2021年7月11日から16日にかけて「シューマッハカレッジ体験リトリート@BROWN’S FIELDとオンラインプログラム2021」というイベントが開催されました。
一昨年までは、イギリスのシューマッハカレッジを訪ねるツアーが毎年開催されていましたが、昨年はコロナ禍でやむなく中止に。今年も現地に行くことは叶いませんでしたが、日中はいすみ市のBROWN’S FIELDが舞台のリトリート、夜はシューマッハカレッジの講師陣とつながるオンラインプログラムが開催されました。
プログラムの最後の2日間はサティシュ・クマール(Satish Kumar)とオンラインで対面し、参加者それぞれが持つさまざまな悩みや疑問を投げかける時間がつくられました。そのなかで交わされた、興味深い質問とそれに対するサティシュの答えをのぞいてみましょう。
サティシュ・クマール(Satish Kumar)
思想家/社会活動家、1936年インドに生まれる。インド独立の父であるマハトマ・ガンディーの非暴力と自立に根ざした思想に共鳴し、自然や人への愛をもって核廃絶を訴える1万4千キロの平和巡礼を行う。『スモール・イズ・ビューティフル —人間中心の経済学—』の著者として知られる経済学者E・F・シューマッハーとの出会いから、1973年に英国定住。それ以来、社会変革エコロジー雑誌『リサージェンス(再生)』の編集長を務める。またE・F・シューマッハーの思想を引き継ぎ、東洋と西洋の知が混じり合う先駆的な学びの場として、大学院大学「シューマッハー・カレッジ」を創設。本質を捉えた言説とユーモアある優しい語り口から世界中の人から愛されている。
サティシュ 私が怒りだとか不安だとか、落ち着かなさを感じたときは、まず自分の家から出て行って、庭に向かったり、近くの川に行ったり、森の中に入っていって、まず深く深呼吸しながら美しい景色を身体に取り入れて、そしてだんだん落ち着く状態をつくっていきます。
何かトラブルがあったり、誰かが不信感だったり怒りや不安を感じてるときに、問題について話すのではなくて、まず一杯のお茶をしませんかとお誘いしてみたらどうでしょう。
一杯のお茶は平和のお茶であって、愛のお茶であってそのお茶を飲んで、翌日まだその人の怒りや不安がまだあるようだったら、綺麗なお花のブーケを備えてあげたり、手書きのカードでほんとにその人の健やかさや喜びを願うようなメッセージを書いたり。とにかく怒りや不安がそのひとの中にあるときには問題について話すのではなく、それはまた後で話せばいい。まずはただただ愛を注いでみることです。
そして私は奥さんのジュン(June Mitchell)と結婚して50年間になりますが、ふたりの中で何かうまくいかないときには、素敵なカードを書いたり、お花を彼女に渡したり、お茶をしたり。そしてお茶をするときも、お茶だけでなくて美味しいちょっとしたスイーツを用意する。そんな時間を共にすることが、パートナーであるふたりの関係性、あるいは同僚やコミュニティのメンバーとの関係性を養ってくれます。
内なる生態系(inner ecology)を養うためのふたつの大切な要素が、信頼と謙虚さ(humility)。人間(human)の語源は土(humus)の語源と同じで、さらに謙虚さ(humility)、全部がhumという同じもので、私たちは土から謙虚さを学ぶのです。
土は私たちの頭の上にあることはなくて、いつも私たちは踏みつけるものですよね。だけど、いつでも私たちを受け入れてくれます。そしてその同じいつも踏みつけている土に種を植えると、何千というリンゴや柿の実がなる。ものすごく寛大だと思うのです。
私たちは土からその謙虚さを学ぶこと、そして何か誰かが傷ついているようだったら「私はあなたのことを愛しているので、何か私はあなたのためにできるだろう」と声をかける。たとえば筋肉痛とか怪我をしたときに鎮痛剤を使うように、私たちが謙虚さと優しさを差し出すことで、その人の痛みをいやすことができます。
(通訳: ソーヤー海)
(編集: Shiori Shiraga、スズキコウタ)
– INFORMATION –
greenz.jpでもおなじみ、辻信一さんが訳を手掛けたサティシュさんの単行本が発売になります! http://namakemono.shop-pro.jp/?pid=164559177
サティシュ・クマールからのメッセージが詰まった『サティシュの学校 みんな、特別なアーティスト』も上映作品です。https://greenzcinema2021.peatix.com/