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沖縄県うるま市に誕生した「LivingAnywhere Commons うるま」が目指す、地域も観光者も豊かになる「おかえり観光」とは

この記事は「株式会社LIFULL」との共同企画で制作しています(PR)

2022年7月、沖縄県うるま市浜比嘉(はまひが)島の旧中学校を利用した地域交流拠点施設 「HAMACHŪ(はまちゅー)内に「LivingAnywhere Commons(リビング・エニウェア・コモンズ) うるま(以下、LACうるま)」が誕生しました。

「自分らしくを、もっと自由に」というコンセプトで、シェアハウスとコワーキングスペースの特徴をあわせ持つ拠点を全国に拡大中の「LivingAnywhere Commons(以下、LAC)」。その沖縄初の拠点は、沖縄本島から車で行けて、沖縄の暮らしや日常を味わえる離島・うるま市島しょ地域にあります。

記事の前半ではそんなLACうるまの特徴や、生まれた背景ついてご紹介。記事の後半では、LAC事業責任者の小池克典(こいけ・かつのり)さん、うるまでの事業を統括する田中啓介(たなか・けいすけ)さん、コミュニティマネージャー西貝瑶子(にしがい・ようこ)さんの座談会で、LACうるまでできること、施設を通して叶えたい未来について、語ってもらいました。

まずはどのような施設か、見ていくことにしましょう。

本島中部東海岸、うるま市は沖縄のリアルな暮らしを感じられる場所

那覇空港から車で約1時間、沖縄本島中部・東海岸にあるうるま市。リゾートホテルが立ち並ぶ西海岸地域とは少し雰囲気が異なり、リアルな沖縄の暮らしが垣間見える場所です。なかでも「島しょ(とうしょ)地域」と呼ばれる5つの島には、昔ながらの瓦屋根の一軒家や、集落ごとに異なる言葉があるなど、離島独自の豊かな文化が残されています。

うるま市島しょ地域、安座真島と浜比嘉島を結ぶ全長約2.27kmの浜比嘉大橋は1997年に開通

うるま市島しょ地域の特徴やどのような体験ができるかは、以前グリーンズの有志メンバーが体験した「共創ワーケーションinうるま」など、うるま市に関する過去記事がいくつかありますので、そちらもぜひ読んでみてください。

浜比嘉島の旧中学校を再生!地域交流拠点施設「HAMACHŪ」

島しょ地域の5つの離島のなかで、琉球を創った神様が住んだとされる浜比嘉島。2022年7月にグランドオープンした「HAMACHŪ(はまちゅー)」は、2012年に閉校した中学校校舎を利用した地域交流拠点施設です。テレワークやワーケーションの受け入れを中心に、外から訪れる人と地域住民や企業とが関わり合いが持てる交流施設として、うるま市の事業により改修整備されました。

島の浜地区と呼ばれる集落の中心部にあった旧浜中学校。閉校後の利活用については、地域からも期待が高かったものの、うるま市としては、実現するまでに予算や事業者の選定など多くの障壁があり、閉校から約10年、構想から4年以上の月日を経てようやく新たな施設としてオープンに至ったそう。

HAMACHŪ全景。3階建ての元校舎をフルに利用し、近隣住民も利用できる交流施設として再生しました

全国に数多く残る閉校・廃校の校舎。以前は地域のコミュニティの中心だった学校は、住民の期待や建物の規模も大きいためにプロジェクトが進まない事例や、施設全体を活用できず結果的に暗い印象の施設になってしまうこともあるようです。

そんななか、HAMACHŪは3階建ての校舎を最大限利用し、芝生が整備されたグラウンドも広く、共同売店の理念で運営されている売店や食堂など、地域の人も気軽に入りやすい明るい雰囲気で、現地取材に訪れた際も、地元在住の若いスタッフが元気に運営しているのがとても印象に残りました。

写真中央部に映るのがHAMACHŪ。集落の中心部にあり、浜漁港と海岸はすぐそば

1階には、地域住民のリビングとして利用できるコミュニティ食堂と売店。宿泊施設の受付や長期滞在する利用者が炊事などを行う調理室やランドリー、イベントや展示などを行うことができる多目的ホールがあります。

