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いろんな立場の人と肩を組んでジャンプするような変化を、森から生み出したい。INA VALLEY FOREST COLLEGE妄想焚火トーク@伊那谷

「森に関わる100の仕事をつくる」という掛け声のもと、長野県伊那市をフィールドにスタートした「INA VALLEY FOREST COLLEGE」。新型コロナウイルス感染拡大のため、オンライン形式で行われた第1期には、50名の参加枠に対し、200人を超える応募が殺到。急遽、講座のアーカイブ視聴のみのオブザーバー枠を追加するほどの人気講座となりました。

第1期のカリキュラムを終えた今、そこで見えてきた森の新たな可能性や課題、そしてこれからの展望について、山側、街側、そして運営側で焚火を囲みながら熱いトークを展開しました。

(INA VALLEY FOREST COLLEGE開講への想いを語っていただいた対談記事はこちら

山側からは、柳沢林業の社長であり、一般社団法人ソマミチの代表でもある原薫さん。街側からは、日建設計 Nikken Wood Labの大庭拓也さん。そして運営側からは、やまとわの代表取締役で木工職人の中村博さん、INA VALLEY FOREST COLLEGE事務局の奥田悠史さんが参加。

2月の下旬、やまとわオフィスそばの森はまだ雪が残っていましたが、伊那谷の檜と松をくべた焚火のまわりはポッカポカ。森の恵みを実感しながら話は弾みました。

早くも具体的なアクションが生まれた、INA VALLEY FOREST COLLEGE第1期

INA VALLEY FOREST COLLEGE(以下、FOREST COLLEGE)は、教育、まちづくり、建築、など様々な分野のプロフェッショナルが講師として登壇し、新しい切り口から森の価値を知る講座です。

第1期に参加した50名の受講生の構成は、山側と街側のバランスを考えて選抜。木こりや製材卸の人と、IT企業で働く人やデザイナーなどが一緒に森のことを学び、森での新しい仕事について考えるというユニークなコミュニティとなりました。

FOREST COLLEGEをはじめてみて、どんな気づきがあったのか、企画運営に携わったお二人に聞きました。

奥田さん 山にいる側からは「いらない」と思われてきたものが、実は価値があるんじゃないかということに、受講生や地域プレイヤーを含めて、みんなで気づけたというのは大きいですね。森の課題感と可能性を共有できるようになったことで、言葉だけではなく実行レベルで連携する動きが早くも生まれつつあることには驚いています。

FOREST COLLEGE事務局の奥田悠史さん

講座は全6回。回を重ねるごとに参加者の森への想いと知識が高まっていき、「これとこれとを組み合わせたらもっと面白くなるんじゃないか」というようなアイデアが出てきているといいます。

中村さん 最初は「勉強したい」と参加しはじめた人が多かったんですけど、それが講座の終わりごろには「行動しよう」に変わってきているんですよね。それがすごく面白い。ファシリテーションする側が用意するまでもなく、参加者の方が自分たちで次のフェーズに移り始めているんですから。

やまとわの代表取締役で木工職人の中村博さん

山側の人と街側の人がともに学び、考えることで、双方にはっきりとした変化が見られるようになったそうです。

奥田さん 山側の人たちは、街側の人たちが面白がると「じゃあやってみようか」と、新しいことにチャレンジする気持ちになったようです。街側の人たちも、「森のことをやるなら田舎にいかなくちゃいけない」と考えがちだったのが、「田舎の人たちとつながれば都会でもできることがある」ということに気づきはじめたところは面白かったですね。

街から、山から、それぞれ見えてくる、深い深い森の問題

FOREST COLLEGEによって、新たな価値が発掘されそうな予感に満ちた森。しかしそこには、まだまだ解決しなければならない課題もたくさんあります。

国策として木材の利用が推進されたりSDGsが注目されたりしていることもあり、木材の需要が高まっている印象がありますが、その流れは森が抱える問題の解決に本当につながっているのでしょうか。

日建設計 Nikken Wood Labの大庭拓也さん

大庭さん 都市部で木質建築の設計に携わっていて、思うところがあります。今「とにかく木を使おう」という前向きな大号令がかかっていますが、大規模な建築物となると相当な量の材木を使うので、自分の設計や作法が本当に山や林業のためになっているのだろうかと疑問に思うことがあるんです。そういう視点で、僕らのように木を都市で使う側が山のことをちゃんと知って、その正しい関わり方や活用方法をもっともっと勉強しないといけないなと感じています。

中村さん 建築で使う長尺のいいところだけをほしいと言われても無理だっていうことは、山に入ってみればすぐわかると思うんですよね。この周りの木を見てもらうだけでもわかるでしょう。針葉樹の森といっても、まっすぐで太い木はどれだけあるのかという話ですよ。政策をつくる人や設計に携わる人には、ぜひ山に来て、自然な木を見てもらいたいですね。

原さん 一山の木を伐ると、曲がった部分や細かい部分がたくさん出てくる中で「このサイズだけ大量にほしい」と言われても、そこは難しいんですよね。いいとこだけたくさんほしいと言われても、正直困る。全部を使うということができてはじめて、木材も本当の意味で適正な値段になるのではないでしょうか。

