり、春になると花や新緑の美しさも楽しめる。森が年々、あるいは季節ごとにどんなふうに変わっていくのか、見守っていく楽しみもある

「循環葬®」には、自然の循環だけでなく、お金の循環も含まれている

このほか、お寺とパートナーであることで、さまざまなメリットや安心材料があります。

小池さん 私たちのような小さなベンチャー企業だと、いつ潰れるかわからないという不安は正直、みなさんあると思います。そこで、万が一私たちに何かあっても、お寺が埋葬を引き継いでくれる形態になっています。

また、「RETURN TO NATURE」は無宗教ですが、山の仲間になってくださった方々をちゃんと供養したいという能勢妙見山のご意向で、「RETURN TO NATURE」の森に眠る方々に対して、毎日お経を上げてくれているのだそう。

小池さん 本当にありがたいです。住職も副住職も、多様性の時代に合った価値観をもつ視野の広い方で、「心の持ちようは人それぞれ。自分たちが救いの一つになれれば」とおっしゃっていました。すばらしいご縁をいただいたと思っています。

さらに、司法書士と提携し、終活や相続についての相談があれば紹介したり、墓埋法に詳しい弁護士にもアドバイザーとして入ってもらっているそう。

「循環葬® RETURN TO NATURE」は、とてもシンプルだけれども、全方位に対して細かく配慮し尽くされています。また、なにより重要なのは「事業を継続し、循環を断ち切らないこと」だという思いを強くもっていました。

契約者には、メンバーブックと、森の間伐材でつくったペーパーウエイトを記念品として渡している。写真は「合葬withペット」プラン用のため、ふたつの記念品が入っている。メンバーブックは、生前は自分で持ち、亡くなったらご遺族へ

「TOGO BOOKS nomadik」のお弁当をいただきました。使い捨て容器ではなく、曲げわっぱに入っているのが嬉しい。これがまた、びっくりするほどおいしいのです

小池さん 私たちは自然の循環だけでなく、お金の循環についても考えています。契約金を払ったらその一部が森づくりに使われて、自分たちが亡くなったあとの未来に、自分の命も自分のお金も循環していく。その両方の意味を込めて循環葬®と命名しました。未来につなげるための経済的なシステムをつくっていきたいと思っています。

正木さん そういう思いがあったので、NPO法人ではなく株式会社にしました。僕は社会福祉がバックグラウンドにありますが、社会にいいことをしていても資金的に続かなくてやめざるをえない事業を、これまでたくさん見てきました。社会的価値のある事業をぶれずにやることも、きちんと収益を上げることも、どちらも大切だし、おろそかにしたくない。そのバランスをとっていくことが大切だと思っています。

とても清々しい、埋葬の時間

遺骨を埋めるときに使うスコップ

2024年6月現在、「循環葬® RETURN TO NATURE」の森には150名以上の方が見学に来られ、20名以上の方が契約しています。生前契約が基本となっていますが、亡くなった両親の遺骨を埋葬する方もいて、埋葬自体もすでに5名ほど行ないました。

最初に埋葬したのが、2023年9月。実際に埋葬するまでは「その瞬間、自分たちがどんな気持ちになるのか」少し不安があったそうです。

小池さん でも、ものすごく清々しい時間でした。光が差す森の中で、ご遺族と一緒に土とご遺骨を混ぜ、土の中に埋める。みんなが土と混ぜる行為に集中していて、まるで瞑想しているかのような感覚になるんです。そして、ご遺骨が自然に還っていくことを身体で感じることができる。ご遺族も「とても気持ちよかったね」とおっしゃっていました。埋葬がこんなにいい時間になるということは、やってみるまでわからなかったです。

たぶん「埋葬する」という行為は、身体性が伴っているからなのだと思います。見ているだけ、誰かに入れてもらうだけじゃなく、自分たちの手で自然に還す。それが怖かったり、嫌だと思えば私たちが行ないますが、これまで埋葬したご遺族は、みなさん自分たちで行ない「気持ちがよかった」「やってよかった」と言ってくれています。

能勢妙見山の敷地には、大阪府と兵庫県川西市の天然記念物に指定されているブナ林があり、樹齢300年を超えるブナが多数生息している。あまりにも美しく、いつまでも見つめてしまった。大木も、いつかはその命を終え、やがて朽ちて周囲の木々の養分となり、新しい命を育む/Photo by Mitsuyuki Nakajima (TO SEE inc.)

「墓標がないのが気に入った。人生は不平等でも、死んだあとぐらいはみんな同じでいいと思っていた」と、杖をついて見学にきてくれた80代のおじいさん。子どもたちに物質循環について教えているのに、自分自身は死後に循環しないことに疑問を抱き、循環葬®を知って訪れたという理科の先生。子どもや孫と一緒に見学にきて、あなたたちがどうしたいかが大切だと、自分たちが亡くなったあとの家族の負担や感情を慮る年配のご夫婦。小さな子どもと一緒にスコップを持ち「じいじにお別れしようね」と遺骨を土に還すご遺族。

「会う人会う人、すてきな方ばかりなんですよね」と小池さん。自然に還りたいと、自ら死後のあり方を選択する人々に共通する、他者を思いやる考え方や心地のいいコミュニケーションが、確かにあるそうです。

人間も、自然から生まれ自然に還る。次の命につながっていく。循環葬®は、そんな普遍的な生命の有り様を、現実のものとして体感させてくれます。

森の見学は予約制で随時受付中とのこと。興味をもった方は問い合わせし、気軽に訪れてみてください。自然に還るとはどういうことなのかが、きっとイメージできると思います。もちろんピンと来た方はぜひ契約を。

死後のあり方を自由に選択できる時代は、すぐそこまできています。

(撮影:小黒恵太朗)
(編集:村崎恭子/増村江利子)

at FOREST株式会社の求人情報

NPO法人グリーンズが運営する「働く」で社会を変える求人サイト「WORK for GOOD」では、現在「at FOREST株式会社」の求人を掲載しています。「循環葬® RETURN TO NATURE」の事業に関わりたい方はぜひご覧ください。

WORK for GOOD:森に還る・森をつくる「循環葬」運営会社のエリアマネージャー候補