売店と食堂「ハマチュー」もオープン。毎月売店発のニュースレターも発行しています

2階には地元企業や沖縄に拠点を持ちたい企業のための部屋貸しレンタルオフィスと個別デスクのあるシェアオフィス、電源やWi-Fiが整えられたコワーキングスペースや会議ができるコミュニティスペースを設置。

シェアオフィス

会議もできるコミュニティスペース

教室をそのまま活かした造りのレンタルオフィス。現在地元企業が1社入居中

3階にはドミトリーや個室など、さまざまな形態に対応する宿泊施設「LACうるま」が設置されました。LACうるまの利用者は、HAMACHŪ内にあるコワーキングスペースやミーティングスペース、調理室などの設備を自由に使うことができます。

男女共用ドミトリー

女性ドミトリーは半個室のような空間

旧音楽室を改修した4人部屋の個室は専用バス・トイレつき。1〜2名の個室もあります

3階の廊下からは海が見える絶景。34名が宿泊可能な施設はLACとしても最大級だとか

ここ数年のコロナ禍を経て、都会のオフィスに囚われることなく、多様なスキルやネットワークを持つ人たちがテレワークで仕事をする環境が整い、全国各地でワーケーション可能な施設も増えてきました。

HAMACHŪもそうした施設のひとつ。けれども、ただの「仕事×休暇」だけのワーケーションとは一線を画した場所にしたい。地域の人と出会い、地域と共に育みあう共創型の場、さらには、島の豊かな暮らしに触れるなかで、これからの時代の生き方・あり方を探究し合う場にしたい、という思いが詰まっています。

HAMACHŪがある浜集落は、細い路地と瓦屋根の一軒家も残っていて、周辺の散歩も楽しめます

制限にしばられず、好きなことをするLAC初の沖縄拠点

HAMACHŪ内にある宿泊施設は、「自分らしくを、もっと自由に」をコンセプトに、場所や仕事、生活手段など、あらゆる制約にしばられることなく、好きな場所でやりたいことをしながら暮らす生き方を実践することを目的としたコミュニティであるLivingAnywhere Commonsの沖縄県初の拠点「LACうるま」として運営が行われています。

もともとは一般社団法人として立ち上がったLiving Anywhere。2016年に起業家の孫泰蔵さんらが提言し、啓発活動がスタートしました。

Living Anywhere の概念図(一般社団法人 Living AnywhereのWebサイトから転載)

その後、その概念を具現化する手段として、2019年、事業を通して社会課題解決に取り組む株式会社LIFULLが主体となり事業会社を設立。快適なWi-Fiや電源などを完備したワークスペースと、長期滞在を可能にしたレジデンススペースを持つ共同運営型コミュニティ「LivingAnywhere Commons」が本格始動したのです。

2022年8月現在、全国44ヶ所の施設があり、今年中に50拠点を目指して拡大中。各拠点には、地域への造詣が深いコミュニティマネージャーが常駐し、定期的にメンバー参加型のイベントを企画をするなど、ただ単に長期滞在できる拠点としての利用だけでなく、メンバー同士や、地域の人たちとつながる仕掛けも用意。また、メンバー自身で自由に企画やオープンイベントを開催することも可能となっています。

数部屋の小規模なものから廃校やビルを活用した施設まで、全国各地に拠点を拡大中(LACのWebサイトから転載)

拠点の利用には、1回ずつ利用可能な6,600円(税込)の都度払いのほか、回数券払い、月間6日以上利用するならお得となる月額27,500円(税込)の定額固定払いも用意。これなら、「いつでも、どこでも、自分らしく自由に生きられる場所や機会がある!」と体感できそうな、身近な料金体系と言えそうです。