柳沢林業社長で一般社団法人ソマミチの代表も務める原薫さん

大庭さん 「中大規模の木造建築は高い」と言われがちですが、木材そのものではないところにお金がかかっているケースがあります。防火性能などを確保するために特殊な処理が必要だったり、大規模建築で使う接合のための金物にお金がかかったりするケースが多く、その結果、中大規模の木造建築はコストが高くなっているのが現状です。

原さん 私も「地域材はどうしてそんなに高いの」と言われることがありますね。木材は加工から流通までのプロセスがとにかく複雑になってしまっているんですけど、なぜそうなってしまっているかも、山に来てもらえば理解していただけるところがあると思います。

大庭さん 中大規模の建築材料として使える木材はJAS認定品が基本となるために、地域材を多くそれらに活用するには「大きな」設備投資やサプライチェーンの構築が必要です。中大規模建築の材料として使うのと同時に、地域の産業や材料のことを知った上で、より身近に地域材を「小さく」使う流れを面的に拡げていく試みも必要なのではと思っています。

あらゆる地域で、もっと手軽に木を使う動きをつくりたい。そんな想いで大庭さんが所属する日建設計内の組織、Nikken Wood Labが発案したのが、「つな木」という製品です。特殊な木材ではなく、日本の地域において一般的に流通する木材を使って誰もが簡単にベンチや屋台を組み立てることができるという木質ユニットです。

汎用性のある材木とシンプルな金具で、簡単に自由な使い方ができる「つな木」

大庭さん たとえば地域の製材所とキャンプ場とのコラボレーションや、お祭りなどの地域行事とのつながりといった営みが、「つな木」を通して日本のあちこちで広がるといいなあと思っています。森と、木を使う人たちがカジュアルに日常的につながるツールとしてオープンに広がっていけば、暮らしや遊びから森林の循環利用が当たり前になっていく。そんな展開を育てていきたいなと。

木材の流通が複雑になり、森と暮らしが遠くなっている状況を変えていこうと動き出しているのが、原さんが代表として活動する「一般社団法人ソマミチ」です。ソマミチでは、林業、木材業、加工・流通業、建築・設計業、まちづくりの専門家などが集い、山の恵みを大切に受け取る暮らしづくりをめざしています。

原さん 木材の流通というテーマだと大きすぎますし、変えようとしても難しいところがあります。ソマミチでは、まずは小さくとも、自分たちで胸を張れるような流れをつくって、それを知ってもらいたいと思っています。森の仕事に携わる人も、木を使う人も、ともに森の恵みを大切に想えるような暮らしをつくっていきたいですね。

自然と一体になる「自然(じねん)的ライフスタイル」をめざす、ソマミチのメンバー

とにかく国産材、地域材を使えばよいということではなく、私たちはもっと地域の森の現状を知ったうえで使い方を考えなければいけないのですね。暮らしの中にあふれている木のことを、私たちは知らなすぎるのかもしれません。

中村さん 先ほど木に特殊な処理をするとか、金物を使って大規模な建築をつくるとかいう話が出ましたが、そこにそもそも、木ならではの良さを活かす、味わうという視点はあるのか疑問に思いますね。

木を使ってきて思うんですよ。時とともに色や風合いが変わるのが面白いなあとか、腐っていく様すら美しいなあとか。自然に逆らうんじゃなくて、自然のほうに人間が合わせることを、木が教えてくれるような気がするんです。

原さん 日本はどうしたって、地震や台風といった災害が絶え間なく起こるじゃないですか。昔の人はそれを受け入れて、どう暮らすかを考えていたと思うんですよね。伊勢神宮が20年で遷宮するのにはやっぱり意味があるわけで。

今の建築って、明治維新後にヨーロッパの考え方が採用され、剛性を高めることを大事にしていますよね。でも、時の流れや災害に逆らわず、いずれ壊れる、腐ることを前提に建物をつくるというのが、大地が動き、台風が襲来し、湿度の高い日本では自然なことなんだ思います。より安全に、安全にと建物を固めていく方向を追求していったしわ寄せが、山に来ているような気がします。

奥田さん FOREST COLLEGE第1回「森とものづくり」に登壇いただいたKITOKURASの丸尾有記さんの話を思い出しました。丸尾さんは木の持ち味を生かした家具や小物を届けることは、工業との戦いだとおっしゃっていたんですよね。同じ品質で、安心・安全というものの対極にあるのが木質だと。大切なのは、工業と共存する価値をどう伝えるか、というところなんですよね。

焚火を見ながら森の未来を見ているかのような笑顔があふれます

社会のあり方すらも変えてしまう森をつくろう、立場を超えて

簡単には解きほぐすことができない、森をめぐる問題。なかなか一筋縄にはいきませんが、私たちには何ができるのでしょうか。FOREST COLLEGEの今後の展開を見据えながら、話はさらに弾んでいきました。薪をどんどんくべながら、燃える焚火を囲むトークは深まっていきます。

