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原発の再稼働を、どう考えたらいいんだろう? エネルギーの未来を考えるために、今原発について知りたい7つのこと

2011年に起きた福島第一原子力発電所の事故は、日本の原子力発電(以下、原発)とエネルギー政策の大きな転換点となりました。

深刻な事故を受けて、一旦原発がすべて停止し、今後の日本のエネルギーをどうしていくか考え直すことになった一方で、「事故によって命が失われたり、健康を損ねたり、暮らしの場を奪われる可能性がある」といった不安から、原発を受け入れがたいという気持ちになった方も多くいるのではないかと思います。

連載「わたしたちの暮らしを守るエネルギー」では、わたしたちの暮らしに欠かせない電力を、どのように生み出し、どのように使えばより良い社会につながるのか、国民生活産業・消費者団体連合会(通称:生団連)とともに、探求してきました。

連載の中で再生可能エネルギーの事例にもたくさん触れてきましたが、他方で原発の再稼働や長期運転が進められようとしている今、私たちは今一度、原発に向き合う必要がありそうです。

連載パートナーである生団連は、2018年度より原発の抱える課題について調査・研究を行い、原発問題に関する「ファクト」をまとめた「原発問題〜『ファクト』集」を2020年12月に作成、公開しています。

生団連は原発に対し、いま私たちが原発を使っている以上、それを知っておかなければならないという立場で、肯定でも否定でもない中立のスタンスでリサーチを行ったり、電力会社や自治体に取材を行っています。

どうしても原発に対して否定的な気持ちが生まれやすい状況の中で、原発について改めて俯瞰的に考えるために、生団連に原発の現状、課題、そしてリスクにどう向き合うかについてお話を聞き、一緒に考えました。

(アイキャッチ画像 ©IAEA Imagebank

国民生活産業・消費者団体連合会(通称:生団連)
2011年東日本大震災発生後、混乱する日本の状況を憂い、国民を守るための団体が日本には必要と考えた清水信次氏(ライフコーポレーション創業者)が発足。エネルギー・原発問題をはじめ、外国人受入れ体制の構築など、私たち生活者にとって身近で重要な問題について、企業と消費者団体が一体となって課題解決に取り組む、日本で唯一の団体である。

1.日本の原発の現状

2011年の福島第一原発事故後、日本にある原子力発電所はすべていったん停止しました。深刻な事故を受け、安全対策を徹底させるためです。そのため、新たな安全基準がつくられ、原子力規制委員会が安全性を審査する手続きが定められました。その審査を通過し、地元自治体の同意を経た発電所は再稼働が可能になります。

資源エネルギー庁のホームページには「原発の安全を高めるための取組 ~新規制基準のポイント(https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/tokushu/nuclear/shinkijun.html)」というページがありますが、このページの記述によると、「リスクはゼロにならない」ことを前提に、「安全性を不断に追求する」とあります。これは「絶対安全」はないが、現在のできる限りの安全対策を行うという意味。その前提のもと安全基準を定め、その基準をクリアすることが再稼働の条件になります。

その基準は個々の原発によって異なります。例えば津波については、「発電所ごとに想定される最も大きな津波が来ても海水が侵入しないような対策を行う」とされています。しかし、「想定」を超える津波によって福島第一原発事故が起きたことを考えると、この「想定」が正しいと信じられるのか不安に思ってしまうかもしれません。

こうした不安があるなか、政府は「2050年の脱炭素社会の実現とエネルギーの安定供給」という名目のもと、原発の新規建設や60年以上の運転を認めるという方針を発表しました。(https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/gx_jikkou_kaigi/dai5/siryou1.pdf)なぜ、原発を再稼働や長期運転をする必要があるのか。それを考えるためにも、まずは日本の原発が今どうなっているか、現状把握ができたらと思います。

事故前の2010年度には全国で54基の原発が稼働、日本の発電量の25%を原子力が担っていました。現状はどうなっているのでしょう。

こちらの図で現状が示されていますが、2022年11月7日時点で、再稼働が10基、設置変更許可が7基、新規制基準の審査中が10基、未申請が9基、廃炉が決まっているものが24基です。再稼働した10基の中でも、稼働中が7基、停止中が3基に分かれています。

