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取り残された果実を救う。柿を醸して自作する「柿酢」のつくり方

秋が来ると、こういう光景を見かけませんか。
秋晴れの澄んだブルーの空を背景に、鮮やかな柿の実がたわわに実り、言葉通り「実りの秋」そのもの、自然の豊かさを感じさせますよね。

ところが、数日後も数週間後も、木についたままいっこうに収穫される様子がない柿。鳥に食べられたり、熟しすぎて道に落ちてしまっているのを見るとつい「もったいない」という気持ちが否定できません。場所が違えば同じ時にお金を出して柿を買っている人もいるわけで、なんとかこういうのがシェアし合えたらいいなぁと思ってしまうのです。

ちなみに柿は栄養効果が高く、特にビタミンCが豊富なので、風邪の予防や乾燥対策など、寒くなる季節にしっかり取り入れたい果物。高血圧予防や二日酔いにも良いといわれています。

もしもご近所にこんな光景があったら、勇気を出して「収穫されないのですか?」と聞いてみるのも良いかもしれません。もしかしたら木のオーナーがご高齢でお手伝いを待っていたとか、たくさんあって食べきれないとか、貰ってくれるなら嬉しいという方もいることでしょう。

皮を剥いてそのまま食べるもヨシ、フライパンやトースターで焼くもヨシ、葉物と一緒にフルーツサラダや焼き菓子づくりにも、といろんな食べ方ができますが、もしもたくさん柿が手に入ったら、柿以外の材料が必要なく、何年間も保存できて、体にも良い「柿酢」をつくってみましょう。

お酢を知ろう
醸造酢・果実酢

柿酢は読んで字のごとく、柿でつくるお酢、一種の果実酢です。お酢と呼ばれるものは、穀物や果物を発酵させてつくる「醸造酢」と、合成物質でつくる液体調味料の「合成酢」に分けられ、「醸造酢」の中でも果実の搾汁を用いるのが「果実酢」です。もしかしたらリンゴ酢やブドウ酢などをお店で見たことがある人もいるかもしれません。それを柿でつくるのが柿酢です。

つくり方は、お砂糖や酢や酒などに漬けたりもせず、柿の果実だけでつくれます。柿そのものに含まれた糖質を使って発酵するため果実のまま食べるよりもカロリーは下がります。また、アミノ酸と酢酸は体に取り入れる代謝も助けるんだそう。ツンとくるお酢が苦手、という方も果実酢なら大丈夫なことがあります。

用意するのは
保存容器と柿だけ

柿酢にするなら甘柿でも渋柿でもOK。また、潰しやすくて仕込みやすいのは熟した柿ですが、まだ若い柿から仕込んでも大丈夫です。自分にとって管理しやすいサイズの果実酒用などの瓶を用意し、容器に入る量(とはいえ多くても瓶の8割前後が目安)の柿を用意しましょう。少なくてもつくれますので初めは無理のない量にすることをお勧めします。

瓶を熱湯で煮沸消毒したら、柿は皮をむかず、サッとホコリを取る程度に洗って水気を拭き取り、ヘタ部分を外します。この時、痛んでる部分などがある場合は切り除いておきます。果皮に酵母が付いていますので皮はむかずに皮ごと潰すのが重要です。

柿を瓶に入れ、まだ固ければ蓋をして熟成させますが、すでに熟成した柿でつくる場合は木ベラなどで軽く押して潰し、液状にしておきます。

仕込みはこれで完了です。また、発酵過程の途中で柿を追加しても大丈夫です。

フタをしっかり
常温で混ぜること

発酵には空気がほしいのですが、熟成途中で虫が入るのを防ぐために瓶の口は細かいネットやキッチンペーパー、2〜3重にした晒し布などを掛けて輪ゴムでしっかり蓋をし、常温管理します。

翌日から1日1〜2回ゴムベラなどでかき混ぜて柿を崩していきます。熟した柿でつくれば1〜2日でぶくぶくと泡と水分が出て発酵しているのを感じるはず。日増しにアルコールっぽい香りがし出し、数日すると少しずつお酢っぽい香りに変わっていきます。スプーンで一口舐めてみると、初めは”柿っぽい味のするお水”の状態で、お酢の酸味は感じないと思いますが、変化していく味も楽しんでください。毎日1回はかき混ぜることをお忘れなく。

3〜4週間するとすっかり分離し、味もお酢になっていきます。もしも表面に白く薄い膜のようなものが出たら、それはカビではなく産膜酵母(さんまくこうぼ)といって害があるものではありません。ただ、増えていくと風味が損なわれやすくなるので、見つけたら取り除くか、少なければ混ぜ込んで大丈夫です。

濾して絞って熟成へ

1ヶ月ほどして味が十分にお酢になったら、こして液体だけにします。初めは細かいザルなどでこして、次に布を使って軽く絞るようにするなど、時間を掛けて3〜4回こすと使いやすくなります。初めは不透明ですが、こした後も熟成は続き、徐々に色は透明さのある柿色に、味もまろやかにと変化していくのも自家製発酵食品の醍醐味だと思います。適度な容器に移し、冷暗所か冷蔵庫で保管しましょう。

我が家の柿酢。左は2年目になった2018年製、右は2016年製で4年経過。

使い方も自由

でき上がった柿酢はお酢として使えます。もしも普段あまりお酢を使わない、もしくは、ちょっと苦手、という方には、簡単で使いやすいこんな活用はどうでしょうか。

・お湯や炭酸水などで割って飲む
・スライスしたトマトを30分ほど漬けて速攻ピクルスに
・刻んだカブや大根に、柿酢とお砂糖とゴマでなますに
・塩とオリーブオイルでサラダのドレッシング
・はちみつと一緒にヨーグルトソースに
・みりんと合わせてからご飯にかけて酢飯

など。慣れたら自分らしくクリエイティブに活用しちゃってください。

材料が柿だけで、それも、もしかしたら取られず落ちてたかもしれない柿を救えて、さらに、つくる工程も”自分の手で”つくるということを実感できるのが柿酢づくりの良さです。また、身近にある果実の栄養を見直したり、お酢を生活に取り入れる発見も新鮮かもしれませんね。