募集要項は記事末をご覧ください。
だけど、真面目に分別する人であればあるほどに、個人としてできることの限界を感じているのではないでしょうか。国や自治体、ものをつくる企業の側で、リサイクルやリユースを可能にするしくみをつくらなければ、資源が循環する世界は実現しない。そんな壁を感じることがあるのでは? と思います。
鹿児島・大崎町では、20年以上にわたって自治体と地域の人たちが力を合わせて、2020年には83.1%のリサイクル率を達成(リサイクル率の全国平均は20.0%)。12年連続を含む14回もリサイクル率日本一のまちになりました。
そんな大崎町に惚れ込んだのが、全国各地の地域づくりに取り組んできた齊藤智彦(さいとう・ともひこ)さんと西塔大海(さいとう・もとみ)さん。2020年7月19日に合作株式会社を設立し、翌年1月に同町で立ち上げられた「一般社団法人大崎町SDGs推進協議会(以下、SDGs推進協議会)」の事務局運営にも携わってきました。
ふたりではじめた会社は、この2年間で合計6人の新しいメンバーを迎えました。今回で3度目となるグリーンジョブでの求人は、成長していく合作の屋台骨を支える「現場マネージャー」。わたしにとっても3回目となる合作へのインタビューでは、設立からのプロジェクトの歩み、そして「今の合作で働く面白さ」について、創業メンバーのお二人にお話を伺いました。
【合作株式会社の過去の記事はこちら】
▷ 約83%のごみをリサイクルする「大崎システム」を世界へ!合作株式会社が求めるプロジェクトマネージャーとは?
▷ リサイクル率日本一のまちが「世界の未来をつくるラボ」になる。鹿児島・大崎町で、合作株式会社がはじめた“SDGsど真ん中”の仕事とは?
ひとりでできないからこそ「合作」する
合作の原点は、2018年に代表・齊藤智彦さんが大崎町を訪れたときに感じたワクワクした気持ちです。各家庭で27品目ものごみの分別が行われていること、地域の衛生自治会が分別のサポートをしていること。そして生ごみや草木は有機工場で発酵させて完熟堆肥「おかえり環ちゃん!」という製品になり、町内の農地に循環していること……。
取り組みの内容もさることながら、リサイクル施設を案内してくれた役場の職員さんが、「これからの未来のため、世界に対して何をしなければいけないか」を、自分の言葉で生き生きと語る姿には、本当に驚いたそうです。
「このまちの人たちは『ごみを分別することがこの世界を良くする』とよくわかっている」ことに感動した齊藤さんは、「大崎町の価値を世界に広げるお手伝いをさせてほしい」と手を挙げました。
2019年には大崎町の政策補佐監に就任し、すべてのものはリユース・リサイクルされて循環する「サーキュラーヴィレッジ・大崎町」構想をつくるプロセスに参画します。
そして2020年、齊藤さんは長年の友人であり、信頼する仕事仲間だった西塔さんを大崎町に招き、ふたりは合作株式会社を設立することにしました。
合作が最初に取り組んだのは、官民連携によるSDGs推進協議会の立ち上げ。鹿児島相互信用金庫、MBC南日本放送、株式会社そらのまちとともに、合作も参加して事務局運営を担当しています。
設立から3期目を迎える今、齊藤さんは合作という会社についてどんな思いをもっているのでしょうか。
齊藤さん 会社をつくったのは、僕ひとりじゃできないと思ったからです。「ひとりじゃできません!」と白旗を上げて大海くんとチームを組んだところから、合作ははじまっていると思うんですね。
僕らふたりでできないから、社員に入っていただいている。自分がもっていないものをもつ人と仕事をすることこそ、僕らにとって一番の楽しみです。だからこそ、社員に気持ちよく働いてもらいたいし、社員の成長の場にしたいと思っています。