奥田さん 便利で簡単、安心をマーケティングで追い求めた結果が、今、社会のあちこちでひずみをもたらしていますよね。そのひずみを最も受けているのが、一次産業です。もはや、マーケティング一辺倒では、望ましい社会はつくれないんじゃないでしょうか。今、僕らがやらないといけないのは文化づくりです。持続可能性や、顔の見える関係を志向する文化を提案していきたいですね。

原さん 人間のわがままを顧客満足度という言葉でどんどん加速させていったしわ寄せが一次産業とか、山の方にきてしまっています。お客さまに喜んでもらうという視点は大事ですけど、そっちに偏りすぎていますよね。それはやっぱり、自分たちが自然の一部なんだっていう感覚を忘れてしまっているからだと思うんですよ。みんなでもっと自然を知って感覚を取り戻していけばたぶん、買ってくださいって言わなくても自然と選ぶ基準が変わっていくのではないでしょうか。

中村さん 現代社会のスピードは速すぎますからね。都会で生きていると、立ち止まることも許されない。自分も自然の一部なんだとか考えている余裕はないんじゃないですかね。だからとにかく、田舎に足を運んでほしいですね。しばらく過ごしていると感覚が変わってきますし、1か月もいたら生き方すら考え直そうという気持ちになりますよ。


焚火トークのあとは、やまとわの工房を見学。思わずみなさん真剣な眼差しに

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、都市での暮らしを見直す動きがあります。この変化は、森と私たちの関係をどう変えていくのでしょうか。

大庭さん 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために都市ではテレワークが進みましたけど、会社にいなくても仕事ができるとなると、住む場所を考え直す人が増えていますよね。そうなると地方に分散していく動きも広がるでしょうし、都市の建物に求められるものも変わってきます。高い建物の代わりに都市においても自然に触れられる場がほしいとか。都市の人が、地域の人とつながる機会も増えると思います。その間をつなぐツールとして、地域材を使った「つな木」がハブになるといいなあなんて妄想しています。

奥田さん 新型コロナウイルスの影響はもちろんなんですけど、大都市に人口が偏りすぎているというのはエネルギー消費的にも問題なので、ある程度は地域に人は分散していくとは思うんですよ。でも、地方には仕事がなさすぎるので、今のままだと限界があります。

森とか木とかの話になると、今はとにかく都会での利用や消費を促進する話が進みがちですけど、地域の資源を使って、地域で新しい、面白い仕事を増やしていくことこそ大事だと思うんですね。

FOREST COLLEGEが「森に関わる100の仕事をつくる」という言葉を掲げているのはそういう思いがあるからなんです。

原さん 補助金でなんとかするんじゃなくて、ちゃんと山を生かしきってビジネスが成り立つような動きをつくっていきたいですね。そして忘れてはいけないのは、ビジネスになる部分と、ビジネスにしてはいけない部分をわきまえておくこと。木を使うのはいいことだけど、使うことばっかりだと、はげ山ばかりになりかねませんからね。

森や木に夢中な人たちだけがハマる笑いのツボがどうやらあるらしい(笑)

中村さん これからのことを考えると、FOREST COLLEGEを通じて、これまで森に来なかったような人にはものすごく期待していますね。木の業界にいる人だけで考えても何も変わらないじゃないですか。全然違う業界の人が山のことを知って、まわりに学んだことを話す。そうやって森の価値が広がっていく感じがワクワクしますね。

原さん 参加する人が、自分でできること、やりたいことを探していける場になるといいですね。森のことを知らなかった人が、ここで何かを体験して、そこから生まれるものを森で仕事をしてきた人といっしょに育てていく。私たちが想像もしていなかったような価値が生み出されることを期待しています。

奥田さん FOREST COLLEGEでは、第1期で早くも、「一人ではできないから、仲間でやろう」という空気が生まれています。コロナの影響でオンライン開催ばっかりになってしまったのでそこまでは行けないだろうと思っていたんですけど、企画を立てて実行しようというプロジェクトも走り出しています。

将来的には、森全体を俯瞰視点で見て、バランスよく森を使って持続可能な地域をつくっていけるディレクターのような人が、伊那谷から出てくるといいですね。いろんな人が立場を超えて肩を組んでジャンプするような感じの変化を生み出していきたいです。

チリチリと薪が燃える音も、心を癒してくれる最高のBGMでした。

FOREST COLLEGE第1期の振り返りから、森がいま抱える問題、そして、いつしか妄想トークに…。焚火の魔力で日が暮れるまで延々と続いたディープな森トーク、いかがでしたか?

私自身もオブザーバー枠でFOFEST COLLEGEに参加しました。地域の製材所の方や地域材を使う建築士の方、教育関係の方などの講義を通してさまざまな視点から森のことを知れば知るほど、森の計り知れなさ、奥深さを感じるようになりました。その一方で、大切だなあという思いも募ります。いつしか、まるで恋するように、森の虜になってしまったのです。

ぜひみなさんにも、これからも続くFOREST COLLEGEを受講して、森の虜になってほしいと思います。そして、いつか伊那谷の森で深呼吸してほしいですね。

(撮影: 秋山まどか)