出典:経済産業省資源エネルギー庁HP

再稼働の10基は安全審査に合格し、自治体の同意も得られたものです。その中で停止中のものは、定期メンテナンスや特定重大事故等対処施設が未設置のものになります。

設置変更許可の7基は、安全審査には合格はしたけれど再稼働には至っていないものです。例えば柏崎刈谷原発の6・7号基は、再稼働に向けた動きの中で不備が指摘され、その解消までは再稼働できないとされています。もう一つ東海第二原発は、周辺住民の避難計画について地元の合意が得られていないため再稼働には至っていません。

審査中の10基は文字通り現在再稼働に向けた審査が行われているもの。未申請は電力会社でまだ申請の準備ができていないものですね。

福島第一原発は事故が理由だと思いますが、その他の廃炉になった原発は、それぞれどのような理由で廃炉が決まったのでしょうか。

基本的に原発の運転は40年というルールがあります。ただ安全対策をして20年の延長が認められ、コスト的にも採算が取れると判断されたものに関しては、運転延長の判断がなされます。廃炉が決まったものは、40年以上が経過し、採算が取れないと判断された原発です。

2.なぜ原発を再稼働するのか:原発のメリット

現在の日本は、再稼働できる原発は動かしていこうという方向に進んでいます。再稼働に反対する人も多い中、なぜその方向に進んでいるのか、原発を再稼働するメリットとは何なのでしょうか。

一番大きいのは安定供給だと思います。事故後に原発が止まり、その分を火力で補っていたわけですが、火力の燃料から海外から調達しているため、火力に大幅に依存している状況は、安定供給とコストの部分でリスクが高いというのはありました。特に当時は、今ほど再エネも導入が進んでいなかったので、今よりもリスクが高く、安定供給のために原発の再稼働が必要だという判断になったのだと思います。

原発のメリットについては関西電力のホームページに分かりやすく載っていたので、それに沿ってお話させていただきます。原子力発電のメリットとしては、燃料の安定確保、電力の安定供給、発電時に二酸化炭素を排出しない、電気料金の安定に役立つという4つが挙げられています。

1つ目の燃料の安定確保は、原料のウラン鉱石がオーストラリア、カナダなど一つの国に集中せずに世界各地にあり、かつ埋没されてる地域の政情が比較的安定しているため、安定的な確保ができるということです。

2つ目の電力の安定供給は、これは効率がいいというところにも関わってくるのですが、一度原子炉に入れた燃料は基本的に3年程度は取り換えずにずっと発電することができ、天候や時間帯に左右されず、ずっと一定量を発電できるという意味です。

3つ目、発電時に二酸化炭素を排出しないということが、現在の脱酸素の動きの中でメリットと言われています。もちろん、建設からの長いスパンで考えた時にはCO2は発生するので、原子力発電がまったくCO2を排出しないわけではありません。

4つ目の電気料金の安定は、原発は動かし続ければコストも一定なので、燃料価格に左右される火力と比べると、安定した価格が実現できるということです。

原発は効率がいいという話ですが、他の燃料と比較した場合、どれくらいよいのでしょうか。

例えば、100万キロワット級の原子力発電所と同じ出力の太陽光発電所つくろうとすると、山手線の内側を太陽光パネルで埋める必要があると言われています。

また、一般家庭1年分の電気を発電するために、天然ガスでは490kg、石油では800kg、石炭では1210kgの燃料が必要ですが、原子力発電で使われている濃縮ウランは0.011kgで賄うことができます。(出典:電気事業連合会『原子力発電のいま、をお伝えします。』)

一方で比較が難しいのは価格です。原発は安いと言われていますが、廃棄物処分や安全対策費、更には廃炉まで必要な費用を考慮した「価格」を算出すると再エネより割高になります。しかし、その再エネの「価格」も太陽光パネルのメンテ、廃棄費用を含めるといくらなのかトータル費用はまだわかっていないため単純な比較は難しいのが現状です。

そのため、俯瞰的に見ようとすることは難しいかもしれません。見方によって解釈は変わってくるので、ある結論を出すために、それに合うような数値を出すこともできてしまう。だから、事実を隠しているわけでもなく、本当の意味での比較は正直難しいと思っています。