世界に展開する「大崎リサイクルシステム」とは
齊藤さんが惚れ込み(今も惚れつづけていて)、合作の創業地に選んだ大崎町とは、どんなまちなのでしょうか。これまでの経緯について少しご紹介させてください。
大崎町は、鹿児島県・大隅半島東部に位置する人約1万3000人のまち。温暖な気候に恵まれ、北部の台地では農畜産業、南部の志布志湾では水産業が今も盛んです。
「リサイクルのまち」と呼ばれるに至る分岐点になったのは、1998年のこと。ごみの増加により埋立処分場が限界に近づいたとき、焼却処分場をつくるのではなく、分別・リサイクルによってごみを減量し、埋立処分場を延命化する道を選んだのでした。
当初、「缶・ビン・ペットボトル」の3品目だった分別は、現在27品目に。ごみの60%を占める生ごみや草木などの有機物は、前述した有機工場に運ばれ、土着菌で発酵させ完熟堆肥にしてから農地に循環させています。リサイクル率は2020年度には83.1%を達成しています。
町民が全員でリサイクルに取り組んだ結果、埋立処分場の延命化のみならず、住民ひとり当たりのごみ処理事業経費は全国平均(約16800円)の3分の2(11500円)にまで抑えられました。また、リサイクルセンターに約40名の雇用を創出。資源ごみの売却益は年間約700万円にものぼり、その一部は「大崎町リサイクル未来創生奨学金制度」に活用するなど、優れた取り組みは枚挙にいとまがありません。
こうした取り組みは、今や海外からも注目されています。2012〜2014年度には、大崎町と同じように埋立処分場の逼迫に悩んでいた、インドネシア・デポック市に対して生ごみの堆肥化技術の導入を支援。バリ州やジャカルタ特別州への支援もはじまっています。
そして現在の大崎町はさらに大きな目標に向かって進んでいます。「2030年までに使い捨て容器の完全撤廃・脱プラスチック」を達成し、使い捨て容器を代替する手段を開発して、2027年までに80%の普及率を目指すーー「え、そんなのムリだよ!」と思う人のほうが多いかもしれません。でも、20年以上にわたって町民全員が徹底的なリサイクルに取り組んできた大崎町では、十分な実現可能性があります。
たとえば、大崎町ではお弁当についてくる醤油の小袋まで、洗って分別してリサイクルに回しています。つまり、一般的には「便利」な使い捨て容器は、大崎町ではかえって「不便」なのです。
一方で、リサイクルできないものは、町外の消費財メーカーで製造・販売されたものがほとんどです。大崎町と消費財メーカーなどの企業が連携して、「どうすれば資源循環を可能にできるかを考えられる」なら、「すべてのものがリユース・リサイクルする」しくみの実現は夢ではありません。
全ての資源が循環する社会をつくる「OSAKINIプロジェクト」
現在、SDGs推進協議会では、協働する企業・団体・自治体を全国から募集し、大崎町を舞台に、全ての資源が循環する持続可能な社会をつくる「OSAKINIプロジェクト」に取り組んでいます。進行中のプロジェクトとその成果について、いくつか見ていただきたいと思います。
ひとつめは、「大崎リサイクルシステム」の効果を環境負荷の観点から評価する調査・研究プロジェクト。環境学博士の大岩根尚さんを所長に迎え、「サーキュラーヴィレッジラボ」と名付けたプログラムがはじまっています。
2022年2月には、国立環境研究所との共同研究契約を締結。「大崎町における資源循環・廃棄物処理システムがもたらす多面的価値の評価に関する研究」がはじまりました。どんな調査結果が出ているのでしょう?