実際の現地での運営は、各地域のローカルプレーヤーと提携するかたちで提供されているLAC。うるまの拠点では、民間のまちづくり会社としてうるま市の移住定住促進・地域資源活用商品の開発・イベントの企画開催、公共施設管理運営などを担う「一般社団法人プロモーションうるま」が、地元浜比嘉島の浜自治会、株式会社LIFULLとともに「はまひが交流拠点コンソーシアム」という組織を立ち上げたうえで、HAMACHŪの指定管理者としてLACうるまの運営を行っています。

ネット回線を島に引くところからスタートした悲願の沖縄LAC拠点

地域の人たちの交流拠点に加え、テレワークなど、場所にとらわれない新しい働き方をする人たちと島で生きる人たちが出会い、チャンプルー(沖縄方言で「混ぜこぜ」)し、新たな未来をつくっていく場所。

“100年後のうるまの未来をつくる” をビジョンに掲げたプロモーションうるまが求める未来像と、LivingAnywhereが探していた沖縄の拠点。必然ともいえるLACうるまが誕生した経緯ですが、その過程は平坦なものではなかったようです。

さて、ここからはLACうるま誕生の背景を、運営のキーパーソンである3名のお話を交えながらお届けします。
LAC事業責任者の小池さんは、「うるまとの縁は5年ほど前、組織の立ち上げ時から」と言います。

小池克典(こいけ・かつのり)
株式会社LIFULL 地方創生推進部・LivingAnywhere Commons事業責任者。株式会社LIFULL ArchiTech 代表取締役社長・一般社団法人LivingAnywhere 副事務局長  1983年栃木県生まれ。株式会社LIFULLに入社し、LIFULL HOME'Sの広告営業部門で営業、マネジメント、新部署の立ち上げや新規事業開発を担当。現在は場所の制約に縛られないライフスタイルの実現と地域の関係人口を生み出すことを目的とした定額多拠点サービス「LivingAnywhere Commons」の推進を通じて地域活性、行政連携、テクノロジー開発、スタートアップ支援などを行っている。

小池さん 「どこでも暮らせる社会になったら豊かだよね。テクノロジーを使えばできるじゃないか」と、2016年に孫泰蔵さんが言い始めたのがはじまりなんですが、実は話してる人たちも、当時実践はしていなかった。

「とにかくまずやってみようぜ」と、2017年に一般社団法人の立ち上げとあわせて、みんなで日程を決めて1週間暮らし、各自、日中は今までと同じ仕事をして、夕方以降そこでしかできない交流やナレッジのシェアをしようという「LivingAnywhere Week」というイベントをやりました。

最初は北海道で夏に100人ぐらい集まって。それがすごく良かったんですよね。「次はどこに行くか?」と考えたときに、北の拠点が北海道だとしたら、やっぱり南は沖縄だったんですよ。それで、僕が沖縄中のいろんなネットワークを探して、訪問したんです。

2016年8月に北海道・南富良野で行われた初のLivingAnywhere Weekの記念写真

小池さんは、沖縄各地のキーパーソンと会い、LACの構想を話していくなかで、沖縄市で「うるま市がいいのでは?」と紹介してくれる行政の方と出会いました。

小池さん まずは行ってみようと、車で海中道路を渡ったときから「なんだこれは」って。沖縄の原風景というか、「観光地化されないまま残るリアルな沖縄生活がここにある!」と、うれしい気持ちになりました。

ただ、そこからLACうるまの実現までには大きなハードルがいくつもあったと言います。なかでも、2017年の段階で、浜比嘉島にはネットの高速光回線がなく、テレワークに必須のインフラが整えられていないという問題の解決には、行政をはじめとした関係機関へ働きかけ、うるま市に回線工事を推進してもらったという経緯を含め、多くの時間と労力を要しました。

小池さん うちは通信会社じゃないので、実は何の利益にならないんですが、島に光回線を引くことで、ワーケーションの拠点として、グローバルな視点から見ても、デジタルノマド(どこでも働けるテレワーカー)たちにとってホットな場所になる可能性がある、とポジティブな面を伝えられたのは、浜比嘉島へひとつ貢献できたことかなと思います。

