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究極の「ながら料理」を実現。夏野菜をおいしくする「ソーラークッキング」のつくり方

専門家が警笛を鳴らすほどの猛暑に、不安や戸惑いを覚える人も多いかもしれません。気候危機に対するアクションを続けることはもちろん大前提ですが、この状況も、何か新しいことにチャレンジする機会と捉える視点も大切です。

誰もができるエネルギー対策、それは、頭上から照りつける太陽の活用。使わないなんて、もったいない!

2つのポイントをクリアすれば
実践の形は自由

以前こちらの記事でもご紹介したように、太陽光を使って食材を調理するのがソーラークッキングです。いろいろな形で楽しんでいる先駆者は世界中にたくさんいるので、本やインターネットで自分に合う形を探すのも楽しいはず。いずれにしてもソーラークッキングの大きなポイントは主に2つです。

①太陽光を集約すること
②集めた太陽光を熱に変えること

このふたつを兼ね備えた高性能のソーラークッカー(調理器)もたくさん販売されています。ただ、購入という別のエネルギーが伴うことでもあるので、身近なものでつくってみませんか。

使うのは
「光るもの」と「黒いもの」

太陽の光を集める①には、反射板や集光板となるものを使います。市販のソーラークッカーが銀色になっているのはそのため。身近な素材として、レジャーシートの裏側や、車用のサンシェード、もしくは銀色の厚紙、アルミホイルを貼ったダンボール等々を使います。

①で集めた太陽光を熱に変える②には、黒いものを使います。黒い鍋など、調理したい食材の周りを黒くしておくと、光が吸収されて熱に変わるのです。ダッチオーブンや南部鉄器のような黒くて鋳物の鉄鍋があればパーフェクト。ない場合も、市販の黒いアルミホイルを使って鍋や食材を包めば大丈夫です。

焼き芋用やグリル用として片面が黒くなったアルミホイルが市販されています。

さらに熱を効率よく通すためには、輻射熱(ふくしゃねつ)も重要です。たとえば鍋の内側まで黒い鋳物鍋なら、内側ではたらく輻射熱によって、食材の中心部まで早くしっかり火が通ります。そうした鍋がない場合は、黒くした食材をガラスやビニールなどで覆い、温められた周りの熱も逃さずに対流をつくり出すようにします。

こちらは書籍『ソーラー女子は電気代0円で生活してます!』著者、フジイチカコさんによる、レジャーシート版ソーラークッカー。

チカコさんのワークショップで引いた、ソーラークッカーにするための折り線。その後、何年も使い込んで線が消えてしまっていたので、上記の写真はワークショップを主催してくれた植物観察家・鈴木純さんにお借りしました。

いざ実践
うまく日常に取り入れるコツとは

身近なアイテムを揃えて、太陽光がちょうどあたる位置を決めたら、いよいよ実践です。

ソーラークッキングでつくる料理といえば、ゆで卵をつくったり、焼き芋、焼きりんごなど。また世界にはいろんな工夫をしながら驚くようなレシピを紹介してる方々がネット上にたくさんいますので、ピンときたものを試してみるのも良いでしょう。

それとは別にオススメしたいのは、ソーラークッキングを日常的に、日々の暮らしに取り入れる方法です。それは、下ごしらえを任せること。具体的にご紹介しましょう。

高性能で大型の集光パネルではなく、こうした小型タイプの(手づくり)ソーラークッカーを使い、さらに日常化させるためには、壁がいくつかあります。

・食材に火が入るまでの所要時間を予想しにくい
・ガス調理より時間が掛かる(ゆで卵で60分前後など)
・食材によって火の入り方が違うこともある
・調味料、特に油は使えない(液状の調味料に浸けながら煮込むなどは可能)

つまり、”ガスで熱したフライパンに油を引いて、切った野菜や肉をジュージュー炒める”といった、ごく一般的な調理とは異なる点があるのです。それを日常化するには、自分の予定をソーラーの都合に合わせねばなりません。何かと忙しい現代人、ゆで卵に1時間、果たして待てるでしょうか…。

そこで、これを食材の準備、下ごしらえだと割り切ると、上に挙げた難関も全て解決されるんです。

ソーラー「下ごしらえ」
実例紹介

ソーラークッカーに下ごしらえをお任せする日は、おおよそこんな感じです。

朝起きて天気を確認し、キッチンにある野菜をチェック。夏なら茄子やズッキーニ、玉ねぎや人参、水で戻した大豆なんかもソーラークッキングと相性がいい食材です。それぞれ黒アルミホイルで包んだり鍋に入れてソーラークッカーへセット。あとは普段通り、家事や仕事をしながら午前中を過ごします。