齊藤さん たとえば、生ごみを完全堆肥化している大崎町では、焼却処理をしている同規模の自治体を比較すると、温室効果ガスの排出量が約40%低いことがわかりました。大崎リサイクルシステムの他地域への展開は有益だと言える、確かな後ろ盾ができました。また、国立環境研究所との共同研究を進めるなかで、僕らが得られる知識は非常に多く、今後の展開に対する解像度も高くなっています。
また、衛生用品メーカー「ユニ・チャーム」と連携して、世界初となる「紙おむつの水平リサイクル」を目指すプロジェクトも進んでいます。実は、埋め立てごみの種類のなかで、重量1位は紙おむつ。もし、リサイクルできれば大きなインパクトがあります。
西塔さん 今、一部の地区で紙おむつ回収専用袋や回収ボックスを用意して、使用済み紙おむつだけの回収を行っています。使用済みの紙おむつからパルプを取り出し、再資源化して紙おむつをつくることは可能かどうかを実証実験するためです。今後、社会実装に向けて着実に進めていきます。
そして、もうひとつご紹介したいのは、大崎町発の環境学習教材を開発するプロジェクト。2022年5月、SDGs推進協議会と大崎町教育委員会、そして有志の教員のみなさんと一緒に、これからの循環型社会にふさわしい学習教材を開発し、来年4月には町内の学校への導入を目指しています。
SDGs推進協議会によるさまざまなプロジェクトが展開するにつれて、メディアからの注目も集まり、さらに多くの自治体や企業から声がかかるようになっているそうです。
西塔さん 2021年度は451名の視察・研修の受け入れがあり、Webや新聞などのメディアでは170件取り上げられました。2022年3月には、約1年の成果を関係者のみなさんに発表する「OSAKINIプロジェクト」の報告会を実施しました。
また、「Yahoo!JAPAN地域カーボンニュートラル促進プロジェクト」に選定されたことをはじめ、数々の企業様からのご支援もあわせて総額4億円を超える企業版ふるさと納税のご寄附もいただいています。「大崎リサイクルシステム」が世界の未来をつくるに値するというご評価をいただき、非常にありがたく思っています。
国連広報センターのYoutubeチャンネルに、合作の藤田香澄さんが出演。英語でスピーチし、世界に向けて大崎町の取り組みを発信した
“素材”が出揃った今だからこそ、合作で働くのは面白い
SDGs推進協議会発足時に予定していたプロジェクトは、ひと通り立ち上がって動きはじめるところまできました。それに伴い、「立ち上げ期」から「成長期」への移行が見えてきた合作では、3度目となるグリーンズジョブでの仲間募集を行うことに。さて、今回募集するお仕事について詳しく伺っていきましょう。
SDGs推進協議会の事務局を運営する合作のメンバーは、それぞれに上記で紹介したようなプロジェクトを担当しています。今回募集するのは、これらのプロジェクトを担うメンバーが、それぞれ気持ちよく働き、パフォーマンスを最大限に発揮できる環境をつくる、「現場マネージャー」にあたる人です。
西塔さん SDGs推進協議会には、役場の副町長をトップに理事の方たちがいて、我々合作のメンバーが事務局として、企業や研究機関と一緒に各プロジェクトを管理・運営しています。なかには、書類作成や事前調整、予算の決裁や管理など、膨大な事務作業もあります。実際のところ、地域づくりって膨大な単純作業の積み重ねの先に、大きなインパクトが生まれるような仕事なんです。
立ち上げから2年間は、「何の書類が必要なのか」「どこで決済するべきなのか」と、何もかもが手探りのなかで、がむしゃらに前に進んできたそう。でも、「今の合作は、0から1ではなく、ある程度素材が揃っているものに対して、自分で意思決定をしてブーストをかける段階」にあると言います。
すでに動き始めている「OSAKINIプロジェクト」の各事業を確実に進めるために、新しい視点で全体を見渡して、仕事を整理整頓できる人がほしい」と西塔さん。「まっさらな目で見て、適切に仕事を差配してもらいたい」と期待しているそう。また、メンバーのマネジメントも委ねたいと考えています(具体的な業務は、記事末の募集要項をご覧ください)。
立ち上げ期から成長期へと移行する段階では、仕事量を減らすためにアシスタントを入れる組織もあります。合作では、あえて現場マネージャーを入れるという判断をしたのはどうしてなのでしょう。
齊藤さん 僕らは、ここまで着実にものごとを積み重ねてきたからこそ、自分たちにない発想で「こうすればさらにより良くできるんじゃないか」と言える人がほしい。合作の次なる成長フェーズには新しい視点を持ち込んでくれる人が必要なんじゃないかと考えました。正直、自分でやりたいくらいワクワクする仕事だなと思います(笑) 実は今ほんとに面白い時期で、応募者の方目線でもいい求人なんじゃないかな。
