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熱き60年代、革命の息吹を今へ。映画『アクロス・ザ・ユニバース 』レビュー

1960年代、激動の時代。ベトナム戦争がはじまり、米ソが宇宙を目指し、中国では文化大革命、日本でも学生運動や安保闘争、そしてアメリカではケネディ大統領やキング牧師が暗殺された時代です。

国や政治といった巨大なアイデンティティが激しく動くとき、翻弄されるのは小さなアイデンティティである市井の人々、つまりわたしたち。自分が生まれる前の社会を知ることが未来のためだとすれば、60年代から学ぶことはまだまだあるように思えてなりません。

2007年に公開された映画『アクロス・ザ・ユニバース』を観ていると、現代とは比べものにならないほどに熱く、鋭く、真剣だった「情熱」がそこかしこにあった空気が想像できます。それは社会活動に限らず、個々人の自己探求においても情熱的、まさに生きることに真剣だった時代。だからこそ60年代には多くの文化も誕生したのでしょう。

映画のために編曲された33曲におよぶザ・ビートルズの名曲によってミュージカル的な要素を含むものの、実際の時代の流れと見事に調和しているせいか、他のミュージカル映画とも、過去のビートルズ関連映画とも一線を画しています。

カオスな世界観も60年代の大事なファクターであり、いまに続く多様性の本質を探訪した過程。ですが、あくまでも軸はこの時代を生きた「個」の存在にあります。もしも、自分の情熱にもの足りなさを感じることがあれば、熱く駆け抜けた人々に気持ちを重ねて、60年代の息吹を味わってみてください。

映画『アクロス・ザ・ユニバース』
2007年製作/133分/アメリカ
原題:Across The Universe