7/4開催 ポスト資本主義のキャリア論|ゲスト:石山アンジュさん by WORK for GOOD

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ニュースからは見えない、ガザで生きる一人ひとりの希望や苦悩。“天井のない監獄”でサーフィンを楽しむ若者たちを追うドキュメンタリー映画『ガザ・サーフ・クラブ』

ガザでサーフィンを楽しむ。最近の目を覆いたくなるような報道からは、想像できないことかもしれません。けれども、イスラエルによって封鎖されながらもそこには日々の暮らしがあり、ささやかな楽しみがあり、大きな夢がありました。ドキュメンタリー映画『ガザ・サーフ・クラブ』を通して、現在のガザに関するニュースからはわからない、けれども確かに存在したガザの一面に触れてください。

“天井のない監獄”で、果てしなく広がる海に向かう人たち

2007年以来、ガザはイスラエルによって封鎖され、“天井のない監獄”と呼ばれる状況が続いています。そのうえ2008年以降、イスラエルによる軍事侵攻がたびたび起きていました。けれども、この映画が公開された2016年頃のガザの人たちの暮らしは、2024年現在の状況とは違い、一見穏やかにも見えます。

とはいえ、それは自由とはほど遠い暮らしです。国外を行き来することはできず、燃料や物資の不足、高い失業率など、厳しい生活を強いられています。それでも、地中海に面しているガザでは、果てしなく広がる海でせめてもの自由を求めるかのように、サーフィンに夢中になっている若者たちがいます。映画では、その中から3人の人柄や暮らしを追います。

イブラヒームは、将来ガザでサーフショップを開きたいと夢見る23歳の若者。友人たちと連れ立って海へ足を運び、波に向かっていく様子は、そこがガザであることを忘れてしまいそうになるほど笑顔と活気にあふれ、他愛ない会話が交わされます。

一方で、彼の夢や希望がガザで生きているがゆえに阻まれている現実も映し出されます。ハワイでサーフィンを学ぼうとしても、ビザを得るために何度も何度も申請を繰り返すことを余儀なくされます。たとえ夢を抱いたとしても、そのスタートラインに立つことが難しいのです。そんな現実の前に、夢を描くことさえ諦めた人も登場します。

最年長のサーファー、42歳のアブー・ジャイヤブは、何ひとつ希望の持てない暮らしを嘆きます。漁師として海のそばで暮らし、若者たちにサーフィンを教えてはいるものの、そんな暮らしについて語る表情には、苦しみや悲しみというより、諦めが色濃くにじんでいるように思えました。それこそが、“天井のない監獄”と呼ばれる所以なのかもしれません。生かされてはいるけれど、自由はない。まさに監獄です。

そんなガザの状況は、2023年10月、ハマスの奇襲からイスラエルによる報復攻撃で、最悪な状態になってしまいました。死者は2023年中に2万人を超え、病院さえも攻撃の対象となり、水や食料、医療物資も不足し、住民の4割が飢餓の危機に瀕しているとの報道もあります。

数字で報じられる犠牲者の一人ひとりに人生や生活があり、大切なものや好きなものがあったことを、この映画は改めて思い出させてくれます。スクリーンに映った一人ひとりの上に、いまこの瞬間、ミサイルが落ちているかもしれないのです。実際、映画に登場したアブーさんとは連絡が取れない状態になっているそうです。

サーフィンを楽しむ若者たちの表情や日常を目にして思うのは、せめてこの生活にでも一刻も早く戻ってくれたらということだけ。ガザの封鎖が解かれ、自由がもたらされてほしいと願いますが、それよりもいまはまず停戦してほしい、そう思います。

ガザで女性として生きることの困難

映画が映し出すのは、イスラエルによって封鎖されているガザの現状だけではありません。イスラム教や文化によって、虐げられている女性の姿がそこにありました。幼い頃から父親にサーフィンを習ってきたサバーフは、15歳となったいま、サーフィンをしたり、海に入ったりすることが許されなくなっています。

イスラム教においては、女性はさまざまな制限を受けます。スカーフで髪を隠し、肌を露出せず、父親や男兄弟、配偶者に従うことなどが求められます。強い信仰心によるものとはいえ、世間体に縛られがちな日本社会にも通じるような、周囲の目を気にする息苦しさが映画からは感じられます。いきいきとサーフィンを楽しんでいたサバーフの表情が次第に曇り、暗く沈んでいくさまには、胸が痛くなりました。

現在起きているイスラエルによる攻撃の犠牲者の74%は女性や子ども、高齢者です。紛争や災害などの被害者には、女性の割合が多いことが調査で明らかになっています。さまざまな分析がなされているようですが、家事や育児を担っているために逃げ遅れることが多かったり、女性の社会進出が遅れ、政策決定権を持つ女性が少ないことが影響していると考えられています。

いずれにせよ、性別役割分担から生じるジェンダーギャップが、生死に影響を与えていることは間違いありません。サーフィンをすることが許されないサバーフの痛みの延長線上に、現在の状況では死が待ち受けているとも言えるでしょう。いまガザにいる女性たちは、何重にも厳しい状況に置かれていると考えられるのです。

“天井のない監獄”で無限に広がる海に見出していたささやかな楽しみさえ、現在は奪われています。イスラエルに封鎖されている状況下でサーフィンを楽しむ人たちの映像から、2024年のガザの現実へと、ぜひ思いを巡らせてみてください。自由のない、厳しい環境でも、人はそれぞれにわずかな楽しみや喜びを見出し、自身の人生を生きます。そんな一人ひとりの顔を、死者として報道される数字の向こうに想像することができれば、この戦争を止めるためにもっと声をあげなければならないと気づくことができるでしょう。日本でもそんな連帯がもっと広がりますように。

(編集:丸原孝紀)

『ガザ・サーフ・クラブ』

監督:フィリップ・グナート、ミッキー・ヤミネ
原語:アラビア語 / 英語 / ハワイ語 字幕:日本語
配給:ユナイテッドピープル 字幕:額賀深雪 字幕監修:岡真理
2016年/ドイツ/87分

– INFORMATION –

2024年1月13日(土)シアター・イメージフォーラム他にて緊急公開!

1/13(土)の劇場公開初日は、シアターイメージフォーラムにて、『ぼくの村は壁で囲まれた パレスチナに生きる子どもたち』などの著者である、ノンフィクションライター高橋真樹さんによる上映後トークがあります。
https://unitedpeople.jp/gazasurf/archives/15525