『生きる、を耕す本』が完成!greenz peopleになるとプレゼント→

greenz people ロゴ

私たちは考えることを忘れていないか? 映画『Don’t Look Up』を観て、考えて対話することが社会の前進につながると気づく。

突然ですが、最近、あなたは何について”深く考え”ましたか?

分からないこと。
悩むこと。

私たちが生きることと深く考えることは、切り離せない関係にあると思います。一方で大量の情報が行き交い、それにアクセスする機会も増えた今、検索エンジンやSNSで調べることで解決してしまう、いや解決したような感覚を得てしまうことはないでしょうか?

とあるテレビ番組で、「どうしてマスクを着けているんですか?」と質問された高齢のおばあちゃんが、「みんなが着けているから。着けていないと怒られちゃうでしょ」と答えている様子を見て、ハッとしました。

マスクを着けるのは、他人の目を気にするから?
マスクで本当に感染拡大って防げるんだっけ?

「ニューノーマル」と言われる制約付きの生活。コロナ禍で人と会う機会は失われ、コミュニケーションツールは変化しつつあるように思います。一方、反マスク運動のようなデモは大袈裟に取り上げられるように、分断が起こりやすくなっている気がします。

分断は対話の欠如から生まれているのではないか。そんなことを感じる日々を送っていた中で出会った映画があります。それが今回ご紹介する『Don’t Look Up』です。

監督は気候変動に対する焦りから、社会風刺を込めて制作したのだそうですが、私はこの映画を通して、「情報があふれる時代に、自分の頭で考えて議論することの重要さ」に気づきました。

半年後に彗星が地球に衝突すると言われたらどうする?

『Don’t Look Up』は2021年にNetflixで先行公開された映画で、配信から1週間で視聴された回数は1億回以上。94ヶ国でNetflixのトップ10に入るなど、世界中で注目されています。Adam McKay(アダム・マッケイ)が監督をつとめ、社会問題に切り込む「ブラックSFコメディ」として製作された作品です。つまり、ドキュメンタリーでなくフィクションの世界ですが、現実に起きたら・・・と考えてしまう内容なのです。

物語の始まりは、天文学を学ぶ大学院生のケイト・ディビアスキーが、巨大な彗星が地球に向かっている軌道を発見したこと。彼女の担当教授であるランドール・ミンディ博士とともに、彗星が地球に衝突する日が半年後に迫っていることを突き止めます。地球を救うため、大統領に会いに行きミサイル(ミサイルなのか?)で彗星の軌道を逸らしてもらうよう説得したり、テレビに出演して国民に真実を訴えます。

しかし、政府は目先の利益を追求しようと行動を起こさず、国民もなかなか信じようとしませんでした。衝突の日が近づくにつれ、一部の国民は彗星の衝突を信じ始めます。そんなか、とある企業が最新鋭の技術で彗星を爆破する計画を実行することに。世界中の希望を背負って決行されるのですが…。

私たちはどう情報を咀嚼するべきか

コメディであるこの作品。観終えた感想として、手放しには笑えない部分もあり、心にモヤモヤが残りました。それは、映画に出てくる人々の情報の受け取り方が、今の自分に重なったからかもしれません。

他人の目を気にしてマスクを着けているおばあちゃんを見てハッとしたけど、私も「誰かが言ったこと」を信じて生活を送っているのではないか。

科学者たちが「彗星が衝突するのは明確である」と突き止めて真実を発信しているのに、スマホを通して受け取るメディアやSNSの意見に左右されて、信じようとしない人々。そして、地球の最終局面にありながらも、利益に夢中な企業や政治家たち。

はじめはデータに基づいた真実を伝えようとしていたランドール博士とケイトは、進展しない状況に対して感情を抑えることができなくなり、やがて自暴自棄の方向へといってしまいます。

もしも私が映画に登場するいち国民だったら、どう行動するのだろう。
どの情報が正しくて、どの情報が間違っていると、どうやって判断できるのだろう。

明確な“根拠”のある真実が、誰かの“主観的”な意見によって受け入れられない事態は、現実でも起きているのかもしれない。

ランドール博士やケイトが国民を動かすには、何をどれだけ示せていれば“根拠”と言えたのだろう。
ふたりに相反する意見を“主観的”と判断する基準とは。

深く考えることが止まらなくなりました。

「Don’t Look Up」という言葉は「見上げるな」だけではない

『Don’t Look Up』という言葉は、「見上げるな」「調べるな」と訳すことができます。私はこのタイトルに、彗星や宇宙で起きている異常事態を見上げるなということだけでなく、「調べて終わりにするな」というメッセージを感じるのです。

映画の中に出てくるほとんどの人々は、しっかり調べることをせず、彗星が向かってくる空をぎりぎりまで見上げようとしませんでした。調べるといっても、メディアやSNSを通して受け取った情報を鵜呑みにしてしまったことで、自分なりに考えたり、家族や友人と対話する様子もなかったのです。

待ったなしの地球の危機。私たちが暮らす2022年の地球を『Don’t Look Up』の舞台と比べたとき、それは遠い世界でしょうか。気になったことを深く考えて、調べて、対話することは、社会を変えるひとつの手段になるはずだと思うのです。

『Don’t Look Up』を観るのも観ないのも、あなたの心が決めることです。世界中で人気だから観るのではなく、一旦立ち止まって考えてみませんか?

『ドント・ルック・アップ』
監督:Adam McKay(アダム・マッケイ)
配給:Netflix
原題:「Don’t Look Up」/2021年/アメリカ/138分

[via Don’t Look Up, Don’t Look Up Instagram, Don’t Look Up Twitter, Unsplash]

[Top Photo: via Don’t Look Up Twitter]

– NEXT ACTION –

映画を観て考えることの大切さに気づいたら、考えるためのプラットフォーム「Count Us In」をのぞいてみては? 具体的にどんな行動を起こすべきか、さまざまな提案がありますよ。

(編集: スズキコウタ)