「速いネット回線があれば、世界中どこでも仕事ができる人がいる」というテレワークに関する知識はあっても、実際に利用されている状況を見ると、よりイメージがしやすくなります。うるまの未来を考える人たちが、その意義を理解し、予算を立てて具現化し、さらに廃校の利活用への投資を回収するために、さまざまな議論を重ね、2022年夏にようやくHAMACHŪ/LACうるまとして、世に出ることになったのです。

施設の落成式にはうるま市の副市長も来場。期待の高さがうかがえます

小池さん LivingAnywhereの構想のときから思い描いていた場所のひとつが、4年かかってようやく生まれたという気持ちで、本当に感無量ですね。

ただ、このプロジェクトは地域を良くして100年後のうるまを考えようって活動している「プロモーションうるま」が存在しなければ、まず実現できなかった。地域の魅力に気づいて活動する人たちがいる。かつ、それを盛り上げたいという自治体があり、我々のような、よそ者としての波が起こせる者を受け入れられる度量もあったからだと思いますね。

現地運営を担うプロモーションうるまの田中さんは「タイミングがよかった」 と語ります。

田中啓介(たなか・けいすけ)
一般社団法人プロモーションうるま・理事/プロジェクトディレクター
1974年千葉県生まれ。国際交流・協力の分野で活動した学生時代、60ヶ国を訪問した旅行会社時代を経て「環境×教育」をテーマに富士山麓のホールアース自然学校へ参画し、自然体験プログラムのガイドや人材育成/地域振興を担う。2005年から那覇事務所長として沖縄へ。2016年には沖縄県うるま市に移住し、プロモーションうるまに参画。島しょ地域を舞台に、ビジョンを描く「しまみらい会議」などで対話の場づくりを進めるファシリテーターを務める他、移住起業家支援を軸にした豊かな関係人口の創出など「地域×教育」をテーマに活動している。ニックネームはじょりぃ。

田中さん 何か物事が動くときって、特別なタイミングや流れがある。沖縄市の担当者からうるまにバトンが来たときに、「この案件だったら絶対におもしろい」と、そこからまた行政の別の担当者へバトンを渡して、廃校活用のHAMACHŪ/LACうるまが実現したんですが、ここの人選やタイミングが完璧だった。今ならこの企画は実現しなかったかもしれない、とも思います。

小池さん LivingAnywhere Commonsは不動産情報サービス事業が元にあるので、不動産の持続可能なあり方というテーマも持っていて。旧浜中学校はそういう意味でも象徴的な閉校した校舎だったんです。閉校・廃校校舎は全国に6,000ほどあると言われていて、およそ8割は放置されている。その利活用という大きい課題がある中で、LACうるまはモデルケースになるといいなという思いもあります。

昔の写真を掲示したら、地元のおばあが「これ私だよ」って。そんな会話があるのはやっぱりいい。学校という場所の持つ意味、パワーを改めて感じさせてもらいました。

現在も残る中学校時代の表札


 

沖縄ローカルのスタッフとともに、日々、工夫を重ねて運営中

2022年7月にグランドオープンし、地元在住の若いスタッフとともに日々業務に奮闘中のコミュニティマネージャー、西貝さんに現在のLACうるまの様子を聞きました。

西貝瑶子(にしがい・ようこ)
LivingAnywhere Commonsうるま・コミュニティーマネージャー。学生時代に熱海のまちづくりに関わった経験から、株式会社LIFULLに就職してからも、社内外で社会貢献度の高い活動に従事。2018年、沖縄県うるま市でLIFULLが運営する「LivingAnywhere Week」イベントに参加したことを契機に、うるまの島しょ地域の環境に惹かれ移住を決意。現在は現地側の組織である一般社団法人プロモーションうるまのメンバーとして、HAMACHŪの運営をメインに、教育事業にも取り組んでいる。

西貝さん わたしは宿泊施設としてのLACの運営に加えて、売店や食堂の営業やイベント企画など、コミュニティマネージャーとしてHAMACHŪ全体を見ています。プレオープンからいくつかイベントを続けて、7月のグランドオープン後は、利用者の方からの声を反映させながら、随時改善しているところです。