3.再稼働か廃炉か:原発のデメリット

数値での比較が難しいので、明確に原発が他の電源より優れているとは判断できませんが、ぼんやりと原発が電力の安定供給には役に立つということはわかりました。それでは逆に、原発のデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。

私たちはデメリットとして、原発への依存、使用済み核燃料の処理問題、安全の担保にかかるコストの3つがあると考えています。

1つ目の原発への依存については、原発は動かせば大量の電気をつくれるわけですが、逆にトラブルがあれば、マイナス量が大きくなってしまいます。そのため、何かトラブルがあった時に影響度が高く、問題が大きくなってしまうというデメリットがあります。

2つ目の使用済みの核燃料の処理問題。この点についてはあとで詳しくお話しますが、簡単に言えば処分の仕方がまだ決まっておらず、そもそも使用済み核燃料の取り扱いは非常にリスクが高く、コストもかかります。

3つ目の安全の担保にかかるコストですが、原発はみなさんもご存じの通り、事故が起きた場合の危険性を考えると、非常にリスクが高いものです。ですので、安全性の担保にかかるコストが膨大になる。しかも、これから先さらにコストが増えていく可能性もあるので、原発にかかるトータルコストは、どんどん増えていく可能性の方が高いと考えられます。

トータルコストという意味ではこれからどんどん廃炉を進めていかなければならないので、そのコストも問題になってくると思います。廃炉についてはどうでしょうか。

資源エネルギー庁のページに原子力発電所の廃炉が決まったらどんなことするのかについて記載があります。作業面としては、原子炉から燃料を取り出して、中の汚染状況を確認して、その後、周辺設備を解体して全体をばらしていくという手順になっています。廃炉が決まっている原発のスケジュールも載っていますが、24年から40年と幅があります。

正直なところ、商業用で廃炉が完了したところはまだないので、どんどん課題が出てくることも想定されますし、費用についてもわからない部分が非常に多いです。安全に配慮しつつどう廃炉を進めていくのかを考えると、事故やテロへの対策も含めてコストはだんだん増えていくかもしれないと感じています。

4.再稼働と安全性、地元との関係

他の電源と比べてわからないことが多すぎることもあって、不安を助長する印象は拭えませんが、安全だとされた原発の再稼働についてお聞きします。再稼働の具体的なステップはどのようなものなのでしょうか。

安全審査では様々な審査が行われます。地震や津波に耐えられるのか、万一事故が起きてしまったときどう対応するかなどの項目があります。

これに合格すると、次に地元の合意を得る必要があります。もし事故が起きてしまった場合、周囲30キロが避難対象区域に入りますので、ここの住民をどう避難させるか避難計画を策定し、地元の合意を得ます。

先ほど申し上げた東海第二原発の場合、30キロ圏内に90万人ほどの人が住んでいるので、実効性ある避難計画の策定が難しく地元の合意が得られていません。

地元の合意というのは難しい問題ですね。日本全体の方向性と地元の考え方が一致しない場合もありますよね。

私たちも取材をしていてそこは感じます。ただ、地元には原発と常に一緒に生活してきた歴史があり、電源交付金で得られるお金や、原発によって生まれている雇用もあります。だから、反対・賛成というところも、いろんな考え方や立場があるわけです。

放射性廃棄物処理場の問題もこれと同じ構造で、お金も入るし雇用も生まれるとなったときに、財政難の自治体が手を挙げる。財政面では魅力を感じつつ、でも、本当に呼び込んでいいのかと考える人もいて、意見が割れるというのを見ていて感じます。

5.使用済み核燃料の処分と信頼

続いて、使用済み核燃料の処分の問題についてお聞きします。この問題は、生団連のファクト集でも大きく論じられている部分です。まず、使用済み核燃料はどのように処理されるのでしょうか。

使用済み核燃料は、基本的には核燃料サイクルを推進していく方向性になっています。核燃料サイクルというのは、使用済み核燃料をリサイクルしてもう一度発電を行うやり方です。使用済みのウラン燃料の中にはプルトニウムが含まれています。再処理と呼ばれる処理をして、プルトニウムを使用済み核燃料から取り出して、ウランと混ぜ合わせて新しい燃料をつくり出します。これをMOX燃料と言います。