野菜を洗って表面についてる水ごと黒アルミホイルまたはお鍋へ。

1〜2時間後、すっかり火の通った野菜を取り出したら、お昼に使う分を残して、あとは保存しておきましょう。ズッキーニを適度にスライスして、好きなソースと一緒に茹でた麺に絡めたら、もうお昼のパスタが完成です。

もう少し時間がある時は、各野菜を同じ位のサイズにカットしておけば、好きな時に色んなお料理に使えます。塩こしょうでラタトゥユ、ビネガーを加えてカポナータ風、バジルソースで軽く炒めてバジル炒め、チーズを乗っけてトースターで焼くのもお手軽です。

夕食の準備だってもちろん昼間のうちに保存しておいた野菜を活かせます。茄子をスライスしたらフライパンで軽く焼き上げて、生姜醤油を掛ける。茹でた後でダシ汁に浸けて冷やしておいた浸し豆を取り分ける。玉ねぎと人参を水と一緒に温めてお味噌を溶かす。あとはご飯をよそうだけです。

もっと簡単な”ソーラー下ごしらえ”ならこちらをぜひ。お水を入れた鍋をソーラークッカーにセットして約1時間。沸騰前後まで熱したら、鍋ごと室内に移動させ、生卵を沈めて蓋をします。8分経過したら卵を取り出し、水で冷やせばトロトロの温泉卵が完成です。

刻んだトマトなど野菜と一緒にうどんの上に乗っけたら超クイックな食事に。

今のライフスタイルを大きく変えることなく、うまくソーラークッキングを取り入れると、先ほど挙げた難関は全く気にならなくなりました。むしろメリットを強調したくなるほどです。

・下ごしらえが一気に済んで自炊が楽になる
・太陽に任せてる間に仕事や用事ができる
・ガスの火を使う時間が短くて済む(夏場は特に助かる)
・素材の味が引き出されるようにおいしい(と感じる)

お鍋を火にかけながらリモート会議に参加するのは難しいですが、じっくりじわじわと加熱されるソーラークッキングなら、時間の感覚もおおらかになってくるから不思議です。慣れたらきっと、よく晴れた日に「何か焼かなきゃもったいない!」と感じてしまうかも。

ソーラークッカーは冬場でも晴天時に活躍してくれます。でもやはり、試しやすいのは暑い夏でしょう。今年は是非、自作ソーラークッカーで、フリーエネルギーの楽しさを暮らしに加えてみてください。

さらに以前こちらの記事で紹介した干し野菜も同じく太陽光にお任せした下ごしらえ。

ソーラークッキングの注意点

・火の入り方は日照条件や環境、ソーラークッカーによって様々です。炎天下の場合はかなり高温になるので、反射板の範囲に手を入れたりしないよう気をつけましょう。また、かなり眩しくなることもあるので必要であればサングラスなどで目元を守るなどの工夫をしましょう。

・高温になるので、着火の可能性となる油は使わないようにします。

・途中で太陽が陰ってきたり、開けてみたら「もう少し火入れしたい」と思った場合などは、ソーラークッキングした後で、ガスや電気をつかって調理を仕上げましょう。こだわりすぎることなく、おおらかに楽しむのが日常に取り入れるコツです。

現代を生きる私たちが、いきなりエネルギーを自給自足して生活することは難しいかもしれません。
それでも、今の生活スタイルに合わせてエネルギーを使用していくのか、使うエネルギーに合わせて生活スタイルを組み替えていくのかは選ぶことができます。

今回ご紹介したソーラークッキングは、楽しみながら気軽に日常に取り入れやすいアクションです。

こうしてつくったエネルギーを利用すると、日々簡単に電源に挿して使っている電気の大切さを改めて感じる事ができ、また、大切に使おうという気持ちも自然と生まれます。こうした小さなアクションがエネルギー問題の自分ごと化の第一歩でもあるのです。

「今日は天気が良いな。ソーラークッキングで何をつくろうかな?」
朝カーテンを開いてそんなことを考えながら1日をスタートするのもいいかもしれませんね。

(Text: 生団連)

– INFORMATION –

2月18日(土)開催
わたしたちの暮らしを守るエネルギーミニカンファレンス


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