階段の踊り場に掲示されているボード。施設に住み込みで働くスタッフもいて夜も安心

西貝さんとともにHAMACHŪで働くスタッフは、4人中3人がうるま市出身。プロモーションうるまの別プロジェクトで関わったインターン生がそのままスタッフに加わるなど、縁がつながった若いチームで、自らイベント企画を発案するなど、積極的に運営に関わっています。

西貝さん スタート前からコミュニティで畑や生ゴミから肥料をつくるコンポストを置く構想は持っていたのですが、環境活動家として活躍するスタッフと、友人でコンポストの普及活動をする子がいて。彼らが中心となって、プレオープン時のイベントではコンポストづくりのワークショップも行いました。

みんなで大きなコンポストの木枠をつくって、施設で出る生ゴミをちゃんと資源として活用しようというアイデアは彼らから生まれたのですが、スタッフはそれぞれ興味分野や得意なことが分かれていて、自然と役割分担するかたちで、楽しく業務に当たってもらえているかなと思います。

廃材を利用してDIYでつくったコンポスト。売店前に置かれ、宿泊者だけでなく周辺住民も利用可能

現状の課題のひとつは、HAMACHŪ1階にある売店や食堂の品揃えやメニューが地域の住民の要望とズレていること。少しずつ修正しながらよりよいものへと改善中だそうです。「スタッフと一緒に役割分担しながら、施設をよりよくアップデートしていきたい」と西貝さんは話します。

近隣の食堂に配慮して「被らないように」とメニュー化した定食。島民からは「やっぱり沖縄そばを食べたい!」の声もあり、今後メニューも変化していく予定

島民と宿泊者の求める商品は異なることや、離島特有の流通網の不備もあり、品揃えには頭を悩ませることも多いそう

地域団体としてさまざまな活動を行っているプロモーションうるまですが、HAMACHŪは、単独ではなくLACを運営する株式会社LIFULLと共同でのプロジェクト。他団体とコラボする意義はどんなところにあったのでしょうか?

田中さん 僕らは、地域横断的に活動するLACとは違って、地元うるまにどっぷり根ざした地域づくり団体です。うるまをおもしろい地域にしたいと思えば思うほど、リアルにそこにある課題ともしっかりと向き合っていかなければいけないし、いろいろと困難な状況も間違いなくある。

それに対してプロモーションうるまや、沖縄県内だけのリソースだけでアプローチするよりも、LACのような僕らが知り得ないスキルやネットワーク・才能を持った人たちと一緒になってコミュニティを育むことで、見えてくる世界や広がる可能性は圧倒的に違ってくるはずだと考えました。

沖縄の観光のあり方を変える。関係性を深める「おかえり」観光へ

田中さんは、LACうるまの存在は、沖縄に従来からある一過性の観光のかたちから、何度も通って関係性を育む観光へと姿を変えるためのモデルケースになるのではないかと話します。

田中さん 沖縄県は観光立県として、とにかく沖縄に来てくださいっていう「来て来て観光」をずっと政策としてやっていたんです。コロナ前は「年間の観光客が1,000万人を突破!」という、数字が話題になるようなニュースが多かったけれど、同時にオーバーツーリズムの問題もあちこちで出てきていて。

本来、観光のあるべき姿って、人が来てくれることによって、来る人と地域の人たち両方の幸福度が高まること。でも実際何が起きてたかというと、観光客が増えたことによる弊害、例えば、滝や聖地など、地域の人たちが日常的に大切にしている空間に、その価値を知らない観光客が悪気なくズカズカ入ってしまって地域の人たちがモヤモヤする、だとか。ごみ問題もそうだし、人が来るほど、どんどん疲弊する状況が起きていた。

うるまは幸い、大規模なリゾートホテルも少なく、いわゆる沖縄西海岸の観光の黄金ルートには乗っかっていない。だからこそ、うるまは「おかえり観光」をしたい。例えば同じ1年で1万人という数字でも、1泊2日で1万人来るよりも、100人が100泊する、延べ1万人を目指してやっていきたいんです。