ただ核燃料サイクルはまだ実現していません。現在、青森県六ケ所村に再処理工場を建設中で、そこで再処理を行いMOX燃料をつくっていく計画です。現状は、一部海外で再処理してもらったものもありますが、基本的には発電所に保管されています。

再処理を行った場合にも、MOX燃料として活用していく部分と、高レベル放射性廃棄物となる部分があり、廃棄物の方は地層処分を行う計画です。地下300メールより深い場所に処分場を建設する計画で、現在、北海道の寿都町(すっつちょう)と神恵内村(かもえないむら)の2つが立候補して、文献調査が行われています。

核燃料サイクルが可能として、それが実現した場合にコストや廃棄物の量はどうなるのでしょうか。

ファクト集に3つの想定パターンのシミュレーションを載せています。1番目は完全に核燃料サイクルを回していったパターン(全量再処理)、2番目は半分再処理、半分直接処分(再処理せずに地層処分)の併存ケース、3番目は100パーセント直接処分のパターンです。

コストで比較すると、全量再処理された場合が15.9兆円、併存ケースが10.5〜10.9兆円、全量直接処分の場合が5.4〜6.2兆円です。もう1点、処分にどれぐらいの場所を使うかは、あくまで燃料だけの話ですが、全量核燃料サイクルだと2平方キロ。併存ケースで4平方キロ、全量直接処分だと5.5平方キロです。

地層処分にはどのようなリスクがあるのでしょうか。

その点については、わからないことが多いですね。地層処分した後の被爆リスクとして、地下水を通して生活するところまで流出してくるという点が想定されますが、今まさに研究されているところです。

あとは、実際に埋めたときにどのような影響があるかを調査対象の場所で調査を進め、リスク評価をすることを今やっています。今は文献調査だけですが、その後、概要調査で実際に地表に穴を掘ってその土地を調べ、さらに精密調査を行うというステップで、だいたい20年くらいかけて調査を行う計画です。

6.原発のリスクをどう捉えるか

原発にはメリットもある一方で、さまざまなリスクもあることが改めてわかってきました。また、そのリスクは使用済み核燃料の問題や、事故が起きた場合の危険性など、まだわかっていないことも多く、不確かな要素を前提としています。そこで、もう少し掘り下げて原発のリスクをどう捉えるか、という点について考えたいと思います。

もちろんリスクの捉え方は人によって異なりますが、その上で、ひとりひとりがどれくらいのリスクがあるのかを知り、判断するためにはどうしたらいいのでしょうか。

私たちは原発のリスクの最悪のパターンを目の当たりにしました。福島第一原発事故が起きるまでは事故が起きる可能性は低いと考えられていたけれど、実際に起こってしまった。その結果として新安全基準がつくられ、電力会社も福島第一原発事故がなぜ起こったかを分析して、起こりうるリスクに対して何重もの対策を取っています。

そしてその情報はホームページなどで公開しています。例えば、四国電力は「伊方発電所の安全確保に向けた取り組みについて」というパンフレットを制作し公開しています(https://www.yonden.co.jp/energy/atom/safety/new_regulation.html)。こういう情報を集めればおのおのがリスクを判断する材料にはなると思います。

確かに、パンフレットなどを見ると丁寧な説明がされています。少し調べてみると東京電力が柏崎刈羽原子力発電所の安全対策についての情報をまとめたページなども発見できました(https://www.tepco.co.jp/niigata_hq/kk-np/safety/index-j.html)。電力会社も情報公開を進めていることは確かなようです。再稼働のために理解を求める必要がある地元の方に対してはどのようなコミュニケーションを図っているのでしょうか。

地元の人たちに対しては、電力会社の人たちが勉強会やコミュニケーション会を開いて、密にコミュニケーションを取っているそうです。実際に現地に来てもらって、「こういう安全対策をしています」と見てもらうことで、納得を得られることもあるようです。私たちも文書だけではなかなか理解できなかったのが、現場を見せてもらって伝わってきたこともあります。

どのくらいのリスクがあるか判断するためには現場を見るなどして、自分ごととして考えることがポイントになってきそうです。ただ、それもなかなか難しいというとき、情報だけでどう判断していけばいいのかは考える必要がありそうです。