今までは、メンバーのマネジメントは主に齊藤さんの仕事でした。メンバーと向き合うとき、どんなことを心がけてきたのでしょうか。
齊藤さん 基本は「聞く」ですね。マネジメントの仕事は、お互いが気持ちよく成果を出していける仕組みをつくることだと思っています。コミュニケーションのルールを定めることによって、適切な事業進捗をつくっていくことを意識しています。
これは、どの組織でもありがちなことですが、忙しくなればなるほどコミュニケーションが「報告・連絡・相談」だけがになってしまいます。それを防ぐためにも、齊藤さんは社員との1on1ミーティングは欠かさず行ってきたそう。
また、半年一度は全員が集う社員合宿を開き、お互いの背景やふだん話せなかったことを聞き合う時間もつくってきました。こうした合作のあり方に共感できるかどうかも、今回の求人のカギのひとつかもしれません。
SDGsど真ん中の仕事を、思い切りやれる環境がある
来年以降は、これまで進めてきた、研究・開発プロジェクトに加えて、大崎リサイクルシステムを体験できる宿泊施設というハード面での整備にも取り組む予定だそう。建築設計事務所で働いた経験をもち、建築士を目指す遠矢さんが、その設計図を引く姿も見られました。
あらためて、この2年間を振り返って合作の仕事の面白さについて、ふたりに語っていただきました。
西塔さん 地域の仕事でありながら、新規性も高く国内外に広がりがあります。まちづくりの領域で、サーキュラーエコノミー(資源循環)や廃棄物処理業界に踏み込んでいる人はかなり少ないため、ここで経験を積んでいただければ、全国で活躍できるだけの経験値とボジションをつくれる可能性があります。
合作では、世界初の紙おむつの水平リサイクル、廃棄物行政の見直しによるカーボンニュートラル化など、未着手のままにされていた領域に取り組める。仕事の内容もすごく面白いし、それぞれの強みがある3人の経営陣とともに活動できるため、マネジメントのノウハウも身につけていくことができる。地域に関わる仕事に何年か取り組んできて、次のステップを探している人にぜひ検討してもらいたいと思います。
齊藤さん 最初の採用に対する応募数から、本気で環境問題に取り組みたい人がたくさんいるのだとわかりました。だからこそ、その人たちが「SDGsど真ん中の仕事」に挑戦できる環境をつくることも大事にしたい。大崎町というフィールドで活動する僕らにとってもすごく大事な意味があることだし、合作の役割のひとつなんじゃないかと最近は考えています。
最後に、そんな「今の合作」に来て欲しい現場マネージャーの人物像について、西塔さんの言葉で話してもらいました。
西塔さん 僕らの仕事の難しさは他の組織とは少し違っていて、熱意ある地域の人がたくさんいるからこそ、思いの衝突も起きます。また、声をかけてくださる企業さんとの間では「環境」「資源循環」「地域活性化」など、同じ言葉に対するお互いのイメージがすれ違ってしまい、緊張が走ることもあります。役場との間では、公共性や公平性の観点から意思決定の複雑なプロセスが必要となり、迷子になりそうなこともあります。
そういうときも、「向かっている方向は変わらないですよね?」と、重なる部分をていねいに探すのも、ブリッジ人材としての合作の仕事なのかなと思っています。何が起きても「そういうこともあるよね」と自分の機嫌をとりながら前に進んでいくには、一度挫折を経験して立ち直った経験のある人の方がいいかもしれないです。
合作の仕事は、たしかに「楽」でも「簡単」でもありません。でも、隣には同じ方向を目指す仲間がいます。周囲には、自治体、企業、そして研究者など、環境問題に本気で取り組むさまざまな人たちもいます。
もし、地域づくりと環境問題に関心があり、「30代、40代の10年をかけて不足のない仕事」を探しているなら、これ以上の仕事はなかなか見つからないような気がします。「最初は背伸びをしていたけど、気がついたらかかとが地面についてた……みたいな経験をしたい方に、挑戦してほしいと思います。
なお、合作では今後の事業展開を見据えて、引き続きプロジェクトマネージャーと広報・PRに関わる人も若干名募集するそうです。「大崎町や合作に関わってみたい」と思っていた方は、ぜひ応募してみてください。
インタビューのあとは、毎年恒例になりつつある「救仁(くに)の松原」でのメンバー写真の撮影に出かけました。もしかすると、来年の集合写真のなかに、この記事を読んでいる「あなた」の姿もあるかもしれません。
(撮影: 東花行)
(編集:山中康司)
– INFORMATION –
合作株式会社では、2023年1月5日(木)と1月12日(木)に、今回の求人の採用説明会&質問会の開催を予定しています。興味を持った方は、ぜひご参加ください。