いつもニコニコ笑顔がまぶしい田中さん。じょりいさんとニックネームで呼ばれることが多い

田中さん LACは1〜2週間滞在する中長期的な滞在も多く、それを推奨しているコミュニティですよね。1人の人が長くいることによって、地域の人との関係性がどんどん深まっていく。この関係性の育み方を、沖縄の観光のロールモデルになるようにやっていく責任があるな、とも思っています。

西貝さん うるまでは、沖縄西海岸みたいなリゾートの非日常とはちょっと違って、沖縄の暮らしの日常を体験できる。でもそれは、旅で訪れたみんなにとっては、いつもと違う「特別な暮らしの日常」になり得るんですよね。LACうるまで、うるまの島しょ地域の暮らしにちょっとお邪魔させてもらう。普通の観光じゃ見られないけど、ここに滞在するからこそ体験できる、という「日常をベースにした体験」を提供していきたいですね。

西貝さんは沖縄暮らし2年目。「LACうるまのオープンまでは大変だったけど、運営はもっと大変」と笑いながら話してくれました

小池さん 僕は今まで沖縄に25回ほど来てますが、うるまではもう3回目ぐらいから「ただいま」って言い合う感覚が当たり前になってきた。でも西海岸のリゾートや国際通りの飲み屋では、なかなかそういう関係性は生まれない。

長期滞在が理想だけれど、仕事や生活の都合もあるだろうから、うるまへは短期間でも何回か訪れるのがいいかなって思いますね。濃厚なラーメン屋じゃないけど「1回だけで判断しないで。だんだん良さがわかってくるから、3回までは行ってみて」みたいな(笑)

全国を駆け回り多忙な小池さんも、「うるまはいつでも何度でも来たい」とのこと

田中さん うるまに来る人には「島へ行くと、自然にフラットな感覚で受け入れてくれるのが心地いい」とか、「変におもてなしされなくてもいい」といった感覚があるようで。そんな遠い親戚みたいな感覚でいられる場所という感想を聞くと、うれしくなります。

で、本当にすごいなと思うんですが、LACの月額会費って27,500円ですよね。1つの施設に1ヶ月間いてもいい。沖縄でも今、その値段の家賃で物件を探すのはかなり無理な話で。そう考えると会員は自分の部屋が全国各地に44部屋あるようなものなので、何度も来られる仕組みをフルに使って「おかえり観光」してほしいなって思います。

小池さん なぜこの価格、こういう設計にしてるかっていうと、「自由な暮らしを得るための、生活に必要なリビングコストを下げたい」というところから着想してます。リビングコストが下がれば、人は本来やりたくないことは極力しなくなって、したいこと、ライフワークや好きな仕事にシフトして、幸福度が上がってくるんじゃないかというのが僕らの仮説だったんです。ちょっと安すぎたかな、とも反省はしてるんですが(笑)

沖縄の豊かさやおもしろさを体感し、沖縄への意識をアップデート

グランドオープンから約2ヶ月。まだスタートしたばかりのLACうるまですが、この先、どんな理想や未来を描いていくのか? 他のLAC拠点の例なども踏まえて、その理想像を聞いてみました。

小池さん 今まで地域とのコラボがうまくいった事例としては、LAC伊豆下田があります。自然やまちの魅力など、そもそものポテンシャルが高かったこともありますが、地域とつながる大きなきっかけだったと思うのは、利用者の方が地域の仕事を受けるケースが増えてきたこと。

「記事を書いてください」とか「この企画をやってくれませんか」といった相談を受けることになり、その受け皿のために法人をつくったりした結果、深い関係性ができて「移住しちゃいました」という人も現れて。

LAC伊豆下田は静岡県下田市の元社員寮を改修した施設。首都圏からアクセスしやすく何度も利用するメンバーも多いそう

小池さん LACうるまからは、車で北谷など西海岸の観光地や沖縄市のコザへも1時間圏内で行ける。沖縄は移住者も多いですし、うるまに限らず沖縄の広域でネットワークをつなぐことで、何か仕事につながるような機会があると、地域内経済も発展していくのではないかと思いました。

