どうか今日、命を絶たないでください。
あなたがいることで、この世界はより素晴らしいのです。
その素晴らしさは、あなたが思っている以上です。どうか、踏みとどまってください。
もし、こんなメッセージが書かれたステッカーを見かけたら、あなたはどう感じますか?
何も思わず通り過ぎるかもしれないし、ふと立ち止まって見た後すぐに忘れてしまうかもしれません。もしくは、まるで自分に語りかけられているのかな? と思うほど、深く心に残る言葉になるかもしれません。
このステッカーをつくったのは、うつ病と闘った過去があるニュージーランドの22歳の大学生Brooke Lacey(以下、ブルックさん)。自身の経験をもとに、コロナ禍で苦しんでいる人々の力になりたいというメッセージを込めて、ラミネート加工したステッカーを600枚製作。
コロナの第一波が流行した頃に、ブルックさんは橋や高架交差橋、鉄道や水路の隣など、首都ウェリントン市の至る所にこのステッカーを貼ります。そして、バンパーステッカーとして自家用車にも貼りつけました。
ある日、大学で授業を受けていたブルックさんが駐車場に戻ってくると、ワイパーに紙が挟まっているのに気づきます。「駐車の仕方が悪くて、誰かを怒らせてしまったのかも?」と思いその紙を開くと、そこにはこう書かれていました。
あなたのサインが、今日、私の命を救ってくれました。私は今日、あること(a plan)をするために家を出ました。それが正しい決断だと信じるために、ありとあらゆるサインを探していました。その時に、あなたのサインを見つけたのです。
メモを読んでも、何のことかピンと来るまで時間がかかるほど、自分の車に貼ったステッカーのことをすっかり忘れていたというブルックさん。
このメモを書き残した人は、最悪の決断をする前に、最後の一押しとなるメッセージを探していたのでしょう。しかし、このブルックさんのステッカーをたまたま目にしたことで、命を絶つことを踏みとどまることができたのです。
私たちの思いやりで、誰かを救える
ここ数年で特に悲観的になってしまうようなニュースを目にすることが多くなった、という声を聞くことはありませんか?
インターネットやソーシャルメディアを覗くと、新型コロナウイルスのパンデミックなど、未曽有の事態で様々な情報が錯綜していたり、あえて人を不安にさせるような記事や発言が溢れていることも。絶望感や無力感に苛まれた方もいるかもしれません。
世界中でも、コロナ禍を経て精神的なストレスを抱える人々が増えています。経済協力開発機構(OCED)の調査によると、日本のうつ病やうつ状態の人の割合は、2020年で17.3%。2013年の7.9%に比べて、2倍以上に増加。世界各国でも、軒並み上昇しています。
このメッセージを、誰がどこで必要としているのか、決してわかりません。
というブルックさん。
SNSでこのエピソードが広がると、
シンプルなことでも、誰の人生に影響を与えるか、決してわからないものなんだね。
他の人がどんな大変な経験をしているか、周りは決してわからない。いつも親切であるように心がけよう。
このニュースが、他の必要としている誰かの心も助けることができるといいな。
などのコメントがあふれ、やさしさの輪が広がっていました。
落ち込んでいる時や決断に迷っている時、何かしらのサインに助けられた、という経験がある方もいるかもしれません。
それは、決して大げさなものである必要はないのです。
例えば、ふらっと入った店内で流れてきた音楽の歌詞や、何気なく手にしたフリーペーパーで目に入った文字、たまたま車内でつけたラジオで耳にした言葉かもしれません。
多くの人は素通りするくらい些細だけれど思いやりのあるメッセージが、暗いトンネルに迷い込んでしまっている誰かに響いたり、トンネルの端に見える小さな光になることもある。ブルックさんの手づくりステッカーは、誰かを助けたいという想いや言葉を発することの大切さを教えてくれます。
[via goodnewsnetwork, dailymail, oecd, Top Photo by Tom The Photographer on Unsplash]
(編集: あいだきみこ、中鶴果林、スズキコウタ)
– INFORMATION –
今つらい思いをされている方を支援する電話相談や窓口があります。以前に記事掲載したNPO法人ゲートキーパー支援センターが紹介している専門機関の中で、全国共通のものを一部ご紹介します。