一人ひとりの暮らしから社会を変える仲間「greenz people」募集中!→

greenz people ロゴ

食品ロスが減らない「もったいない」現状。映画『もったいないキッチン』アンバサダー・伊勢谷友介さんが考える解決の鍵は、”考えない快適さ”に慣れないこと。

おいしいご飯って、幸せですよね。

おいしいものを一緒に食べることで築ける関係もあるし、いろいろな悩みを解決する力もあると思います。
そんな喜びの塊であるおいしいものを「ゴミ箱に捨てたい」と思う人は、ほとんどいないでしょう。

でも、実は捨てているんです。
私もあなたも、日本で暮らす全員が、毎日お茶碗1膳分ほどの食事を捨てています。

あなたの気持ち、わかります。ちょっと困惑というか、憤りますよね。しかしこれは残念ながら事実。衝撃的ですが、一緒に現実を見つめてみましょう。

「もったいない」の国で進む
もったいない現状に向き合う人たち

国内の食品ロスは643万トン(平成28年度推計)。これを現在の日本の人口に換算すると、1人が出す食品ロスは年間約51キロにもなり、さらに日割りすると139g。大体おにぎり1個分に相当する量の食べ物を日本国民全員が毎日捨てていることになるのです。

一方で、厚生労働省による国民生活基準調査によれば、現在日本人の7人に1人は貧困状態にあるそうです。この深刻な社会課題と合わせると、食品ロス解決として早急に、何らかの解決策が必要だと思わせられます。

すでに世界的な言葉となった「もったいない」の国である日本が、なぜこんなことになっているのか?

その疑問を解決するために立ち上がったのは、映像の力で様々な社会課題を伝え問い続ける「ユナイテッドピープル株式会社」でした。

同社は2017年、映画『0円キッチン』を配給。オーストリア人の”食材救出人”David Gross(ダーヴィド・グロスさん)を通して、世界の食品ロス問題をキャッチーに、しかし確実な影響力をもって伝えてくれました。そして今回、再びダーヴィドさんとタッグを組み、日本を舞台にした続編『もったいないキッチン』を製作したのです。

今回は、映画の見どころと、本作のアンバサダーである俳優・伊勢谷友介さんのコメントをお届けします。

食品ロスを救う4週間の旅

日本に映画の舞台を移したダーヴィドさんと、各地のシェフや生産者、活動家とのコミュニケーションをサポートするのは塚本ニキさん。彼女はただ通訳するだけでなく、日本独自の文化や精神性など、微妙な背景をダーヴィドさんにわかりやすく説明します。

心強い旅のパートナーのおかげで、バランスを崩してしまった日本の「もったいない」実情を理解したダーヴィドさんは、前作に増した行動力を発揮。4週間で15箇所、1600kmに及ぶ旅を2人と一緒にしているかのように映画は進みます。

2人が訪れる先には、「もったいない」と感じる気持ちを積極的な行動に変えた、様々な人たちが登場します。彼らはみんな、いきいきと手を動かし、楽しそうに食べる。本作の大きな見どころのひとつはこうした、日本各地の心ある実践者たちの姿です。

なかには過去グリーンズに登場してくださった方々も登場されていました。たとえば東京・緑泉寺の青江覚峰住職は、無駄を出さない精進料理を披露し、鳥取・智頭町のパン屋さん「タルマーリー」渡邉格さんは、パンづくりとビール仕込みがいかに地域社会と関係しているかを説いています。

他のみなさんもそれぞれが個性豊かで魅力的。個人的には、京都・綾部市で野草をおいしくする”若杉ばあちゃん”こと、若杉友子さんの元気なお姿に感銘を受けました。

(C)UNITED PEOPLE

また本作は、食品業界や貧困問題だけに止まらず、物流、小売、経済やエネルギーなど「食」を中心にした様々な社会問題に触れていることにも注目したいところです。製作を支えたたくさんの協力者やスポンサーも、業界や地域の垣根を超えて実に多様で、食品ロス問題がいかにみんなで取り組むべき問題かと実感させてくれます。