そもそも、きっかけさえあれば沖縄に行きたいっていう人は多い。冬の寒い時期とか、花粉症の時期だけの季節移住なんて最高ですよね。だとすると、やっぱり納得できるような、合理的で経済的な行く理由をつくれることが大事。スキルシェアやナレッジシェアみたいなことで仕事が回るような関係値を築けたらいいですよね。

田中さん LACうるまを拠点にして、来た人がうるま市だけに留まらず、沖縄の本当の豊かさやおもしろさを体感できるような出逢いを重ねていって、沖縄に対するイメージがどんどんアップデートされていくとすごくうれしいですね。

例えば、うるまのお隣、沖縄市のコザは今スタートアップや起業支援で盛り上がっている。もともと夜の街としてもライブハウスがあったりと、感覚で言うと「とにかくアツくて、うわーって動いてる」のがコザ。うるまは逆に、静かというか、穏やかで落ち着くような質感がある。そこを行ったり来たりすることで、コザでいろんな刺激や熱量を受け取った人が、浜比嘉島に戻ってきて、自分と対話して内省する。その往来があることによって、トランジション(人生の転換期)にもつながりやすくなる気がします。

浜比嘉島の美しい浜は自分を見つめ直すのに最適な場所(撮影:アラカキヒロミツ)

未来の理想は子どもと大人がともに遊び、学びあう場

LACうるまの過ごし方はさまざま。例えば、沖縄の食文化や食養生の考えを取り入れて、滞在期間中に体が元気になるリトリート的な滞在など、いろいろな方法を駆使して提供し、楽しんでもらいたい、と田中さんは話します。

また、元中学校という施設の背景から、未来の教育にまつわるLACうるまの理想像も浮かんできました。

西貝さん やっぱりここは自分が持つスキルをシェアしあったり、学ぶ場が合っていると思います。また、学びだけじゃなく、新しい発見やチャレンジの場になっていくといいですね。

都会で日々忙しい時間のなかで暮らす人が、うるまの自然が目の前に広がったときに、ふと深呼吸してリラックスする。そして地域の中で暮らしている多様な人たちとの出会いから「自分はどう生きたいのか」というような、本質的な自分の人生に触れる体験が生まれる可能性もある。 HAMACHŪでもそうしたトランジションの後押しになることをどんどん提供していきたいです。

さらに、外から変化が起きることで、地域の人たちが刺激を受けて、何か新しいことが始まって…。そんな感じで地域全体がちょっと違う感じにシフトしていって、結果的に先々の将来、地域課題が解決していっている、というのが、すごく実現したい未来像です。

田中さん 学ぶ場の話で言うと、僕は親子の層をもっと増やしていきたいと思ってるんです。

親の働き方も自由になってきているから、子どもを連れてどこかに旅行に行く感覚で家族でLACに来る。親はシェアオフィスで仕事をしてる一方、子どもたちは、学校としてのHAMACHŪ、あるいは島しょ地域で普段の学校とは異なる質感の学びを得られると、親子でうるまに行くことの価値が変わってくる。まだ具現化はできていないけれど、そこに僕らはチャレンジをしていきたいなっていうのがありますね。

もっと妄想を言うと、HAMACHŪから徒歩圏に旧比嘉小学校っていう場所があるんです。そこもまたロケーションが抜群で。例えば大人たちがHAMACHŪにいるときに、子どもたちが旧比嘉小に行くと、そこで新しいバリのグリーンスクール(※)のような持続的な学びの場があるといいなって。サマースクールのような短期的でも学びが生まれる何かがあると、結果的にHAMACHŪにリアルな子どもたちの笑い声が返ってくる。それはやっぱり地域としては最高に幸せなことだろうな、と思うんです。

