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文章を書くのは苦手。それでも書く作業が続けられる理由。

こんにちは、グリーンズの狩野哲也です。

学生時代に漠然と本を書く人になりたくて、大学4回生の頃に「しごと情報誌の編集部」で編集補助のアルバイトをはじめました。大学卒業後からはフリーランスの編集者兼ライターとして活動しています。

2004年ごろの狩野。当時の体重は現在のマイナス15kgでした

仕事をはじめた当初は記事の見出しをつけるのが苦手で、「BRUTUS」や「日経ウーマン」「Seventeen」など、今でも長く続く雑誌を古本屋で大量に買い、記事の見出しやリード文を書き写して勉強していました。

ライターや編集者の仕事の魅力は企画が通れば自分が気になる人に直接話が聴けること。週刊誌の締切に追われながら、さまざな職種のプロフェッショナルや芸能人、スポーツ選手など手当たり次第にインタビューしていました。

仕事以外の時間も知らない世界の話を聴くのが好きになりました。当時住んでいた大阪市北区の自宅の近くにあったコモンカフェで、2004年から2010年までの6年間、3〜4ヶ月に一度のペースで開催されていたイベント「けんちくの手帖」に関わっていました。

大阪・中崎町にあるコモンカフェで開催されていた「けんちくの手帖」の様子。まちに関わるきっかけになった

「けんちくの手帖」はまちで面白い活動をしている人をゲストに呼ぶイベントです。運営メンバーは建築家の吉永健一さん、コミュニティデザイナーの山崎亮さん、西上ありささんたち。

2018年に開催した「けんちくの手帖」座談会の山崎亮さんの言葉「自分たちが何者かを示すために、中身がないと本はつくれない。中身をつくる活動をしている」から「今までの蓄積を本にしなくては」と強く思いました

「けんちくの手帖」などコモンカフェで出会った人たちから刺激を受けて、自分のプロジェクトとして出張文化講座「サロン文化大学」を2008年から主宰しています。こちらもさまざまなジャンルの面白い人をゲストに呼んで公開インタビューをするようなイベントです。

「サロン文化大学」の様子。写真は奈良県立図書情報館との共催企画で、地域と自分とのつながりを考えるフォーラム「ローカルブックレヴュー&クロストーク」シリーズを4回開催しました

「けんちくの手帖」や「サロン文化大学」などの活動によって、雑誌の仕事がメインだった自分の「編集」の領域が、「まちづくりのコーディネート」や「企業、自治体、NPOなどの情報発信のお手伝い」など、「広義の編集」に拡張されていきました。

書くための取り組み方を変えたら、文章を書く苦痛が減った

オンもオフも「インタビュー」が楽しくて編集者兼ライターを続けていますが、恥ずかしながら書く作業はずっと苦手です。

「じゃあなんでライターをしているんだ?」と疑問に思われるかもしれません。それはライターがその名のとおり「書く人」のイメージだからだと思いますが、実際の作業を大雑把に分解すると、

・調べる
・聴く
・書く

に分類され、「調べる」「聴く」は好きな作業なのです。しかし「書く」作業は苦手。特に苦手なのは「知り得た情報をどういう順番で伝えれば読者に伝わりやすいか」を考えることです。

仕事をはじめた当初はインタビューした内容を最初から最後まで文字おこしして、聴いた内容をそのまま読みやすく整えてから順番を入れ替えながら書いていました。この方法は自分の場合、主に文字おこしに時間がかかります。雑誌をつくっていた頃は毎週締切がやってくる週刊誌を担当していたので、夜中まで執筆作業に追われていました。

その状況が少し変わったのは某企業の社長をインタビューをするための事前打合せがきっかけでした。広報担当者いわく、社長はおしゃべりで話が逸れてしまいがち。「話の脱線を防ぐために」と先に骨子(構成)を予想してからインタビューに望もうとなったわけです。今考えると編集者としては当たり前のことですが、眼から鱗でした。

以来、骨子を考えてから書くと記事が読みやすくなり、何より記事のゴールが明確になり、一から文字おこしすることもなくなり、必要な箇所だけ確認する程度になりました。何より最も大事な読者を引きつけるための伝え方を考える余裕も生まれました。

自分の文章が、誰かの背中を押しているとわかった

相変わらず書くのは苦手ですが、昨年は自分の著書を出版するまで成長しました。タイトルは『まちのファンをつくる 自治体ウェブ発信テキスト』(学芸出版社)。この本は、自治体ウェブ発信の基本知識やアイデアを全国の事例から丁寧に解説した本です。

2020年8月1日に出版。現在は拙著の続きをFacebookの公開グループページで書いています

100の国内外のまちの事例が掲載されているので「そんなにたくさん調べるなんてすごい!」と驚かれるのですが、実際は「調べる」「聴く」までの作業は楽しく、相変わらず書く作業がたいへんでした。特に誰かの言葉を代弁するようなライターや編集者の仕事とは違って、著者として「なぜこれを伝えたいのか」を言語化する作業に苦労しました。

書籍の場合も本全体の骨子となる目次が大事で、印刷するまでの間は何度も目次の順番を入れ替えました。伝える順番は永遠の課題で、書店に行けば本の目次が気になるようになりました。目次は著者と編集者の涙の結晶だと言えます。

編集担当の岩切江津子さんとは山崎亮さんの事務所studio-Lで知り合い、拙著ではコミュニティデザインに触れているので山崎さんに本の帯を依頼しました

本のタイトルも試行錯誤しました。最後の最後に考えた、副題の「まちのファンをつくる」が読者に刺さっていることが出版後にSNSでわかり、現在は副題をハッシュタグにしてプロモーション展開しています。

本に注目してくれた人からコメントやメッセージをいただきました。例えば拙著をblogで取り上げてくれた地方公務員ブロガー 納翔一郎さんと直接お会いした際に「この本、武器になります! 職場用と自宅用に2冊書いました!」と声をかけてもらったり。自分の文章が誰かの背中を押しているんだと気づきました。

そもそも漠然と本を書く人になりたかったのは、自分もたくさんの本に助けてもらったからです。ずっと書く仕事をやってこれたのは、苦手ながらも書いて伝えることと向き合うことで、誰かの背中を押す経験を積み上げてこれたからでした。

そんなわけで「ぜんぜん上手に文章が書けない」という方、ご安心ください。少なくともずっと文章が苦手な狩野のようなライターもいますから。作文の教室でお会いしましょう

– INFORMATION –

狩野哲也さんもゲスト参加! 15周年、7000本突破間近のgreenz.jpがためてきたノウハウを伝授する「作文の教室(実践編)第9期」

greenz.jp副編集長のスズキコウタが主宰する「作文の教室」(実践編)は、創刊2006年のウェブマガジン「greenz.jp」が大切にしてきたノウハウをもとに、作文力=執筆力+編集観察力を伸ばすことができる実践的なオンラインクラスです。
講師: スズキコウタ、宮田晴香さん、丸原孝紀さん、東善仁さん、狩野哲也さん、廣畑七絵さん、greenz challengers community
https://school.greenz.jp/class/sakubun_2021_04/