伊勢谷友介さんが問う
「考えない快適さに慣れないこと」

「もったいないキッチン」アンバサダーのおひとり、俳優の伊勢谷友介さんは、自身も社会課題を解決するプロジェクトにいくつも携わり、食品廃棄問題にも早くから取り組んでいる実践者です。

ダーヴィドさんとは、前作『0円キッチン』の上映・トークイベントを開催して以来の仲だそうですが、本作にはどんな感想を持たれたのでしょうか。また、伊勢谷さん自身は社会課題に取り組む活動の意義をどのように捉えているのかをうかがいました。

伊勢谷友介さん

伊勢谷さん 食に限らず、社会課題に向き合うと、すぐに壁が立ちはだかるんですよね。僕らはクリエイティブな視点からそうした課題を解決できると信じて「リバースプロジェクト」をはじめて10年になりますが、何度となく諦めたくなる気持ちを味わいました。きっと、この映画に出てくるみなさんも、大変なこともあるだろうなぁと想像する一方で、また別の場所には彼らの姿に励まされる人がいると思います。

社会を変えるには、たくさんの「個」それぞれがもつ常識を変えていかないといけないんですよね。誰もがアクティビストのように活動できるわけではありませんが、行動を変える人が増えること、それがとても重要です。多くの個が行動を変えれば、地域が変わり、国が変わり、世界が変わるはずですから。僕らもそう信じてやっています。

ダーヴィドは捨てられる食品をおいしそうに食べて見せて、それを見た人は、賞味期限や消費期限の意味を考え直すきっかけを得るでしょう。その自問から、ただ書かれた期限がきたというだけで食べ物を捨てる、という行為そのものに違和感を覚えるかもしれません。いかにして「考えないことの快適さ」に慣れてきてしまったのかと。

その違和感はやがて、衣食住全般に及び、エネルギーなど、自分たちの未来に直結した問題解決に向けて行動を起こす原動力になるはずです。映画でも繰り返し伝えているように、僕らの国はもともと「もったいない」精神の国です。みんながそれぞれできることを行動したら、たくさんのことが解決できる。この映画は、そんな自問の機会を与えてくれていますね。

いよいよ全国で劇場公開
ダーヴィドさん「みんなで一緒に」

(C)Aiko Gross-Kakehashi

製作段階から話題だった本作もいよいよ、2020年8月8日より劇場公開が始まります。場所によってはドイツ語や英語の部分を日本語にした、日本語吹き替え版も公開されるそうですので、お子さんとご一緒にご覧になるのもいいかもしれません。(ちなみにダーヴィドさんの吹き替えは俳優の斎藤工さんが担当されています。予告編はこちらから)

日本中を旅したダーヴィドさんは、日本の課題が大きい一方で「たくさんの画期的な解決方法が生まれている」と明るく語ってくれました。

ダーヴィドさん 日本人の多くは決して、食べ物を無駄にしたいと思っているわけではありません。特に個々人では、まだ食べられるものを捨てることに恥を感じています。問題は工業化された食糧生産システム、そして、暮らしの骨格をつくる政治の問題でもあります。

この問題を解決するための変化には3段階のレベルがあることを知ってほしいです。まずは、あなた自身が変化すること、次にあなたの周囲に変化を促すこと、そして「もったいないキッチン」のような食のイベントを起こすことです。個々は小さくても、みんなで一緒に動けば強い力として動き出します。

問題はシステムにあるけど、解決するのは人の思いと行動なんですね。もしも「なんとなく」捨てそうになったら、一旦立ち止まり、考えてみる。すぐにできることもたくさんありそうです。まずは何から始めてみますか?

(C)UNITED PEOPLE

– INFORMATION –

2020年8月8日より劇場公開
『もったいないキッチン』

監督・脚本: ダーヴィド・グロス
出演: ダーヴィド・グロス、塚本 ニキ、井出 留美 他
プロデューサー: 関根 健次
制作: ユナイテッドピープル
配給: ユナイテッドピープル
配給協力・宣伝: クレストインターナショナル
2020年/日本/日本語・英語・ドイツ語/16:9/95分
公式サイト: http://www.mottainai-kitchen.net/