※サステナビリティ(持続可能性)をテーマに掲げ、地球の未来を担うリーダーを育てているインターナショナルスクール。 グリーンズの記事もご参照ください。

写真中央部分の赤い屋根がHAMACHŪ(旧浜中学校)。左手の山を越えた比嘉集落に旧比嘉小学校がある

西貝さん 沖縄県外から来た子どもたちが、都会と全然違う環境を体験するのも大事ですが、わたしは今、地域の学童にも少し関わっていることもあり、うるまに来た子たちを地元の子どもたちと交流させたいという思いもあります。

同じ年代の子どもたちと一緒に遊んだり、体験することで、県外から来た子どもたちは全てを新鮮に感じるし、地元の子どもたちも、自分の中で当たり前として見ていた世界がすごいものなんだと気づいたり。ただ楽しく遊んで仲間になるだけで、彼らの世界が大きく広がっていくだろう、という感覚があって。HAMACHŪでそうした機会を提供して、毎年「帰ってくる」人が増えるとうれしいですね。

プレオープン時のDIYイベントでは、大人も若い世代も子どもも、みんなで一緒に作業して意気投合する場面も

小池さん 子どもが集まる場所はいいですよね。地域の人が施設を日常使いをしてくれるのが一番だなと思ってるので、学校が終わってWi-Fiがあるからゲームしに遊びに来る場所でもいいと思ってて。埼玉県西部にあるLAC横瀬は、まさにそんな感じになってるんです。地域の学生やじいちゃんばあちゃんもいっぱい集まっているのが日常的で、人気の場所になっている。そういうのは本当にいい光景だなと思います。

小池さんは、「沖縄は地理的にもアジアの中心地として、過去、太平洋戦争において地上戦があった歴史を考えても、世界と平和を感じ、つながる拠点になれるはず。沖縄の拠点はよりその意味を強く感じるから、いろんな国の人が交流する場所にしたい」。田中さんは、5年毎に行われる「世界のウチナーンチュ(沖縄人)大会」を例に挙げ、「世界視野でLACうるまを活用したい」と、話を締めてくれました。

(座談会ここまで)

2022年は、沖縄の本土復帰から50年。1972年はうるまの島しょ地域に海中道路が通り、新たな歴史がスタートした年でもあります。閉校した中学校に光を当て蘇らせたHAMACHŪ/LACうるまが、次なる50年にどんな新しい歴史をつくっていくのか、期待が高まります。

LACうるまで「おかえりなさい」。旅でも移住でもない自由な暮らしを体感しよう

海辺にキレイなリゾートホテルと水族館があって、お土産屋さんが立ち並ぶ通りで沖縄料理を食べてショッピング。田中さんが「来て来て観光」と呼んだ、一般的な沖縄での観光旅行はそんなイメージでしょうか。

けれども、そうした観光ではなく、もっと沖縄のリアルな暮らしを深く知りたい、沖縄で豊かに暮らす人と会ってみたいという人や、もしかしたら機会があれば住んでみたい、なんて人もいることでしょう。

HAMACHŪ/LACうるまがある浜比嘉島は、沖縄本島と橋でつながった離島の拠点。やや不便さはあるものの、バスを利用した公共交通機関でも訪れることが可能で、本島では失われつつある沖縄の歴史や文化を大切に生きる人たちと出会い、伝統を感じることができる場所です。

LACうるまでの滞在では、観光旅行でもなく移住でもない、不思議な時間の流れ方を体験できるような気がします。「本当に自分がやりたいことは何か? 住む場所に囚われないとしたら、どんな生き方をしたいのか?」。そんな問いを持ちながら、うるまの自然に触れ、深呼吸。出会った仲間と語り、考える時間は、自分の人生を再構築し、変容するきっかけになるかもしれません。

あなたもLACうるまへ、まずは一度、できれば「おかえりなさい」と言われるくらい、訪れてみてください。その頃にはきっと「自分らしくを、もっと自由に」を共創し、実践する人になっているはずです。

〇 HAMACHŪ(はまちゅー)
  〒904-2315 沖縄県うるま市勝連浜19
  https://hamachu-uruma.net/

〇 LivingAnywhere Commons うるま
  https://livinganywherecommons.com/base/uruma/

(編集:山中康司)

[sponsored by 株式会社LIFULL]