発電によるリスクを考えるときには、どんな発電方法にもリスクがあるということを考えるといいかもしれません。原発にも長く残るリスクがありますが、太陽光パネルには大量廃棄問題(https://greenz.jp/2022/10/07/npc_panel_reuse_recycle/)があり、有害物質が流出するリスクもあります。火力発電には、排出されるCO2が気候変動を起こし、災害を引き起こすリスクがあります。どちらのリスクが大きい、小さいと比較することは難しいかもしれませんが、どんな方法であっても発電にはリスクを伴うという認識を持ち、ではどう使うのか使わないのか、ということをひとりひとりが考える必要があるのではないでしょうか。

7.カーボンニュートラルと原発の今後

日本における原発の現状、課題、論点についてはある程度わかりましたが、他の発電方法も含めてさまざまな問題をはらむ中で、私たちはこれからどうしていったらいいのでしょうか。日本の政策の方向性と、カーボンニュートラルという視点も含めた世界の動向についても教えてください。

2022年8月に資源エネルギー庁の審議会で、今後の原発について議論され、工程表が公表されました。それによると、まず改良型の軽水炉を商用炉として利用することを2030年代に進め、SMRと呼ばれる小型モジュール炉と再処理燃料を使う高速炉の実証炉を2040年代に実現、その後2050年代以降に核融合の実現を目指すようです。

SMRは今ある原発の小型版といえるもので、原発事故の反省点を踏まえて、安全管理がしやすい規模感のものをつくっていくという議論がされています。世界的にも小型炉が中心に進められつつあるので、日本もそれを視野に入れて進めていく方向性だと思います。日本の原子力政策は核燃料サイクルを実現するのが前提なので、高速炉を実現させる方向で進んでいます。

核融合については、原発とまったく違う技術なので、まだこれから議論されていくという段階です。

海外の動向はというと、基本的にまずヨーロッパを中心に再エネをのばそうという動きがあるのが前提になります。そのうえで、原子力をどう扱うかは、各国で判断が分かれています。ドイツは福島の原発事故を受けて、今年の末までに全ての原発を止める予定でしたが、ロシアからの天然ガスの供給問題が出てきて、動かせる状態でスタンバイする形で残すという判断を下しました。

イギリスやフランスは補完的に原発を活用していく方針で、新しい原発計画の策定などしています。中長期的には、カーボンニュートラルを達成するために原子力をある程度は使わなければならないというのが現実的なところなのだと思います。

(インタビューここまで)

世界的に見ても、カーボンニュートラルや電力の安定供給を考えると、原発をある程度稼働していかざるを得ないという状況のようです。その中でより安全性の高い原発を開発していくという方向に向かっていくということなのでしょう。

ただ、日本では福島第一原発事故以降、原発は「徐々に廃止」を求める人が一貫して最多(日本原子力財団による2021年度調査)であり、そのなかで建て替えや新設を進めることに正当性があるのかどうかについては、もっと議論が必要ではないでしょうか。

また、フィンランドでは現状世界で唯一といえる最終処分場「オンカロ」が建設中ではあるものの、これで廃棄物の問題がすべて解決するわけではありません。また、今回のロシアによるウクライナ侵攻で原発が国際紛争に際してリスクになることも明らかになりました。原子力発電には予期せぬリスクがつきものというイメージは拭えないものとしてあり続けます。

その中で私たちは事実を積み上げて、原発が是か非か判断していくしかありません。その判断は人それぞれの価値観や環境によるものです。ただ、賛成・反対どちらの立場を取るにしても、その立場に都合の良い事実やデータを信用しがちだということは心に留めておく必要があります。一見客観的に見えるデータも、出し方によっては一定の結論に導くこともできるのです。そのデータや意見がどのような立場からなんのために出されたものかは、俯瞰的に見る必要があるでしょう。

今回掲載されているデータは、政府や電力会社が公表している情報を元に中立な立場で示したものですが、受け手によってそのデータから導き出される答えは様々です。私たちはそのデータの背景や意味することに対して、自分なりの答えを持つことが何よりも大切だと思います。
みなさんはこれらの事実からどんな結論を導き出したでしょうか。

(編集: 福井尚子)
(編集協力:増村江利子、スズキコウタ)

– INFORMATION –

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